2018年09月03日

素晴らしき日々~不連続存在~ 正史考察・解説

※以下、『素晴らしき日々~不連続存在~』のネタバレに一切考慮していない。
 この作品の正史(メインルート)における、主人公らを中心とした登場人物の行動をまとめている。

素晴らしき日々 ビックハザードこっちくんな

 人格間には認識のズレがあり、新しい由岐は記憶を捏造しているので怪しいところもちらほらある。
 佐奈実の血に死者の魂を吸い寄せる能力があることを前提とする。

 沢衣村の近隣にある村が廃村になる。村には死者の魂が集まるという佐奈伎神社があり、そこの娘である佐奈実琴美が、神道系古流柔術の流れを汲む間宮の家に引き取られる。
 琴美は古い価値観の残る村で気味悪がれ迫害されるが、間宮浩夫だけがそれをかばう。二人は次第に愛し合うようになり、東京に駆け落ちして結婚する。やがて二人の間に皆守が誕生する。

 浩夫が癌を患う。元々の持病のせいで病気が進んで衰弱する。
 琴美は浩夫を救いたい一心でカルト宗教「白蓮華協会」に入信する。教祖の白連太郎は琴美の持つ佐奈実の血と美貌に目をつけ、甘言で誑かす。救世主の話を真に受けた琴美は教祖と性交渉し、羽咲と卓司が生まれる。琴美に飽きた教祖は、子どもが双子だったので救世主の資格を失ったと言いがかりをつけ、琴美を捨てる。
 琴美は次第に精神を病んでいく。卓司と琴美による羽咲への虐待が続く。それを許せない皆守は二人に暴力を振るう。ある日、皆守が錯乱した母親に刃物で襲われるが、逆に負傷させてしまう。皆守は父親の実家がある沢衣村に移される。
 琴美は卓司を救世主として育てるべく英才教育を施し、2012年7月20日に世界は滅亡するので世界を空に還さなければならないと吹き込む。一方で躾として熱湯をかけたり風呂に沈めたりして虐待する。

 三年後、浩夫の癌が悪化し、検査入院のために羽咲も沢衣村に預けることに。
 間宮兄妹と由岐の交流。しばらくして浩夫が息を引き取る。
 浩夫の一年祭に琴美と卓司が村を訪れる。二人は羽咲たちを夜の山で襲う。由岐は突き飛ばされた羽咲をかばって墜落死。皆守はナイフを持った卓司ともみ合いになり、拍子で卓司の胸にナイフが付き刺さる。しかし、皆守は死の間際の卓司に取り憑かれてしまう。同時に由岐も皆守の身体に取り憑く。羽咲は身体と心に深い傷を負う。
 皆守は以後、自分を間宮卓司だと認識するようになってしまう。卓司の死が受けいれられない琴美も、皆守の学校関連の書類を間宮卓司の名前で提出する。

 由岐が目を覚ます。

 卓司は北校に入学した当初から城山、西村たちにいじめられる。その憂さ晴らしに北校SAWAYAKA掲示板を設立する。

 一年ほど前、卓司は城山たちに罰ゲームとしてざくろの制服を盗むよう命令される。それを着せられて嬲られているときに皆守が目を覚まし、城山たちを叩きのめして制服をざくろに返す。その一時間ほど後に由岐が現れ、自分内格闘で皆守をしごいた後に、自分たちの状況について説明する。
 皆守は不良たちから麻薬をカツアゲするが、そのことで卓司の名前が裏社会に知れわたる。

 ざくろが北校に編入してくる。めぐと聡子がいじめの標的を希実香から空気の読めないざくろに変える。
 めぐたちはC棟の屋上を彼氏との逢い引きといじめに使うために美術部を設立し、四人の数合わせのために希実香とざくろを入れて、瀬名川を名前だけの顧問にする。誰も来ない屋上でざくろへのいじめが続けられていたが、瀬名川は見て見ぬふりをする。
 ある時、聡子たちがざくろの希実香からもらった黒い人形を奪って投げ合い、それを取り戻そうとしたざくろが屋上から落ちる事故が起こる。ざくろは運良く三階のひさしにぶつかって体育館の屋根に落ち、軽傷で済む。瀬名川と学校は事故として処理してもみ消し、C棟は閉鎖される。

□2012/7/02
 卓司が秘密基地に漫画を持ち込もうとするが、旧プールの前で皆守に絡まれ自分内喧嘩で痛めつけられる。漫画を皆守に燃やされる。
 ざくろが城山たちから逃げている時に、火が上がっているのを見かけて旧プール前に来る。出会った卓司に匿ってもらい、現実逃避のために誘いに乗り、秘密基地も見せてもらう。秘密基地で割れの話を聞かされている時に我に返り、早々と帰る。眠気が襲ってきて皆守に交代。
【18:30過ぎ】
 皆守がバーでアルバイト。
【18:58】
 羽咲がバーに来店。

□2012/7/03
 卓司が一限から出席し、サボりで二限から秘密基地に篭もる。秘密基地のパソコンで、裏掲示板を瀬名川に紹介してもらった清川を承認する。眠気が襲ってきて皆守に交代。
 B棟屋上でさぼっているところに由岐が現れる。由岐は自分が切り離されつつあり、記憶の断片化が進んで羽咲や皆守を認識できなくなってきていることを語る。
 昼休みにざくろが屋上に来る。由岐が応対する。知的で人当たりがいい由岐に惹かれるざくろ。羽咲が弁当を届けに来る。
 卓司に交替。食糧の買い出しに行こうとして学校にいた羽咲(司と鏡)に話しかけられ、繁華街まで付いてこられるが冷たくあしらう。兄からうさぎの人形を貰った思い出話をされるが聞き流す。
 夕方、買い出し帰りの卓司が秘密基地の前でざくろに会うが、ざくろは由岐との雰囲気の違いに戸惑いすぐに帰ってしまう。
 秘密基地のソファに座ったところで眠気に襲われ由岐に交替、帰宅。
 家で皆守が目を覚ます。隠れていた羽咲が顔を出し、由岐と三人で談話する。温めなおしたご飯を食べる。
【22:01】
 ざくろの携帯に、いじめコミュニティーへの書き込みを見た宇佐見から意味深なメールが届く。「はじめまして……と言った方がいいでしょうか?」「たぶんあなたに大きな変化があると思います。それはたぶん良い事です。」

□2012/7/04
 ざくろが屋上で由岐と会話する。ますます彼女に惹かれる。
 ざくろが帰ったあとに皆守が目を覚ます。羽咲が弁当を届けに来る。由岐がうさぎのほつれを直す。
 羽咲はバーに出勤、皆守はそのまま授業を消化する。放課後に校舎裏で沼田たちから覚醒剤をカツアゲする。
 皆守はカツアゲの成果を公園の公衆便所に流したあとに、誰かに尾行されていることに気付き、横道で捕まえる。詰問するが、途中で腕時計に仕込まれたフラッシュを喰らい逃げられる。
 帰宅。羽咲のいないうちに思いっきりゲームをする予定だったが、ゲームを起動した直後にマスターの誕生日の準備が終わった(?)羽咲が帰宅する。下ネタで追い返そうとするが食いつかれ、結局ゲームには集中できずじまい。

□2012/7/05
 ざくろ、電車の中で由岐と出逢い、遊園地でデートすることに。その後バーで食事をし、ピアノも聞かせてもらう。
 演奏中に皆守が目を覚まし自分内会話。その後もざくろと軽妙な会話をしつつも、皆守とエロトークを繰り広げる由岐さん。
 デート後にそのままバイト。羽咲とマスターと四人でオナヌーや萌えについて語る。
 三人で帰路につく。由岐は自分内会話で、記憶の連続性を保ち、意識が途切れないよう、出来事を明確に記憶できるよう努力していることを語る。
 三人で川の字になって眠る。誰に欲情するかしないかで揉める。

□2012/7/06
 皆守が授業を受けるが、羽咲が弁当を届けにきて慌てる。言い争っているところに美羽が話に入ってくる。皆守は羽咲が教室に入れるように、美羽がドアを開けてくれていたことを知る。また間宮卓司がクラスで意外に受けいれられていることに驚く。
 皆守は杉ノ宮までの道で尾行者に気付き、再び路地裏で待ち受ける。あっさり捕まってカメラを粉砕される木村。卓司の身辺を洗い、白蓮華協会教祖の隠し子であることをつきとめたと白状する。木村は前回と同じく目を眩ませて皆守を振り切る。
 皆守がバーに出勤。マスターの策略にはまって女装させられる。
 帰宅。身体を洗いながら、卓司の存在感が強くなっているのを考えている時に由岐が出現。無意識にいるときや人格として存在しないときに、皆守や卓司の考えが聞こえるようになったと語る。その後羽咲が乱入してきてカオス空間に。
 のぼせた羽咲をベッドに運ぶ。皆守はその後四日間の眠りにつく。

□2012/7/08
 めぐたちが小遣い稼ぎにざくろと希実香でAVを撮るとする。希実香はざくろを助けようと立ち向かうも、城山たちに囲まれて敗北。ざくろは騙されてクスリを使ってしまい、気分がよくなっているところを撮られてしまう。
【23:10】
 ざくろは途方に暮れ、宇佐美をうさんくさく思いつつもメールに返信する。「はじめまして、私はチェシャ猫です。」「少し気になったんですが……私に起こる大きな変化とはなんでしょうか?」

□2012/7/09
 希実香は怪我で欠席。
 ざくろへのいじめが続く。ざくろは帰り道にめぐたちに集団で襲われ、ホテルで輪姦された後放置される。
【23:01】
 ざくろの携帯に宇佐見からの返信が届く。「間違いなくあなたはわたしたちの仲間です。」「近いうちにあなたを悩ましていた問題が一つ消え去ります。」
 深夜に聡子とめぐみが壊れはじめたざくろについて掲示板の「めぐとさとこの仲良しスレ」スレッドに書き込む。「なんか壊れたんじゃないの」「マジバレたら、停学とかじゃすまないかも」

□2012/7/10
 ざくろがドラッグの影響とレイプのショックから幻覚を見はじめる。秘密基地で「ビッチ死ね」という落書きを見たときのショックがフラッシュバックする。
 卓司は秘密基地に顔を出さないざくろのことが気になり、北校裏掲示板で「めぐとさとこの仲良しスレ」スレッドを調べる。
 ざくろに何かがあったのを知った卓司は教室に向かう。ちょうど皆守が目を覚まし、強くなる卓司の存在を消そうと必死に痛めつける。(意識が途切れるときに聞いた「また……殺す気なの?」は無意識にいた由岐のつぶやき)
 卓司は授業が始まったので秘密基地に戻るが、屋上で神の幻覚を見ているざくろの姿を見る。屋上に向かうがざくろとは入れ違いになり、代わりに城山たちがフェンスを乗り越えてクスリを使っている姿を目撃する。引き返す途中で羽咲(鏡と司)に出会うが、冷たくスルーする。
 城山はハイになって屋上のふちでけんすいしているときに手を滑らせて転落死する。卓司はそれを知ることなく秘密基地に戻り、誰かと交替する。
【12:52】
 ざくろが宇佐美からメールを受信。「あなたが苦しいのは、あなたの存在が正しいからにすぎません。」「近いうちにあなたを悩ましていた問題が一つ消え去ります。」 ※あとで時系列を修正
 卓司が秘密基地のソファで就寝。
 ざくろは城山が死んだことで宇佐見のメールを信用し、返信をする。

□2012/7/11
【00:20】
 ざくろが裏掲示板の「転落事故について語るスレ」にコテハンで書き込む。「彼が死ぬのは必然。」
 名無したちから総スカンを食らう。「マジお前自重。」「てめぇが殺したんだろ」
【01:50】
 ざくろが同スレッドに書き込み。「彼が死ぬのは始まりでしかない。」
【02:00】
 ざくろが同様に書き込み。「だって……これって予言通りなのだから……。」
 ざくろ、駅前で宇佐見と亜由美に会う。完全に正常な判断力を失っていたざくろは、二人を前世の仲間だと信じ切り、彼女らと力を取りもどすための儀式「スパイラルマタイ」を行うことを決心する。
【22:02】
 ざくろが裏掲示板に「ビックハザードが来ます。」のスレッドを立てる。「なぜならば、アザはもうすぐに目覚めるからです。ビックハザードが来るんです。」
 しばらくビックハザードをバカにするやりとりが続く。「ビックハザードこっちくんな」「ワロタ」「こ っ ち く んな」
【22:17】
 ざくろが書き込み。「ふざけないでください!」

□2012/7/12
【00:01】
 ざくろが宇佐美からメールを受信。「水臭いですよ、前世からの仲間に対して!」「明日は6時半に杉ノ宮駅の西口改札口としましょう。」
【08:01】
 ざくろが宇佐美からメールを受信。「今日ですね。スパイラルマタイ!」「がんばりましょう。世界の命運は私たちに掛かっているのですから!」
【09:02】
 ざくろが「ビックハザードが来ます。」のスレッドに最後の書き込みをする。「もうすぐにビックハザードが来ます!」
 卓司が杉ノ宮駅前でアニメ声優のCDと本を買う。デパートの屋上で眠ったところで新しい由岐と交替する。新しい由岐はタワレコファンでお気に入りのバンドの新譜を買ったと認識しているが、これは由岐が後で記憶に不整合が起きるようにわざとCDを買った記憶を残しておいたため。
 夕方、新しい由岐は駅前でスパイラルマタイ決行前のざくろに出会い、話をしたあとにキスをされる。意識が残っていて、それを俯瞰視点で見ていた卓司は嫌な予感がして、一度電車に乗るも駅前に引き返す。
【18:42】
 ざくろと宇佐美と亜由美が駅前で落ち合い、駅近くのマンションの屋上からスパイラルマタイという名の集団飛び降り自殺をする。ざくろを追ってきていた卓司は自殺の現場に鉢合わせし、ざくろの霊が皆守たちの身体に取り憑いてしまう。(ここでざくろが皆守たちの身体と激突した場合はDown the Rabbit-HoleⅠに分岐)
 卓司はざくろの携帯で救急車を呼び、現場の写真を撮ったあと、混乱して携帯を持ったまま逃げ出してしまう。
 卓司は秘密基地に籠もり、気持ちを落ち着けるために『魔法少女リルル』の漫画とアニメを見るが、ざくろの霊の影響で彼女が最後に見た映像とごっちゃになった幻覚に襲われる。ざくろの死体に絡みつかれたところで意識を失う。
【19:02】
 瀬名川が高島メールに返信。「なんのいたずらですか? 高島さんのメールを装って不謹慎すぎます」 ※Down the Rabbit-Holeより、まだ高島メールが始まっていないので日付誤り?
【22:30】
 皆守が二日ぶりに目を覚ます。秘密基地を出たところで声優のCDを持っていることに気付きぞっとするが、由岐の物であることを考えて捨てずに持ちかえる。
【22:44】(Down the Rabbit-Holeでざくろがこの時間にメールを送信している)
 皆守の身体に取り憑いていたざくろの霊が、学校裏掲示板の登録情報を使って、自分の携帯でメールを死体の画像付きで一斉送信する。「わたしはしぬ事によりせんしとしてうまれかわりました のはずですが いたいです みんなしにます 8にちごにしにます ぜんいんかならずしにます」(ざくろが戦士に生まれかわるために飛び降りたことを知っているのは本人だけ)
【22:52】
 ざくろのメールを受信した誰かが裏掲示板に「なんかキタんですけど(lll▽ ̄)」コワヒ~」スレッドを立てる。スレは自分にもメールが来たという書き込みであふれかえる。
 新しい由岐が帰宅。買ってきた新譜を聴こうとしてアニメのCDであることに驚く。皆守は自分を認識できない新しい由岐の姿に涙を流す。
 由岐は記憶の不整合で存在に亀裂が入り、かろうじて連続性を取りもどす。皆守を抱きしめる。
 皆守と由岐で作戦会議を行う。由岐は切り離されている間も、卓司に衝撃を与えた事件についての調査を出来るよう心構えをする。お互いに情報交換できるように、自室のノートにメモを取ることを決める。

□2012/7/13
【01:40】
 聡子が「なんかキタんですけど(lll▽ ̄)」コワヒ~」スレッドに書き込む。「あのメール本当に高島ざくろのものだと思う……。アドレスが携帯に入ってるから分かる」
【01:42】
 めぐがスレッドに返信する。「あれ間違いなく高島のメールだよ。あの子が持っていた携帯のカメラの写りと同じだもん。」

 自室で卓司が目を覚ます。皆守が羽咲に起こされる。羽咲が持ったお盆で朝食を食べながら登校する。「俺が嘘言ったことがあるか? でも、この約束は絶対だ」
 羽咲と別れて校門をくぐろうとしたところで意識下に引っ張られそうになる。由岐に話を聞いてた皆守はすんでの所で踏みとどまるが、新しい由岐の認識に支配されかけて混乱する。
 教室に入るとクラスが異様にざわついている。美羽に「今日も可愛い二人連れてるね」と褒められる。クラスメイトの女子からざくろの自殺について聞かされる。
 HRが始まり、清川からもざくろの自殺を告げられたところで、今度は卓司の認識に襲われる。皆守は卓司の世界にチューニングを合わせて、彼を消滅させようと徹底的にいたぶる。蹴り飛ばそうとしたところで完全に意識化に引き込まれ、その際に封印した記憶の一部を見る。
 卓司に交替し、物理の授業を受ける。混乱した精神状態からざくろは自分に助けを求めていたというメッセージを受け取る。休み時間に羽咲と出会ったところで意識が途切れて新しい由岐に交替。※時系列があいまい
 一限の終了後、新しい由岐は屋上でサボうろうとして彩名と出逢う。『空飛ぶ二十面相』と『純粋理性批判』を読んで雑談。
 何の気無しに3組の教室に入ると、瀬名川に声を掛けられる。瀬名川は由岐(卓司)から自殺する直前のざくろと会ったことを伝えられて取り乱す。(死の直前に自分の名前を出していなかったかびびっていた)
 卓司に交替。3組の教室でざくろの机を見つけ、机を彼女に見立ててセックスする。射精後に机を調べて、落書きの中に「2012年7月20日……世界が終わる」を見つけて衝撃を受ける(琴美に刷り込まれてた予言の内容と一致していたため)。「スパイラルマタイ」「アタマリバース」
 卓司は混乱しながら秘密基地に行き、入り口で頭痛を堪えながら新しい由岐と会話する。「というか……どこから出てきたのかね……」
 由岐から逃げて地下に入るが、貯水タンクで彩名に出会して会話する。「人は……誰一人として、経験としての死を迎える事は出来ない」「死を想像しないものは、永遠の相を生きる」
 彩名が消えた後、拾って放置していたテレビにざくろたちの幻覚が映り、さらに壁に描いたリルルの落書きに話しかけられる。校外で怪物(ショゴス)やざくろの死体に襲われるビジョンや、胎児の夢を見せられる。「卓司くんは救世主になるため生まれてきたんじゃないのかな?」「卓司くんの兆しを……」「至らせるために……」「終ノ空」「それは……世界が空に還る時」
 由岐に交替し、羽咲と一緒に帰宅する。家の前で卓司と会話。
 希実香が多くの人間に償いをさせるために、掲示板にざくろのメールに関するスレッドを立てて恐怖を煽る。一連の事件はざくろの呪いで、全ての人間がざくろの呪いで死ぬと主張する。

□2012/7/14
 卓司が新校舎の下で目を覚まし、ポケットにざくろの携帯が入っていることに気付く。ざくろのことを知るためにメールをチェックし、宇佐美たちとのやりとりを知る。秘密基地のパソコンで聡子とめぐのスレッドをさらに調べ、ざくろが屋上から転落した事件の詳細や瀬名川がいじめを黙認していたことを知る。携帯に付いたストラップの紐を調べようとして、髪の毛と肉片であることに気付いて回収する。
 卓司は取り憑いたざくろの霊と琴美の狂信的な教育のフラッシュバックが影響して精神を病んでいく。母と世界の石を曲解して救世主としての使命に目覚める。世界が自分の思い通りになると強く信じることで、由岐や皆守に対しての支配力が強くなる。
 卓司がざくろの携帯を使い、前回送ったメールと同じ文面で裏掲示板の登録者宛に15:33に予約送信する。「わたしはしぬ事によりせんしとしてうまれかわりました のはずですが いたいです みんなしにます 6にちごにしにます ぜんいんかならずしにます」
 ※この後に授業に出席するのでたぶん予約送信
 めぐ、聡子、瀬名川にメールを18:01に予約送信する。「いたいいたい いたい いたいいたいいたいいたい」
以後一時間ごとに同様のメールを送信するよう設定する。
 卓司がクラスに行くと、裏掲示板から伝播したWeb Bot Projectや七月二十日に世界が終わるという不穏な噂で盛り上がっている。
 丸一日意識が飛んでいた皆守が目を覚ます。皆守は卓司に必死で絡んで二十万を請求するが卓司は動じない。西村たちは卓司に二十万あげると言われたかと思えば独り占めすると凄まれたりで混乱する。
 卓司は皆守を屋上へ連れ出す。皆守は自信に満ちた卓司、死と隣り合わせの場所という沢衣村の時と似たシチュエーションに不安を感じる。屋上での自分内喧嘩。皆守は不安を隠すために大見得を切るが、皆守の合気道の経験を使った卓司に返り討ちにされてしまう。
 新しい由岐に交替し、羽咲(鏡と司)と屋上で弁当を食べる。学校の裏掲示板や、ざくろが死んだのは7月20日の世界滅亡に備えるためという話を聞く。ざくろや城山の死について調査を開始する。
 新しい由岐が教室で潔にフリーメールのアドレスを渡し、裏掲示板のアドレスなどを教えることと紹介者になることを頼む。代わりに合コンに参加ことを承諾。
 ざくろのことを調べるために3組の教室に向かう途中でやす子に会う。世界が今月の20日に滅びるのか、世界の終わりが近付いているのは本当なのか聞かれ、携帯に届いたざくろのメールを見せられる。メールは撮影者の影が映っていることなどからいたずらだと説明し、近い将来に滅びることもあり得ないと言う。
 3組の教室で、探偵セットを使ってざくろの机を調べる。「アタマリバース」「ハル・メキド」
 かすれた部分を微細アルミニウムで浮き上がらせて「間宮くん」を解読し、ついでに机に付いていた指紋(昨日自分が付けた間宮皆守の指紋)を採取しておく。その様子を意識が残っている卓司が目撃する。(机の中にあったぬるぬるしたものは、昨日射精した自分の精液)
 卓司を探しに屋上へ行き、彩名と会う。「ご精が出ますねぇ」「はい、精液出しまくりです。水上さんに合わせてみました」
 旧プールに向かい、卓司と新しい由岐が会話する。新しい由岐は卓司に心を読まれたと思って恐怖を感じる。卓司は救世主の能力だと勘違いする。
 卓司、旧プールの下で音無と会話中に気を失う。リルルちゃんとの会話。
 新しい由岐に交替して帰宅。家の前で卓司と自分内会話。「君は体の人なんだ。ボクみたいに理を学ばなければならない。高次元の認識に向かい! 上りたまえ!」
 自宅のパソコンで潔からのメールを受け取り、裏掲示板への参加を申請する。しばたかついえ、生年月日は大永2年の487歳。

□2012/7/15
 SAWAYAKA掲示板の登録者にメールが届く。「あたまからちをながします ひとがまたあたまからちをながしてたおれます」※
 卓司が家のパソコンでSAWAYAKA掲示板を見る。新しい由岐の申請を承認する(自分が出した申請を自分で承認している)。
 卓司はざくろ事件の責任者である瀬名川を救世主のための生け贄にすることを考える。ざくろの携帯を使って予言のメールを出す。あたまがちだらけになります。きょうまたちがとびちります。
 卓司が登校。新しい由岐は遅刻して三限の終わりに登校したと認識。
 クラスでは昨日と打って変わって、誰もざくろの自殺や世界の終わりを話題にしない。羽咲が学校に来る。
 卓司がクラスの皆が不安になるような発言をする。4限の授業で、卓司が自分を注意した世界史の飯田を花瓶で殴り、予定とは違うが予言を成立させる。
 卓司が演説する。城山と高島は自分が救世主に生まれかわるために神が生け贄にした。世界はあと五日で終わる。救われない者は永遠に地獄の業火で焼かれる。次いで三つの予言をする。もう一つの死によって死の濃度はさらに明言される。多くの者がその死をもう一度目撃する。死者はすべての終局を語る。隣のクラスでは希実香と清川がその演説を聞いている。
 卓司は教室を飛びだし、秘密基地の前で希実香に出くわす。希実香は卓司がざくろの呪いを終わらせるつもりなら、ナイフで殺す算段だったが、瀬名川が死ぬ運命にあることを聞いて思い留める。その後も希実香の演技を交えた瀬踏みは続き、聡子とめぐのことは承伏しかねるが結局卓司の手下になる。
 希実香が瀬名川の監視を開始する。
【11:23】
 卓司がめぐと聡子を釣るために、本名で裏掲示板に「救われる者と救われない者」というスレッドを立てる。「私は、今ここに立っている。救世主として。」「今こそ、救われる者と救われない者はふるいにかけられるであろう。」
 屋上でリルル大戦を目撃する。
【15:30】
 新しい由岐が屋上で彩名と会話。「人はなぜ……いろんなものを隠そうとするんだろう……」「……世界には何人の魂があれば足りるか……」
 帰宅してメールをチェックし、北校SAWAYAKA掲示板の会員登録完了メールを受信する。掲示板で「救われる者と救われない者」スレッドを開き、卓司がバカにされているのを見てほっとする。「警察に通報しまつた。」
 新しい由岐は古いスレッドを探り、「ビックハザードが来ます。」「なんかキタんですけど(lll▽ ̄)」コワヒ~」を読む。「なんかキタんですけど」のレスに張られていたURLをクリックして、新白蓮華教会Webbot研究所(羽咲と琴美の家)のサイトにアクセスする。所在地をプリントアウトしておく。
【21:01】※送信者は希実香?
 瀬名川宛に高島メール。「あのときちゃんとみてたのに なにもしなかった」
【21:06】
 瀬名川が高島メールに返信。「違います。私は本当に知らなかったんです 赤坂さんと北見さんが部活で写生のため屋上使うから 私は鍵を用務員さんからあずかっていただけなんです」
【22:01】
 瀬名川宛に高島メール。「しーとうでいつもいじめられてたのを しってたはず」
【22:08】
 瀬名川が高島メールに返信。「そこでイジメが行われたなんて本当に知らなかったんです。ごめんなさい高島さん」
【23:01】
 瀬名川宛に高島メール。「おくじょうからわたしのにんぎようすてられた あれがないとわたし じょうぶつできない」
【23:09】
 瀬名川が高島メールに返信。「本当に先生は知らなかったんです。人形は明日必ず先生が調べますから。」
【23:13】
 めぐと聡子が、裏掲示板の「救われる者と救われない者」スレッドで卓司に対してざくろの呪いを止めるよう書き込む。
 卓司が意識を失っている間に、由岐が皆守を意識化から引っ張り出す。皆守は卓司に勝って羽咲を守るために、明晰夢についての訓練を受けることに。結果、世界が思い通りになることを疑わない卓司から、イニシアチブを奪う力を身につける。由岐は目が覚めたら最終決戦の場になっていると予言したが、皆守は強い意志で、その前に羽咲に会うと宣言する。※

□2012/7/16
【01:01】
 瀬名川宛に高島メール。「くろいにんぎょう わたしのくろいにんぎょう」
【01:37】
 卓司はめぐと聡子に、ざくろの自殺現場に髪の毛の束が落ちているはずだ、それを持ち帰れと命令し、自転車で先回りして携帯にへばり付いていたざくろの遺髪を置く。
【02:01】
 瀬名川宛に高島メール。「すてられたにんぎょうがさむいっていってる わたしといっしょにかえるの」
【02:16】
 二人がざくろの髪の毛の束を拾う。
 意識が途切れた卓司に変わり、希実香が遺髪を焼くように指示を出し、それから呪いのメールの配信を止める。
【03:01】
 瀬名川宛に高島メール。「わたしはにんぎょうをつれいか おまえつれいく」【05:01】「いっしょにきて」
【05:05】
 めぐと聡子がスレッドにメールが止まったことを書き込む。多くの人間が卓司の能力を信じるようになる。
【06:01】
 瀬名川宛に高島メール。「いっしょにいきたいのでこれからいきます」
【06:06】
 瀬名川が高島メールに返信。「だめ部屋にはこないで、お願い。すぐに人形さがしにいくから。」
【07:00】
 瀬名川宛に高島メール。「せっかくあなたのへやにきたのに なんでいない?」
【07:09】
 瀬名川が高島メールに返信。「忘れ物箱探したけどなかったみたい。でも、もう少ししたら用務員さんが来るから、そしたら人形の事きいてあげるから」
【08:03】
 瀬名川宛に高島メール。「わたしからだない からだこわれた にんぎょうか あなたがひつよう」【09:02】「からだないからだない からだこわれた」
【09:20】
 新しい高島メール。「またしにます おくじょうからなかにわです あとすこしでほんとうにおわりです」
 卓司が登校すると、秘密基地の前に人だかりができている。卓司は信じる者は救われる、救いたい者は誰でもここに連れてきていい、ただし一人でも自分を信じないなら誰も助からないと伝える。(やす子が「卓司が予言なんて成立しないと言っていた」と語るが、そう言っていたのは新しい由岐)
 希実香がホワイトマターで出来た服を卓司に渡す(卓司はリルルちゃんだと認識)。
【10:02】
 瀬名川宛に高島メール。「どこにいるの? わたしはおまえひつよう いっしょいけ」【11:01】「いたい」【12:04】「いたいからだいたい」【13:01】「わたししっぱい うでおれて のうでて いたい」
【12時過ぎ】
 新しい由岐に交替。電車で新白蓮華教会Webbot研究所に行き、アパートの部屋の入り口で羽咲と鉢合わせる。「今……誰ですかっ」
 部屋に招かれて、新白蓮華教会と白蓮華教会の関係や家族に起きた不幸について聞く。この時、木村は押入れに隠れている。
 胸騒ぎがして学校に帰ると、生徒の気配がしない。教室で自分の机を調べる希実香と出会し、捕まえようとするがナイフとフラッシュを使われて取り逃がす。
【14:03】
 瀬名川宛に高島メール。「ちがあるくとでて さむい さむいよ」
【15:01】
「ろうかですがたみた? すぐにいくよ」
【16:02】
「ろうかですがたみた? すぐにいくよ」
【17:01】
「いましょくいんしつでしゃがんでる あなたみてる」
【17:08】
 瀬名川が高島メールに返信。「もしかしたらまだC棟の屋上に残ってるかもあそこのひさしとかに引っかかってるかもしれないから先生見てきてあげるから」
 瀬名川は用務員室に行き、鍵を借りてC棟に向かう。
【17:58】(Down the Rabbit-Holeでざくろがこの時間にぬいぐるみを落としている)
 瀬名川は屋上のフェンスの向こうに置かれた人形を拾おうとするが、そこで高島メールを受信。「あなたのうしろ ほらつかまえた」
 瀬名川は恐怖で屋上から墜落する。新しい由岐がちょうど墜落した彼女と鉢合わせる。(瀬名川が「ま、まみぃ」と呟いたのは、まさに目の前に間宮卓司がいたから)
 新しい由岐が瀬名川の携帯を使って救急車を呼ぶが、いつの間にか近付いていた希実香に携帯を奪われる。
 職員室に向かおうとしたところで卓司に交替。気付くと既に瀬名川が死んでいる。
 卓司はヤクザから麻薬を強奪するよう生徒たちに命令する。(めぐたちが城山と3Pしたことを知っていたのは、城山の死の直前に屋上でその話を聞いていたから)
 希実香はやす子がリルルちゃんのポスターを買いに行くのに同行する。
 希実香らが清川を連れて帰ってくる。めぐたちが収穫のクスリとヤクザに刺された西村を連れてくる。
 卓司が西村に施したいんちき治療と演説で、信者がさらにエキサイトする(おそらくこの時既に希実香がクスリをばらまいている)。
 新しい由岐に交替して帰宅。パソコンに高島メールが届いている。「またしにます おくじょうからなかにわです あとすこしでほんとうにおわりです」
 北校SAWAYAKA掲示板で「高島メール総合」「救われる者と救われない者3」スレッドをチェック。

□2012/7/17
 新しい由岐が登校して教室で清川に会う。「あ、あの……名前確認して良いかしら?」
 清川が職員室に呼び出された際に、彼女の鞄の中に希実香に奪われた瀬名川の携帯があることに気付き、奪って帰宅する。
 瀬名川の携帯に入っているメールをチェック。彼女が高島メールに誘導されてC棟の屋上から落ちたことを知る。アドレス帳にざくろが登録されているので、試しに電話を掛けると、机の引き出しの中にあるざくろの携帯が震える。驚いた新しい由岐は、机の上にあった探偵セットの微細アルミニウムをこぼす。ざくろの机にあった指紋(卓司が付けたもの)と部屋中にある間宮皆守の指紋が同一であることに気付き、ざくろかその関係者が部屋に入って携帯を置いたと勘違いして動転する。
 部屋に入ってきた羽咲のことを黒い影と認識し、意識を失う。 ※羽咲であってる?

□2012/7/18
 早朝、新しい由岐が羽咲から逃げるように屋上に行き、彩名と会話する。「人は隠したものをすぐにまた掘り返す」「逃れるために隠すのではなく……その甘美なものとより深く戯れるために隠す……」「最後に見たものを……次に会った時に……教えて……」
 卓司がふたなりの彩名をレイプする夢を見る。彩名の魂に触れようとした卓司は同一性にひびが入ってしまう。
 新しい由岐が目を覚まし、気力を取り戻す。財布がないため教室の自分の机に仕込んだ五百円玉を回収しようとするが、若槻姉妹の机に一昨日の教科書が入れっぱなしであることに気付く。 ※本当は誰の机だ
 帰宅途中に若槻家(長谷川さん家)の部屋にカーテンが掛かったままなことに気付く。自室でざくろの携帯に指紋が残っているのに思い至り、指紋の採集セットを使って、五つの指紋のうち二つはざくろの机で採取したものと一致するのを確認する。※ざくろ、清川、希実香、間宮皆守であと一つは?
 新しい由岐が、卓司が姿を消していた旧プールに向かう。マンホールから下水と排水タンクを経由して新校舎の土台のスペースに着き、切り刻まれた鏡(うさぎのぬいぐるみ)と羽咲を発見する。羽咲と共にぬいぐるみを背負って長谷川さん家に届けるが、困惑される。

【22:30】
 皆守が強い意志で身体の主導権を奪い返す。

□2012/7/18
【00:00】
 新しい由岐が校門前で彩名と会う。彩名に新プールの土台下スペースに連れられ、ぬいぐるみの綿と卓司が柱に描いたリルルちゃんの絵を目にする。
 建築時に使われたハシゴからC棟の屋上に出る。 ※本当にあったことか?
 希実香が屋上から飛び降りる。

□メモ
 卓司は父は胃ガンで死に、母親も死んだと認識している。親戚のおじさんが癌で死んだ時に立ち会ったと言っているが、父親である浩夫の死の記憶を改変している?

2010/03/30
 新規作成
2018/09/03
 随時更新中

素晴らしき日々~不連続存在~ レビュー・感想 幸福、幸福ってなんだ?
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tags: 考察 
2018年05月22日

バーチャルYouTuberに学ぶトーク力・コミュニケーションスキル(ニコニコ超会議2018) 後編

前編(ミライアカリ・樋口楓)
中編(ねこます・のらきゃっと)
後編(月ノ美兎・ばあちゃる)

企画:バーチャルYouTu"BAR" | ニコニコ超会議2018 公式サイト


月ノ美兎

【美兎】
はいそれでは次の方どうぞ
はい、お名前を聞かせてください
【相談者】
あっ○○って言います
【美兎】
○○さん? 気を付け、着席、うふふふふふ
気持ちがいいですね~
【相談者】
はい、どうも
【美兎】
○○さん、こんにちは、はじめまして
【相談者】
はじめまして
【美兎】
お悩み聞かせていただいてもいいですか
【相談者】
まあお互い肩の力でも抜いてお話ししましょう
【美兎】
はいっ、リラックスリラックス
【相談者】
えっとですね、自分、よく映画を観るんですよ
【美兎】
はいはいはい
【相談者】
僕、サメ映画が好きで、よく観るんですけど
よく周りの方にね、お勧めするんですよ
【美兎】
何を?
【相談者】
えっと……『シャークネード』
【美兎】
あっ出た、くはははは……
わたくしも……そうですね
【相談者】
で、それを勧めると、たいがい友だちに「あーそれクソ映画だから、見ねぇよ~」って言われるんですよ
【美兎】
あ~、はいはいはいはいはいはい
【相談者】
んで僕思うんですよ、委員長、あの、クソ映画ってそもそも何なんですかと
【美兎】
あっなるほどね、あのね、クソ映画でも笑って見られるなら神映画ですよ
その、私もその題名をね、よく観ろ観ろと言われるんですけど
たぶん観ないでクソ映画認定している人、たくさんいますから
【相談者】
そうですよね
【美兎】
一回観てみろと
あの『時計仕掛けのオレンジ』って観たことありますか?
【相談者】
あ~ありますよね、観てないですけど
【美兎】
それみたいな感じで、椅子で拘束させて、あの目ん玉かっぴらくあの機械とか用意して、あの定期的に目薬差してあげたりして
無理やりその『シャークトルネード』、見せてあげてください
【相談者】
いいですね~
【美兎】
エッヘヘッヘヘ
【相談者】
じゃあ、見てるであろう僕の友だちにね……
【美兎】
うん、あっいるの?
【相談者】
見てると思いますよ
【美兎】
あー本当に? あははは
【相談者】
見るって言ってたんで……じゃあ、お前は今度、覚悟しとけよ!
【美兎】
ブハハハハ! そうですよ、あの、この人の出す料理には気を付けて下さいね
【相談者】
うはははははは!
【美兎】
睡眠薬とか盛られてるかもしれないですから
【相談者】
がっつり、入れてやりますよ
【美兎】
がっつりね、致死量入れてあげて……
【相談者】
わはは!
【美兎】
これ、殺人教唆みたいになる……ありがとうございました!
【相談者】
ありがとうございました!


 やっぱり委員長のトークは面白いなぁ。ぶっつけ本番のトークで作品の一場面をわかりやすく引用しつつ愉快な話に持っていくのは相当語り慣れていないとできない。有名映画を引っ張ってきたのも、相談者が映画好きというのを受けての適切な返しだろう。生成されるパワーワードの訴求力、適度に横道に逸れて語られるサブカルトークやエピソードの面白おかしさ、最終的にもっともらしく話を仕上げる構成力はVtuber界でも随一だと思う。
 ちなみに、私が委員長の数ある資質のうち最も突出していると思うのは、不測の事態に出くわした時の爆発力だ。それが顕著に表れていたのが、このお悩み相談が終わった後、幕間のインタビューでのでろーんも巻き込んだハプニングでの機転なのだが、後でちょっとだけ語る。

【美兎】
じゃあ次の方、お名前をお願いいたします
【相談者】
○○と言います
【美兎】
○○さん? では気を付け、着席! うふふふ
【相談者】
よろしゃす
【美兎】
○○さん、顔バレ対策がばっちりですね えへへ
【相談者】
そうです、あの~、バイトを始めようと思いまして
【美兎】
サイト?
【相談者】
バイトです
【美兎】
バイト? はいはいはい
【相談者】
委員長さん、あの高校生ですけどバイト経験豊富と言うことで
【美兎】
はいはいはいはい
【相談者】
あの~工場勤務以外で何かお勧めのバイトとか教えてほしいんですけど
【美兎】
あ~なるほど、お勧めのバイトですね? なんだろうな
なんかけっこうわたくしはね、あの~すごいインドア派で身体を動かすの苦手なんですけど
【相談者】
はい
【美兎】
でもね、なんか身体動かす系のやつ意外と時間がすっごい長く、あの早く流れて
たぶん工場勤務の後にやったからだと思うんですけど
【相談者】
ふふふ
【美兎】
そう、意外と忙しい仕事ってどんどんどんどん時間が早く過ぎていくから
【相談者】
あーそうですね
【美兎】
そういう方がわたくし精神的苦痛にならなくてね、割りと向いていたんですよ
だから、あっ引っ越しとかどうですか? 引っ越し
【相談者】
あ~……そうですね
【美兎】
そうあの、なんか人の家の中入って、いろいろプライベートとか見れるらしいんですよ
【相談者】
はい
【美兎】
うふふふふふ……
【相談者】
それ、楽しそうですね
【美兎】
そう! すごい楽しいって引っ越しバイトの友だちが言ってたから
そうそうそうそう……そうあの筋肉も付くし、あの人間観察もできるし、
そう人の家の中土足でずかずか上がり込んでこれるっていう快感がね
【相談者】
あはははははは
【美兎】
目覚められるかもしれないので、わたくしそれお勧めしておきます
【相談者】
あっ、や……ってみます
【美兎】
はい! ありがとうございます
【相談者】
最後に一つ、いいですか
【美兎】
うん?
【相談者】
委員長、好きです
【美兎】
あらー!? ありがとう、ありがとうございます


 それと、委員長の話で特徴的なのが、友人のエピソードや聞かせてもらった話を効果的に引用しているところ。上掲の回とか、ポイフルの布教の回はそうだね。この人の話題の引き出しが多いのは、自身が好奇心旺盛な上にアクティブなおかげで生活しながら話のタネを集めているのに加えて、友人や家族との会話から仕入れている情報もまた多いからだろう。当たり前田のクラッカーだが、話が面白い人というのはだいたい友だちの数が多くて幅が広い。委員長に関してはリスナーのコメントもみとらじのハガキ職人もレベルが高いし、面白い人の周りに面白い人が集まる好循環を維持しているように見える。

ばあちゃる

【ばあちゃる】
ハイじゃあ次の方どうぞ~、ハイハイ、ハイハイ
【相談者】
あっ○○と申します
【ばあちゃる】
あっ○○○○、よろしくね○○、○○大好きだよ
ハイハイ、ハイ
【相談者】
えっと僕、トーク力がめっちゃほしくてですねぇ
【ばあちゃる】
ハイハイ
【相談者】
ばあちゃるさんとか、他のVtuberさんの動画を見させていただいて参考にさせてもらってるんですけど
【ばあちゃる】
あーああー、まじか
【相談者】
あのもうぜひちょっと、この機会にですね
【ばあちゃる】
はいはい
【相談者】
まああのトーク力の化け物、トーク力の化身と言われたばあちゃるさんに
【ばあちゃる】
はいはい
【相談者】
トーク力アップの極意をご教授いただけたらなと
【ばあちゃる】
はいはいはい、はいはいはい
えっとですねばあちゃるくんはですね、トーク力ねほんとにね
とんでもなく語彙力ないしひどいっていうのでたくさん言われるんですけど
【相談者】
ははっ
【ばあちゃる】
一つだけあのね重要なのはね、トーク力ね、あのなんつの、ノリだと思うんですよね
ノリだとね、もうねもうこの段階からウワーッとやってみましょう一緒にね
【相談者】
はい
【ばあちゃる】
いきますよせーの
ハーイハイハイハイハイ、ハーイハイハイハイハイ
【相談者】
ハーイハイハイハイハイ、ハーイハイハイハイハイ
【ばあちゃる】
そうそうそう、で顔も揺らす顔も揺らす、そうそうハイハイハイ
【相談者】
ははははは!
【ばあちゃる】
ハイハイハイハイ、ばあちゃるくんたぶん10単語くらいしかしゃべってないんでね
【相談者】
はははは!
【ばあちゃる】
そのノリでいけると
【相談者】
わかりました
【ばあちゃる】
ハイハイ頑張って下さいね、ハイハイハイハイ
ありがとうございます
【ばあちゃる】
ありがとうございます、ハイハイハイハイ


【ばあちゃる】
ハイハイハイハイどうぞどうぞ
お名前うかがってもいいですか
【相談者】
えっと白馬組の○○っていいます
【ばあちゃる】
白馬組の○○さん?
【相談者】
はいっ
【ばあちゃる】
○○○○~! どうもどうも○○○○~! ハイハイハ~イ
シロちゃんも見てるからね○○○○~! ハイハイハイハイ、ハイハ~イ
○○ね~、何でも質問してくださいねハイハイ
【相談者】
あの、大学受験したいんですけど
【ばあちゃる】
大学受験したい? ハイハイ
【相談者】
バーチャルYouTuberのシロさんとかウビバが好きすぎて
【ばあちゃる】
ハイ、ハイハイハイ
【相談者】
ひと言がんばれって言ってくれたら、がんばれるんで
【ばあちゃる】
いやいやいや~○○○○、ほんと○○○○ねほんと君ならできる、やればできる、なんでもできる
【相談者】
ううっ……。
【ばあちゃる】
ん~シロちゃんも応援してますからね○○○○
【相談者】
……。
【ばあちゃる】
がんばるんだよ○○、んもう○○○○ならね何でもできますからね
仮にですね、大学受験なんか失敗したところで人生においてあん~どうでもどうでもいいのでねハイ――
【シロ】
――がんばれ~! がんばって~!

【ばあちゃる】
あっシロちゃん
【シロ】
おほほいおほほいおほほい!

(会場大歓声)
【相談者】
……
【ばあちゃる】
ハイハイハイ、○○○○ほんとね、だからね全然ね大学受験なんて気にせずね、ハイハイハイもう大丈夫
人生なんてね、いくらでもやり直しがきくんですからね
泣いちゃダメですよ○○○○、○○○○っ、○○○○ちょっと
ばあちゃるくんが泣かしたみたいになるとほんとにね荒れるんでね
(会場笑い)
ちょっと炎上、炎上しちゃうんでねハイハイハイハイハイ
○○○○っ、○○○○ならなんでもできますよ
○○○○っ、がんばってくださいね
【相談者】
っ、ありがとうございます……
最後に「ウビバ」って言ってもらっていいですか?
【ばあちゃる】
オッケー○○○○、ウビバウビバウビバウビバ~!
ハイハイハイハイ、○○○○っがんばってくださいね
【相談者】
ありがとう……
【ばあちゃる】
大丈夫ですよ、ねっハイハイハイハーイ
ねっ「女を泣かせる馬」ってコメント書いてありますけどちょいちょいちょい、あああああああ~、ちょいちょいちょい
「馬が女性を泣かせた件」とかやばいやばいやばい


 ばあちゃるのゆるゆるながらも途切れないトークは、一つの才能ではないだろうか。相談の中で10単語くらいしか使っていないとおどけているが、それだってここまでしゃべりづづけるのは並じゃあない。委員長のトークで押していた時間を巻きにするほどの捌きっぷりは見事だった。ノリのよさややったれの精神が時に語彙力や表現力よりモノを言うという、ある意味コミュニケーションの本質を突いているのがこの男だ。
 他にばあちゃるのスタイルで注目してほしいのは、初対面の相手も積極的に名前で呼んでいるところ(引用文に占める○○の割合でわかる)。これはアカリちゃんも実践してるね。みんな実体験でわかっているだろうけど、相手から話しかけられる時に「ねぇ」「あの」を使われたりいきなり本題から切り出されたりするのと、「○○さん」から入られるのでは、話の受け入れやすさも相手の印象もまるっきり違ってくる。あと、ばあちゃる流のあだ名(名前の最初の二文字を繰り返す、みとみとやそらそら)は単に勢いや語感を優先しているのかもしれないが、相手をあだ名で呼ぶのも緊張や警戒を解く定番のアプローチだね。
 ばあちゃるの何が強いかって、自分がどんな立ち位置にいて(シロのバーター、使い魔にも満たない男)、何ができなくて(一人で面白いことをする)代わりに何ができるか(間を持たせる、場をとりなす、サンドバック役になる、絶対的スターであるシロを呼ぶ)をちゃんと理解していて、その上で道化になれるのが強いんだ。賑やかしやヘイトのタゲ取り、シロちゃんの保護者兼通訳としてとにかく優秀で、アップランドにとっては得がたい人材ではないだろうか。

スターは持っている
 以下、記事の本旨とは外れる。
 芸人は話が巧い、芸が面白いというのはある意味当然で、その中でも笑いの神に寵愛されたスターは天運を持っている。計算や作り込みを超越して、機運を掴み取って最高のパフォーマンスを発揮する天性のセンスがある、というのが私のスターに対する持論である。

【アカリ】
おい○○、お前シャキッとしろよシャキッと!
【相談者】
はい!
【アカリ】
あぁ!? 口ついてるんだろ? 目ぇついてるんだろ?
下何ついてるんだよ?
(チンチンという時間制限を告げるベルの音)
【アカリ】
そう、このチン……どぅへへへ、いややだ~
(会場爆笑)
いっ、いいところで音が鳴ったからさ~ふふふふふふ
そう、男ならシャキッと、一発カマしてこいやァ!!
【相談者】
はいっ、がんばります!
【アカリ】
はいっ、がんばれ~! うふふふ、ありがと~
【相談者】
ありがとうございます!
【アカリ】
ありがとう~、○○ありがとうね~、ふふふふふ


 アカリちゃんがいつかの放送で「下ネタをやろうとしてるわけじゃない、下ネタのほうからアカリにすり寄ってくる」と言っていたが、返す言葉もない。大舞台でこれを引き寄せるのは並じゃあない。

【兜蟹さーみー】
もともと他の方を見てた、ファンだったんですね
【美兎】
そうなんですよ
【兜蟹さーみー】
へー
【兜蟹赤丸】
ちょっとちょっと待ってください、ちょっと待ってください
【兜蟹さーみー】
なんなん?
【美兎】
なんですか?
【兜蟹】
……吸い込まれそうな瞳をしている……
【兜蟹さーみー】
ははははははは!
【楓】
――やめとけー!!!

【美兎】
うはははははははは!!!
【兜蟹さーみー】
なんだ、なんだ?
【兜蟹赤丸】
やめとけー? って
【兜蟹赤丸】
やめとけーって
【美兎】
あっ、すみませんちょっとわたくしのかのピッピが、ちょっと、後ろで
えへへへへへ
【兜蟹さーみー】
ファンが凄いぞ!?
【兜蟹赤丸】
びっくりした!
【美兎】
すいません、後ろにかのピッピが控えているので……
【兜蟹さーみー】
あーそうなんですね
【兜蟹赤丸】
すいませんそれは……


 ここぞというタイミングでばあちゃるのマイクを奪って割り込むシロちゃんといい、前日のいちゃいちゃ同室配信からミラクルを繋げるかえみといい、この人たちは「持っている」としか言えない凄みを感じた。やっぱりスターは持っている。

前編(ミライアカリ・樋口楓)
中編(ねこます・のらきゃっと)
後編(月ノ美兎・ばあちゃる)

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2018年05月17日

バーチャルYouTuberに学ぶトーク力・コミュニケーションスキル(ニコニコ超会議2018) 中編

前編(ミライアカリ・樋口楓)
中編(ねこます・のらきゃっと)
後編(月ノ美兎・ばあちゃる)

企画:バーチャルYouTu"BAR" | ニコニコ超会議2018 公式サイト


 先に断っておくと、静凜先輩と田中ヒメのパートは見ていない(履修できていない)。シロちゃんのパートは、為になった。

ねこます(バーチャルのじゃロリ狐娘youtuberおじさん)

【ねこます】
次の方どうぞ―
【相談者】
こんにちはー
【ねこます】
こんにちはー
【相談者】
○○と申します
【ねこます】
あっ、○○さんはじめましてー
【相談者】
はじめまして、ちょっと真面目な相談なんですけど
【ねこます】
はい
【相談者】
これからけっこうVRとか、ARとか、MRとか、どんどん世の中に進出してくると思うんですよ
【ねこます】
はい
【相談者】
で、そう世の中がなってくることによって身につけておくべきITリテラシーってどんなものかっていう
のじゃおじさんの考えを教えてください
【ねこます】
あー、難しいことじゃよね
まぁ、あのー、どういうのを身につけるべきかっていう風に
要は技術ありきで考えちゃうよりは、その自分の好きなこととか、あの実現したいことをまず先に考えてそれに合致したスキル……セットを揃えていくのがいいと思うのじゃ
例えば、あのー例えばキャラクター表現が好きな人はイラスト描いたりとかすると思うんじゃけど、それなのに今、あの流行だから
人工知能の勉強しようって言ったって、結局違うわけじゃないですか
【相談者】
はい、はい
【ねこます】
だから、大事なのは、トレンドの技術を追いかけるのも確かに大切なことなんじゃけど、まずやっぱり、その自分に合ってるとか自分の特性? を考えて、から何かす、スキルセットを揃えていくほうが、なんか時代とかに左右されないと思うので、なんか、そういう考えのほうがあのなんか、自分、要は人によって合う合わないがあると思うので、なんかそっちの方が結果的には、自分の能力が引き出せるのかなと思います
【相談者】
ああっ
【ねこます】
じっさい、わらわがUnityを始めたのも、あの絵が下手だから、あのーテクニカルアーティストにはなれないなっていう風に思ったので
【相談者】
あー
【ねこます】
要はスキルセットを広げて、なんかいろいろできる芸人みたいなポジションを目指そうと思ったので、Unityを選択したのであって、VRとARがもちろん流行っているという背景もあるんじゃけど、なんかそこだけを見て、あのUnityを始めたわけじゃないので
自分はそんな風に考えているのじゃ~、あっ、わらわはね、わらわは
【相談者】
はははっ、ありがとうございます、勉強になりました
【ねこます】
ありがとうございました~


【ねこます】
お次の方どうぞ~
【相談者】
どうも~
【ねこます】
はいどうも~、○○って言います
【ねこます】
あ~○○さま、はいよろしくお願いします
こんなところに来てて大丈夫ですか?
【相談者】
はいっ、今あのフリーランスでLIVE2Dのモデリングでご飯食べてるんですけど
【ねこます】
はいっ
【相談者】
あの、このままバーチャルYoutuberブームが終わった後に食いっぱぐれるのが怖いです
【ねこます】
あーでも、その、あのちょっとLIVE2Dの歴史を流すと、あの歴史を話すと長いんじゃけど、まああのえっと、もともとそもそもLIVE2Dっていう技術もその、まぁなかなかその、浸透しなかった時期があって、そこで『俺妹ポータブル』っていうのが出て、一回跳ねて、その後スマートフォンブームが来て、スマートフォンのその上位のアプリ、にはLIVE2Dが採用されてて『あん○○ぶるスターズ』さんとか、あのーなんかえっと『○○○○』とかたぶんあると思うんですけど、まぁそういう風にあの採用されてまた伸びて、今また今度Vtuber需要が出てっていう感じで
要は、あの2Dのスプライトアニメーションの技術って、あのー要はそのときどきに求められるコンテンツと手段として有用なので、なんかそれをたぶん数あるスキルセットの中の一つとして持っているのはすごく有効だと思うので、なんか、そのLIVE2Dの技術はすごく、2Dのアニメーションさせようとしたときは、すごく普遍的なものなので
何かそれ一本では確かに厳しくなる時代もあるかもしれないと思うんじゃけど、あのスキルセットのバリエーションとしてはすごい、あのいいと思うし
むしろわらわはプロのライセンス買って、結局お仕事できなかったからね~! なのでわらわからしてみればうらやましいです
【相談者】
はい
【ねこます】
なので、まぁあの~、あのLIVE2Dに固執せず、少しずつ少しずつ数あるスキルセットのうちの一つとして捉えてみて、なんかあのー
や、やれば、なんかもうわらわがアドバイスするようなことだと、じゃないと思うんじゃけど、なんか、大丈夫だと思います
そのときどきで求められる技術も、あの求められるコンテンツも変わりますので
【相談者】
……深いお言葉、ありがとうございます
【ねこます】
いえいえ、なんかその、そう、ありがとうございます


【相談者】
こんにちは~
【ねこます】
こんにちは~!
【相談者】
○○と申します
【ねこます】
あっ、○○さん、はいっよろしくお願いします
【相談者】
よろしくお願いします
あの、僕何しても長続きしなくて、ねこますさんはあのバーチャルYoutuberとしてやっていく上で大変なこともいろいろとあると思うんですけど、ずっと続けてける原動力って何なのか教えてください
【ねこます】
はいえっと、わらわも逆に、そのゲームとかは、ゲームとかを継続するのが苦手で、まあなんか、ゲームってある段階の強さまでいっちゃうと、そのそれよりも先に、行った先に何があるのかって気持ちになっちゃうと思うんじゃよ
要は、その人の思ってる価値観によって、続けれること続けられないことってたぶん変わってきちゃうので、なんか改めて、自分が一番大事とする価値観とは何かっていう部分を一回整理、気持ちを整理してみて、で~それで、その価値観に近いところを続けていくしかないと思うんじゃよね
わらわも、その創作活動を続けて、絶望~的にやる気ない時とかももちろんあるんじゃけど、結局、じゃ、創作活動以外の何かをするかっていったら、別になんか、ゲームずっ~とゲームばっかり続けてたいわけでもないし、なんかあのお菓子……なんかグルメみたいな感じで外食しまくる、だけでもないし
たぶん、結局創作活動以外のことをやっても自分の感性ではマッチしないので、たぶんあなたの、結局その、それ結局それしかないよね、みたいな部分ってきっとどこかに、あるはずだと思うので、自分の価値観を一度整理してみてください
【相談者】
ありがとうございました
【ねこます】
ありがとうございました~


 のじゃおじの話は、自分がVR技術にあまり関心がないのでとっつきにくいかと思いきや、コンテンツ論や技術屋・オタクあるある話として興味深かった。このおじさんはモノや現象に対する構造の把握やレイヤーの分析が巧みだから、聞き手にとってそれほど縁のない話でも面白く聞かせるんだろう。あと、何度か書いたけど、しゃべりのプロではないことは承知で、最初期の動画に比べたら声の出し方やプレゼン力が目に見えてよくなっているよなぁ。VTuberはキャラクターが魂の研鑽にリンクして成長していくところも強い愛着が湧く理由の一つだと思う。

のらきゃっと

【のらきゃっと】
では次のお客様
【相談者】
こんにちは~
【のらきゃっと】
こんにちは
お名前、聞かせてもらっちゃいます
【相談者】
ヒ○○です
【のらきゃっと】
ヒ○○さん、野原家のかたち
(会場笑い)
【相談者】
……違います
【のらきゃっと】
いつを……いつもご覧になっていますよ
【相談者】
ふふっ
【のらきゃっと】
まあとりあえず、お話を聞かせてもらっちゃいましょう
【相談者】
悩みと言うよりも、お願いなんですけど
【のらきゃっと】
はい
【相談者】
以前投稿していた、添い寝動画、あったと思うんですけど
ああいうのをもうちょっと投稿していただけると嬉しいと思ってます
【のらきゃっと】
わかりました、どぶねずみさんですね、さては
(会場爆笑)
【のらきゃっと】
仕方ないですね、ちゃんと用意するので、しっかり待ってて
……5000兆回再生して
(会場笑い)
【相談者】
絶対します、ありがとうございます
【のらきゃっと】
待ってて、待っててくださいね
【相談者】
は~い、また~
【のらきゃっと】
期待に応えてあげる



【のらきゃっと】
では、次のお客様いらっしゃいませ
【相談者】
こんにちは~
【のらきゃっと】
こんにちは、こんにちは、お名前聞かせてほしいな
【相談者】
はい、あのカー○○と言います、はじめまして
【のらきゃっと】
かあさん
【相談者】
母さん? はい
【のらきゃっと】
母さんじゃない……お母さん
(会場爆笑)
まぁ、お母さんでいいですね、ではお母さん
【相談者】
はい
【のらきゃっと】
今日は何で悩んでるの、お母さん
(会場爆笑)
【相談者】
はいっ、お、お母ちゃんねぇ、ちょっと最近仕事が辛くて
(会場笑い)
【のらきゃっと】
世知辛いね
【相談者】
世知辛いんですよ、それでちょっと転職とか考えちゃってるんですけど
【のらきゃっと】
なるほど
【相談者】
今の仕事続けた方がいいですかね?
【のらきゃっと】
……バーチャルYouTuber
【相談者】
おおっ!?
【のらきゃっと】
バーチャルYouTuberで繋いじゃいましょうか
【相談者】
なるほど~、バーチャルYouTuber始めちゃいますか
【相談者】
まだ間に合いますかね?
【のらきゃっと】
全然見えますよ
【相談者】
ありがとうございます
【のらきゃっと】
全然間に合います
【相談者】
あざっす
【のらきゃっと】
私が繋いでみせます
【相談者】
ありがとうございます!
最後に、遅れましたけど誕生日おめでとうございました
【のらきゃっと】
はい
【相談者】
頑張ってください
【のらきゃっと】
ありがとうございます、ありがとうございます


【のらきゃっと】
次が最後のお客様
【相談者】
こんきゃっと!
【のらきゃっと】
今きゃっとです、お名前をお聞きしてもよろしいですか
ではその、○○さん、あなたのお悩みは
【相談者】
自分、眼鏡を掛けている人が大好きで、道行く人を老若男女問わず――
【のらきゃっと】
そうなんですね
【相談者】
――はいっ、つい見ちゃうんですよ
なんで、この頭の中に抱えた煩悩をクラリキャットカッターで消してくれませんか?
【のらきゃっと】
なるほど、なるほど
でもわたし、たまに眼鏡掛けますよね
【相談者】
はい、大好きです
【のらきゃっと】
思い出しちゃうんじゃないでしょうか
【相談者】
もう、大好きでずっともう……
【のらきゃっと】
それを消してもいいですか?
【相談者】
……やっぱり消さないでください!
(会場笑い)
【のらきゃっと】
本当にいいですか?
【相談者】
ッ消さないでください!
【のらきゃっと】
でしょうね
【相談者】
はいっ
大事にして
【相談者】
わかりました
【のらきゃっと】
自分の好きなものを大事にしていこう
【相談者】
ありがとうございます
【のらきゃっと】
嘘ついちゃだめですからね、やっぱり
【相談者】
はいっ
【のらきゃっと】
自分の好きなものは好きなもの、ダイナモですよ
【相談者】
はいっ
【のらきゃっと】
大事なもの
【相談者】
……新しいお姿でも、眼鏡を掛けた動画、楽しみにしてます
【のらきゃっと】
待っててね
【相談者】
ありがとうございます!
【のらきゃっと】
ちゃんとお義父さんがわ、メガネ用意してくださってますから


 のらちゃんの面白さについては、以前に長文で書いているのでこちらも読んでほしい。
のらきゃっとの面白さを伝えたい あるいはコミュニケーションの根源的な楽しさについて
 のらちゃんの資質は、出ばなの一言の「今日は本当に大きな屋根裏ですね」「ねずみちゃんたちがこんなにいっぱい」に集約されていると思う。バーチャルYoutuberの強みの一つにキャラクターと受け取り手の双方向性があるのは定説だが、この人のパフォーマンスはそれに対する一つの解答ではないだろうか。真面目な解答からKAWAIIムーブ(カウンターに肘をつく仕草、なんだあれ)、アジテーション、伝家の宝刀であるご認識を駆使して、相談者を楽しませるのはもちろん、会場や画面の前の視聴者まで含んだ空間をわがものにして盛り上げていく仕切りは圧巻のひと言だった。さすが、毎週のペースでサバトのような狂乱のレイヴを執り仕切っているだけある。あとは、自由奔放で無茶苦茶なことを言った後に、さらっと「期待に応えてあげる」「自分の好きなものを大事にしていこう」「私が繋いでみせます」とカックイイ一言を残すところが相変わらず素敵すぎる。こういう時は全然ご認識を起こさないのがすごい。1才の誕生日を迎えた数少ないVTuberの一人としての自信と余裕が感じられたな。
 相談者も選りすぐりのねずみさんなだけあって、間の取り方や話の脱線への乗り換えまで慣れたものだったな。一緒になって場を盛り上げてくれていた。そういった視点でも、インタラクティビティの極致とも言えるパフォーマンスだった。

前編(ミライアカリ・樋口楓)
中編(ねこます・のらきゃっと)
後編(月ノ美兎・ばあちゃる)

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2018年05月10日

バーチャルYouTuberに学ぶトーク力・コミュニケーションスキル(ニコニコ超会議2018) 前編

 ニコニコが主催となるバーチャルYouTuberのイベント「バーチャルYouTu"BAR"」がめちゃんこ面白かった。
企画:バーチャルYouTu"BAR" | ニコニコ超会議2018 公式サイト

 企画の概要は、バーテンダー役のVTuberがスペースに来場者を招き、1分程度の時間でお悩み相談に乗るというもの。VTuberというコンテンツは、強烈な魂とシンクロしたキャラクターの魅力と、ライブ感ならびに双方向性とが絡み合ってエネルギーを生んでいるため、対面での相談という対人能力、アドリブ力が遺憾なく発揮される企画との相性はすこぶるつきだった。出演者は指折りの実力者が選ばれていただけあり、どなたのパフォーマンスも個性が色濃く出ていて素晴らしかった。
 以下、個人的に彼ら彼女らのベストパフォーマンスだと思ったやりとりを紹介しつつコメントをしていきたい。文字起こしが長くなりすぎたので前後編で分ける。
※自分語りなので読み飛ばして問題なし
 経験則からの完全な私見だが、友人や知人同士のラフな相談に限定して、相談者にとって相手が具体的な解決方法を提示してくれるかどうかは二の次だ。また、相談者の中で既に答えが出ている割合はけっこう高かったりする。たいていの人は、相手が自分の話に耳を傾けてくれて、リアクションをしてくれたり、同意や共感や好意的な反論を寄せてくれたりするのを期待して相談を持ちかけている。私はこういった価値観から各人の対応にコメントしているので、ご参考までに。
※読み飛ばしここまで

前編(ミライアカリ・樋口楓)
中編(ねこます・のらきゃっと)
後編(月ノ美兎・ばあちゃる)

ミライアカリ

【アカリ】
いらっしゃいませ~、うふふふふふふ
【相談者】
よろしくお願いします
【アカリ】
よろしくお願いします、あっかわいい声ですね
【相談者】
ありがとうございます
【相談者】
○○って言います
【アカリ】
何て呼んだらいい?
【相談者】
○○くんで
【アカリ】
○○くん? オッケーオッケー、○○くん相談なになに?
【相談者】
その、声がわたし、他の方に比べて高いんですよ
【アカリ】
うんうんうん
【相談者】
それがその、よく言われて悩んでるんです、どうすればいいですかね
【アカリ】
えーでもさ、アカリも高いよ、めっちゃうっせーって言われるんだけど
でもさその声って、○○くんにしか持ってないものだから全然恥じることないし、
ていうかなんか、そんなこと言う奴はそれぐらいのレベルの奴でそれぐらいの器の奴だから
ほんとに、○○くんはそんなこと気にすることない
そんなん言うなら、アカリぶっ飛ばしに行ってやるよほんとに!
【相談者】
ありがとうございます
【アカリ】
握力ヤバイから、ふふふふふふふ
【相談者】
ふふっ、ありがとうございます
【アカリ】
全然だよ
【相談者】
ほんと元気もらいました
【アカリ】
ほんとに?
お互い、ちょっと声高い者同士仲良くしようぜっ! あはははっ
【相談者】
ありがとうございます
【アカリ】
○○くん、がんばってね! ばいばい~
【相談者】
さよならっ、ありがとうございます!


【アカリ】
はじめまして!
【相談者】
はじめまして~! よろしくお願いします!
【アカリ】
あ、アカリのこと知ってます?
【相談者】
あっ知ってます、いつも動画見てます
【アカリ】
ありがとうぉ~! えっえっ、お名前教えてください
【相談者】
えっと、○○です
【アカリ】
○○、なんて呼んだらいい?
【相談者】
えっとそのままでどうぞ
【アカリ】
○○ね、おっけおっけ
【アカリ】
じゃあ○○
【相談者】
は~い?
【アカリ】
最後の、アカリの、悩み相談の人です
【相談者】
はい、光栄です
【アカリ】
ではどうぞ、ありがとう~
【相談者】
えっとそうですかね、顔ですかね
こう童顔だったり目つき悪いってよく言われるんで
【アカリ】
えっ、マジか
【相談者】
どうしたらいいかなぁって
【アカリ】
全然目つき悪くないよ
【相談者】
そうですかね?
【アカリ】
えっだって○○の笑顔めっちゃ優しいよ、えっみんなそうだよね?
(会場拍手)
【アカリ】
えっマジでこれをディスる奴がいたら、ほんと、目潰ししてやるよほんと
【相談者】
あっ……あえええ~!?
【アカリ】
あははははははは!
【相談者】
ありがとうございまーす!
【アカリ】
もうアカリの手袋真っ赤だよ、おほほほ
えっでもほんとすてきな笑顔なので、こう目つきとか全然気にしなくていいよ
【相談者】
やったー、ありがとうございます
【アカリ】
うんうん
あと好きなものを見てるときって、特に人間ってなんか優しい顔になると思うんだよね
【相談者】
うん
【アカリ】
好きなものとか人とかキャラとか、なんかおいしい食べ物とかさ
そう、だからなんかもし気になるんだったら、どんどん好きなものを見る時間を増やすのもいいかもしれない
【相談者】
……ってなるともうミライアカリちゃんの動画をもう見るしかないな~って
【アカリ】
お前~もう天才かよ!? おほほほほほほ
【相談者】
あはははははは!
【アカリ】
ありがとう~
【相談者】
ございました!
【アカリ】
ありがとうございました~またね~
ごめんねいきなり~ふふふふ


 ミライアカリちゃんはまずもって、全く前例のない企画の一番手として十全のパフォーマンスを発揮し、後に続く人に対してアーキタイプを創っただけでも賞賛に値する。受け答えの内容も極度のプレッシャー下にあるとは思えないほどしっかりしたもので、特に上掲した二回はほぼ完ぺきだと思う。ちょっと完成度が高すぎてちびってまう。
 アカリちゃんの相談に乗るスタイルで注目してほしいのは、コンプレックスを抱いている相手に対してまず「全然目つき悪くない」「全然恥じることない」と負い目を和らげているところだ。その上で、別視点の考え方や改善に繋がるかもしれないアイデアを提示している。そのワンクッションがあるかないかで、相手の心に響く度合いは全く変わってくると思う。こういった話の運びが自然体で出来るのは掛け値なしに凄い。普段から人に頼られて、相談ごとを引き受けていると見受けられる。
 もう一つ、アカリちゃんの対応で目を惹くのは「目潰ししてやる」「ぶっ飛ばしに行ってやる」といった物騒な冗談や誇張した表現を使っているところ。これも相手と打ち解けた空気を作るテクニックの一つだ。上記の例はあまりにも物々しくて生々しくならず、お悩みごとカラッと笑い飛ばしたくなるし、相談する側としては自分のことで憤ってくれる、それがとんでもなく嬉しいことだと思う。

【アカリ】
こんにちは~!
【相談者】
こんにちは
【アカリ】
どうも、お名前教えてください
【相談者】
○○です
【アカリ】
○○? かわいい名前
【相談者】
ありがとうございます
【アカリ】
何て呼んだらいい?
【相談者】
そのままでお願いします
【アカリ】
うん○○、○○はじゃあアカリにどんなお悩みがありますか?
【相談者】
アカリさんみたいに明るく元気に毎日過ごすためには
どうすればいいですか?
【アカリ】
え~そうだな、えっでもなんかそうね~……何も考えない!
あははははははは!
【相談者】
ふふっ
【アカリ】
いやほんとに、後はなんか、なんだろうな、やっぱ笑うようにする
なんかめっちゃ悲しくなって、泣いちゃうときもあるけどなんかその時も笑っちゃう
もう何泣いてるんだろバッカじゃね自分みたいな感じで、そうそうそう
なんかさ、どうせ人生って絶対前に進むしかないし
てか道は前にしかないからね
だから、もうなんだろ、どんなことがあってもやっぱり笑ったもん勝ちだと思うんだよね
【相談者】
はい
【アカリ】
そうそうそう、泣いてたって何も変わらないからさ、泣いてても笑おう!
はいっ
【アカリ】
ぶち込んで笑ってってください!
【相談者】
わかりました!
【アカリ】
うん、よろしく~アカリ戦法、うふふふふふ
【相談者】
ありがとうございます
【アカリ】
うん、がんばって~
【相談者】
がんばります
【アカリ】
バイバ~イ、ありがと~、うふふ


 他に注目してほしいのが、アカリちゃんが相談者に対して、自分も「めっちゃうっせーって言われる」「泣いちゃうときもある」と共感を寄せているところだ。ここで相談者ならびにわれわれ視聴者は、彼女の存在をぐっと身近に感じたことだろう。心理学では「自己開示の返報性」と言うんだったか。繰り返しになるが、相談をする人が相手に求めているのは往々にして共感や同意である。きっと上掲の相談者は、超が付く人気者のアカリちゃんでも自分と同じように悩んでいるのが聞けただけでも元気付けられたろうし、勇気を出して悩みを打ち明けた甲斐があったと思ったんじゃあないだろうか。
 おそらく「泣いちゃうときもある」のは魂の体験談だろうし、「やっぱ笑うようにする」は自身が心がけていることだろうし、「絶対前に進むしかない」「笑ったもん勝ちだ」は彼女の哲学なんだろう。バーチャルYouTuberの魅力は、魂の魅力でだいたい決まる。キャラクターの完成度には魂の資質や実力、人生経験値がもろに反映される。この性質は時にシビアで残酷に働くが、キャラの性格と魂の本質が幸福な一致をしたときには真に迫る存在感と奥行きが生み出される。『ミライアカリ』はそれの類稀な成功例の一人だと私は思っている。

【アカリ】
こんにちは~
【相談者】
こんにちは、あのっ、キズ○○○さんですよね?
(会場爆笑)
【アカリ】
……あっ、カラスだ……。
【相談者】
ははっ、ありがとうございます、ありがとうございます
【アカリ】
次の方どうぞ~!
【相談者】
ああ~!
(会場爆笑)
【アカリ】
うそうそうそ、ごめんごめんごめん
名前何て言いますか?
【相談者】
あの悩み相談なんですけど、自分バーチャルYouTuberなんすよ
【アカリ】
マジか! 会ったことあるかな?
【相談者】
あっ、でっ、名前ですか?
【アカリ】
うん
【相談者】
名前は○○って言います
【アカリ】
○○、○○?
【相談者】
はいっ、今三ヶ月やってて、チャンネル登録者数が150人しかいない
ド底辺なんで――
【アカリ】
――えっ、待って待ってそんなことないよ!
【相談者】
いやっ
【アカリ】
150人いるんだよ?
【相談者】
まぁまぁまぁまぁまぁ
【アカリ】
ほんとに、一人の人間が自分に興味を持ってくれるって、すごいと思うから
【相談者】
やっぱりアカリちゃんいいこと言いますね
【アカリ】
ほんとに、ほんとに、それは150人であっても150万とかであっても
ほんとそれは変わりないから……自信持って!
【相談者】
自信持っていきます
【アカリ】
そう絶対、まずじゃあ、1000人目指していこう
【相談者】
イエースイエスイエスイエス1000人目指そうぜ
【アカリ】
オッケーオッケー
【相談者】
止まらねぇからな
【アカリ】
止まらねぇからなぁ! そうしようぜ、団長! よろしく頼むわ
うふふふふふ……。
【相談者】
すいません、ネタに付き合わせてすいません、ありがとうございます
【アカリ】
全然だよぉ、がんばってねぇ
【相談者】
はいがんばります!
【アカリ】
ばいば~い
【相談者】
じゃあまた、ばいば~い
【アカリ】
ばいば~い、ありがとうふふふ


 悩み相談とは毛色が違うが紹介しておきたかったやりとり。この場面で目を見張ったのが、相談者の150人しか登録者がいなくてド底辺だという意見に割り入るアカリちゃんの反応の速さ。その考えが身体に染み付いていないと出てこない速さだと思う。一人一人ファンを獲得してきた結果として50万人もの登録者がいる人間だからこそ、誰かが関心を持ってくれることの難しさやありがたさが身に染みてわかっているのだろう。人気商売に携わる者としての意識の高さに驚かされた。

樋口楓

【楓】
はい、お次の方は~、どうぞどうぞ
【相談者】
こんでろーん
【楓】
こんでろーんどうも~! はい、お名前聞かせてください
【相談者】
えっと○○です
【楓】
○○さん?
【相談者】
えっと、マイナス思考がすごい強いんで
【楓】
あー
【相談者】
なにかポジティブになれるひと言をお願いしたいなと
【楓】
ポジティブ? そうだな、でもねマイナス思考も時には必要だよ
そこがプラスなんだ
何でもいい方向に考えすぎてもね、あの振り返ることとかできないから
その調子でねちょっと、自分の強みを見つけることも大事だと思うんだけど、そうやって振り返って学べるってことはすっごいいいことだと思うから
その調子でね、そうやってね意識付けできたら、も~うマイナス思考なんて、なんかだんだんだんだんちっちゃくなって
どんどんポジティブになるから、がんばって?
【相談者】
ありがとうございます
【楓】
うん、がんばってね!
【相談者】
元気が出ました
【楓】
ありがとう! 私も元気になった、またね~


【楓】
やったー、初めての女の子じゃん!
【相談者】
はじめましてー!
【楓】
あーはじめまして、どうもー!
【相談者】
こんちには
【楓】
こんにちは、朝早くから並んでくれたんやろ? ありがとう~!
ごめんねなんか、抽選が外れちゃって
【相談者】
あっ、いえいえいえいえ
【楓】
ほんとに~? ありがとう
あ、お名前お名前
【相談者】
えと、○○といいます
【楓】
○○さん? 悩み、悩みある?
【相談者】
悩みは、人前に立ってしまうとすごい震えてしまうのですかどうしたら震えが止まるでしょうか
【楓】
えっ、今も震えてるの?
【相談者】
はい
【楓】
あははっ、そうだよね
あたしがね~手ぇ伸ばすことが出来ればすぐ握手したげるんだけどな~
【相談者】
はっはい
【楓】
そうなの、あのね、まだね、実装されてないんだよな、これがははははは!
だからね、あの、あれだよ、今来てくれている人、早くあれだよ
あのにじさんじ宛にちゃんとでろーんの腕を動かせってDMしてあげて
CCOあたり、あっCOOあたりにね
【相談者】
はい
【楓】
あんね、震えるときもある
私も緊張……舞台裏にいるときとかは、すっごい震えるし
お腹もぎゅ~ってなっちゃうの、わかる~?
【相談者】
はいっわかります
【楓】
わかるよね~
緊張するけど、たぶんなんか人前に立って、ちょっと時間経ったらさ、震えって収まってない?
【相談者】
あ~気付いたら……
【楓】
そうでしょ? だからそれをちょっとね、慣れてったらだんだんそのスパンが短くなるはずだから
全然大丈夫だと思う
【相談者】
はいっわかりました
【楓】
あはは、そうそうそう、でもどんな時に緊張するの? 例えば
【相談者】
えっ……と上司の前に立つときとか
【楓】
あ~
【相談者】
あと後輩と話すときとか
【楓】
後輩でも緊張するの!? えっでも後輩絶対さ、なんか頼ってるからさ君のこと
【相談者】
はいっ
【楓】
だからそんなに緊張することないよ
あれ、プレッシャーみたいなやつ?
【相談者】
あー、かもしれないです
【楓】
あーっ、あたしもある~。でも大丈夫、全然気にしなくて大丈夫だよ
うんなんかね、先輩の言うことは正しいですエイサッサ~みたいな感じの人も絶対いるから
【相談者】
はいっ
【楓】
そんな悩まなくてもいいと思うよ
【相談者】
わかりました
【楓】
うんうん、ありがとう~、今日来てくれてありがとうね!
【相談者】
あーいえいえ
【楓】
そのシャツ可愛いね
【相談者】
あっありがとうございます
【楓】
めっちゃ星舞ってるやん
うんうん、またこれからも配信見てくれたら、うれしいな
【相談者】
あっはい、見続けます!
【楓】
ありがとう……! うんうん、また来て下さい
【相談者】
はっはい、ありがとうございます
【楓】
ありがとうございました!
ありがとうね~、ラッキーガールだね、ありがと~ぅ!


 二番手を勤めるでろーんこと樋口楓のトークも、常に安定していて素晴らしかった。普通トップバッター(ミライアカリ)があれだけ仕上げてきたら萎縮してしまいそうだが、緊張をおくびにも出さずに自然体でしゃべっていた(がちがちに緊張していたのは前日の委員長との通話で知っている)。このお姉ちゃん、本当にほんの数ヶ月前までいち学生だったのだろうか。肝っ玉が据わっている。
 でろーんの話の構築は、アカリちゃんのそれと共通する部分がけっこうあって面白い。「マイナス思考も時には必要で、そこがプラスなんだ」はコンプレックスの緩和で、「みんなでにじさんじ宛に催促のDMして」はくだけた空気を作るジョークで、「私も緊張ですっごい震える」は相手への共感で、「手が伸ばせるならすぐ握手したげるんだけど」はこちらからのアプローチの姿勢だろう。人を惹き付ける人間というのは、このような対面でのコミュニケーション力を自然と体得しているものなのだろうか。因果関係が逆か?
 でろーんの仕切りで特筆すべきは「すごい目がクリッとしてる」「Tシャツかわいい」「いい声してる」「バンドマンみたい」という具合に、初対面の相手のみてくれやファッション、声などをさらっと褒めているところだ。外面から入ることで内面の心理的な距離を一瞬で詰めるテクニックだが、ただイケの極致なので使用は自己責任である。それにつけても、でろーんは平素からこんなムーブを周りの人にやっていらっしゃるのだろうか。であればガチ勢や夢女子の死屍累々が積み上がっていやあしないだろうか。
 しかし、しかしだよ。でろさんは初対面の相手のことはこんなにすらすらと褒められて、女の子の相談者には歯の浮くようなセリフで粉まで掛けているのに、無二の相棒のことになると「すごい……アッアッ……動くね」と言葉に詰まり、あるいは「たくさんご飯を食べますね!(逆ギレ)」と言語能力か低下してしまうのは一体何なの!? どういうことなの!? 尊みザウルスが卍の五乗なんだが。でろさんが「動く美兎ちゃんがいちばんかわいい」と自慢していたのも、ものを食べる委員長の姿に思い入れがあるだろうことも知っているが……閑話休題。
 その他に興味を惹かれたところをつらつらと挙げていく。まず、相談者に対して必ず「ありがとう」と感謝の気持ちを述べているところ。そして「私も元気になった」と自分のプラスにもなった旨を伝えているところ。相談した側にとって、自分の悩みのために時間を割いてくれて、あれこれ意見をもらった上で、自分も元気が出た、相談してくれて嬉しかったと言ってくれる。それがどんなにありがたいことで、どれだけ心の負担が減ることなのか、あえて説明するまでもない。人間が相手を信頼するに足ると思うのはそんな時ではないだろうか。
 あとは、「クリエイターになれたら私もクリエイトして」「これからも配信見てくれたらうれしい」のような冗談半分のセールストークも織り交ぜているところに好感を持った。人間って不思議なもので、こういった茶目っ気や多少の自分本位な部分も見せてくれたほうが、相手を一人の人格として信頼する傾向がある。少なくとも私はそうだ。でろーんが意識せずともこれをやっているなら、コミュ力お化けとしか言えない。

前編(ミライアカリ・樋口楓)
中編(ねこます・のらきゃっと)
後編(月ノ美兎・ばあちゃる)

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2018年03月30日

藤崎由愛(YUA)という不気味な「失敗作」

 相変わらずバーチャルYouTuberの動画ばっかり見ている。企業勢・個人勢を問わず、有名どころの人についてはおおよそ楽しく拝見していて応援しているのだが、一つだけまったく面白くなくて、思わず拒否反応が出る存在がいる。それが藤崎由愛(YUA)さんである。
藤崎由愛とは (フジサキユアとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
 公表はしていないが、演じているのはプロの声優である三上詩織だ。『ゆるゆり』のあかりとかをやっていた、今は2.5軍くらいの声優さんである。やる気のない上位存在とスタッフは、YUAの弟の設定から「カズヤ」と呼ばれて親しまれている。熱意の感じられない三上詩織を「声担当のカズヤ」と呼ぶ人もいる。

 YUAさんの一番の特徴と言えば、制作が完全に分業であることだ。三上カズヤは基本、用意された台本を読み上げているだけだと思われる(棒読みっぷりから)。いわゆる魂の人の比重が非常に高いこの業界では、それほど多くない体制だ。ちなみにYUAの会社は、ホームページに「デジタルYouTuber事業」なるもののビジネスモデルなるものをででーんと載っけている。
デジタルYouTuber事業

活用事例
ゲーム内のキャラクターを登場させることで、どんなタレントよりもゲームとの親和性が高い動画を提供することが可能です。

・企業公式チャンネルのMCとして、自社サービス紹介やキャンペーン告知等が可能
・ゲームキャラクターがゲーム実況する事で、ゲームと親和性の高い動画を制作可能
・アニメ番組、ゲーム、VR/ARコンテンツ等の制作
・ゲームの事前登録キャンペーンとして活用

http://event.exys2008.com/digitalyoutuber/


 うん……。視聴者も子どもじゃないんで、キャラクターには魂の人がいて、コンテンツには何人ものスタッフが関わっていて、企業勢は営利活動をしているのはわかってるんだよ。でも、ここまでおおっぴらに「事業」と宣言されたり、脂下がった面で「制作フロー」を公開されたり、「声優アサイン」と書かれたりされると、醒めるよね。キャラクターをモノ扱いしているようでそれだけでかなりの拒絶反応が出る。エンタメの業界でやっていく上で、このズレた感覚はわりと致命的だと思う。

 さて、何ゆえわれわれは、YUAに対して言いしれない不気味さを感じるのだろうか。私はそもそも見た目からしてじんましんが出るのだが(服装に清潔感がない、目に生気がなくてダッチワイフみたい、奇乳がボンボンのお色気漫画並み)、YUAとカズヤの薄気味悪さもとい魅力の無さはだいたい以下の点に起因すると思う。
1.熱意のないあざとさ
2.魂ガチャの失敗
3.連続性の無さ


 まずはあざとさについて。VTuberの動画を見る動機に、その人が楽しそうにしているところが見たい、元気を分けてもらいたいというのは少なからずあると思う。であるからして、受け手は発信側の「こんなことすれば喜ぶだろ」「こんなのがウケるだろ」という作為にはことさら敏感だし、ただお仕事だから義務だからでやっているのが伝わるとあっという間に人が引けていく。そんなコンテンツで、中学生男子の妄想みたいな奇乳露出キャラに、適性を考えずに知名度と暇さだけで選んだような、下手っぴで仕事に情熱のない声優を宛がうのはちと無謀だった。そして動画では、カズヤが書いたしまりのない脚本を、三上詩織がお仕事感丸出しの棒演技で読み上げつつ奇乳を不自然に強調しているのだから、結果は火を見るより明らかだった。三上詩織はゆるゆりの時から下手くそだなぁと思っていたが、まったく成長していなくてちょっとびっくりしてしまった。

 魂ガチャの失敗について。(だいたいの)VTuberは現実のモノに干渉できないので、トークのスキルやアドリブ力が問われる企画が多く、魂の人が持つ素の魅力や面白さが重要視される。だから魂に実力派の人を起用できるかどうかは死活問題になる。モデルがよくて機材がよくて企画や編集がよかったとしても、人がつまらないとにっちもさっちもいかない。VTuber(の少なくとも企業勢)はみな手を取り合ってという雰囲気とは裏腹に、腕っぷしが直球で問われるシビアな業界なのだ。
 三上詩織はもうけっこうなベテラン声優のはずなんだが、ここまで進行もフリートークもアドリブもできないとは思わなかった。歌でもゲームでも声帯模写でも何でも、芸と呼べるものが一つくらいないのだろうか。聞くところによると声優ラジオでもこの人がメインの回はさっぱり面白くないらしく、さもありなんという感じだ。

 カズヤ飯と呼ばれる、女子高生の雰囲気ゼロの飯ツイート。画像をネットから無断転載した前科も有り。
 なんだそのタグ。

 最後に連続性についてだが、この感覚をうまく説明できるか不安だ。Vtuber人気はSNSの文化とも密接に関わっている。キャラクターがTwitterでわれわれと同じようにアカウントを持っていて、近況報告したり面白いコメントをしたり他のVtuberと交流していたりする。他の人が配信しているチャット欄にひょっこり顔を出している。動画というコンテンツの外でも、そのキャラクターが生きて活動しているという連続性が面白いのだ。
 YUAは公表はしていないものの、Twitterは明らかに三上詩織と別の人間が担当している。ツイート内容そのものがおっさんくさかったり前後の脈絡がなかったりトンチキなものが多い上に、声優はろくに情報共有をしてないらしく、Twitterと動画でまったくキャラが一致していない。連続性はここでぶっつり切断されていて、作り物感やお仕事感がさらに際立っている。私が一番酷いと思った流れは、生放送の直前にTwitterで自分より遥かに大手のミライアカリに一方的にアドバイスを求めて(リプライでもないツイートで、これはファンネルを相手に飛ばしてリプを求めさせたり、相手に自分のツイートをチェックするよう暗に強要したりしている一番めんどくさいやつである)、にもかかわらず、放送本番ではアカリには一切触れず、好きなYoutuberを聞かれて輝夜月だのヒカキンと答えたことだ。かてて加えて、その放送で名前を出した月の意味不明なモノマネを披露するという離れ業までやってのけている。

なんなんだよお前ら! お前らなんなんらよ!
あっこれ輝夜月ちゃんのマネね
らんらんなよお前ら! YUAの胸がみらいのかよ!
あ~~~~~~~~~~~~~~なんなんらよ! 意味わかんねーよ!
揺れたとか、なにいってんだよ! YUAのこと、胸揺れがみたいのか?
なんらなんら、おっぱいおっぱいって! オッパイが揺れていればお前らはいいのか?
意味わかんねーぞ! YUAおこだよ YUA、おこだよ

(生放送より、輝夜月のモノマネ)


 動画をろくに見ていないこと丸出しの完成度である。ちなみに、Twitter担当のカズヤは以前月に絡んでいる。
 はっ?

 ここまで見事なコンボを決められると、「かなりアッパラパー」「面の皮が厚い」という印象を持ってしまっても許してもらえると思う。

 Vtuberはアクターとアバターの存在が近いことで、単なる1キャラクター以上の生きた存在感があり、価値観や人間性が色濃く感じられる。だから私は、あるVTuberの動画に惹き付けられる要素が見受けられなかったとしても、つまらないだの面白くないだのといった言葉はよっぽどのことがない限り使う気にはなれない。そんな中で、パーソナリティの中心がどこにあるのか、プロジェクトの責任が誰にあるのかさっぱりわからず、一切の気兼ねなく「失敗作」と切って捨てられるYUAさんは、やはり自分にとって特異で奇っ怪な存在なのだと思う。
 案外、藤崎由愛に感じる拒否反応を逆算していけば、われわれがバーチャルYouTuberに感じる魅力の解明に繋がるのではないかと思う春の夜だった。

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2018年02月03日

のらきゃっとの面白さを伝えたい あるいはコミュニケーションの根源的な楽しさについて

 私がいわゆる四天王と同じくらい、動画配信を楽しみにしているバーチャルYouTuberさんがいらっしゃいます。それが今回の記事で紹介する「のらきゃっと」ちゃんです。

のらきゃっとチャンネル



 記事の構想を温めている間に、チャンネル登録者数は5万人を突破して押しも押されもせぬ人気キャラの一人となり、のらきゃっと論評もちらほら見かけるまでになってしまいました。今さらですが、自分なりの言葉でこの子の魅力を語っていけたらと思います。

一体感、ライブ感
 後述するように、のらきゃっとちゃんの魅力が最も味わえるのは配信を生で見ることだと思いますが、このアーカイブの動画を見てもらえれば魅力の一端が伝わるかと思います。

 この動画でも初っぱなから繰り出していますが、奈良キャットちゃんのお家芸に「ご認識」(誤認識)があります。奈良ちゃんが声を発する仕組みは、アクターさんがしゃべった声を音声認識によってリアルタイムでテキスト化し、それをVOICELOIDが即座に読み上げるという流れになっています。この際に、アナログ音声をデジタル化するのに失敗した単語がご認識の正体なんですね。
 前置きが長くなりますが、バーチャルYoutuberが爆発的な人気を得た要因の一つにインタラクティビティ(双方向性)があるのは間違いありません。まず、ネットに繋げばすぐに姿を見られてうまくすればリアクションまでもらえる、SNSで繋がれるという媒体の物理的な距離が近い。雲の上のタレントと違って気軽に応援できる、作り手の姿が透けて見えるからアクティビティを応援したくなるという具合に、心理的な距離でも近い。この独特な距離感は、今までのコンテンツや特定のキャラクターにはなかったものでしょう。そんな双方向性を打ち出しているモノにおいて、コミュニケーションやプレゼンテーションの完成度は殊に重要だと言えるでしょう。VTuberの中でも特に多くのファンが付いている人は、やはりそれの練度がずば抜けていて、強固なキャラクターとしてビルドされています。キズナアイちゃんは愛嬌と芸歴に裏打ちされた安定のトークで、ミライアカリちゃんは名は体を表すそこぬけに明るいしゃべくりで、輝夜月ちゃんは強力な習慣性のある声質と息もつかせぬマシンガントークで、シロちゃんはほわほわした声と不思議パワーワードとの合わせ技で、視聴者を魅了しつづけていますよね。
 奈良キャットちゃんのトークは、四天王の流麗なそれとは似ても似つかないものです。ご認識で文脈は乱れて突拍子もない言葉が飛び交いますし、VOICELOIDによる読み上げは声のプロのそれと比べると抑揚が欠けているかもしれません。しかし、芸術というのは不思議なもので、奈良ちゃんのトークはそのとっぴさやたどたどしさが他にはない魅力になっているんですよ。例えるなら、ベイマックスの機械音声に感じる親しみや、E.T.のたどたどしい言葉に感じるいとおしさ、そういったニュアンスで満たされています。
 のらきゃっとちゃんの生配信を特徴付けているのは、ライブ感と一体感です。言葉に抑揚がないからこそ、逆説的に字面以上の情感が伝わってくる。ご認識で情報が失われるからこそ、必死に彼女の言葉に耳を傾けて言いたいことを理解しようとする。言葉を補完するかのような懸命なジェスチャーの、一挙手一投足を見守りたくなる。そして、どんなびっくりフレーズが飛び出してくるかわからないからこそ、それをどうにか拾ってみたくなる。あんまりにもあんまりなフレーズ(褒め言葉)が出てきたときは、大喜利のごとくネタにしてみんなでわちゃわちゃする。「武田氏」(駆け出し)「成田 尖った」(なりなかった)と突然出てきた人名には「武田ァ!」「成田ァ!」と嫉妬を込めて怒号を飛ばす。言い直しがようやくうまくいったときの彼女の決め台詞「そうです そうです」には一斉に合いの手「そうです(はぁと)そうです(はぁと)」を打つ。そんなオタ芸チックなお約束が、彼女の再デビュー一ヶ月ちょいにして既に完成されています。驚異のひと言ですね、
 大げさな言い方かも知れませんが、彼女の動画にはコミュニケーションが成立する、みなで何かを共有するという根源的な楽しさのプロセスが存在するんだと思います。だからこそあれだけの人が集まり、『けもフレ』『ごちうさ』1話のテンプレのごときグルーヴが毎回生み出されるのでしょう。これはもう、ハプニングから観客の合いの手まで取り込んだ総合体験だと解釈するほかありません。私もいろんなバーチャルYoutuberさんの生配信を見て、それぞれ別方面での完成度の高さに感心したのですが(最近だとミライアカリちゃんの最新回で驚愕した)、奈良キャットちゃんの生も既に独自のポジションを盤石しつつあると思いました。みなさんもぜひ一度、水曜・日曜に行われる定期生配信を覗いてみてください。
 この項では四天王を引き合いに出す形になりましたが、完全無欠ではなくぽんこつさがあるからこそ応援したくなるという点では奈良ちゃんと共通していると思っています。

プロデューサーであるノラネコ氏の存在感
 村キャットちゃんに関してもう一つ面白いと思ったのが、上位存在のメタ的な配置の構成ですね。一般的に、企業組でアイドル芸人路線のキャラやAI・アンドロイド設定のキャラは、上位存在――スタッフの存在は極力意識させないようにしています(少なくとも動画作品中では)。のじゃおじを除く四天王がわかりやすい例ですね。一方、村ちゃんは個人組のVTuberなのですが、上位存在についておおっぴらにしているんですね。彼女は元戦闘用のアンドロイドで、今はノラネコ氏(通称プロデューサー)に拾われて同居しているというバックストーリーが構築されています。Twitterを見ると、村ちゃんの素体の材質やボディの各機能など細かい設定まで作られているみたいですね。この過剰積載な設定、実に男のコで私は好きです。閑話休題。村キャットちゃんは動画の配信についても、プロデューサーと二人で行っているという体裁を取っていますね。この背景設定が、意図せずしてよいフレーバーになっていると私は思うんですよ。村ちゃんが配信する動画に、われわれがPさんと一緒に彼女の活動を見守っているかのような一体感が空間演出されているんですよ。これまで一体感、ライブ感というキーワードで彼女の動画の魅力を語ってきましたが、このメタフィジカルな視点の演出もそれに一役買っていると認識しています。
 あと、初めて見た生配信で「(元戦闘用アンドロイドなので)好きな刀は?」という質問が視聴者から来て、村キャットちゃんが答えた刀のラインナップから「それ『装甲悪鬼村正』じゃないの?」と指摘があり、 「そうそう、プロデューサーがニトロプラスのゲームが好きなんです。『沙耶の唄』とか。沙耶と言えば、この髪型はリトバスの沙耶ちゃんがモデルになっていて……」と返して、流れるようにプロデューサーさんのエロゲ趣味をにバラしていて竹が生えてしまいました。あれでPさんに対してさらに親近感が湧いてしまいましたね。最近の生配信でも、プロデューサーの好きな物語について聞かれて「『Fate/ZERO』の虚淵さんのファン。辛く厳しい道程の先にハッピーエンドがある物語が好き」って言ってましたっけ。そして、全年齢的に都合の悪いところはPさん(の嗜好)に押しつけていくスタンス、村ちゃんのふてぶてしい性格を反映しているかのようで、二人の気の置けない関係を示しているようで、何というかもう、好きです。

武田氏のトークスキルはもっと評価されるべき
 ご認識の影に隠れていて目立たないですが、武田ドラキャップちゃんのトークや進行のスキルは並じゃあないと思っています。音声認識を挟まずにしゃべるなら、最古の五人と比べても遜色ないレベルではないでしょうか。武田氏の生は2~3時間の長丁場になることもあるのですが、その間も話の接ぎ穂を失わないのは地味にとんでもない。この前は『Watch Dogs 2』の生実況配信をやっていたのですが、NPCの個人情報(職業・年収など)をスキャンできるゲームシステムから、年収800万以上の人間をとっちめるバーサーカーのロールをその場の流れで作り上げ、暴走プレイで場を湧かせていました。初見のゲームを攻略しながら即興であんなことができるのは、驚きのひと言でした。ちなみにプレイングも、ゲームを普段からやり込んでいる人の動きで見やすかったです。他に、トークとご認識との連携だと、おそらく「徐々に」と言おうとして「ジョジョ」だけ拾われたときに、とっさに視聴者への「『ジョジョ』は何部が一番好きですか」という問いかけに持っていったり(ちなみにドラちゃんは四部と吉良良影が好きらしい)、「あいつ」が「アイス」に化けたときに、武器として使うためにあずきバーを探し出したり(コメントによると『スカイリム』のネタらしい)。トークの生配信でも、口パクを入力するデバイスの電池が突然切れる事故を「今はマイクロ波を直接脳内に飛ばして会話しています」と言い張って乗り切ったり。そういったアドリブならびにリカバリーが非常に巧いと思いました。雑談で場を繋ぐときも、趣味に限定してもビデオゲーム、卓ゲー、物語全般(漫画・アニメやエロゲ)、PC、クルマとネタが幅広く、聞き手を飽きさせません。そして(バーチャルYouTuberに不可欠な資質だと思いますが)好きなものについてしゃべっている様子が本当に楽しそうで、聞いているこっちもよい気分にさせてくれるのでした。
 後でプロデューサーがニコ生で研鑽を積んできた熟練者で、趣味でTRPGをやる人だと知り、地力の確かさを理解しました。

その他もろもろ
 クラリキャットちゃんが配信で使われている部屋がめっちゃ好きなんですが、伝わりますかね。まず、瀟洒なインテリアがふきさらしの部屋に置かれているというアナクロ感が妙にSFチックでよいのです。あと、クラちゃんの言葉は変換されるまでの間に少しラグがあって、それがちょうど隔絶された空間との通信をしているかのようで面白いんですね。いろんな偶然の一致が噛み合った結果、電脳空間の部屋というコンパイルが通っているんですよ。
 ここは大事なところですが、クラちゃんは見てくれも大好きです。けもみみのロング、ハイライトのないぐるぐる赤目、色素薄めのカラーリングにゴスロリコーデと、これで好きにならないほうがおかしいですね。
 クラちゃんはバーチャルYoutuberの熱心なファンの一人でもあり、自分の配信で他の人のネタを仕込んでくれるところが好きです。VTuberは垣根が低いせいか横の繋がりがとても強く、こういった言及やリスペクトが多くて楽しいですね。
のらちゃんの動画は為になるなぁ
恐ろしいねぇ……

まとめ
 設定やお約束を受け入れる最低限のリテラシーさえあれば絶対に楽しめるので、みなさんもぜひ、のらきゃっとちゃんのライブ感あふるる動画を見たってください。ご認識のネタ要素も最高に楽しいですが、話の構成やネタのチョイス、ここぞという場面でのご認識しない決め台詞も完成度が高いです。最近はチャンネル登録者数が指数関数的に伸びているらしいですが、あれは面白さのこれ以上ない証左でしょう。
 私が生で見られた『Watch Dogs 2』の実況はプレイング、ご認識語録ともに取れ高モリモリの名作だったので、あれが公開されてさらにファンが増えることを期待しています。

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2017年11月25日

主人公が現地調達の道具を駆使して窮地を切り抜けるシーンが好き

 ちょっと前に『プリンセス・プリンシパル』を観て再認識したんですが、主人公が敵地で陥った窮地を、その場で調達した武器や周りの環境を利用して切り抜けるシーンが好きなんです。どうですかね、伝わりますかね?

 『プリプリ』は文学性や精神性、「壁」のモチーフや「嘘つき」というキーフレーズの昇華が評価されている作品ですが、私がまず見惚れたのはスパイミッションの手際のよさですね。一話で好きなところは、エリックの妹が入院する病院に潜入したアンジェが看護婦の服をくすねて、巡回の看護婦が目を離した隙に注射器(麻酔薬?)をちょっぱり、入院患者を装って張っていた敵方のスパイを(生活臭の無さから)見抜いて注射で無力化するまでのスピード感です。あの間実に40秒で、鮮やかなお手前に引き込まれてしまいました。テンポのよさがそのままアンジェの行動力と技量の高さを表現してますよね。もう一つ気に入っているのが三話。まず、無線室にキーピックで潜入したアンジェたちが、ジャックを次々繋いで複数の通話を同時に傍受し、配線からターゲットの居場所を特定するところは、上掲のシーンと同様にスピード感がよいですね。そして最高なのが、鋭い敵兵にノルマンディー公の部下の声色を使っているのを疑われて、嘘の名前と直前の通話の内容(婚約者に関する雑談)で二重のカマを掛けられるものの、アンジェが無線傍受の時に拾っていた情報を引っ張り出して切り抜けるところ。無線を傍受した時点では、任務に必要な情報は原版の輸送担当の居場所だけで、一兵卒の婚約者の話なぞはノイズでしかないのですが、そんな情報さえ落とさずに記憶に留めておき、切羽詰まった状況で引き出せるのは並大抵の能力ではありません。この三話の時点で「アンジェさんつよい」「これスパイアクションとしてもよく出来てるぞ」と判断して視聴を継続することにしたのですが、結果的には大正解でしたね。

 別の作品で言うと、『ジョジョの奇妙な冒険』で、噴上裕也の病室まで辿り着いたもののハイウェイ・スターに取り憑かれて倒れた仗助が、しれっと奪った点滴で体力を回復して攻勢に転じるところ。ミスタが自動車のパーツや、銃弾の軌道を変えるために使用した鉄柱のささくれを利用して、ギアッチョのホワイト・アルバムによる装甲を貫くところ。『ジョジョ』はこの手の演出の見本市みたいな作品なので、該当箇所は挙げたらきりがありません。『ウォッチメン』で言うと、監獄に収監されたロールシャッハ(コバックス)が恨みを持つ囚人から食堂で襲われたところを、ポテトのフライヤーを手に取ってあつあつの油を浴びせて撃退するところ。ジャッキー・チェンの映画で言えば、店での乱闘で備品の椅子や変な棒やハンガーラックを使って立ちまわったり、逃走するバスに乗り込むときにその辺の傘を使ってぶら下がったりするところ。『ベルセルク』で言うと、ガッツが愛剣のドラゴンころし、全身に仕込んだ義手大砲やボウガンなどの重武装で暴れるのも血沸きますが、死体や倒木で作ったデコイで隙を作るところ(ワイアルド戦から使っているガッツさんの十八番)や、剣の丘での対決で刺さっていた細剣を咄嗟に蹴り上げてゾッドのわき腹をえぐるところ、ああいうところも大好きだということです。

 こういった機転のシーンの何がいいかって、登場人物の洞察力、精神力、頭の回転の速さがぎんぎん伝わってくるのがいいんですよ。アンジェのエージェントとしての能力の高さと逆算されるプリンセスを想う執念、仗助の父親に負けず劣らずの抜け目のなさ、ロールシャッハのマスクと武装を奪われても揺るがない精神的超人っぷり、ガッツの幾多の戦場を切り抜けてきた百戦錬磨ぶりが如何なく発揮されているのがいいんですよ。どうですかね、うまく伝わりますかね?

【関連記事】
プリンセス・プリンシパル レビュー・感想 コキジバトの巣の上で

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2013年07月03日

スティーヴン・キングの「筆力」とは

ひつ‐りょく 【筆力】

筆の勢い。筆勢。また、文章を表現する力。

筆力 とは - コトバンク


 最近はもっぱら『咲-Saki-』関連記事ばかり更新していたので(記事が伸びるのが楽しくてなぁ……)、ものっそい久しぶりにスティーヴン・キングについて書いてみようと思う。私はKey・麻枝准作品や『咲-Saki-』と同じくらいキングの作品が好きなので、どうにかうちのビューワーにステマをして競技人口を増やそうと思っているのだが、なかなかうまくいかない。さて、今回のテーマはキングの「筆力」についてだ。ちまたではよく「キングの筆力は凄まじい」「キングの筆力はずば抜けている」「ジャンルや洋の東西を問わずキングフォロワーはいくらでもいるが、あの筆力には到底追いついていない」というような言葉を耳にする。筆力……筆の勢い、筆勢ねぇ。私はというと、以下に挙げるような文章にキングの化け物じみたパワーを感じるのだが、他のナンバーワンのファンの方々はどうなのだろうか。

 前にもおれがいったとおりで、アンディーは見えないコートのように自由をはおっていたし、囚人的な精神状態におちいらなかった。やつの目は、けっしてあんなどんよりした目つきにならなかった。一日がおわって、みんながまた果てしない夜を迎えにめいめいの監房へもどるときも、けっしてあんな歩き方――あの猫背を引きずるような足どり――にならなかった。アンディーは胸を張り、足どりはいつも軽やかで、うまい手作りの夕食と、愛妻の待っている家へ帰るようだった。味も素っ気もないびしょびしょに煮くずれた野菜と、ごろんとしたマッシュポテトと、たいていの囚人が謎の肉という、あの脂っぽくすじの多い一切れか二切れの肉のかけらのところへ……そして、壁に貼ったラクエル・ウェルチのポスターのところへ帰るようには見えなかった。
It goes back to what I said about Andy wearing his freedom like an invisible coat, about how he never really developed a prison mentality. His eyes never got that dull look. He never developed the walk that men get when the day is over and they are going back to their cells for another endless night - that flat-footed, hump-shouldered walk. Andy walked with his shoulders squared and his step was always light, as if he was heading home to a good home-cooked meal and a good woman instead of to a tasteless mess of soggy vegetables, lumpy mashed potato, and a slice or two of that fatty, gristly stuff most of the cons called mystery meat ... that, and a picture of Raquel Welch on the wall.

(『刑務所のリタ・ヘイワース(Rita Hayworth and Shawshank Redemption)』)


 それがようやく私を得心させた。この子は死んでいる。病気でもなく、眠っているのでもない。この子はもう二度と、朝起きることもないし、リンゴを食べすぎて腹をくだすこともないし、毒ヅタをつかむこともなしし、むずかしい数学のテストの時間に、タイコンデローガ・ナンバー2の先端についた消しゴムを、すり減らすこともない。この子は死んでいるのだ。死んでしまったのだ。この子は友達と泉の水をびんに詰めに行くこともできないし、ズックの袋を肩に、溶けだした雪から顔をのぞかせた、返却代がもらえる空きびんを回収に行くこともできない。今年の十一月一日の午前二時に目をさまして、バスルームに駆け込み、ハロウィーンの安っぽいキャンディを大量に吐くこともできない。教室で女の子の三つ編みを引っ張ることもできない。誰かの鼻を殴って血まみれにしたり、または、血まみれにされたりすることもできない。この子は、なにひとつ、できないし、しないし、しようともしないし、なにもせずにいることもないし、しなければならないことも、するはずのことも、できるはずのことも、しないのだ。ターミナルが“否(いな)”と告げている装置の側にいるのだ。一セント入れなければならないヒューズ。鉛筆削り機のけずりかすや、朝食時のオレンジの皮の匂いのする、教室の机の横のゴミ箱。窓が破れ、地所に〈進入禁止〉の札が立ち、屋根裏部屋はコウモリの巣となり、地下室はネズミでいっぱいの、町はずれの幽霊屋敷。ミスター、マダム、若き紳士淑女諸君、この子は死んでしまった。わたしは一日中それをそう言いつづけていられるし、地面の上の彼の素足と、茂みに引っかかった彼の汚れたケッズの靴との間の距離については、正確なことを言いたくない。その距離は三十インチ以上、十の百乗光年だ。彼は自分の靴と離れ、すべての希望をあきらめたかなたにいる。彼は死んだ。
That finally rammed it all the way home for me. The kid was dead. The kid wasn't sick, the kid wasn't sleeping. The kid wasn't going to get up in the morning anymore or get the runs from eating too many apples or catch poison ivy or wear out the eraser on the end of his Ticonderoga No 2 during a hard math test The kid was dead; stone dead. The kid was never going to go out bottling with his friends in the spring, gunnysack over his shoulder to pick up the returnables the retreating snow uncovered The kid wasn't going to wake up at two o'clock a.m. on the morning of 1 November this year, run to the bathroom, and vomit up a big glurt of cheap Halloween candy. The kid wasn't going to pull a single girl's braid in home room. The kid wasn't going to give a bloody nose, or get one. The kid was can't, don't, won't, never, shouldn't, wouldn't, couldn't. He was the side of the battery where the terminal says NEG. The fuse you have to put a penny in. The wastebasket by the teacher's desk, which always smells of wood-shavings from the sharpener and dead orange-peels from lunch. The haunted house outside of town where the windows are crashed out, the NO TRESPASSING signs whipped away across the fields, the attic full of bats, the cellar full of worms. The kid was dead, mister, ma'am, young sir, little miss. I could go on all day and never get it right about the distance between his bare feet on the ground and his dirty Keds hanging in the bushes. It was thirty-plus inches, it was a googol of light-years. The kid was disconnected from his Keds beyond all hope of reconciliation. He was dead.

(『スタンド・バイ・ミー(The Body)』)


 クリスは笑いながら歩み去った。わたしのように傷付いていないというように、わたしのように足に豆ができているわけではないというように、わたしのように蚊や、スナノミや、ブヨに悩んだわけではないというように、足取りも軽く、優美な歩きかただった。まるでこの世に悩みは一つもないと言わんばかりの、屋内水道設備もなく、破れた窓にはビニールが貼ってあり、家の前ではたぶん不良の兄貴が待っているにちがいない、たった三部屋の家(小屋、という方が真実に近い)に帰るのではなく、豪邸に帰るところだと言わんばかりのくったくのなさだった。
He walked off, still laughing, moving easily and gracefully, as though he didn't hurt like me and have blisters like me and like he wasn't lumped and bumped with mosquito and chigger and blackfly bites like me. As if he didn't have a care in the world, as if he was going to some real boss place instead of just home to a three-room house (shack would have been closer to the truth) with no indoor plumbing and broken windows covered with plastic and a brother who was probably laying for him in the front yard.

(『スタンド・バイ・ミー(The Body)』)


 彼はビー玉で喉を詰まらせてやろうと待ちかまえている。クリーニング屋からもどってきた洗濯物のビニール袋で、窒息させてやろうと待ちかまえている。電気というてっとりばやく致死的なブギー……〈"最寄りのスイッチ板"もしくは"現在使用されていない電灯のソケット"等でいつでもお手に入ります〉……で、黒焦げにしてやろうと待ちかまえている。二十五セントのピーナッツの袋、気管に吸い込まれたステーキの一片、この次に封を切る煙草の箱、どこにでも死がひそんでいる。彼はいつでも身近にいる。人間の世界と不死の世界の間のチェックポイントを、つねにモニターしている。不潔な注射針、毒虫、切れて垂れ下がった電線、山火事。急に向きを変えたローラースケートが、交通の激しい交差点に愚かな子供をとびださせる。シャワーを浴びようと風呂に入ればそこにもオルが待ちかまえている…〈シャワーメイトと楽しいシャワー〉。飛行機に乗れば、オルが搭乗券を受け取る。彼はあなたの飲む水のなかにいるし、あなたの食べる食べ物の中にもいる。一人おっちで、こわくなったとき、あなたは闇にむかって叫ぶ。「そこにいるのはだれだ?」すると、返ってくるのは彼の返事なのだ。こわがらなくてもいいよ。わしさ、わしがいるだけだ。よう、気分はどうだ? あんた、腸癌にかかっているぜ。やれやれ、悪運だね。ごめんソーリー、ひげソーリー! 敗血症! 白血病! 白血病! アテローム性動脈硬化症! 冠状動脈血栓症! 脳炎! 骨髄炎! ヤッホー、やったろじゃないか! 戸口にナイフを持ったペイ患。真夜中に電話。ノース・カロライナのどこかの高速出口では、バッテリー液で血が煮える。どかっと渡される錠剤、これを片っ端からむしゃむしゃやってくれ。窒息して仮死状態になったあとの、爪のあの奇妙な青っぽい色合い――生存のための最後の厳しい戦いのなかで、残った酸素を脳髄がすっかり使ってしまうのさ。爪の下のそれらちっぽけな細胞のなかのものまでも。いよう、みんな、わしの名は《オルのらいまおう》、なんなら"オル"だけでもいいぜ。なんせ、もう今じゃ古なじみの親友同士だから。なに、ちょっと立ち寄っただけさ、あんたにすてきな鬱血性心臓麻痺か、脳血栓か、なにかちょっとした贈り物をあげるために。いや、長居はできないんだ、ある女性と異常分娩のことで会わなくちゃならんし、オマハでは、煙を吸わせてやるというささやかな用事も待ってるんでね。
 われわれはパトロールをつづける……息子とおれは……なぜなら、いきることの要諦は戦争でもセックスでもなく、もっぱら《オルのらいまおう》を相手にまわしての、その気高い、絶望的な、うんざりするような戦いにのみあるのだから。

(『ペット・セマタリー』)


 私が「キング節」としてイメージしているのがこのような文章だ。
 スティーヴン・キングはデビューから一貫して、高尚な批評家から「文学的価値がなく」「品のない」「大衆作家」と苦言を呈されてきた。キングその人ですら『恐怖の四季』の前書きなどで、自分の作品を「マクドナルドのビッグマックとフライドポテトの大と同じ文学的価値」と卑下している。なるほど、如何に余計なことを書かずして読み手に情景や情感をかき立てるかが文学のお作法だとしたら、キングの文体はあまりにもごてごてしていて、写実的すぎて、それとはかけ離れている。脳炎! 骨髄炎! バビロンの淫売婦! すすぎ洗いだ! ポール、すすぎ洗いの時間だよ! こういった表現も社会通年上一般的に見て、純文学と称される作品とはあまり噛み合わない類のものだ。それにこのオッさんはどんだけ固有名詞が好きなんだ。
 上掲した『スタンド・バイ・ミー』のシークエンスを文学的見地から添削するとこうなるのだろうか。

 クリスは笑いながら歩み去った。わたしのように傷付いていないというように、わたしのように足に豆ができているわけではないというように、わたしのように蚊や、スナノミや、ブヨに悩んだわけではないというように、足取りも軽く、優美な歩きかただった。まるでこの世に悩みは一つもないと言わんばかりの、屋内水道設備もなく、破れた窓にはビニールが貼ってあり、家の前ではたぶん不良の兄貴が待っているにちがいない、たった三部屋の家(小屋、という方が真実に近い)に帰るのではなく、豪邸に帰るところだと言わんばかりのくったくのなさだった。


 ふんふむ、冒頭の文章以外はまるっと削っても支障はないかもしれない。「笑いながら」「去った」という表現だけでクリスの颯爽としてくったくがない様子は伝わってくる。後に続く描写は見方によっては「過剰」「蛇足」と言える。四角四面に文学的価値を考えれば、ばっさりと削除してしまうのが正解なのだろう。しかし、私はキング節のこういった余りある「過剰さ」が素晴らしいと思うのだ。私はまず、まるでその人の生活を子細に観察してきたような恐ろしい情景喚起力に圧倒される。加えて、読み手の五感に訴えかけてくる描写力、ガジェット選びの繊細なセンスに惹き付けられる。茂みに引っかかったケッズの空虚なさまや、スナノミやブヨの噛み痕の痛がゆさや、びしょびしょに煮くずれた野菜のからえずきしそうなまずさや、教室のごみ箱から漂うオレンジの皮の、不快であると同時に甘ったるい匂いがまざまざと感じられるではないか。そして、この畳みかけるような独特のリズム感がやみつきになる。「言葉の奔流」という言葉はこんな文章のために用意されているのだろう。こういった、批評家の評価も文学的価値も何のその、てめぇの書きたいことを思いのまま書き殴る「胆力」が、キングその人と世にあふれるキング・チルドレンの一線を画するところだと思う。
 また、文章に書かれている以上のことが伝わってくる、語り手の秘めた感情が伝わってくると言う点に限れば、キングの小説は文学の王道を貫いていると言えずともない。ゴーディがクリスの惨状、小旅行を終えてぼろぼろに傷ついた身体の様子から掃き溜めのような家の状態までを淡々と語りつづける様子からは、酸鼻を極める状況でもクールに振る舞うことのできる彼のタフさに対するあこがれが読み取れないだろうか。同様に、レッドが独房に戻るアンディーを待ち受けるみじめでみすぼらしい物事をつらつらと書き連ねる様子からは、そんな状況でも自分自信を見失わない彼の資質に対する畏敬の念、賞賛の念が伝わってこないだろうか。行き着くところまで行ったルイスが、オルのらいまおうの所業……思いつく限りの事故死や病死について陽気にまくし立てる様子から、彼と息子を取り巻く「死」の影に対する病的な恐怖がひしひしと感じられないだろうか。
 そんなこんなで、キングの余りある描写力、彼の言うところの「文学的象皮病」は誇るべき資質であること、彼の文体から作品全体を非文学的だと決めつけるのは早計であること、この二点を私は訴えつづけていくつもりである。

刑務所のリタ・ヘイワース 感想・レビュー スティーヴン・キング
 長ったらしい『刑務所のリタ・ヘイワース』のレビューだが、後半部でこの作品における文学的要素について触れているのでこちらもどうぞ。

ゴールデンボーイ―恐怖の四季 春夏編 (新潮文庫)
スティーヴン キング Stephen King
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スタンド・バイ・ミー―恐怖の四季 秋冬編 (新潮文庫)
スティーヴン・キング Stephen King
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ペット・セマタリー〈上〉 (文春文庫)
スティーヴン キング Stephen King
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