2018年07月13日

素晴らしき日々~不連続存在~ レビュー・感想 幸福、幸福ってなんだ?

『素晴らしき日々~不連続存在~』は、ケロQ/すかぢの最高傑作であるのみならず、エロゲーの文化史におけるひとつの終局特異点だと思っている。

 作品の概要はひとくちには説明できない。電波オカルトにサイコサスペンスにジュブナイル、哲学に量子力学に形而上学、叙述トリックにメタフィクション、クトゥルフに伝奇、文学に戯曲に童話、果ては同時代を生きたサブカルチャーへのリスペクトといった要素が、強烈な登場人物たちの群像劇という強靭な骨格に過積載されている。そのカオスの様相は三大奇書や三大電波ゲーム(セルフオマージュ)が引き合いに出されるほど。ケロQの文脈で語ると、『終ノ空』の優れた構成とシリアスな笑いと思索の冒険ととっぽい衒学趣味とセンチなドラマツルギー、『二重影』『モエかん』の内容的多様さとストーリーテリングの流れを汲み、『H20』で見られたシナリオゲームへの歩み寄りがより強度を高めて進められている。そして思想は『サクラノ詩』へ引き継がれてさらに先鋭化される。
 私が『すばひび』を読んでまず目を見張ったのが、シナリオの充実度とキャラクターの圧倒的な存在感だ。バックボーンと行動原理という血肉の通ったキャラクターが、時には想像もつかぬ明後日の方向に突き進んで予想を裏切り、時には青春活劇の王道をひた走って期待を越えていく。私は過去作『終ノ空』『二重影』を「めちゃくちゃ面白い読み物」という以上の評価はしていなかったので、これほど真に迫る人と人との物語を創り上げてきたことに驚かされた。おみそれした。この作品は総体としていくつかの思想を打ち出しているが、それが読み手に対して発言権を勝ち得ているのは、人間が物語を動かす推進力があってこそだと私は思っている。
 また、マルチサイトのADVとしての完成度にも感服した。シナリオごとの情報の秘匿と開示による演出はエロゲーの伝統芸能だが、この作品ほど世界と人の見え方について鮮やかに表現するそれを私は知らない。私が特に美しいと思ったのが、複数の視点で繰り返される、C棟の屋上におけるさる人物とある人物の対峙のシーンだ。あのひときわ胸を打つ場面は、誰の視点かによって……シナリオの進行度、登場人物と作品世界に対する読者の認識によって、その意味合いがまるで変わってしまう。目から鱗が落ちるような、ずれていた歯車が噛み合って駆動するような、胸の空く感触。あの感慨はじっさいに鑑賞した人にしかわからないだろう。

 以下、直接的ではないが若干のネタバレと、作品の解釈を狭めるかもしれない記述があるので未読者は注意されたし。
ビックハザードこっちくんな
『素晴らしき日々』という作品を貫くメッセージ、キーフレーズをひとつ抜き出せと言われたら、ほとんどの人は「幸福に生きよ!」を選ぶだろう。幸福に、生きよ。普遍的で、強力無比で、簡潔明瞭な哲学である。しかしながら、この哲学もといアンセムは全人類的であるがゆえに、あいまいでがらんどうで複雑怪奇だという矛盾を孕んでいる。つまるところ「幸福に生きることが幸福である」というトートロジーでしかないからだ。だもんだからえらい人も「……ということより以上は語りえないと思われる」とぶっちゃっけている。そこから必然的に辿り着くのは、「幸福とは何か」という問いだろう。だがしかし、幸福というクオリアはそれを観測する個々人に拠るものであり、一意な定義を試みる行為は本質を伴っていない。近所の八百屋の親父でも、スーパーのレジ打ってるおばさんでも、タクシーの運ちゃんでも知っている真理は、今昔の哲学者や思想家が挑んだ永遠の命題でもある。
 この如何ともしがたい逆説に対して、『すばひび』は「俺」や「ボク」や「私」たちが、「あんた」や「お前」や「キミ」との対峙の中で幸福を見出すさまをただただ書き出すことで抗っている。数奇な生まれと運命に翻弄されて全てを見失った者が、自らと大切な人の存在を賭けて掴み取った奇跡。頭のいかれた救世主が妙な因果から傍の者にもたらした福音。地獄への道をひた走る使徒がそこに落ちるまさにその時に見出した幸せ。臆病者とその友人がなけなしの勇気を振り絞って勝ち取った日常。ヒーローを信じて待ち続けた少女にようやっと訪れた救い。そして、人の道を踏み外して正体を失くした者がいつか気づくかもしれない小さな幸せ。こうした風景がしっかりと焦点を結んでいるのは、人間の存在感の為せる業だというのは先述した通りだ。そして、上記の幸福に関するコンセプトは、結果として、それがどこに拠って立つものなのかを端的に示しているのではないだろうか。
 この作品の正史・正規ルートは、おびただしい死と不幸で敷き詰められている。非業の死と不運がせわしなく襲い掛かり、登場人物は不和と不信の悲嘆にくれて悲劇の道を歩いていく。そんなおぞましくも物悲しい滑稽劇の世界観で、裂けた可能性の世界に存在するたっとい幸福の形、あるいは那由他の彼方にある場所で見出されるくるおしい幸福の姿は、強烈なコントラストでわれわれの目に焼き付いてくる。

 わたしは恐るべき真実を知った――救済と呪いのあいだには、本質的なちがいなどなにひとつありはしない、と。

(スティーヴン・キング『グリーン・マイル』)


「えいえんはあるよ」
彼女は言った。

「ここにあるよ」
確かに、彼女はそう言った。
永遠のある場所。
…そこにいま、ぼくは立っていた。

(『ONE~輝く季節へ~』)


もう滅びつつある人と世界には 語りかける必要はない
僕ら生まれ変わる新しい人に 最後のGenesisをこえて

(『未来にキスを』「Kiss the Future」)


 もう一つ、私が『すばひび』のエッセンスだと考えるフレーズが「自分の限界」と「世界の限界」だ。以下の問いは作品の導入部で投げかけられるものなので、まるっと引用してもバチは当たるまい。

 他人も含めた世界って何だ?
 世界が俺なら、他の連中は何だ?
 それらも世界を持っているのか?
 だったらそれは別々の交わらない世界なのか?
 それともその世界は交わる事が出来るのか?
 すべての世界……すべての魂は……たった一つの世界を見る事が出来るのか?
 俺が見た、世界の果ての風景。
 世界の限界。
 最果ての風景。
 その時に、お前も同じ様に世界の果てを見るのだろう。
 お前が見た、世界の果ての空。
 世界の限界の空。
 最果ての空。
 俺は、お前と見る事が出来るだろうか?
 そこで同じ世界の終わりを……。
 違う空の下でありながら……同じ空の下で見るんだ……。


 このさかしらで、しかしクリティズムを同封した問いは、前作『終ノ空』と同一の存在である音無彩名が唱える甘やかなタナトスの言葉と同義ではないだろうか。

「水上さん……こんな話……知ってる?」
「?」
「……世界には何人の魂があれば足りるか……」
「それはどういう意味?」
「そのままの意味……」
「世界に必要な数の魂……たぶん……一つで十分……」


 そう、世界はたったひとつの魂で成立し、満たされてしまうのだ。このぞっとしない甘美な事実に、真正面から向き合うことができるだろうか。
 この作品を構成する物語は、どれも「他者」の存在が起点となっている。目を覆いたくなるほどの陰惨な悲劇も、目が眩むほどまぶしい幸せも、いつだってはじまりとなるのは自分の世界を脅かす他者の到来である。このことを心に留めて全体を読み通すと、また違ったものが見えてくるんじゃあないだろうか。自分ひとりでも満たせる世界。精神的に何ら不自由することのないえいえんの世界。それをおびやかす他者がもたらすのは、幸福か、不幸か? 呪われた生か、祝福された生か? あるいは、両者に本質的な違いなどありゃあしないのだろうか? 答えを出せるのは「わたし」と「あなた」だけである。

 何より個人的な物語であるがゆえに、「私の翼」によって特殊から普遍へと飛躍した。幸福という語りえぬものの尊さを謳う「世界の限界を超える詩」となった。私は『素晴らしき日々』という作品をそう解釈している。

 言いたいことはだいたい言い切ったので、その他もろもろをつらつらと書く。
 ぼくは希実香がすきです。シナリオ(世界線)をまたがって縦横無尽に活躍するキャラがだいすきです。
 音楽がとにかく素晴らしい。劇伴もボーカル曲も、サウンドから曲展開から歌詞まで非の打ち所がない。よく知られているのは「空気力学少女と少年の詩」と「夜の向日葵」で、これはもうエロゲーソングやエロゲBGMという枠を超えて評価されている。私は「ナグルファルの船上にて」や「音に出来る事」「夏の大三角」も大好きだ。
 立ち絵に背中を向けたパターンがあるが、いろんな奥行きが感じられてなんか好き。
 同性愛を含むジェンダーのあり方に対する偏見と暴言がひどくて、あまりにもひどすぎて怒りがこみ上げてくる。特に序章は、百合ゲーとして評価するならうんちっちである。時代錯誤で誰も得をしない描写はとっぱらってもらいたい。こんなに面白い作品をくだらない描写のせいでおおっぴらに勧められないのは悲しくて仕方ない。
 わかる人にはわかる話だが、とある作品が『すばひび』とほぼ同時期に発表されたのはシンクロニシティのようで面白い。あれはこの作品に比肩するエロゲーのマグナム・オーパスだと私は思うし、たぶんみんなもそう思っている。

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素晴らしき日々~不連続存在~ フルボイスHD版
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2018年07月04日

2018年後半戦の新作百合ゲー、どれやりますか 『ナイトメア・ガールズ』『素晴らしき日々HD』『きみから』『メアリスケルター2』『クライスタ』『いつかのメモラージョ』『ぷらこれ!』

 毎度おなじみ流浪の新作百合ゲー下馬評記事。業界全体が衰退気味とはいえ、ノベルゲームが全然ないのがさびしいですね……。なお前回分はこちら。
2018年の新作百合ゲー(さっぱりない) 『きみから』『ナイトメア・ガールズ』『幽霊少女室』『夏空あすてりずむ』

ナイトメア・ガールズ (2018年06月下旬予定→?)
http://www.dlsite.com/maniax/announce/=/product_id/RJ215006.html
月の水企画

 満月野街で暮らしている主人公『凛堂八ツ葉』と、その恋人『雛浦しぐれ』の二人は、
 ある日、街中の公園で触手を持った異様な生き物が女性を襲っている現場を目撃する。

 平和な街と人々を異形の触手から守るため、少女達は氾濫した異界との戦いに身を投じるが――


 本格ド外道百合エロRPGの老舗、月の水企画の新作。総監督であるておでぃの体調やプライベートの問題で延び延びになっていたものが、ようやく完成の目処が立ったそうです。具体的な発売日が決定次第、表記も更新されるとのこと。もちろん出たら最優先でやります。
 毎回張っつけているシリーズの宣伝記事はこちら。
リリィナイト・サーガ レビュー・感想 名作! 王道風ド外道百合エロRPG

神獄塔 メアリスケルター2(2018/7/12)
http://www.compileheart.com/mary-skelter/tuu/

ジェイル――――それは「生命ある監獄」と呼ばれる難攻不落の人間収容所。

数十年前に突如生まれたこの監獄は、「メルヒェン」と呼ばれる化け物や
それを統率する狂気の存在「ナイトメア」によって管理されていた。

そのジェイルから脱獄するための組織「黎明」に所属する
「つう」 と「人魚姫」は、
囚われた新しい仲間「アリス」と、一緒にいた少年「ジャック」の救出に成功。

二人と共に街へ向かうつう達であったが、そのさなかに突如
アリスが狂気に身を染め、刃を無差別に振り回し始める。

アリスの凶刃は、つうとそれを守ろうとしたジャックや人魚姫を襲い、
三人は崖下へと落下してしまう。

崖下で目覚めたつうと人魚姫の目の前に現れたのは、
今にも命を散らしそうなジャックの姿であった―――。


つう、人魚姫、そしてジャック―――これは、運命からの脱獄を図るために、
心血を紡ぐ少女達とナイトメアになった少年の物語である。


“血晶”と“血液”でレア装備を収穫「ブラッドファーム」!

「ブラッドファーム」は、独房エリア内で「血花」を育てるシステムだ!
戦闘で入手できる「血晶」をダンジョンに埋めることで、血花が育ち、満開まで成長した血花を収穫することで装備品がゲットできるぞ!

更に、血花に「メルヒェンの血」をかけることで、血花が黄金色に変化!
よりレアリティの高い装備品の入手確率がアップするぞ!

収穫した装備品には、特別な効果が付与!
・最大+99の「強化値」
・15種類の「装備品スキル」
・4種類の「状態異常付与効果」
・60種類の「二つ名」
・9種類の「属性効果」
100万通り以上の付与効果の組み合わせで、最強武器を収穫せよ!

一気に収穫してレア武器大量ゲット「アップデートチャンス」!

ハーメルンの血式能力「磁力ピッコロ」を使い、成長した血花を一気に収穫することで「アップデートチャンス」が発生!!
アップデートチャンスが発生すると、収穫した装備品にランダムで、更なる+効果が付与されるのだ!

血花をまとめて収穫し、装備品のアップデートチャンスを狙おう!


 メーカーや企画元を見る限り、ライトなおバカお色気ゲーなんでしょうか?
 おじちゃんは『スーパーマリオRPG』よりシステムが込み入ったRPGは無理で、『星のカービィ』より操作が複雑なアクションはお手上げで、そもそもPS4を持っていないのでパスします。

素晴らしき日々~不連続存在~ フルボイスHD版(2018/7/20)
https://www.keroq.co.jp/suba_fhd/

それぞれの物語は旋律。
それらの旋律はさらに大きな物語として共鳴してゆく……。

「空と世界」「終わりと始まり」「文学と化学」「救世主と英雄」「兄と妹」「向日葵と坂道」

言葉は旋律となる。
『素晴らしき日々』 とはそういった物語。


フルボイスHD版の特徴
1.高解像度化、対応OSの更新
2.待望の全キャラクターフルボイス化
3.すかぢ氏執筆の新規書き下ろしルート追加
4.特典:アートブックの大幅加筆
5.特典:複製色紙の同梱

http://www.getchu.com/soft.phtml?id=1002943


 言わずと知れたケロQ/すかぢのマグナムオーパスであり、エロゲー史に名を残す傑作がHD化&ルート追加でリビルドされます。フルボイス化は、皆守とマスター以外どうでもよすぎる。私が『アカイイト』より高い点を付けた百合ゲーは、現時点では『すばひび』以外にありません。未読の方はこれを機会に手に取ってみてください。
 私はと言うと、流れに棹差して、書きかけて断念していたレビューともう一本の記事をしこしこ書いております。どうにかHD版の発売までに完成できれば……。

いつかのメモラージョ(2018年秋予定)
http://sukerasparo.com/memorajxo/index.html

ことのはアムリラート
続編発売決定!


 超展開百合ゲーの第一人者、J-MENT先生のお勉強ゲームに続編が出るらしいです。
 笛絵ですらなく、前作が『Volume7』や『クオリア』と同レベルの出来だったのでパスします。
クロスクオリア レビュー・感想 掴みの弱い人間ドラマ、少なからず不快なSF要素
ことのはアムリラート レビュー・感想 ろくな衝突もない異文化交流、展開に動かされるキャラクター

CRYSTAR -クライスタ-(2018/10/18)
http://www.cs.furyu.jp/crystar/

泣いて戦うアクションRPG
「美少女×涙」

豪華クリエイター人が送る異色のアクションRPG始動。


殺した妹を“ヨミガエリ”させる──

 少女・零(れい)は、妹・みらいとともに、死者の魂がさまよう死後の世界“辺獄(へんごく)”へひきこまれてしまう。

 “幽者”、“幽鬼”と呼ばれる死者が異形化した存在たちに襲われ、危機的状況から“祝福”という力に覚醒した零だったが、自意識を失い、暴走した折に最愛の妹・みらいをあやまって殺してしまう。

 妹の“ヨミガエリ”を願う零は、辺獄を管理する双子の悪魔“メフィス”、“フェレス”と契約をし、悪魔の“代行者”として、幽者や幽鬼といった辺獄の異形たちを戦うことになる。

 “ヨミガエリ”という願いの条件として悪魔に捧げる、“理念(イデア)”と呼ばれる特別な涙の結晶体を集めながら。

http://dengekionline.com/elem/000/001/751/1751705/


 『メアリスケルター』と同様の理由と、個人的にぴらぴらした服を着た美少女がぴょんぴょん跳ねてごつい武器を振るう絵面にあまり魅力を感じないのでパスします。
 このブログを読んでる層が注目すべきところは、シナリオ担当がお~い、誰か久弥の行方を知らんか? なところでしょうか。あと、やなぎなぎは『Rewrite』とかで聞いたことがあります。

きみから~彼女と彼女の恋するバレンタイン~(2017年春→2017年内予定→2018/5/25予定→2018/8/31予定)
http://baseson.nexton-net.jp/baseson-light/kimihane-couples/

少女たちの恋と友情のスケッチ、再び―

ダウンロード限定発売のガールズラブAVGが、続編+完全版で待望のパッケージ化!

さぁ、ハッピーエンドの向こうへ行こう。


 もう何回紹介したのかわかんねっすわ。発売予定日の変遷がすごいことになっていますが、こんなに延期を重ねるほどの超大作なんですか? あるいは別案件でほっぽり出されてるだけなのでしょうか?


 以下、同人作品の枠。

Plantare Colere~精霊と可憐なる乙女たち~(2018年08月下旬)
http://www.dlsite.com/maniax/announce/=/product_id/RJ225297.html

~物語~ 


 それは愛する者への祈り。
 緑豊かな植物の楽園に墜ちた、愛すべき者の思い出を歌う、祈りの声。

 
 これは遠い未来かもしれないし、遠い過去の話かもしれない。
 そこはプランターレと呼ばれる閉じられた楽園…
 可憐なる乙女たちと、精霊の物語…


 運命の日、少女は「神との婚姻」と呼ばれる生贄の儀式にて捧げられることになった…

 小さな頃からの幼馴染で名士の娘「リリーナ」とかつて交わした愛の約束のため、
 成長しギルドつきの見習い雇い兵となった主人公「カレン」は、
 リリーナとの身分の差を超え、花嫁を奪い返すための行動を開始する。
 彼女との思い出を守るため、己の命をかけて…



 そんなこんなで、私は『ナイトメア・ガールズ』の発売日の正式決定を座して待ちつつ、『すばひびHD』をのんべんだらりとやる予定です(旧版を今まさにやってるところだけど)。他の作品は、どなたかプレイして面白かったら教えてくださいね。

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2018年05月30日

かえみとを見てください、よろしくおねがいします。

 今まで黙っていましたが、私はかえみとの大ファンです。みなさんもかえみとを見てください、よろしくおねがいします。

かえみとの鍵貸します
 かえみととは、バーチャルYouTuberの月ノ美兎(委員長)と樋口楓(でろーん)のペアのことです。


 二人のコラボ動画だけでなく、Twitterでの絡みや個別動画での相手に対する言及、あるいはオフラインで彼女らが取った(と推測される)行動まで含めてそう呼ばれています。
 はたして委員長とでろーんのムーブメント・相互作用を作品やコンテンツと呼んでよいのか、私には何とも言えません。しかし、自分が最近観賞した芸術でこれほどまでに感情を揺さぶられたモノは覚えがないです。かえみとと同等に、息もつかせぬ劇的な展開に惹きつけられて、掛け合いでは腹がよじれるほど笑わせてきて、幕間では気が気じゃないほどやきもきさせて、クライマックス(いったんニコニコ超会議をそう呼ぶ)では微笑ましさで身悶えさせてくる作品を知っているかと聞かれると、とっさに答えが出せません。

かえみとの耐えられない尊さ
 かえみとの何が面白いのか、どんなところが尊いのか、かんたんに書きます。

 ストーリー(?)があまりにも熱すぎる。不穏の谷あり歓喜の山あり、アクシデントも含んだ波瀾万丈の展開があって目が離せない。しかもそれが3ヶ月足らずの期間で起こるので密度と臨場感がとんでもない。伏線(?)も綿密に張られていて、意味深な態度や何気ない言葉が思いもよらぬ場面で重要な意味を帯びてきてはっとさせられること必至。あまりの完成度の高さに「いったい誰が脚本を書いてるんだ?」とわけがわからなくなったのは私だけではあるまい。
 生きているニンゲン同士だからこその、発露される感情の熱量が凄まじい。きれいなものだけでなくきたないものも含めて情感に溢れていて、だもんだから感情移入の度合いがとんでもないことになる。
 とにかく行間や幕間を読ませてくる。二人のやりとりやつばぜり合いにどんな思いが込められていたのか、配信の外で二人がどんな会話を交わしたのか、Twitterの意味深な投稿やいいねにどんな感情が隠されているのか、受け手にいろいろと想像させてくる。かえみとは文学。
 コラボの数をこなすうちにお互いの呼び名が変わっていき、合わせて口調や空気感も見違えて軽快になっていく。二人の関係性の変化と距離の縮まりようがありありとうかがえて、とてもエモい。
 動画配信というコンテンツだけでなく、SNSも通じてマルチメディアに質感をぶつけてくる。わりと殺しに来ている。
小道具(?)もめっちゃ凝ってるんだよなぁ……。
 ビジュアルがやばい。アバターは2Dのモデルだけあって精緻にデザインされていて、単体でも完成度が高い。そして長身のイケメンで銀髪の映えるでろーんと、見た目は清楚なお嬢さんで翠髪が美しい委員長が並んだときの調和が素晴らしい。
 体育会系で対人能力に優れながらもあやうい闇を抱えているでろーんと、文化系でクソザコ気質だがいざという時の胆力が凄くて熱いものを秘めている委員長。性格も趣味嗜好もバックグラウンドもまったく違っていて、歳も一回りくらい離れていそうなのに(同い年だけど)もの凄く仲がよくて微笑ましい。数ヶ月の付き合いで完全に打ち解けている。
 一人でも抜群にキャラが立っていて、ピンの芸人としてトークや仕切りやリアクションの実力も申し分ない(ここ重要)。だけれど二人で組むとさらに面白さの階梯が上がる。掛け合いの受け返しや間の取り方が完ぺきで、丁々発止のやりとりが堪えられない。喋り好きで説明上手な委員長と、リアクションが面白くて盛り上げ上手のでろーんの相性があまりにも良すぎる。
 面と向かうとお互いに他の人には見せない一面を見せつけてくる。例えば委員長のでろーんに対する砕けきった口調や親愛をまぶした暴言、でろーんの嫉妬ムーブやへたれ惨敗シリーズなど。心理的なパーソナルスペースを共有していることや相手を意識しているのが伝わってきて、何とも言えず尊みザウルス。
 両人の距離感や状況証拠、同僚の反応(腐ってるモイラ様や保護者的存在のしずりん先輩はともかく、アキくんやちーさんまで弄り出したのはどういうことなの?)からほぼほぼ公然の秘密になっているのに、あとちょっとのところで確信には至らせない絶妙なはぐらかしっぷりに悶えさせられる。

 ことほどさように、かえみとは良質なエンターテイメントや優れた文学、はたまた人気のカップリングと通ずる要素がこんだけあるわけですよ。これで関係性オタクの自分が好きにならないほうがおかしくないですか? おかしいですよね。
 たまに、かえみとなんてどうせ営業だやらせだと言う人を見かけますが、ほいだら二人は大手商社でエースの営業になれるし、台本を書いた人は今からでも構成作家か演出家を目指すべきです。創作にしたってあまりにも出来すぎていて、ファンサもあるにせよサービスがよすぎやしないか、というのが私のかえみとに対する所感ですね。

君よかえみとの沼を渉れ
 かえみとの面白さを手っ取り早くわかってもらうなら、でろーんがゲストのみとらじ第一回がお勧めです。二人の実力の高さとだだ甘さの片鱗が堪能できます。私はこの動画がVTuber界全体の最高傑作の一つだと思っています。
月ノ美兎の放課後ラジオ #1
 二人がたどった道程を追うなら、今は優秀なまとめ動画や名場面ピックアップの動画があるのでそれを使うのも手ですが、時間に余裕のある方はぜひとも時系列順に動画を追っていってもらいたいです。可能な限り切り詰めたラインナップがこちら。

【LIVE004】JK組ヴァレンタインライブ #バーチャル凛 #にじさんじ 楓と美兎(2018/2/14)
助けて!樋口楓の初Youtube配信withアキくんちゃん 楓(2018/2/16)
【樋口楓】レベリング雑談配信その2 楓と美兎(2018/2/23)
樋口楓のでろメールお返事配信 楓(2018/2/27)
バーチャル渋谷でデート 楓と美兎(2018/3/11)
でろもい(仮)+みと 楓と美兎(2018/3/16)
月ノ美兎の放課後ラジオ #1 楓と美兎(2018/3/18)
樋口楓の夜更かしエイプリルフール 楓(2018/4/1)
美兎ちゃんとちょっとおしゃべり! 楓と美兎(2018/4/4)
※ここで起こったことについては各自で解釈すべし 楓(2018/4/5)
月ノ美兎の放課後ニコ生放送局 美兎(2018/4/7)
でろちーコラボ#1 楓(2018/4/10)
【月ノ美兎・樋口楓・静凛】JK組お花見配信【前編】
【月ノ美兎・樋口楓・静凛】JK組お花見配信【後編】 楓と美兎(2018/4/14)
超バーチャルYouTu"BAR"@ニコニコ超会議2018[DAY1] 楓(2018/4/28)
楓と美兎-前編-(4/28アーカイブ)
楓と美兎-後編-(4/28アーカイブ) 楓と美兎(2018/4/28)
超バーチャルYouTu"BAR"@ニコニコ超会議2018[DAY2] 楓と美兎(2018/4/29)
あきでろもいみと! 楓と美兎(2018/4/30)
JK組感想会 楓と美兎(2018/5/1)

 かえみとでもっとも糖度が高いと言われているのが、ニコニコ超会議前日の同室配信「楓と美兎」前後編です。この動画だけ見てもあまりのいちゃつきっぷりに口角がつり上がること必至ですか、この前に二人の間に何があって、どんな選択をした結果ここに至ったのかを飲み込んでいると、破壊力がまた一段と跳ね上がります。私はかえみとをリアルタイムで追えた幸福な人間の一人ですが、これを見ている間は安堵感やら多幸感やらで頭がおかしくなったかと思いました。

いつも心にかえみとを
 かえみとは一つの問題提起です。
 何度か書いていますが、Vtuberの強さは生きている人間のパワーだというのが私の持論です。下手な劇画のキャラクターより個性的で魅力的なニンゲンが、自分の信念やキャリアを賭けて紡ぐ小説よりも奇なりな物語、あるいは掛け値なしに仲のよい二人が一切の遠慮なしにイチャコラする空間表現に対して、生なかな作劇や演技や演出は対抗できるのでしょうか? 委員長が悠然と「そう、正義ですからね」と言い放つ場面の崇高さや、美兎うさを愛でるゲームでの「いっぱい……アッアッ……動くね」「お前やる気あるのか」のやりとりの面白おかしさや、ホテルのポットに二人仲良く敗北してころころ笑いあうところの愛おしさに太刀打ちできるのでしょうか? 私の中でまだ答えは出ていません。

カエミートの道
 自分なりにポリシーがあって言及するか迷っていましたが、しなかったらしなかったで後悔しそうだし、これだけ恐ろしいモノを知ってしまったにもかかわらず宣教活動をしないのは怠慢だと思い、踏ん切りを付けました。自分が委員長を追っていたのは単純に配信が滅茶苦茶面白かったからですが(クソザコパンチやX8回をリアルタイムで見られて、こいつはホンマもんの化け物だと確信した)、その流れでこんな代物にぶち当たるとは想像だにしていませんでした。再三言いますが、みなさんもかえみとを見てください、よろしくおねがいします。

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2018年04月04日

ゆるキャン△ レビュー・感想 暑苦しい連帯や自己実現をオミットした快作

 観測範囲で評価が高かったので便乗して観た。なかなか面白かった。

『ゆるキャン△』は人物の作画、美術、音楽と全体的にクオリティの高いアニメだった。特にロケハンにガチで取り組んだと思われる背景美術は実写と見まごう美しさだった。あとは五感(視覚:山の風景や夜景、聴覚:牧歌的なサウンド、触覚:冬の山の身を切るような寒さ、嗅覚と味覚:言わずもがなキャンプ飯)を刺激する描写がやたら巧くて、キャンプという非日常と言うにはちょっと近く、日常と言うには遠い空間に自然と没入させられた。
 作品全体を包む不思議な居心地のよさについて。『ゆるキャン』は特定のアクティビティに取り組む形式の作品だが、何がよいかって、克己や連帯を無闇に強要していないところがよいのだ。日常作品というのは得てして、前者はともかく仲間意識や帰属意識はシリアスパートで妙に強調してうっおとしくなることもままあるのだが、この作品はうまくバランスをとっている。具体的に言うと、野クルを中心とするグループキャンプと、リンを中心とするソロキャンプを等しく面白いものとして書いている。賑やかでせわしないグルキャンもよいし、マイペースに静けさを堪能するソロキャンもまたよいというスタンスはなかなか粋だった。劇中での主たるコミュニケーションの手段が、時間と話題をゆるやかに共有するLINEというのも作風に合致していたと思う。そして作品名に「ゆる」を冠したのは大正解だったなと。
 この作品が暑苦しい連帯や自己実現をオミットしながら、静かな達成感や去りがたさを呼ぶのはなぜなのか考えてみた。一つ、ゆるいと言いつつ、寒空の下でするキャンプの大変さや財布事情の切なさをしっかりと描いている。二つ、よい景色が観られたとか、自分の提案や練った企画を喜んでもらえたとか、こづかいやバイト代を貯めてよい装備を買えたとか、うまいメシが食べられたとか、そういった女子高生らしい等身大の喜びがていねいに描写されている。三つ、想定していた交通路が使えない、思った通りに火が起こせないといった小さな失敗と、それに対するリカバリーのエピソードも描かれている(そして、その際には必ず誰かの助けがある)。そして四つ、どのような形式のキャンプでも、人と何かを共有することの嬉しさや楽しさが鮮やかに表現されている。これが特に自分にとってインパクトが大きかった。なでしことリンが別のキャンプ地にいながら同じ空の下で夜景をシェアするところや、リンがなでしこと千明のナビで一人旅をするところ、野クルメンバーが部室の壁を写真で埋めようとするエピソードなどに、それが顕著に表れていたと思う。
 最終話のエピローグ、リンと出逢った思い出の場所で初めてのソロキャンプにチャレンジするなでしこが、同じくソロキャンプをしていたリンと偶然合流するエピソードは、この作品のアクティビティに対するスタンスをこれ以上なく表していて好きだ。ソロキャン中のリンからキャンプの楽しさを教わったなでしこが、なでしことの縁からグルキャンの面白さも知ったリンとはじまりの場所で会うという円環構造が美しい。二人はあの後グルキャンをするんだろうし、以後はソロキャンもグルキャンも思い思いにやるんだろうなと想像させてくれるのがよい。このエピソードはアニメオリジナルらしいが、よい仕事だった。

 最後に余計な一言を付け足すと、作品の良さが五感に訴えかける要素や全体的なクオリティの高さに依っている分、作画がヨレヨレもヨレヨレだった8話は訴求力の衰えを如実に感じた。あと、ギャグの寸劇はあんまり肌に合わなかったかな。

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tags: 百合 感想 
2018年03月15日

「マイナスイメージを持っているわけではない」「色々なご意見を踏まえただけ」というへのつっぱりにもならない表明

マルイ池袋店の「百合展」中止に憶測も 広報担当が理由明かす - ライブドアニュース

「太もも写真の世界展」は開催にあたり、マルイに「百貨店で開催するのはどうなのか」といった声が寄せられたという。百合展に出展する作家30人の中には、この「ふともも写真の世界展」主催のゆりあさんも含まれ、百合展でも「ふともも写真」を展示する予定だった。

このため、「直前に開催中止を決めた展示と一部内容が重なるイベントを、通常開催してよいのか」と懸念し、

「百合展主催のヴィレッジヴァンガードさんと相談した結果、開催を見合わせる運びとなりました」(マルイ広報担当者)


ということになった。ネットの一部で囁かれている自主的な表現規制は「していない」と明言する。また、

「私達はこうした展示にマイナスイメージを持っているわけではありません。色々なご意見を頂いたことを踏まえたまでです」


と回答していた。

(http://news.livedoor.com/article/detail/14426049/)


 このようなトンチキな見出しがタイムラインに流れてきて、楽しかった気分にけちを付けられたのでメモを残しておく。
 この手の「○○の意図はなかった」「頂いた意見を踏まえてほにゃららしただけ」というアサーションは、以下のような理由から何の役にも立たず、むしろさらなるマイナスイメージを掻き立てているだけだと思う。

1.最終的な決定をしたのは自分らなのに「運びとなりました」と他人事感覚でいることを表明している。
2.対象が「マイナスイメージを持たれかねないもの」だとご丁寧に表明している。(質問で誘導されたのかもしれんが)
3.「意図はなかった」と示すことで、勝手な解釈をした受け取り手が悪いと暗にくさしているように見える。
4.「色々なご意見」が起因だと示すことで、「めんどくさい意見を寄越しやがって」と暗にくさしているように見える。

 かといって、前言を撤回して何食わぬ顔で開催したり、中止のままノーコメントを貫いたりしていたら好感度がV字回復していたかというと、かなり怪しいものだ。企画の時点で突っぱねず、その上でふわふわっとした懸念ややくたいもないご意見に影響されて日和った対応を取った時点で「詰み」だったのではないだろうか。
 誰も得しないアサーションの典型例として、記憶に留めておきたい。

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2018年01月28日

2018年の新作百合ゲー(さっぱりない) 『きみから』『ナイトメア・ガールズ』『幽霊少女室』『夏空あすてりずむ』

 毎度おなじみ流浪の新作百合ゲー下馬評記事……なのだが、今年は弾が全然ねぇや。仕方ないから移植作で水増ししておこう。なお前回分はこちら。
2017年後半戦の新作百合ゲー『きみから』『よるのないくに2』『ことのはアムリラート』『FLOWERS冬篇』『ナイトメア・ガールズ』『戦国の黒百合』『全ての恋に、花束を。』

ナイトメア・ガールズ (2018年06月下旬予定)
http://www.dlsite.com/maniax/announce/=/product_id/RJ215006.html
月の水企画

 満月野街で暮らしている主人公『凛堂八ツ葉』と、その恋人『雛浦しぐれ』の二人は、
 ある日、街中の公園で触手を持った異様な生き物が女性を襲っている現場を目撃する。

 平和な街と人々を異形の触手から守るため、少女達は氾濫した異界との戦いに身を投じるが――


 本格ド外道百合エロRPGの老舗、月の水企画の新作。例のごとく本腰を入れてプレイするためにネタバレを封印しているので、詳細な紹介文が書けないがあしからず。
 毎回宣伝しているが、月の水企画作品の推薦記事(ネタバレなし)を載っけておく。そろそろそこのキミも始めるときだぞ。
リリィナイト・サーガ レビュー・感想 名作! 王道風ド外道百合エロRPG

きみから~彼女と彼女の恋するバレンタイン~(2017年春→2017年内予定→2018/5/25予定)
http://baseson.nexton-net.jp/baseson-light/kimihane-couples/

少女たちの恋と友情のスケッチ、再び―

ダウンロード限定発売のガールズラブAVGが、続編+完全版で待望のパッケージ化!

さぁ、ハッピーエンドの向こうへ行こう。


 公称ジャンルは「ハッピーガールズラブコメディ」。発売日が延びまくっているが、あらすじからは想像できない壮大なシナリオを書き上げているのだろうか。前作にもエヴェレット解釈とか神のサイコロとかそんな類の要素が申し訳程度にあったし。
 ちなみにシナリオ担当のうつろあくたは、有名どころだと『ネコっかわいがり!』『未来にキスを』『sense off』などに関っていた人だな。元長柾木と一緒に仕事しているイメージの人。

屋上の百合霊さん~フルコーラス~ (2018/1/27)
https://www.liar.co.jp/yuri_full-chorus/index.html

「屋上の百合霊さん」無印版(2012年)発売から5年…

いままで支えてくれたファンの皆さまに「ありがとう!」
そしてこれからファンになっていただける方々に「はじめまして!」

あの名作がフルボイスになって帰ってきます!

その名も
「屋上の百合霊さん~フルコーラス~」!

あの青春の日々が蘇る…「ユリトピアのために!」

ここがユリトピア!その1フルボイスになって帰ってきた!
ここがユリトピア!その2無印版発売当時(2012年)の特典ドラマCDが全部付いてくる!
ここがユリトピア!その3挿入歌「AA愛!」ボーカルverを劇中に使用!
ここがユリトピア!その4描き下ろしイベントCGを追加!


『百合霊さん』がどんなゲームかというと、(悲しいかな、非常に遺憾ながら)「百合」という言葉から連想される負のイメージを極限まで突き詰めたような作品だ。今までいろんな百合ゲーをやってきたが、ここまで低俗かつ低品質で吐き気を誘う作品は他に見たことがない。ちょうどレビューで『百合霊』名言集を作っていたので、未プレイの人のために引っ張っておこう。

「女の子が好きで、大好きで……。その想いを強く抱えたまま死んでしまったから、こうして幽霊になっているの」
「恵も、サチさんのことが大好きで幽霊になったのよ!」
「ありがとう、恵。私も恵のことが大好きよ」
「…………」
 え、なに、なにこの人たち。
「……えーと、あなたたちって、その……。
 ………………レズの人?」
「そういう、いやらしい言い方しないでほしいな。恵とサチさんはもっときれいな関係なんだから」


「あたしたちのギョーカイでは、百合とレズの間には、深くて暗い川があったりするのです。もちろん、どっちもいけちゃう人もいますが」


「お、女同士なんだよ? もう今さら、それが変だとか思わないけど……。
 でも、まわりの人は、そう考えてくれないかも。お父さんやお母さん、比奈のおじさんやおばさんを困らせるかもしれない」
「比奈にだって……、私が恋人だってことで、迷惑かけるかも。比奈が、変な目で見られたら、どうしよう……」
「結奈、別に、同性愛とか百合とか、女の子同士とか、そういうのが嫌いってわけじゃないんだよね?」
「そう思っている。確かに、最初は変なことだと思った、恋愛って男女の間のものだと思っていたから。それが普通だと。
 でも、確かに普通じゃないかもしれないけど。誰かを好きという気持ちの行き先には、たとえその先が同性であっても、変じゃないと」


 フルボイスでかようなクソたわごとを始めから終わりまでさんざん聞かされるわけだが、キミは耐えることができるか? 私は無理だ。

カタハネ ―An' call Belle― (2018/1/25)
http://www.prot.co.jp/psv/katahane/

これは、僕たちが忘れかけていた
「優しさ」の物語

2つの時代を舞台に描かれる“群像劇”
新たなストーリー&ビジュアルを追加!


『カタハネ』については、レビューを残しておこうとは思っているのだが、取り立てて書くことがないのでフワワ~っとした記事になりそうな気がしている。私の評価と世間の評価がもっともかけ離れている作品って、実は『アオイシロ』でも『百合霊』でもなく『カタハネ』なんじゃないか。私が百合作品のレビューで参考にしている数少ないサイトのうち、取り上げている三者ともが絶賛しているので、何か見落としているのかもしれないが。


 以下、同人作品の枠。

幽霊少女室 (2018/1/9)
http://www.dlsite.com/home/work/=/product_id/RJ216558.htm

――幽霊が居る。

【STORY】
口下手な少女、寺生稀(てらう まれ)は、大学進学のため上京してくる。
だが、新居となる『白山荘』は、ボロボロの廃墟でいわくつきの場所だった。
部屋に入ってすぐ、稀は、幽霊少女の『古崎ゆいか』と出会う。
ゆいかは、すぐに引っ越しさせてやると息巻くが。稀は、幽霊が見える体質で……。



夏空あすてりずむ (2014年予定→2015年予定→2018年予定?)
爽やか青春系百合ADV 『夏空あすてりずむ』

青春×田舎×乙女!!
明るく元気だけが取り得で、天体観測が趣味の女の子『椿沢 科乃(つばきさわ しなの)』
今年の夏もめいっぱい楽しもう!! と、思っていたのに……。
あれれ、今年の夏は去年までの夏と違うっ!?
趣味に進路に友情に、そして――もしかしたら恋に!?

星がゆっくりと夜空を流れていくように、
ゆっくりでも、確実に変わらなきゃいけない夏。
その先にある未来へと繋がる星座を形作るために。


 ブログを覗いたら経過報告があったので、まだプロジェクトは生きている模様。

今年こそは『夏空あすてりずむ』の完成に向けて頑張りますので、温かい目で見守って頂ければ幸いです。



 私は『ナイトメアガールズ』を万難を排してやる。久しぶりの王道風RPGだから腕が鳴るぜぃ。『きみから』も本当に出るならやっておこう。

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2017年12月17日

プリプリ 「歯止めが利かなくなる」はアンジェたちの行く末の暗示説

 「歯止めが利かなくなる」と言えば、名言に事欠かない作品『プリンセス・プリンシパル』において一際存在感を放つ迷言である。「いいえ、いいえ、いいえ」も「通りすがりの宇宙人、黒蜥蜴星から来たの」も「おかしいな、父上のおまじない効かないよ。胸の痛み、全然とれないよ」も「友だちとしてお願いするってことなら、全力で力を貸してやるよ」もよいが、私にとって『プリプリ』を象徴する台詞と言ったらこれだ。

子どもの頃は、普通に話してたじゃない?

そんなことしたら、私たちが古い知り合いだってばれてしまうわ。

みんなも仲間なのに。
じゃあ、出逢ってすぐ意気投合しましたっていうのは? 堂々と仲良くできるわ。

だめ、歯止めが利かなくなる。

たまには羽目を外してもいいと思うな。昔みたいに。

(第4話)


 それにつけても「歯止めが利かなくなる」の人気っぷりよ(ニコニコではもっとも弾幕が濃かった)。敵を強襲する任務の真っ最中に何を議論しているのかと言えば、「もっといちゃいちゃしたい」「だめ、我慢できなくなるから」に要約されるしょうもなさ! 二人が至って真剣な面持ちなのもシリアスな笑いを誘っている。メロディアスで悲壮なBGM「battle of the shadows」もギャップを強調していてとてもよい。
 ところでこの台詞、完全なネタ台詞と見せかけて、作品のモチーフと密接にリンクしつつ、作品世界の未来を示唆しているんじゃあないだろうか。


車や歯車が回転しないようにすること。また,そのもの。車輪につけたり,車輪と車輪接地面の間に嚙(か)ませる。

事態の進展・進行をとめる手段や方法。 「物価の上昇に-をかける」

歯止めとは - Weblio辞書


 歯車は巨大な戦艦や典雅な機械仕掛けが文化の中心にあるスチームパンクの作風と合致している他、OPテーマ「The Other Side of the Wall」の歌詞で印象的に用いられている。また、小さな力(歯車)がやがて大きな力となって状況を打破するだろうことは本編のそこかしこで暗示されている。
「Can you feel that nothing turns around?」「Like a gear in sync inside a clock」
「Oh yeah, When the clockwork moves and starts to shine.」「Forever let it blow, carry out, show the way」「Blast it off right」
 「歯止めが利かなくなる」は、アンジェとプリンセスが真の意味で一つになって(意味深長)噛み合い(意味深長)、誰はばかることなくいちゃ……仲良くできるようになったときこそ、決して一人では生み出せない、機械仕掛けのように強力な力、世界を変える力が生まれて、有形無形の壁を壊すことを示唆しているのではないだろうか。そんな深読みをしてみた次第である。

本当に信じているの? 世界を変えられるって。

うん。

でも、女王になれたとしても――。

私ね、シャーロットと堂々といたいの。

私だって……。

でも、そういう気持ちは私たちだけじゃないわ。
親、兄弟、恋人、友人。壁によって離ればなれになった人は大勢いるわ。
いつか彼らの声が揃うときが来るわ。大きく、波のように。

(第6話)


 ちなみにプリンセスが、アンジェが「みんな」と一緒に楽しめるようになるのを最後まで諦めなかったのは本編の通りだが、「羽目を外す」についてもめっちゃご執心なようで、作品を締めくくる場面で蒸し返している。

それじゃあ、終わったら羽目を外して、うんと楽しみましょう?

昔みたいに?

昔みたいに。

今度は、みんなも一緒よ?

それは……。

(第12話)


 何気ない台詞が復唱されて重要な意味を持ったり、思いがけないタイミングで気の利いた返事が来る意外性も『プリンセス・プリンシパル』の魅力だったなと振り返りつつこの記事を締める。

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tags: 百合 
2017年11月02日

アトラク=ナクア レビュー・感想 血と情念が薫る伝奇ノベルの古典

 音に聞こえた伝奇ビジュアルノベルの古典です。1997年発表。伝奇作品の枠だと『痕』の翌年、『久遠の絆』の前年と書くと時代背景がわかりやすいでしょうか。

 先にダメ出しを済ませると、作品の構成要素のうち大部分で経年相応の古さを感じるのは否めません。具体的には、中盤までのほとんどを占める、主要登場人物(初音・奏子と銀と、あと燐か)が本筋に絡まない傍流の展開の退屈さ(私はプレイ中「はやく銀さんが出てきて本筋が進まねーかな」と常に思っていた)、かなり類型的な造詣で立ち位置の不確かなキャラクター(どうでもよすぎて主要キャラ以外の名前が一人も名前が思い出せない)、存在意義が全くもってわからない調教パート(未練がましくゲーム性を残そうとしたのか?)などです。その他、立ち絵も一枚絵も明らかに数が足りていませんし、楽曲の評価が非常に高い作品ですが、音源はお世辞にも上等とは言えません。
 にもかかわらず、今日でも『アトラク=ナクア』が名作の呼び声を厳然として保っているのは、ひとえに最終章の完成度ゆえにでしょう。あの激情と感傷のありったけがぶつかる驚天動地の展開は、今なお比類する作品がほとんどありません。戦力を削いでいく包囲網戦が続き、直接的な対決が持ち越されていた分、いよいよ人外の化け物が(いろんな意味での)正体を現して刃鳴散らす瞬間の興奮ったらありません。硬質で淡々と描写を連ねる三人称の文体は、この作品の空気を形づくる特色の一つですが、あれが却って昂ぶりを伝えてくるんですよ。これ以上ないとっときのタイミングで流れ出す劇半「Atlach Nacha~Going On~」と、それのアレンジと画面効果を交えた演出も場を最高潮に盛り上げます。しかしながら、あの章の中で何が一番読み手に衝撃を与えるかと言えば、価値観の逆転、関係性の逆転が起こることに尽きると私は思っています。
【若干ネタバレあり】
 この作品は一枚絵の視点ともっともらしい語りによる叙述トリックを巧みに取り入れていますが、あの一枚絵が鮮明になるとともに、それまで捕食者の立場で人の命や尊厳を弄んでいたある人物の本性――致命的に傷つけられた自尊心を、今度は自分が支配者の側に立って他者を蹂躙することで修復しようとしている愚かな小娘――が暴かれる瞬間の、足下が崩れるような、目から鱗が落ちるような、胃の腑がでんぐり返るような感覚。あれを味わえただけでもこの作品を読んだ甲斐がありました。
【ネタバレおわり】
 ここに至るまでの展開は、言ってしまえば前振りでしかないのです。あの人が虚飾を剥ぎ取られて、血みどろで転がりながら幼稚な意趣返しから脱却し、本当に護るべきモノのために闘おうとするところからが『アトラク=ナクア』という物語の真の始まりなのだと思います。以降の展開は掛け値無しに凄まじい牽引力があり、ページを手繰る手が最後まで止まりませんでした。しかし、そこまでの流れが前振りや布石といった観点でしか評価できないのは、作品の総合的な完成度に瑕疵があることの証左だとも考えています。

 2017年現在におけるシナリオゲームの水準に照らすと粗が見つかりますが、最終章における最大瞬間風速のトルクでは今なお頭一つ抜けた力作であることは請け合います。テキスト、伝奇要素、楽曲も見上げた出来。今なら単品の廉価版がお手ごろ価格で手に入るので、20周年を機に温故知新で触わってみるのもオツではないでしょうか。

【参考文献】
マリア様がみてる(1) 今野緒雪
 あちらはお姉さま、こっちは姉様……。関係性の構図がよく似ていると思います。

アトラク=ナクア 廉価版
B00008HUMF

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