2017年01月04日

『君の名は。』から始めるギャルゲー・エロゲー

 2016年最大の話題作である『君の名は。』を元旦になってようやく観てきました。監督の新海誠が業界の仕事をしていたこともあり「ギャルゲーっぽい話」「ギャルゲーを劇場アニメ仕様に仕立てたような作品」という評を耳にしていましたが、あながち間違っていないと思いました。既に類似記事がごまんとありそうですが、自分でも書いておきます。
※紹介している作品が『君の名は。』のネタバレになりかねない(その逆も然り)ので注意のこと

『Kanon』
『AIR』
 『君の名は』のプロット、不可思議な状況に放り込まれた主人公、戸惑いながらも始まる人との交流、奇妙で平穏な日々の中で深まっていく親愛と慕情、やがて明かされる衝撃の真実と風雲急を告げる展開、別れと喪失、奇跡と癒しという構成は、「泣きゲー」の文法とかなりの共通項があります。
 数ある泣きゲーの中でもKeyの『Kanon』『AIR』を紹介したいのは、この映画が表現している、胸をえぐる喪失感がそれを思い起こさせたからです。決して信者だからお薦めしているわけではありません。

『STEINS;GATE』
 観測された悲劇の未来を回避するために主人公が奮闘するという、いわゆるタイムリープ・タイムパラドックスを扱った映画はこの作品以前にも相当数あり、映画史に燦然と輝く名作も少なからず残されています。私は天体現象が関わっているのとタイムラグが重大な要素になっている点で『オーロラの彼方へ』をぱっと思い浮かべました。ギャルゲー業界においてもワイドスクリーン・バロックは大人気のジャンルで、媒体との親和性もあってか数多くの名作が生み出されています。
 その中でも『STEINS;GATE』は、サイエンスフィクションとしての妥当性や歴史改変の整合性はある程度確保しつつ、絶望を切り開いていく人間ドラマを中心に書いている点、根っからの悪人は(ネームドキャラには)おらず、想いを強く持つ者は最後に救われる世界観という点で、作風が似ていると思いました。『シュタゲ』はこの映画と同等かそれ以上に過酷なシナリオが展開されますが、同様に安心して最後まで読める(最後まで読めば安心できる)作品であることは請け合っておきます。

『Ever17 -the out of infinity-』
『Remember11 -the age of infinity -』
 何を書いてもネタバレになるので、何も書きません。
 グーグルのサジェスチョンで『君の名は』が思いっきり出てきたので、同じ事を考えた人はいたみたいです。

『アカイイト』
 この映画には伝奇作品としての側面も少しだけあります。あくまで話の主軸は青春劇であり、登場する専門用語がわからずとも楽しめる作品ですが、わかったらわかったでさらに面白くなること請け合いです。
 今回ご紹介する作品は、PS2の本格和風伝奇百合ゲー『アカイイト』。劇中で「黄昏(誰彼)」「幽界」「彼岸」「分霊」についての解説があり、タイトルに至ってはまんま「赤い糸(縁の糸)」です。かてて加えて、物語の過去編で【ネタバレ】神代の時代に天津甕星が武葉槌命に服された話まで出てくる【ネタバレここまで】始末。これ以上に『君の名は』の副読本に向いている作品はありません。天地神明に誓って信者だからお薦めしているわけではありません。

『サナララ』
 (お話・キャラクター・エロ共に)くどくなくてさわやか、ボーイミーツガール、へんてこなシチュエーション・妙ちきりんな出会いからの泣かせる展開といった要素から思い浮かべたのがこの作品でした。あと、『君の名は』と同様に強い夏のイメージがあるのですが、『みずいろ』と混同していますかね。

『はるのあしおと』
『ef』
 関連度で言えばここで紹介している作品の中でもっとも高く……というのも、新海誠その人がデモムービーを作成しているからです。公式で公開されていたので一緒に貼っておきます。『ef - the first tale.』のデモを観た当時は「変態だー!」という叫びがこみ上げてきましたが、今観ても狂っています。全編アニメのOPデモというのは以前にもありましたが、明らかに図抜けていやあしませんか。私は後にも先にも、エロゲーでこんな映像を見たことがありません。映像表現に対する賛辞の語彙が乏しくて申し訳ありません。



 なお、二作品はシナリオの評価もかなり高いです(私の観測範囲では)。私は恥ずかしながら『はるのあしおと』が未プレイなので、そう遠くないうちに抑えておきます。

【関連記事】
咲-Saki-から始めるエロゲー
エロゲー・ギャルゲー入門編 ノベルゲームの面白さがたぶんわかる十本

2016年12月19日

白衣性恋愛症候群 レビュー・感想 実直な看護描写と軽薄なファンタジーの激しい乖離

 私がこの作品をあまり評価できない理由は簡単で、話の軸が定まらずにぶれているからだ。あんたが一番書きたいのは、看護の現場の実態を描く半ドキュメンタリーなのか? 主人公が一人前の看護師として成長するまでのビルドゥングスロマンなのか? 「癒しの手」による救済のファンタジーなのか? 恋愛や痴情のもつれの末のゴシップなのか? それが伝わってこなかった。
 看護の要素については、作者の実体験に基づくのだろう、真っ当な描写がなされていた。飛び交う専門用語や符丁はもっともらしさを演出していて、細かい描写は現場のすえた空気まで伝えていた。息つく暇も無しに起こる生死のイベントは、それを見届けたり看取ったりする人間の情感まで含めて丁寧に書き込まれていた。しかし、それがある意味仇になっていて、「癒しの手」という(お世辞にも作り込まれているとは言い難い)作中概念を巡るファンタジー要素と激しい乖離を起こしている。私は何も、超自然要素で人が癒されることの是非を問うているのではない(私がノベルゲームでもっとも好きな作品は、死んでいた人間が生き返るお話だ)。要はフィクションラインの問題だ。ファンタジックな治療の手段が(少なくとも読者の視点で)観測されている世界観で、人を癒すことや人の死を受け入れることの難しさを問われても、少なくとも私の心にはあんまり響かない。ファンタジーの要素がやっつけであるならばなおのことだ。
 方々で話題になっていた、黒化や拉致監禁などのいわゆる「鬱展開」については、行動原理やそこに至るまでの過程にあまり説得力が無く、読み手に衝撃を与えてやろうという下心が悪目立ちしていた。この悪癖は『星彩のレゾナンス』でも見られていな。
 いちおう筆致についても触れておくと、例えるならゆるい女学生の実況中継・日記帳といったあんばいで、どんな層を狙っているのかよくわからなかった。テキストを読んでいて、楽しい、心地よいと思えた時間がほとんど無かった。そもそもテキストゲームとして評価するのがお門違いな作品なのかもしれないが。

工画堂スタジオ 白衣性恋愛症候群 RE:Therapy
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2016年10月01日

『SeaBed』『しずくのおと』 力作同人百合ゲーの紹介

 最近、同人百合ゲーの『SeaBed』と『しずくのおと - fall into poison -』を読んだのですが、どちらもかなりの力作でした。両作品はそれぞれ違った方向性で作り込まれており、ほとばしるパトスと値段を遙かに超えた価値が見受けられました。このような作品がDLsiteで200本ほどしかダウンロードされていないのは損失だ、非合理的だと思ったので、さりげなくステマをしておきます。

しずくのおと - fall into poison - [あいうえおカンパニー] | DLsite Home - 全年齢向け

 ――少女たちを襲う恐怖の水族館

 都内にひっそりと佇む満天水族館。
 真弓と姫乃はある噂を調べにそこを訪れるが、些細なことで喧嘩をしてしまう。
 離れ離れになった二人は、いつしか満天水族館に閉じ込められることに。

 行方不明の妹との再会。
 謎の少女との出会い。
 かつての痛ましい事件の記憶。
 満天水族館に渦巻く様々な想いが真弓へと降り注いでいく…。

 ――そして迫られる救いの決断

 真弓に強いられる選択と決別。
 それはとある少女の未来をも左右することになる。

 運命に翻弄された少女たちが織りなすミステリ・ホラー。
 27のバッドと4つのトゥルー、全31種類のエンディングを収録。



 『しずくのおと』でまず興味深かったのが、サウンドノベル寄りのゲームデザインですね。『弟切草』よりは『かまいたちの夜』に近いでしょうか、ありとあらゆる方法で死ぬのも似ている。プレイの流れは、物語の分岐点で主人公の行動を決定し、いくつものバッドエンドを乗り越えて生存ルートを探し出す……同時に新しいルートが解放されていき、物語はその度に新しい展開を迎える、といったものなっています。最近のギャルゲーはもっぱらキャラクター中心・シナリオ中心で、誰々ルートの並列で構成されているものが主流なので、トライ&エラーで新しい展開を切り開いていく感覚はなかなか刺激がありました。エンディング数はいわゆるトゥルーエンドだけでも4種類あり、即死のバッドエンドも含めると全31種類もあります。作品内容の欄で紹介していることからも制作者の力の入れっぷりが伺えます。
 シナリオの雰囲気も悪くないです。水族館という舞台は海=(異)界のイメージへ繋がり、神秘性、非日常性、閉鎖性といった面でミステリーとすこぶる相性がよいですね。私は『Ever17』をやっていた時を思い出したりしました(ありゃあ水族館ではなく海洋テーマパークですが)。なお、終盤は超展開ゲーマーの血が騒ぎました。
 また、紹介ページやPVを見てもらえばわかるとおり、作品全体のクオリティがかなり高いです。原画と塗りは商業とほとんど遜色ありませんね。背景班もよい仕事をしています。インタフェースも凝っていて、メニューを開くと場面場面に応じたTIPSが自動で表示されるところなんか細かいですね。システム画像やそれを使用したスクリプト周りも頑張っています。
 サークルオリジナルとおぼしきサウンドも、けちの付け所がないですね。BGMはあの曲が飛び抜けて素晴らしい。あの曲ですよあの曲、プレイしたらすぐにどの曲のことを言っているのかわかると思います。主題歌もばっちり完備。んだもんだから、サウンドモードを実装しなかったことについては問い詰めたい。
 ノベルゲームのクオリティを、テキストとビジュアルとサウンドの総合力で解釈するなら、この作品以上の同人百合ゲーは『ととのか』くらいしか私は知りません。


SeaBed [paleontology] | DLsite Home - 全年齢向け
※あらすじにわりとネタバレがあります※

本作は百合要素を含むミステリーノベルです。
物語は三人の登場人物の視点で展開します。

CG枚数/90枚以上
テキスト量/約47万文字

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過ぎ行く時はとてつもなく深い海の底に沈み続けている。
ときに浮かぶあの日の景色と匂いは揺れて泡のように消える。

心療クリニックの精神科医楢崎は、人がものを忘れる仕組みについて研究していた。
人はなぜ忘れるのか、大事なことを忘れない方法はあるのか。
彼女はある患者の心の奥深くを探るうちに、深い深い海の底へと辿り着く。

都内に事務所を構えるデザイナー佐知子は、取り憑かれたようにものを作り続ける。
同僚の心配も他所に、仕事を続けた彼女は心を病み過去の恋人の幻が見えるようになる。
彼女は恋人の跡を追って暗く長いトンネルを見つける。

療養所で暮らしている貴呼は、幼稚園からずっと一緒だった同性の恋人とどのように別れたのか思い出せない。
彼女は恋人に似た女性と出会い、徐々に思い出を取り戻していく。
記憶の扉を開き続けていく彼女は、最後に冷たく静かな部屋へと足を踏み入れる。

それぞれの目的の元、過去を求めさまよう三人が行きつく場所は何処か。
三つの物語は淡々とした日々の中で静かに進行し、やがて同じ場所へと還っていく。


 『SeaBed』は上記作品とは打って変わって、シナリオが主体の作品です。選択肢は全くなしの一本道で、ストイックに脚本で勝負しています。この作品は何を書いてもネタバレになりかねない――公称ジャンルが「ミステリーノベル」であることについて論じても危ないし、三人の主人公について語っても危ないし、正直あらすじを読むだけでも危ない――ですが、47万文字という頭のいかれた分量で、日常は淡々といとおしく、ミステリーは神秘的に、伝えたいことは簡潔明瞭に、脚本が書かれています。

【若干ネタバレあり】
 私がこの作品に対して何より驚異と脅威を感じたのが、心象風景・内的世界といったものを当然に存在するものとして物怖じせず描写していることと、ノベルゲームの特性を活かした叙述トリックをしれっと取り込んでいることです。特に前者について、作者の胆力に盛大な賛辞を送りたいですね。主人公(とわれわれ)が自分の目を通して認識する世界について、語りのテクニックの面でも、唯心論や認識力学といった精神的な部分でも、高度な次元での表現に挑戦しています。
【ネタバレおわり】

 同人ゲームがそういった領域に踏み込んでくる時代になったのか、と驚くことしきりでした。
 また、シナリオとテキストの比重が高いとはいえ、ヴィジュアルノベルの基本要素は手堅く作られています。立ち絵は豊富で、そんなパターンまであるのかと感心するほどでしたし、CGもこの値段帯の作品にしては恐ろしく多いと思っていましたが、作品紹介によると90枚もあるそうです。BGMはフリー素材を使用しているようですが、場面場面に合わせて効果的に使っていると見受けられました。
 あと、誰も聞いちゃいませんが、私は貴呼が好きです。なんですかね、あの圧倒的な存在感は。この子のぶれないキャラクターが、虚実入り乱れる幻想的なシナリオに一本の芯を通していると感じました。
 最後に、百合ゲーとして評価するならば、『SeaBed』に軍配が上がるでしょう。何気ない日常から性的なエモーションまでを丁寧に書いてくれています。全年齢対象の作品ではっきりとリビドーの描写をしてくれているのはポイント高し。あそこにCGがないのはバグじゃないですかね?


 以上、同人ゲームの脅威を感じた二作品の紹介でした。作品の紹介ページや、このつたない紹介文を見て興味を惹かれた方がいらしたら、ぜひプレイしてみてください。
 へっぽこ百合ゲーをフルプライスやハーフプライスといったお値打ち価格で売っている商業ブランドは、恐怖に打ち震えるべきだと思います。

2016年09月11日

エロゲーの日常曲が好きだ

エロゲーの日常曲が好きだ。

『雫』の「精神世界」が好きだ。
『痕』の「ためいき」が好きだ。原点にして頂点である。
『To Heart』の「あなたの横顔」が大好きだ。

『ONE ~輝く季節へ~』の「8匹のネコ」が好きだ。
『Kanon』の「雪の少女」が好きだ。
『いつか、届く、あの空に。』の「唯井ふたみ」が大好きだ。
 学園恋愛ものにおいて幼なじみORメインヒロインのテーマ曲は日常曲として刷り込まれる。

『AIR』の「野道 -field path-」「跳ね水 -splash-」が好きだ。
「夏影」は日常曲と呼ぶには格調高すぎる。

『CLANNAD -クラナド-』の「東風」が好きだ。
『Steins;Gate』の「Laboratory」が好きだ。
 アレンジを合わせたら何時間この曲を聞いたのか分からないが、飽きない。

『水月』の「日常」が好きだ。
『月陽炎』の「秋風に乗せて」が好きだ。
『蒼色輪廻』の「死に至る道」が好きだ。
『未来にキスを』の「平穏無事」が大好きだ。

『カルタグラ』の「白い闇」が好きだ。
『EVE burst error』の「COMMON」が好きだ。
 ミステリーの日常曲というのは中毒性がある。

『俺たちに翼はない』の「MAIN THEME "HAWK"」が好きだ。
 メインテーマの日常曲アレンジとはなかなか心憎い。

『シンフォニック=レイン』の「心の雨」が好きだ。
『あやかしびと』の「豆腐小僧」が好きだ。
『何処へ行くの、あの日』の「Bright and early」が好きだ。
『遥かに仰ぎ、麗しの』の「風薫る朝」「貴方とお茶を」が大好きだ。

『君が望む永遠』『マブラヴ』の「坂道」が好きだ。
 実質的続編でのアレンジというのはずるい。

『パワプロクンポケット1』の「季節:夏」が好きだ。
『パワプロクンポケット2』の「ペナント2年目」が好きだ。
『パワプロクンポケット3』の「サクセス春」「サクセス夏」が好きだ。
 リセット地獄から生まれる愛着もある。

『パワプロクンポケット4』の「あの四度目の春」が好きだ。メインテーマのような気もするが。
『パワプロクンポケット5』の「1年目」が好きだ。
『パワプロクンポケット6』の「春」が好きだ。
 クソ難易度のアルバム埋め作業から生まれる愛着もある。

『パワプロクンポケット7』の「ハイスクーラー」が好きだ。
『パワプロクンポケット8』の「ワクワク、ドキドキ!ゴー!」が好きだ。
『パワプロクンポケット9』の「ワクワクなえぶりでい」が好きだ。
 パワポケシリーズはもっとエロゲーマーに認知されるべきだ。

『narcissu』の「銀のクーペ」が好きだ。
『彼女と彼女と私の七日』の「Mezzogiorno」「君がいるから」が好きだ。
 これがフリーゲームの曲だってんだから驚きである。

『クロスクオリア』の「九十九折りサイクリング」が好きだ。
『ネコっかわいがり! 〜クレインイヌネコ病院診療中〜』の、タイトルが分からないがあの曲が好きだ。
『キラ☆キラ』の「Rocker's path」が大好きだ。

『さよならを教えて』の「怠惰」「流れとよどみ」が好きだ。
 電波ゲーだからこそ光る日常曲がある。

『白衣性恋愛症候群』の「癒しの刻」が好きだ。
『Cross†Channel』の「School Days」が好きだ。
『カタハネ』の「Castle Walk (城内散策) 」が大好きだ。

『素晴らしき日々』の「音に出来る事」「Happy Material」が好きだ。
 個人的「音楽が素晴らしいエロゲ」第一位はこの子である。

『アカイイト』の「高い空を見上げて」が好きだ。
『ひぐらしのなく頃に』の「パリの午後」が好きだ。素材だそうだが。
『ロケットの夏』の「Off Season」が大好きだ。

 こんなプレイリストをいつか作ってみたい。
 我々がエロゲーの延々と続く日常曲に感じる郷愁は、媒体自体が持つ箱庭感・ループ感覚と少なからぬ関係があるように思う。






















【関連記事】
「タイトル画面曲が良曲のエロゲーは良作」の法則
「作詞:脚本家のエロゲーソングは最強」の法則

2014/06/08
作成
2014/07/26
クロスクオリア、キラキラ、ネコっかわいがりを追加
2016/09/11
蒼色輪廻、シュタゲ、何処あの、いつ空を追加

2016年07月02日

エロゲー・ギャルゲー入門編 ノベルゲームの面白さがたぶんわかる十本

 以前にも似たようなエロゲー初心者の入門記事を書いていたのですが、あれからまた多くの作品を鑑賞するうちに価値観も変化してきたので、まるっと刷新しました。面白さの観点を整理したほか、総合的なクオリティや入手難易度などを考慮していくつかの作品を入れ替えています。
※この十本は私の好きな作品ベスト10ではありません。いくつかは被っていますが。
※この記事ではアドベンチャーゲームとビジュアルノベルを厳密に区別せず、一緒くたにしてノベルゲームと呼んでいます。

『痕』 原点
 1996年発表、リーフビジュアルノベルシリーズ第二弾。『痕』が現在主流になっているエロゲー・ギャルゲーの始祖だということに異を唱える人は少ないでしょう。高橋龍也と水無月徹のコンビは自らが『雫』で始めたビジュアルノベルの歴史を次作『痕』でさっさと終わらせてしまいました。この作品はノベルゲームという媒体で表現可能なことをやり尽くしていると言っても過言ではありません。極論っちゃあ極論ですが、下に挙げた蒼々たる名作群もこの作品の二番煎じでしかありません。どちらの作品が優れているかはさておき。また、長らくエロゲーの主流となる異能伝奇バトル路線の嚆矢でもあります。
 余裕があれば前作『雫』もやりましょう。さすがに今になって読むと毒電波という独自概念のテキトーさやテキストの雑さなどが目につきますが、歴史を変えた記念碑的作品を抑えておいて損は無いです。じっさい『弟切草』『かまいたちの夜』などのサウンドノベルとこの作品の間には1万光年の隔たりがあります。『雫』の単体記事はいつか書きたいですね。
【対応機種】Windows(調べてみたら全年齢版がない)

『この青空に約束を―』 コミュニケーション
 『こんにゃく』のゲームデザインは、私が勝手に「コミュニケーション型」と読んでいるスタンダードなものです。あるヒロインと交流していくうちに、その人の過去や隠されていた本質が明らかになったり、あるいはその人が抱えている問題を一緒に解決したりすることで絆を深めていく、というのが基本の流れになっています。、
 ギャルゲーの面白いところは、物語中で主人公とヒロインの仲が深まっていくのと同時に、読み手がそのキャラのパーソナリティに触れることで愛着が生まれるという、もう一階層上のメタフィクショナルな交流が起こるところです。愛=理解! 名作と呼ばれるような作品は、伏線やルートごとの情報の秘匿・開示によって、それを鮮やかに演出してきます。いや本当に、まるで目から鱗が落ちたかのように、そのキャラクターに対する印象が変わってしまうんですよ。私がギャルゲーをプレイする動機の根源にあるのは「その人のことを知りたい」「その人の本質に触れたい」という欲求なのですが、みなさんはどうでっしゃろか。
 『こんにゃく』は好感の持てる主人公、キャラの立ったヒロインとサブキャラクター、読みやすいテキスト、かわいらしいビジュアル、心に染みるサウンド、泣けるシナリオとおよそ名作と呼ばれる作品の必須要素を搭載しているので、入門編にはうってつけです。若干、これからやる作品のハードルが高くなる気はしますが。
【対応機種】Windows、PS2、PSP、Vita

『Fate/stay night』 マルチシナリオ
 ノベルゲームの面白さのうち、アニメ・漫画・映画・小説といった媒体では表現しえない(あるいは非常に困難な)ものに「マルチシナリオ」があります。同一の時間を起点にして、同一の舞台設定、作品概念、登場人物によって、幾通りもの物語を展開し、幾通りもの結末・価値観を提示することができる。それがノベルゲームの強みです。中でもこの『Fate』は、徹底的に作り込まれた世界で、えぐいほどにアクが強い登場人物が、全く展開の異なるバトルロワイヤルを三度に渡って繰り広げるという、マルチシナリオの贅を尽くしたような作品です。「Fateは文学」なのかどうかは知りませんが、こいつがノベルゲームの理想型を実現させた数少ない作品の一つであることは間違いありません。
【対応機種】Windows、PS2、Vita

『アカイイト』 情報分散 マルチエンディング
 私が「情報分散」型と呼んでいるデザインは、各ヒロインのルートに情報が分散して割り振られていて、全てのルートを読み終えたときに初めて全容が明らかになる形式です。断片的だった情報が額縁にピースをはめていくかのように組み合わさって意味を成していき、次第に世界の全体図が見えてくる。あの目から鱗が落ちていくような快感は実際にやってもらわないとわからないです。
 私がこの形式の作品としてお奨めしたいのが、王道和風伝奇百合ゲー『アカイイト』です。この作品のデザインコンセプトが秀逸なのは、一人目のルートでその人が関わっていた十年前の事件の真実が明らかになり、二人目のルートでその人と妖怪変化・悪鬼羅刹との千年前からの因縁が判明し、三人目で三年前の……といったあんばいで、ヒロインの正体がわかっていく課程で、長大な年表が時系列を入れ替えながら組み上がっていき、世界観が構築されていくところですね。『アカ』ほど一つ一つルートを読み解いていくのが楽しかった作品はありません。
 また、プレイヤーの選択によってエンディングが変化する「マルチエンド」はギャルゲーのご先祖であるサウンドノベルの頃から売りにされていた要素ですが、『アカ』はノーマルエンド・バッドエンドが魅力的なゲームとしても知られています。その後の展開を想像させるような内容である上に、エンディング一つ一つに気の利いた名前が付けられていて、強く心に残ることうけあいです。
【対応機種】PS2、PS3(ゲームアーカイブス)

『パワプロクンポケット』シリーズ 正史構築
 あまり該当作品が無い「正史構築」型のデザインです。私もぱっと思いつくのが『久遠の絆』、『CLANNAD』と『智代アフター』、『My Merry May』と『My Merry Maybe』ぐらい。そもそもこの業界で、最初から全何部作で構想されているもの以外で、続編の名作というのがあまり思い浮かばないです。ナンバリング付きの続編なんか最近じゃあめっきり見ませんし。
 今まで語ってきたように、ギャルゲーの面白さの根源にあるのはマルチシナリオ・マルチエンドなどの分岐にありますが、アフターストーリーや続編においては基本的に正史が定められて、そこを起点に物語が展開します。正史構築型の作品には、そうして起点が固定化されることによって生まれる逆説的な面白さがあります。それはもちろん、われわれが正史確定前のさまざまな未来を観測しているからこそ成立するものです。野球をするギャルゲーと言われる『パワポケ』は、歴史に選ばれなかったヒロインの悲喜こもごも、ハッピーエンドとは異なる解法の提示、思いがけない人物・組織の台頭といった演出がずば抜けてうまいです。ギャルゲー・エロゲー畑の人にはあまり馴染みがないかもしれませんが、絶対の自信を持ってお奨めできる作品なのでぜひぜひプレイしてみてください。
【対応機種】GB、GBC(1、2)、GBA(1~7)、DS(8~14)

『家族計画』 テキスト
 ノベルゲームというくらいなので「テキスト」が素晴らしい作品も一つ紹介しておきます。瀬戸口廉也や虚淵玄や水無神知宏の文章も格調高くて素晴らしいですが、私がノベルゲームのテキストとしてもっとも美しいと思っているのは田中ロミオのそれです。その次が麻枝准(キリッ)。私がロミオを評価しているのは、もちろん文章の噛み砕きやすさや、表現・語彙の引き出しの多さ、躁的なテンション、名言の含有率もありますが、何よりテキストのリズム感を完ぺきに身につけている点です。平易な表現とペダンチックな表現、1クリックで表示されるテキストと情報量のペース配分が理想型に近い。だから分量だけ聞くと胃もたれしそうなシナリオでも、一気呵成に読ませてしまうんですよ。誇張表現はなく、エンターキーを押す手が止まりません。読ませる文章を書く小説家をページターナーと言いますが、私にとってロミオや麻枝はエンターキープレッシャー(?)です。
 ところで、ロミオの筆がもっとも冴え渡っているのは『Rewrite』だと個人的に思っているのですが、入門者に進めると竜騎士か殿のシナリオで確実に挫折すると思ったので無難に『家計』にしておきました。
【対応機種】Windows、PS2、PS3、PSP、Vita

『AIR』 演出
 「ゲーム性がないギャルゲーなんてライトノベルと変わらんじゃんか」と言う人がいます。それに対して「分岐がない作品に限定しても、絵があって音楽があってボイスがある、それだけで全く別物じゃないか」と言う人もいます。私は後者の主張を支持していますとも。
 けったいな考察コンテンツを作っていることからわかるように、私はバ鍵っ子の末席を汚す身です。しかし信者のひいき目を抜きにしても『AIR』は20世紀を代表する作品だと思います。時代の三歩先を行っていました。この作品の、テキストとサウンドとビジュアルが三位一体となった「演出」は読み手の涙腺に致命的なダメージを与えてきます。かの有名なゴールのシーンはギャルゲー史上の最高到達点の一つでありましょう。語るに尽きぬ作品ですが、あの一場面だけでも歴史に残ります。
 勘違いされがちですが、初出のPC版にはボイスがありません。私には観鈴ちんと晴子の声が聞こえてきましたけどね。
【対応機種】Windows、DC、PS2、PSP、iOS、Android

『STEINS;GATE』 ループ
 ギャルゲーと「ループ」要素の親和性が高いのは定説です。パターンの限られた背景と立ち絵、延々とリフレインするBGM、主人公の目を通して世界を覗くという歪んだ構図が生み出すデジャヴ感・箱庭感とループ要素がこれ以上ないほどマッチしているからだ、というのが私の意見です。
【※微妙にネタバレあり】
 ゼロ年代最後の名作と言われる『シュタゲ』は目新しさこそないものの、(プレイヤー主観の)一周目時点で発現している歴史改変の影響、トライ&エラーの果てない繰り返し、摩耗していく自我、変貌していく世界、因果律の無慈悲な収束、思いがけない「ループ逃れ」の存在、というループ作品のお約束を網羅している良作です。
【※ネタバレここまで】
 また、ひとくちにループと言っても、無限に繰り返される時間の中で何かを悟るような、狭義の「ループ」に主眼が置かれている作品と、観測された悲劇を回避するためにいわゆる「強くてニューゲーム」で立ち向かう「リプレイ」要素の比重が大きい作品があります(無論両方を兼ねている作品もある)。前者は『パンドラの夢』『CROSS†CHANNEL』(他の媒体で言うならば『リプレイ』『恋はデジャ・ヴ』)、後者は『ひぐらしのなく頃に』『マブラヴ』(『バタフライ・エフェクト』『アズカバンの囚人』)ですかね。ギャルゲーとリプレイものの親和性が高いのはある意味当然です。なぜならば、あまねくギャルゲーはそれの性質を備えているからです。われわれ読者が選択肢の位置でセーブをしてトライ&エラーを繰り返し、トゥルーエンドへの道を模索する、その行為こそがリプレイそのものではありませんか。ループゲーというのは、必然的にメタギャルゲーでもあるんです。
【対応機種】Xbox360、Windows、PS3、PS4、PSP、Vita、iOS、Android

『Ever17 -the out of infinity-』 叙述トリック グランドエンド
 『Ever17』については何を言ってもネタバレになるのでうかつなことが書けません。世の中のギャルゲーのうち大半は、読者が主人公の目を通して世界を見る、という画面構成を取っています。物理的にも、観念的にも、主人公の観測によって世界が形作られています。このいびつなレイアウトが読者を欺く「叙述トリック」と相性が抜群なのです。私はこの作品をそこまで評価していませんが、じっさいあの仕掛けにはおったまげさせられましたとも。あの脳内映像が音を立てて崩れ去る瞬間の途方もない感覚を、あなたにもぜひ味わってもらいたいです。
 また『Ever17』は、ヒロインの個別ルートでは主に情報の小出しと伏線張りを行い、最後に解放されるグランドルートで伏線を根こそぎ回収しつつ大団円エンドを迎えるグランドルート・グランドエンド形式のデザインの代表格です。個別ルートでの奥歯に物が挟まったような疑問点・違和感がグランドルートで次々に氷解していく快感は、この形式の醍醐味ですね。
【対応機種】PS2、DC、PSP、Windows、Xbox360

『さよならを教えて』 エログロ メタフィクション
 対象年齢を限定しているエロゲーは、コンシューマゲームでは実現しえないエロス、バイオレンス、グロテスク、タナトスといった表現を追求した作品も散見されます。
 ときに、ギャルゲーというものは主人公(プレイヤー)の目というフィルターを通して世界が展開されて、主人公の行動(プレイヤーの選択)によって女の子と世界の幸不幸、時には生き死にすら決定づけられるという、身勝手極まりなくて歪な媒体です。必然的に「メタフィクション」とは切っても切れない関係にあります。『さよ教』はそれとしてもよく出来た佳作ではないでしょうか。女の子を救いたいというのは、つまるところ「自分が」救われたいっちゅうことなんですよ……。
 はっきり言って5ルートも必要ないほどくどいのと、ゴア表現がかなりきついのでそこは注意。
【対応機種】Windows、Android(Win版はプレミア化しているDLsiteで購入可能に)

 プレイ環境を整えるのが少しめんどくさそうなのが『パワポケ』のGBA世代くらいで(現行機の3DSでは遊べない)、後は通販サイト・DLサイトを利用すれば適正価格で遊べると思います。また『痕』と『さよ教』以外は未成年でもプレイ可能であることを確認。
 この十本をやれば「ギャルゲーなんてただの紙芝居でしょ」「アニメで充分」などとは口が裂けても言えないはず! たぶん。

2015/11/24
 気付いたらワイドスクリーン・バロックばっかりだったので、『C†C』を『家計』に変更。
2016/07/02
 加筆修正。

2016年04月12日

サクラノ詩 我々が何のために作品を作るのか、作品に刻まれる名

「ふざけるなお前、お前なぁ! 作品を作るって意味分かってるのかよ!」
「お前こそ何を分かってるって言うんだ!!」
「あ、明石……」
 明石が声を荒げる。
「筆をずっと折っていたお前に……何が分かる……」
「作品を作るという意味の、何が分かるって言う……」
「お前にとっては、多くの人間に認知されるための作品か? マスコミに騒がれるための作品か?」
「明石……」
「あれが、何のために作られたか……。
 俺が、あの作品を誰のために完成させたか……」
「作品が何であるか?
 その言葉、そのままお前に返してやる。
 おまえはその意味を本当に分かって言ってるのか?」
「……明石」
「あれは他の誰かではない、遠くの誰かのために書いたものではない……。
 あれは、小牧、小沙智、そしてあいつらを救ってくれた正田神父のために作り上げたものだ……他の何でも無い」
「だからこそ、もう俺が作者である必要は無い。
 俺の名前が残る必要は無い」
「だ、だが……」
「腑に落ちないか?
 だとしたら、お前は芸術家としては三流以下だ」
「くっ……」
「作品が何のために生まれたのか、何のために作られたのか……」
「我々が何のために作品を作るのか……それさえ見失わなければ問題ない……。
 そこに刻まれる名が、自分の名前では無いとしてもだ……」

(『サクラノ詩 -櫻の森の上を舞う-』Ⅱ Abend)


「これは、お前が俺に捧げた墓碑銘だ。
 だから俺は、ここに自分の名を刻む」
「これは俺の作品じゃない」
「俺の死のために、草薙直哉が描いてくれた作品だ」
「俺の墓は花であふれているだろう。だがそんなものは見せかけだ。
 本当の墓は、この絵の傍らにある」
「……今夜、ごく先刻、俺は死んだ夢を見た。
 妙なことに、それは、俺は幸せに暮らした瞬間だった」
「直哉、ありがとうよ」
「俺にふさわしい絵だ。こういう絵こそ、俺の死に捧げられる作品だ……」
「良い人生だった……」
「こんな事があるのだからな……」
「……」
「絵というものは良いものだ……」
「多くの人は、感情に言葉をのせて語る」
「だが、発話というのは、これはなかなか虚しいものだ」
「だから、多くの賢者は沈黙する」
「無駄なおしゃべりは、身体を濁らす」
「濁った身体からは、煙の様な言葉しか生まれない」
「だが、芸術に無駄なおしゃべりは必要ない」
「研ぎ澄まされた意味だけが浮かび上がる」
「A Nice Derangement of Epitaphs」
「この作品はそう扱われるだろう……」
「だが、それで良い」
「これは、俺のための墓碑銘なのだからな……」

(『サクラノ詩 -櫻の森の上を舞う-』Ⅳ A Nice Derangement of Epitaphs)


「作品が何のために生まれたのか、何のために作られたのか……」
「我々が何のために作品を作るのか……それさえ見失わなければ問題ない……。
 そこに刻まれる名が、自分の名前では無いとしてもだ……」

(『サクラノ詩 -櫻の森の上を舞う-』Ⅵ 櫻の森の下を歩む)



サクラノ詩-櫻の森の上を舞う-
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2016年03月06日

蒼い海のトリスティア レビュー・感想 意外にシビアスなお話はよし、ユーザビリティは素人目にも不十分

 はじめに、私は今までの人生において『シムシティ』『どうぶつの森』といった箱庭シミュレーションゲームとはさっぱり縁がありませんでした。少ないこづかいをやりくりして買ったのは主にRPG(ポケモン世代ど真ん中)や育成シミュレーションで、カネを自由に稼いで使える頃には既にノベルゲームひと筋だったのです。そういうわけで、このゲームジャンルにはまともな経験値もなければ深い愛着もないので、この感想文もトーシロのたわごとだと一笑に付してもらって構いません。おまけに、私は人一倍こらえ性が無い人間です。
 こんな感じで姑息に逃げを打っておきましたが、『蒼い海のトリアスティア』の率直な感想は、ストレスフルでした。ゲーム性がどうだ脚本がどうだキャラクターがどうだという感想の前にこんな言葉が出てきます。ユーザインタフェースの根本的な不備や、確率に振り回される不毛なゲームデザインは素人目にも(いや、素人だからこそ?)気になって仕方がなかったです。痒いところに手が届かない、と言う表現がありますが、この作品の総合的な遊びやすさは痒くて全身掻きむしりたくなるレベルでした。

完成度の低い操作性
 2002年に発表された作品なので仕方ない面もありますが、操作性が劣悪です。私が本当に嫌で嫌で仕方なかったのが、何でもかんでもマウスの左クリックで操作させるところです。キーボードでの操作はメッセージ送り程度のお飾りレベルで、右クリックは機能していません。アイテムの研究・開発・売買、ステータス、セーブ・ロードといった子ウィンドウは、ページ送りには「次のページ」「前のページ」(「最初のページ」「最後のページ」は無い)、閉じるには「閉じる」という小さな小さなボタンをいちいちいちいちクリックする必要があります。
 主人公の移動に関しても、もの凄く面倒くさいです。スタートの画面である工房の画面からある店へ移動しようと思っても、ワンアクションで行えません。いちいち工房の外に出て、そこから全体マップに移動し、地区へ移動して、そこから店を探してクリックしてようやく移動が完了します。私はあるアイテムを作るために「タンポポ」が必要だと分かり、どこかで見た記憶のある花屋を探すため地区を移動して店をしらみ潰しに探し、結局その花屋がつぶれていたと分かったときに、ギブアップという言葉が頭をよぎりました。
 他にも、バックログ未実装、未読・既読問わずスキップ未実装(エンターキーをひたすら押しっぱなしでそれっぽく動く)、セーブは工房以外では不可です。

確率に振り回される嫌なゲームデザイン
 このゲームは確率との不毛な戦いを常に強いられます。アイテムの制作の成功・失敗も、アイテム研究の進捗度合いも、試行回数で改善されるとはいえ基本的に運次第です。乱数の仕様なのか、結果は何度ロードしなおしても変わりません。私はダイヤモンドのこぎりという、材料の人工ダイヤ三個を揃えるのが一苦労で、時間と金を盛大に食い潰してくれたアイテムが、一回の制作失敗でロストしたときに、ギブアップを真剣に考えました。
 また、このゲームには取り返しが利かない時限イベントが多数あり、そんなもん初見で分かるかいという発生条件のものもあれば、締め切りが非常にシビアで一回の失敗が致命的になる(上記のダイアモンドのこぎりがまさにそうだった)ものもあり、いくつかはヒロインとのベストエンドを見るための条件になっています。そういうわけで、半ば必然的に攻略やメモを駆使しての再プレイが要求されます。

 上述した操作性とゲームデザインの何が悪いかって、このゲームの基本方針である、材料を仕入れてアイテムの研究・開発を行い店へと売りこむ、という流れと密接に絡んでいるのが最悪なんですよ。ちょっとしたストレスでも、繰り返し繰り返しやらされるにつれて加速度的にマッハになるのは言うまでもありません。
 例えば、これからあるアイテムを開発して、ある地区の店へと売り込み行きたいとします。その場合に必要な実際の操作は以下の通り。

 まずは素材を買いに行きます。
01.工房画面の玄関マットへカーソルを動かしてクリックし(職人通りの外観図に移動)
02.(境目のよくわからない)道の切れ端へカーソルを動かしてクリックし(全体マップに移動)
03.対象の店がある地区へカーソルを動かしてクリックし(そこの外観図に移動、ナノカちゃんアイコンがのそのそ移動するのを見守る必要有)
04.対象の店へカーソルを動かしてクリックし(店ウィンドウ起動)
05.「買い物」へカーソルを動かしてクリックし(買い物ウィンドウ起動)
06.対象の商品へカーソルを動かしてクリック
07.注文個数へとカーソルを動かしてクリックで調節し
08.「買う」へカーソルを動かしてクリック
09.「やめる」へカーソルを動かしてクリックし(買い物ウィンドウ閉じる)
10.「とじる」へカーソルを動かしてクリックし(買い物ウィンドウ閉じる)
11.(境目のよくわからない)道の切れ端へカーソルを動かしてクリックし(全体マップに移動)
12.工房のある職人通りへカーソルを動かしてクリックし(そこの外観図に移動)
13.工房へカーソルを動かしてクリック(工房画面へ移動)

 次にアイテムを制作します。
14.炉へカーソルを動かしてクリックし(制作アイテムの一覧ウィンドウ起動)
15.「次のページ」へカーソルを動かしてクリックし、目的のアイテムのページまで移動して
16.「アイテム制作」へカーソルを動かしてクリック
 乱数の神様が微笑んでくれたら制作成功! 失敗した場合、材料は塵芥と帰します(炉などの設備のみ除く)。
 材料が無くなった場合は再び01の操作からやり直してください。

 次にアイテムを売り込みに行きます。
17.工房画面の玄関マットへカーソルを動かしてクリックし(職人通りの外観図に移動)
18.(境目のよくわからない)道の切れ端へカーソルを動かしてクリックし(全体マップに移動)
(省略)
19.対象の店へカーソルを動かしてクリックし(店ウィンドウ起動)
20.「売り込み」へカーソルを動かしてクリックし(売り込みウィンドウ起動)
21.対象の商品へカーソルを動かしてクリック
22.「売る」へカーソルを動かしてクリックして
 売り込みが完了になります。ここから工房へ戻るには(省略)です。

 この字面で、私の右手のすじに残るぴきぴきした痛みのいくらかが伝われば幸いです。
 なお、この操作手順は材料を取り扱う店やアイテムの売却が可能な店が完ぺきに把握されていた場合のそれであり、その店が何処にあったか忘れた場合はさらにマウスを握る右手にウロウロカチカチしてもらうことになります。
 ……なぜ右クリックやエスケープやウィンドウ外のクリックでウィンドウ閉じないんですか?
 なぜページアップ・ダウンやタブでウィンドウ間のページ移動が出来ないんですか?
 なぜカーソルキーでマウスポインタが(そのまま、あるいは選択箇所にジャンプで)動いて、エンターで決定という操作が出来ないんですか?
 なぜゲーム時間を進める操作は工房でしか行えないのに、「工房に戻る」ボタンを用意しなかったんですか?
 工房画面で都市全体の店舗が一覧で見られるウィンドウを用意して、地区や店の種類ごとにソートや絞り込みが出来て、店のレベルや来客数、扱っている商品が一目で分かって、直接そこに移動できるようにする、そんな発想は出てこなかったんですか?
 なぜこんな操作性とユーザインタフェースにGOサインを出してしまったんですか?

シビアでシリアスなシナリオ、テキストはよし
 評判通り、こつえーのぱんつはいていない絵柄からは思いもよらぬ、シリアスでシビアなシナリオはけっこう面白かったです。浪花節の人情・友情話だけでなく、外様の人間に対する非情な仕打ちや損益による掌返しも盛り込まれていて、だからこそ前者にほろりとさせられます。基本的に純粋な善意だけで働く主人公が、政治的陰謀に巻き込まれていき、都市の復興や独立自治の旗印として担ぎ上げられていく展開もなかなか読ませてくれました。
 あと、私が気に入ったのは言葉遣いのセンスのよさ。私はノベルゲームをプレイする際に、知らなかった単語や自分でも使ってみたい表現をメモするようにしているんですが、この作品はプレイしていてなかなか収穫が多かったです。メモを見ると、「宵っ張り」「裸足で逃げ出す」「売り物にするには足が早すぎる」「へんぺんたる資本の多寡」「こまったときは、相身たがい!」「のんべんだらり」「出来星財閥」「造次顛沛にも」「言わば言え」「しつけのいい料理」「料理の腕は玄人はだし」「男が鈴なりになるだけの素材」「闇夜に霜のおりるがごとく」なんて言葉が書いてありました。
 台詞回しは、司祭さんの表現が愉快でした。私はこういった表現を見ると思わず口角が持ち上がります。何というか、外国文学のような味わいがありませんかね?

「聖誕祭の七面鳥だけを家に残されてる猫みたいに幸せだわ」


「税金みたいにたしか」


「カカトの皮までぶんどられます」


「生まれたての子犬みたいに、ピュアな気分」


 謎の少女の恋愛に関する格言は、調べてみると外国文学やことわざからのいただきだったみたいです。文章が主体のゲームというわけではありませんが、テキストの質は全体的に高かったです。
 他には、都市が復興するに連れて外観マップでの人通りが多くなったり、自分が売り込んだ開発品の体系(工芸品、食品、工業製品など)に応じて都市がその方面に成長していったり、そういった視覚的な面もよく出来ていると思います。

百合ゲーとしての所見
 悪くないんじゃあないですか。全年齢対象の作品ですが、愛のある告白やキスまでの流れがわりと丁寧に書かれています。
 「そういう世界」とかいう表現や、ハンプデンの娘さんの意中の人へは心酔崇拝、それ以外の人間は眼中に無しというコテコテ造型はどうかと思いましたが。

まとめ
 シナリオや言葉使いはまずまずよかったですし、百合ゲーとしてもだいたい違和感なく読めましたが、あのわずらわしさと不条理さに耐える価値があるかと聞かれると「別にない」としか答えられません。SLGとしての比重の高さに対してこの操作性は致命的すぎます。まして繰り返しプレイ、そこまで行かなくともトライ&エラーを強いるゲームデザインなら、相応のユーザビリティを実現してくださいな。
 このブランドの過去作『リトル・ウィッチ・レネット』『リトル・ウィッチ・パルフェ』は百合ゲーの古典との呼び声が高いですが、この『トリスティア』よりさらにシステムが悪いならば到底プレイできる気がしません。積んだままでもいいかな、と正直思っています。『ネオスフィア』はどないすべい。

蒼い海のトリスティア ~発明工房奮闘記~
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2015年01月31日

きみはね レビュー・感想 浅ァァァァァいッ練り込み不足!!

 あまり面白くなかった。満足度は低い。百合作品としては大きな瑕疵はないが、読み物としても、オーソドックスな日常系エロゲにしても、あるいは「選択肢による物語への介入」というゲーム性を売りにしたアドベンチャーゲームとしても、全方面において作り込みの浅さがうかがえる。作品のコンセプトらしきものは理解できるが、手を抜いて浅くなっている要素とそれとが致命的に噛み合っていない。低価格路線の2800円での発表ということで、きらら系、百合姫系の単行本三冊分の値段と考えればコスパはそこまで悪くないが……。少なくとも45分の悪夢『リリウム・トライアングル』よりかは光るものがあった。
 半端にまともな作品であるだけに、プレイ中に「もっと予算と人員と開発期間があったら、こんな作品にしたかった」という完成系がうっすら透けて見えて、それを断念したであろう痕跡も随所で見られるだけに、何とも歯痒い思いをした。画面周りはセンスを感じるし、CGは(枚数が値段相応だが)綺麗だし、音楽も(曲数が値段相応だが)悪くないのに、もったいないお化けが出らぁ。別に低予算でなくてもよいから、じっくり作り込んでもらいたかった。そう思わせる程度には惜しい作品だったよ。
 『きみはね』のここが浅い! 薄い!

テキストが薄い
 メインライター、うつろあくたの過去作品もたいがい日常シーンが苦痛だったが、『きみはね』も同様だった。

(黒髪泣きぼくろのメガネが見つからないらしい)

「あんた、あっちこっちに置いては忘れるからなぁ。カバンの中は?」
「…………ない」
「机の中は?」
「まだまだ探す?」
「……踊らないよ」
「あははは」
「あの~~」
 キッチンから文の声が呼んでいる。
「どうしたの?」
「ミルクを取ろうとして冷蔵庫を開けたら中にこんなものが……」
 文が指でつまんで差し出したのは、キンキンに冷えた――
「わたしのメガネだ」
「なんでだよっ!」

「冷たっ! 曇るっ!」


 笑いどころのまったくわからない掛け合い!

「何してるの?」
「メガネがない……」
「え~またぁ? いつもどこに置いてくるんだよ」
「うう……」
「あのぉ……」
 キッチンの掃除をしていた文がおずおずと手を挙げた。
「レンジの中から、これが……」
「え、もしかして……?」
「あ、わたしのメガネだ」
「なんでだよ!」


 意図のわからない天丼!

「陽菜、浅生さん……」
「ん?」
「愛してるよーーー!」
「きゃああっ!?」
「また、このオチかー!?」


 浅いメタ発言!
 これ、完全に一山いくらの駄目エロゲーのテキストだわ!
 こだわりの感じられない台詞、地の文の配分などからも、いろいろ察していただけたらと思う。

キャラクターが薄い
 キャラクターが薄くて印象に残らない。こいつが紬で、こいつが唯で、こいつが澪なんだろうなぁというのはおおよそ想像が付くのだが、特徴付けと書き分けがうまくいっていない。まず、低予算に抑えるためなのか、主要登場人物以外とのやりとりや学校生活の描写ががっつり削られていて、そいつがどんな人間なのかよくわからなかった。そして三人娘の一人、黒髪泣きぼくろは無計画に属性をぶっ込みすぎである。見た目はクールな美少女なのに自室ではどてらを着たきり雀というギャップ、要介護レベルの自堕落、文学や映画に造詣のあるプレップス、実は親が教授でバレエも習っていた子女、あやしい寮長から百合官能小説を借りるむっつりスケベ、若奥さんと旦那様ネタが好きなセクハラキャラ、その実嗜虐的に攻められると弱いドM。これだけの属性を、三、四時間で読み終わる短いシナリオ分量で、一人のキャラに盛り込もうとすれば結果は見えている。属性が追加されていくたびにもの凄い勢いで像がぶれていって、まったく印象が残っていない。公式サイトの紹介文に「この物語には『恋が人を変える瞬間』があります。」とかいう記述があったが、「人を変える」より「別人と化す」の方が近いと思う。
 残りの二人については、人を駄目にするおっぱいは逆に特徴がなさすぎてさっぱり印象が残っていない。まゆ毛はまだ、元気っ子かわいがられっ子ムードメーカーとして成立している。
 この作品はカップリング要素をえらく前面に押し出していた。公式サイトでも「カップリング」の文字が乱舞しているし、わざわざカップリングごとのコーナーを設けるという気合いの入りよう。しかし、それを売りにするなら、いっそキャラクターはこてこてな味付けでもよかったのではないかと思う。この作品には『ゆるゆり』や『東方Project』に感じるカップリングの面白さ、「もしあのキャラとこのキャラが絡んだらどうなるんだろう」「どんな空気になるんだろう」「どんな恋愛をするんだろう」という展開を想像させる要素や、いざそのシチュエーションが成立したときのわくわくがあまり感じられなかった。その根本の原因はやっぱり、描写不足または属性過多でキャラの軸が定まっていないからだろう。やっぱりカップリングの面白さいうのは、個性の強い人間同士がぶつかった結果のケミストリーであってだね。そこからその人の本質やコミュニティで担っている役割が透けて見えてくるのが楽しいわけだ。『きみはね』はそもそものキャラが浅すぎてにんともかんともである。ひらがな四字のゆるいタイトルや登場人物のあからさまなビジュアルから、どうしても萌え四コマ漫画を比較対象にしてしまうが、『けいおん』でも『らきすた』でも『ごちうさ』でも何でもいいけれど、その水準と照らし合わせても個性付けや役割付けが甘い。二馬身くらい差を付けられている。この作品のカップリングは、無色なキャラが出されたお題のシチュエーションをがんばってこなしているように私は感じてしまった。
 惜しむらくは予算の都合で削られたであろう日常描写や過去描写だね。

ゲーム性が浅い
「天使の目線で覗き見る少女たちの秘密」
「あなたの与えた小さなきっかけがドミノのように連鎖して、少女たちの関係を大きく変化させていきます。」
 公式サイトにこんな記述があったもんだて、神の視点のプレイヤーがあの子とあの子の仲を取り持つべく、『街』のようにイベントを発生させていってフラグを立てるゲームシステムなのかと思っていたが……カップリングはタイトルの選択肢(※ご丁寧にロックがかかっていて順番にしか選べません)を選んだ時点で決定しているじゃねぇか! いちおうゲーム中にも選択肢らしきもの、部屋に散らばっているキーアイテム二つのうち一つを選択する機会はあるが、分岐には一切関係ないだと!? ……プレイヤーが「きっかけ」を与える余地なんざほとんどないやんけ! 公式サイトに斯様な謳い文句を掲げるなら、せめて「ドミノ」の始まり、きっかけの事象として何を起こすかだけでも選ばせてほしかった。
 一応断っておくと、私は一貫して『ノベルゲームのゲーム性なんざどうでもいい』論者である。ただし読み物として面白ければ、という但し書きが付く。

最終シナリオが浅い
 最終シナリオで、天使なる存在についてと、彼女が今までのシナリオの裏でどんな動きをしていたのかが描写される。これがまた浅いのなんのって。解明編のルートなので、徹頭徹尾説明口調なのは目をつぶるとして、登場する用語や概念が既視感全開だ。私ぁもう可能性だの観測だの固定だの神のサイコロだのルーレットだのシュレディンガーの猫だの、聞き飽きたよ。飽きた飽きた。飽きた、という表現を使い飽きたくらい飽いているよ。そして怒濤の巻き展開。さあもうすぐ予算が尽きるぞと言わんばかりに、怒濤の勢いで設定テキストを読み上げてくる。何もそんなに急がなくてもというくらい、巻きでべらべらべらべら説明してくる。そして、あのかったるい本編に対してはずいぶんと頭でっかちな設定である。
 話の内容を精査すると、割と真面目に世界観を作り込んでいるのは伝わってくる。なのに本編はあのざまだし、ゲームデザインと乖離が生じている。もったいないにもほどがある。

衒学趣味のチョイスが浅い
 この作品の日常シーンはおおよそ日常系エロゲのフォーマットを踏襲している。掛け合いやモノローグで思わせぶりにサブカルへ言及して共謀感を生む手法は、ロミオや丸谷や丸戸やタカヒロなどの作品、百合枠で言えば『素晴らしき日々』などと同様だ。『すばひび』の名前を出したのは、あれの序章と同じくらい、この作品がかったるかったからだ(もっともあちらさんは、クソかったるくて都合がよいのが意味深なのだが)。
 この作品が言及しているのは主に映画と洋楽だが、該当箇所をいくつかピックアップしてみる。

(この歌の歌詞を訳してくれと言われて)

「意訳でいいよね? 君と過ごす一瞬一瞬が僕の宝物。だから永遠に一緒にいたい。ざくっとまとめればこんな歌詞。まぁラブソングだね」
「え、そんなロマンティックな歌だったの? あたしはてっきり、巨大隕石を爆破するぞー! がんばるぞー! って歌なんだとばかり」


(三人の中に天使がいるのでは? という流れで)

「ナイフで指を切って、その血をシャーレに取り、電極で熱すれば……」


 映画と洋楽に関してはクソにわかな自分でも元ネタが一瞬でわかってしまう。
 映画を一切見ない人、洋楽を一切聴かない人のために別のジャンルで例えると、へとへとになった女の子が「もう、ゴールしてもいいよね……」とつぶやくとか、悪魔の誘いや勧誘のシチュエーションで「僕と契約して○○○してよ!」と言うとか、急にこゆい顔になったキャラが「だが断る」と切って捨てる感じである。さぶいぼが立つ。
 別にボンジョビやエアロスミスを悪く言うつもりはないが、ネタのチョイスとしてはまるっきりセンスを感じない。

評価点
 寮長の正体に関するあれやこれや。野郎の正体が誰でも知っているあの人で、物語のかなり早いうちから登場していて、かつ最終シナリオにおけるクライマックスのあの一言だけでさらっと説明しくさったのはクールだった。
 百合作品としての安定感。愛がある。嫌な表現がほとんどなくて、安心して読めた。まゆ毛は女性同士の恋愛に抵抗があって、「そういう」だの「変なのかな」だのと実際に口に出すシーンもあったが、ホモフォビアでぐだぐだひっぱらないし(シナリオ自体は『ミカエルの乙女たち』チックな仲違いからのぐだぐだひっぱりがあるが)、最終的に出した答えもスッキリさせてくれた。そういえば、百合エロフィクションでそれを退治した主人公というのはあまりいなかったと思う。あえてケチをつけるなら、「旦那さんと奥さん」「父さんと母さん」という言葉が驚くほど頻出するのはちょっとひっかった。
 あとは、エロシーンで「ご奉仕」する方のキャラの、悪辣で心底楽しそうで、かつ相手を想うニュアンスもある絶妙な表情。あれはいい仕事をしていた。えろいっ。
 これくらいで打ち止めだ。

まとめ
 『ネコっかわいがり!』をやったほうがよいと思う。

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