2012年05月20日

全ルート共通部

ユメイ(ルート)に関する伏線
千羽烏月(ルート)に関する伏線
ノゾミ(ルート)に関する伏線
浅間サクヤ(ルート)に関する伏線
若杉葛(ルート)に関する伏線


◇それは物語の予兆
ユメイルートを読破していない人は、桂ちゃんの手を引く着物の人をユメイさんだと思うだろう。詳しい解説は◇それは物語の予兆◇タソガレ◇ナクシタヒ◇幻視行で。

 涼しげな鈴の音に、私は前へと向き直る。
 ぐっと誰かに手を引かれ、私はさらに足を速める。


注意深く読んでいれば、実は第1章の時点で上記のミスディレクションは看破できるのだった。鈴はノゾミちゃんのトレードマークである。


OP『廻る世界で』
オープニングムービーの解釈


◇黄昏の車窓から


◇夜色の人

 慌てて顔を上げると、彼女は数歩手前で立ち止まっていて、こちらに視線を投げかけていた。
 切れ長の黒い瞳がまっすぐで。
 立ち姿の第一印象にたがわず、とても綺麗な顔をしていたのだけど、それより何より視線の強さが強烈で。
 ……ううっ、ものすごいプレッシャー。
 ただ見る、ということがここまで対象に影響を与える行為なのだと身をもって思い知らされる。


桂ちゃんは記憶を封じているが、十年前の事件でノゾミちゃん、ミカゲちゃんの「見る」……邪視で白花ちゃんともども操られている。さらに、これから数日のうちにノゾミちゃん、ミカゲちゃんや主の邪視を何度も喰らい、掛け値なしに「ここまで対象に影響を与える行為なのだと身をもって思い知らされる」のだった。


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千羽烏月ルート
若杉葛ルート
浅間サクヤルート
ユメイルート

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2012年05月20日

若杉葛ルート

ユメイ(ルート)に関する伏線
千羽烏月(ルート)に関する伏線
ノゾミ(ルート)に関する伏線
浅間サクヤ(ルート)に関する伏線
若杉葛(ルート)に関する伏線


◇最終バスに乗って


◇暗い森を抜けるとそこは


◇お化け屋敷に光る目


◇大家と店子とお稲荷様

 ああ、そういえば葛ちゃん。
 私は一緒の部屋で構わなかったのに、ほかの部屋へと引っ込んじゃうんだもん。
 部屋が余ってるからって、別々にすることないのに……


一度葛ルートをクリアすると、葛ちゃんが桂ちゃんを警戒しているのがよくわかる。


◇タソガレ
 章題に漢字を当てれば「誰彼(あなた誰?)」になる。「夢に現れる懐かしい人、あなたはいったい誰なの? わたしの何なの?」の意。
 詳しい解説は◇それは物語の予兆◇タソガレ◇ナクシタヒ◇幻視行にて。

「――桂ちゃん」
 あの声の人だ。
 ああ、この人は、この顔は……
 痛みが走った。(赤エフェクト)
「駄目。考えては駄目」
 知っている。誰かに似ている。
 それはとても懐かしくて、毎晩見ている、鏡の中の――(赤エフェクト)


わたしに似ている、と続く。たぶん。桂ちゃんとユメイさんの血縁関係を示唆している。

 柔らかな手が、頭を撫でた。
 幼い子供をなだめるように、よしよしと、優しくゆっくり。
 少し冷たい指先が、痛みを吸い取ってくれているような気がした。
 風邪を引いた幼い日の夜、苦しいところを撫でさすってくれた、お母さんの手にも似ていて。
 ああ、やっぱりこの人は――(赤エフェクト)


――幼いわたしの世話を焼いてくれたことが……とか続く。たぶん。この幽霊さん、幼い日の桂ちゃんと接触がある? ひょっとすると元人間、それも桂ちゃんに近しい人だった? と想像をたくましくしてほしいところ。


◇わたしのきずあと

 でも、お父さんが死んじゃったのは、家が火事になったからって聞いて――
 お父さんのことを全然憶えていないのも、わたしが煙を吸って倒れたからだって――
 写真ですら顔を知らないのも、アルバムごと全部燃えちゃったからだって――


火事云々の作り話と写真の処分は、真弓さんとサクヤさんが相談してのことだろう。桂ちゃんが事件のことを思い出して心を壊さないよう配慮した。

 名前は――
 傷と一緒に書かれていた名前は――
 確かめるように、すっかり磨り減っている柱の傷を指先でなぞる。
-桂-
「ケイ……」
 わたしの名前だった。(略)
 そして震える指先が、もうひとりの傷に触れる。
 本当に背比べをするように、ほとんど変わらぬ高さに、いつも。
-桂-
「ハク……カ……?」(赤エフェクト)
――夢の中と同じ痛み。


意味深なことを語る幽霊めいた女性の登場直後にこんなものを見せられれば、どうしてもユメイさん=ハクカ? と予想してしまうものである。なかなかもって周到なミスディレクションだ。続く一文もプレイヤーを混乱させるのに一役買っているかと。


◇時差ですか


◇そして誰もいなくなった
 章題の元ネタはアガサ・クリスティー。

-桂-
「荷物、重くないの?」
-葛-
「昔から、背負いきれないほどの思いものを押しつけられてきましたからね。それに比べれば」


鬼切り頭の後継者としての期待、親族を殺した十字架など。


◇兵法の要は兵糧にあり


◇饅頭怖いと王子の狐
桂ちゃんが部屋に入った瞬間の、葛ちゃんの嫌そうな顔に注目。

 (葛が)さっきわたしが取りかけた、角から二つのお饅頭を手にして食べる。


この不自然な行動は、毒を盛られるのを警戒してのことだろう。コドクの時の習慣が思わず出てしまった。

-桂-
「ごめんね、尾花ちゃん。よく知らない人にあんなことされたら(食べ物を貰ったら)怖いよね」
-葛-
「……」


この沈黙はおそらく「わたしも桂おねーさんにお菓子を貰ったとき、ちょっと怖かったんですよ」の意。


◇買い物帰りのお嬢さん


◇カレイド


◇生還おめでとう


◇雨と共に来たる
 章題の元ネタはマーガレット・ミッチェル『風と共に去りぬ』。

-桂-
「……とんかち?」
-葛-
「女子供の力でも、思いっきりやれば一発です」
 すごく物騒だった。
-葛-
「幸い広さは十分ですから、的が細くなる縦振りよりも、横から振るのをお勧めします。技術が追いつくなら側頭部狙いで」


ひょっとすると葛ちゃん、コドクで実践したことがあるんじゃあ……。

-桂-
「サクヤさんって、お祖母ちゃんとも知り合いなんだっけ?」
-サクヤ-
「そーさ。しかも笑子さんとの付き合いのほうが、長いといえば長いよ。まぁ、言ってみれば、あたしのお陰であんたが生まれてきたようなもんだ」
-桂-
「……月下氷人?」
-サクヤ-
「そんなところさね」


サクヤさんと笑子さんは、60年前に笑子さんがサクヤさんの命を救って以来の長い付き合いだった。笑子さんの息子である正樹さんを親友の真弓さんに紹介したのがサクヤさんだから、そんなところというか、まさに月下氷人である。

-サクヤ-
「あんたは覚えちゃいないだろうけど、あんたも昔はこっちに住んでいたんだよ。笑子さんが生きていた頃はね」
 笑子さんというのは、私のお父さんのお母さん。つまりは私のお祖母ちゃんのこと。つまり羽藤家とサクヤさんの付き合いは、それぐらい遡れるほどに古いことになる。
-桂-
「だからこのお屋敷のことも知ってるんだ」


『コクジョウ』では、サクヤさんはじっさいにお屋敷に住んでいた。

-桂-
「ところで、葛ちゃんはそのまま(浴衣じゃなくて、普段着のまま)でいいの?」
-葛-
「たはは、ちょうどいいサイズがあれば、お借りしたかもしれませんけど」(略)
-桂-
「葛ちゃんサイズの、ないのかな?」
-サクヤ-
「それなら、桂とはく――っしょい!こんちくちょ~」


サクヤさん、思わず「それなら、桂と白花が子供の時使っていたものが……」と言いそうになり、わざとらしいくしゃみでごまかした。再プレイ時にニヤリとするシーンの一つ。

-サクヤ-
「……葛?」
-葛-
「浅間――」
-桂-
「……あれ?もしかして、二人とも知り合いだったりしたとか?」
-サクヤ-
「いや、大したことじゃないさ。あたしが昔、世話になったところにも、そう言う名前の跡取りがいたような気がしてねぇ」
-葛-
「そうそう、こっちはアレですよ。浅間と言えば忠臣蔵」


昔(60年前)世話になった(仲間を皆殺しにされた)ところ(若杉)の意。葛ちゃんのほうは若杉の過去の所業を知る要注意人物として浅間サクヤの名を耳に挟んでいたのだろう。みな一周目は「お世話をしてもらった、ご厄介になった」ところだと思ったはずだ。じっさいは「おう兄ちゃん、この前は世話になったのう」のニュアンスである。


◇ジョーカー

-サクヤ-
「意外だねぇ、あんたは嫌いなのかい?」
-葛-
「好きじゃないですよ。そーゆー勝負事って、人やら欲のからむ争いですからね」
-桂-
「でも、ただのゲームでしょ?」
-葛-
「かかる人にかかったら、何でもゲームになるんです。ローマの見せ物しかりですよ」


葛ちゃんの言うゲームとは、若杉の後継者争いやコドクのこと。

-サクヤ-
「だけどねぇ、十年生きたかどうかの小娘に勝負の何がわかるっていうのかい?」
-葛-
「刹那の刻で悟る者もいれば、八百無量をかけて心理から遠ざかる負け犬もいますからね。生まれついての星の差って大きいですよ?」


サクヤさんの自信は実年齢(17XX歳)からの現れだろう。
葛ちゃんはサクヤさんの正体を知っているので、遠回しに彼女のことを「負け犬」、年を「八百無量」と言っているんだろうか。ひどい。

-サクヤ-
「ふふふ……面白いねぇ、面白い。一大事ってのは、時も場所も選ぶ間もなく嵐のように訪れるって、とある連中に思い知らされたんだけれどねぇ……」


とある連中=若杉あるいは鬼切部。サクヤさんは前触れもなく、そして為す術もなく仲間が皆殺しになったことを「嵐のよう」と表現している。

-サクヤ-
「そうだね。まだ何で勝負するかを決めてなかったね」
-葛-
「そちらが選んで構いませんよ。こちらの言い分に後から難癖つけられたくないんで」
-サクヤ-
「誰が難癖つけるかい。千年分のハンデだよ、それぐらいはそっちでお決め」


サクヤさんの正体のヒント。初プレイでは単なる誇張だと思うはずだ。鯖読みすぎだよ、サクヤさん。


◇蛇と狐と蝶


◇丹塗矢

-葛-
「似てませんか?」
-桂-
「似てる…かもしれない」
 赤い矢に化けた蛇の神様に突かれるお姫様。
 赤い蛇に襲われるわたし。
-葛-
「おねーさんが寝ぼけていたんじゃないんなら、ここの地元の蛇神様に見初められたのかもしれませんね」
-サクヤ-
「………」
-葛-
「どうかしましたか?」
-サクヤ-
「ああ、まだ桂は嫁にやらないよってね」


葛ちゃんが口にした「蛇神」という単語にぴんときたサクヤさん。「蛇ぃ? あ~ん、ひょっとすると主の手合いかね? はんっ! 姫さまと柚明と白花を盗られて、この上桂まで渡してたまるかい!」と思った。たぶん。


◇朝の仇を昼に討て
 章題の元ネタは慣用句の「江戸の仇を長崎で討つ」。

-葛-
「人並み以上ということは、人とは違うということですから、何かと苦労が絶えないんですよね」
-サクヤ-
「何事も普通が一番さ。出来ることなら、あたしも十人並みになりたいよ」
-葛-
「ですねー、私も同意しますよ」


葛ちゃんは日本を裏から牛耳る家に生まれ、そしてなまじ鬼切り頭としての才能があったせいで、他の跡取り候補に命を狙われたり、後継者争いで身内殺しを強要されたりと、この世の地獄を味わう羽目になった。プラス(若杉の跡継ぎ)からゼロ(一般人)になりたいのだろう。
サクヤさんのほうは判断つきかねる。月のない夜に生まれた鬼子だという引け目を感じていたので、マイナス(半端者)からゼロ(十人並み)になりたいという願望なのかもしれない。あるいは、呆れるほど長生きしても辛い別れがあるばかりだ、普通に生きて普通に死にたかったというプラス(八千代を生きる観月の民の生)からゼロ(百年を待たず終わる人の生)への願望かもしれない。


◇蛇神の影

-女将-
「お祭りを取り仕切っていたお家があったんだけれど、
ずいぶん前に急にその人達がいなくなってしまったのね」
「それで、このところ形ばかりのお祭りが続いていたの」


お祭りを取り仕切っていた一家とは、十中八九羽藤家のこと。10年前の事件後、羽藤一家は経観塚の地を後にしている。

-桂-
「それで、お祭りってどんなお祭りなんですか?」
-女将-
「それなんだけどね、オハシラサマっていう神様を祭っていること以外、詳しいことはよくわかっていないのよ」
-桂-
「オハシラサマ?」
-駅員-
「大層綺麗な娘さんだったらしいよ。ちょうどお嬢さんみたいな感じだったんじゃないかな」


秋田さんは冗談で言ったのだろうけれど、ユメイさんも姫さまも血の繋がりゆえに桂ちゃんに似ている。……本当に偶然?


◇経観塚郷土資料館


◇経観塚に伝わる昔話

 その昔、経観塚の長者の家に娘がいた。
 よい年頃の、美しく気立てのよい娘であった。
 娘の噂は近隣に知れわたり、多くの若者が求婚した。
 ところが娘は誰にも良い応えを返すことがなかった。
 都の貴人の求婚にも良い応えを返すことがなかった。
 そして最後には山の神が降りてきて言った。
「娘よ、お前は天つ神に騙し討たれ、奪われた我が祖の花嫁の血を引くものだ。私の所へ来るがよい」
 山の神は人をさらっては喰らう恐ろしい神であった。
 長者は都に使いをやり、鬼退治の武者を呼び寄せた。
 武者は必死で戦ったものの、山の神にはかなわなかった。
 そしていよいよ山の神が村にやってくるにいたり、娘は幾人かの行者を連れてきた。
 行者らは山の神と同じく人ではなかった。一行を率いる行者の額には小さな角が生えていた。
 そして他の行者らは、空に浮かぶ満月を見上げるとその姿を獣のものへと変え、山の神に挑みかかった。
 折りしも満月の夜だった。ゆえにその行者らは観月という。
 山の神は鏡のように目を光らせ、八色の雷を操り天を震わせて戦ったのだが、ついには力尽きて血に塗れた。
 こうして山の神は退治されたが、山の神が呼んだ雷は鳴り続けた。
 行者らは塚を作り、山の神を篤く祭った。
 すると雷はぴたりとやんだ。
 その時から娘の姿が見えなくなったが、観月の行者らが連れて行ったのだと言われている。
 この塚に由来し、この地は経観塚と呼ばれるようになった。
 やがて塚には塊の木が育ち、やがて月まで届くほどになった。
 この木は御柱様と呼ばれ、塚に代わって祭られるようになった。


昔話の実際のところはサクヤルート◇千年の記憶Ⅰ~Ⅳ参照のこと。オハシラサマの木が主の封印後に成長していたり、姫さまが観月の民に連れて行かれたりと、史実とはいくつかの相違点がある。口伝された伝承だからだろうか。


◇カガメ


◇良月
葛ちゃんが突然厠に立ったのは、係員と話している烏月さんが目に入ったから。
葛ちゃんの良月に関する講義は、ノゾミルートの伏線になっているのでよく聞いておくこと。632年、中臣氏(のちの藤原氏)、遣唐使によって持ち込まれた最古の鏡うんぬん。


◇いわくの鏡

-学芸員-
「……彼は、鹿之川さんは、呪いの鏡に魅入られてしまったんでしょうか?」
 呪いの……鏡?
-学芸員-
「噂は本当――かもしれ――何せ長者の――」
 ……あれ?なんだか気分が……。
(……)
 赤く光る蛇の目。
 鏡のように光る蛇の目。眼底を灼く赤に目眩を感じる。
 目の前にあるのはただ一面の赤。


十年前の一枚の鏡から引き起こされた事件のことや、ノゾミちゃんに邪視(蛇の目)で暗示をかけられた時の感覚を思い出しそうになった。

-桂-
「えっとね、あの盗まれた鏡……良月だっけ?あれが呪いの鏡だっていう話をしてた」
-桂-
「あの鏡を伝えていた、このあたりの長者の子が親族を殺したせいで、世に出ることになったいわくつきの――」
 ――あ、やっぱり気持ち悪さの渦の予感が。


長者の子=白花ちゃんが親族=正樹さんを殺した。またもや忌まわしい記憶が戻りそうになった。

-葛-
「まぁ、千年以上昔の鏡ですから、何かしらのいわくぐらい付くものです。器物は百年経つと魂を持つと言われているぐらいですし」
「ましてや、かの中臣氏――すぐに藤原姓に変わりますけど――の持ち物ですからね。権力の中心近くに据え置かれたりしたら、呪いの一つや二つも吐き出すようになりますよ。例えばそれが物でも人間でも」


葛ちゃんは一般論を語るようにして自らの境遇を愚痴っている。
権力の中心に生まれたせいで忌み子として幽閉されていたノゾミちゃんは、じっさいに良月に向かって呪いの文言を吐き続けていた。

-葛-
「……にしても、気づかれてなければいいんですけど、心配ですね」


 烏月さんに気づかれていなければいいんですけど。


◇サクヤさんの腐れ縁

-烏月-
「どうしてあなたがこんなところにいるんですか」
-サクヤ-
「こんなところって、ここはあたしの第二の故郷みたいなものだしねぇ。本当の里には帰ったところで何もないからね」
-烏月-
「………」


かなり辛辣な当てつけだ。サクヤさんの生まれ故郷である観月の民の村は、60年前の鬼切り部千羽党の襲撃で消失している。烏月さんも当事者でないとはいえ、千羽党の一員として負い目を感じているようである。サクヤルートでわだかまりが解けて、本当によかった。

-烏月-
「羽様のお屋敷ですか?」
-桂-
「わ、知ってるんですか?」
-烏月-
「有名ですからね」


先代鬼切り役の息子が鬼に憑かれて父親を惨殺し、行方を眩ましているので、10年前の事件の話題は、鬼切部の中でも千羽党ではとりわけ取りざたされたことだろう。

-サクヤ-
「まぁ、あたしがいうのも何だけど、有事の際には番犬役ぐらい勤まる奴だけどね…」


自分がいうのも何だということは、サクヤさんは自分のことを番犬のようなものだと捉えているのだろう。観月の民は狼の神格化であるし、羽藤家を見守りつづける自分の役割を番犬のようなものと捉えているのだろう。そのくせ烏月さんに「犬」と言われるとムッとしちゃうのだった。


◇サクヤさん料理中


◇夏夜に咲く花
 閃光花火は『痕』へのオマージュ。きっと。


◇お花を摘みに参ります?
 隠語。

-葛-
「私はただの葛です!家を出た時点で、若杉とは何の関係もなくなったんです!」
-烏月-
「いくら否定したところで、あなたに流れているのは若杉の血。私に千羽の血が流れているように、人が生きているかぎり、それは絶えず身体を巡っているものなのです。葛様」


烏月さんも葛ちゃんと同じく血統とお役目に束縛されている人間だ。兄殺しの罪を背負いながらもお役目を続けている烏月さんが言うからこそ重みがある。

-葛-
「人間、閉じこめられたらおしまいですよ。閉じこめられたら、そのまま朽ちていくしかないんですよ。だから私は――」


幽閉されて孤独に死にかけていたノゾミちゃんを想起させる。


◇コドク

-葛-
「むしろ、鬼切り頭としての若杉を憎んでいるサクヤさんが怖くて仕方ありませんでしたよ。いつ噛み殺されるか、ヒヤヒヤしてました」
-桂-
「サクヤさんが…?」
-葛-
「コドクで生き残るには、周りを潰さなければいけませんから。表沙汰にはなりませんけど、それに巻き込まれる人って、実は結構いるんです」
-葛-
「サクヤさんがジャーナリストになったのは、それをペンで叩くためですよ」


観月の民は60年ほど前に若杉の兄妹の権勢争いに巻き込まれて、サクヤさんを除いて一族郎党皆殺しにされている。詳細はサクヤルート◇朔の夜参照。

-ノゾミ-
「ふふふふ――」
 鈴を転がしたような笑い声を継いで響く、本物の鈴の音。
 ああ、この声は、この音は――


小さいころに聞いたことがある、と続く。過去にノゾミちゃんと桂ちゃんとの間に何かあったと予想できる。

-ノゾミ-
「私はあなたを迎えにきたのよ」
-桂-
「わたしを……迎えに……?」
-ノゾミ-
「そう――あなたは、あの女の――贄の血を引く家の子だから」


「あの女」は竹林の長者の娘、姫さまのこと。ノゾミちゃんが姫さまを「あの女」呼ばわりするのは、「主様があいつのせいで封じられてしまった」という逆恨みからだ。

 赤と黒の二色の振り袖。
 左足首には金の鈴。
 赤い瞳と、色素の薄い、毛先が少し外向きにはねたようなかぶろ髪――
 並んだふたりは鏡写しのようにそっくりで。
 ただ表情だけが似ておらず、驕慢な彼女に対して気弱に眉を下げていて。
 ああ、双子の鬼だ――(赤エフェクト)
 何でだろう、ひどく頭が痛む。


桂ちゃんの過去に「双子」に関する何かがあったということ。ノゾミちゃん、ミカゲちゃんが引き起こした事件のことであり、双子の兄、白花ちゃんが隠されたことでもある。

 背中の方から音が聞こえる。
 大気を震わす鈴の音と――
 大気を断ち切る太刀風の音と――
 ああ、なんだろう。
 なんだかずっと昔にも、こんな音を聞いたことがあるような気がする。
(……)
 私はどこかでこの景色を――
 月の光を跳ねて輝く、蒼い刃が見えた。
 見たことがあるような気がする――
 この音を聞いていると頭が痛くなってくる。


デジャヴ。10年前の事件でも、駆けつけた真弓さんとノゾミちゃん、ミカゲちゃんの間で同様の戦いが繰り広げられたのだろう。このルートの烏月さんは、既に白花ちゃんから鬼切りを伝授されているようである。


◇蛇の神の使い

-ノゾミ-
「あなた、本当に忘れてしまったのね」
 忘れたと言うことは、忘れる前は知っていたということなのだろうか。この二人の女の子が誰なのかを――
 このノゾミと名乗った女の子が、先ほどから私に向かって言っている、贄の血とは何なのかを――?

(桂と白花が良月を覗きこむCGを背景に、幼い声で)
-桂-
「にえのち?」

-桂-
「いたっ」
(……)
 さっきからもう、一体何なんだ。
 何か引っかかる。この引っかかりさえなければ少しはすっきりするというのに――


 桂ちゃんは覚えていないが、桂ちゃんと白花ちゃんは良月の封印を解いたときにノゾミちゃん・ミカゲちゃんから贄の血について説明を受けている。


◇言霊の継承


◇鏡の鬼

-サクヤ-
「双子かどうかは知らないけれど、ノゾミは主のしもべだよ」


サクヤさんが主と姫さまの一件で出会っていたのはノゾミちゃんだけである。サクヤさんにしてみれば、ノゾミちゃんの妹の存在は想定の範囲外だったのだろう。
ミカゲちゃんが姿を現したのは、主の一件の少し後、経観塚神隠し事件の前である。

-葛-
「ああ――思い出しました」
-葛-
「確かわたしのご先祖様が、ここ経観塚で起きた神隠し事件を解決しているんですよ」
-桂-
「……神隠し?」
 そういえばこのお屋敷のことを聞いたときに、そういう噂を耳にしたけど――。火のないところに煙は立たないというか、実際あったことなんだ。


 これは桂ちゃんの勘違い。
葛ちゃんの言う神隠し事件とは、主が封印された後、ノゾミちゃんとミカゲちゃんがご神木を倒すために経観塚の住民を暗示で操り、また力を蓄えるために何人かを餌食にして行方不明者が急増した件のこと。
桂ちゃんが◇だれかの写真で秋田さんから聞いた神隠し事件は、十年前に羽藤一家が突然お屋敷から姿を消したこと。まったくの別件だ。

-葛-
「その神隠しを起こした犯人は、血を吸う双子の鬼でして――。ノゾミとミカゲという、ハシラに封じられた主のしもべなんですが」
 血を吸う双子の鬼――
-葛-
「彼女たちが、主を封じた柱の封じを解こうとしたことが事件の発端なんだそうです」
 あの子たちが村人を操って、オハシラサマのご神木を切り倒そうとしたのが、その真相なんだそう。


詳細はノゾミルート◇神隠しのことにて。

-桂-
「それで、鏡がどうつながってくるの? 鏡はカガメで蛇の目なんだよね?」
-葛-
「まぁそーゆー基準で依代を選んだのかもしれませんね。あの鏡が双子の鬼の本体で――」
-葛-
「わたしのご先祖さまはその鏡を封印して、村の長者に事後を託したそうなんですが」
-桂-
「それが郷土資料館にあったってことは、寄付でもしたのかな」
 そしてその鏡が盗まれた。なるほど、それなら話がつながってくる。盗んだ人がその封印を間違えて解いてしまったりなんかしたら――(赤エフェクト)
 封印を解いてしまったりしたら――(赤エフェクト)
――あれ?何かが引っ掛かるような気がするんだけど、それが何だかわからない。何だろう。


夢に現れたオハシラサマの使いに従い、経観塚に赴いてノゾミちゃん、ミカゲちゃんを退治したのが、葛ちゃんのご先祖である若杉某だ。
村の長者とは羽藤家のこと。桂ちゃんは「間違えて」「封印」「解く」という単語に既視感を覚えた。言わずもがな十年前の事件である。

-葛-
「――つながりましたね。桂おねーさんが最初に襲われた赤い蛇と、昨夜の双子の鬼と、盗まれた鏡とが」
(……)
-葛-
「こーなってきますと、烏月さんの追っている鬼も関係してきそーな勢いですね」


関係しているというか、白花ちゃんは良月の封印を解いてノゾミちゃん、ミカゲちゃんを復活させてしまった張本人だ。

-千羽-
「私の追っているこの鬼も――」(略)
-千羽-
「盗難事件の起きる前日、郷土資料館に入館しているそうです」
-桂-
「じゃあ、この男の子――」
-桂-
「えっと、鬼が、鏡を盗んだ犯人なんですか?」
-烏月-
「いえ、犯人はその翌日に変死体として発見されました。とはいえ、何かしら関わりがあると見ていいでしょう」


 良月はノゾミちゃんとミカゲちゃんの虜になった鹿之川さんがケイくんと一足違いで持ち出してしまった。
白花ちゃんが資料館に侵入したのは良月を破壊するためだ。ノゾミちゃん、ミカゲちゃんの封印を興味本位で解いてしまい、多くの災禍を引き起こしてしまったことへのけじめだろう。
 ちなみに、白花ちゃんと鹿之川さんには何の繋がりもない。

-葛-
「私が柱の封じを張りなおします」
-桂-
「そんなことできるの?」
-葛-
「何か尾花の《力》で、最初に封じを施した約行者小角と近いことができるらしーんですよ」
-サクヤ-
「まぁ、できるんじゃないかね…」
-桂-
「わ、サクヤさん根拠あっての発言?」
-サクヤ-
「あー、いや、別に」


(小角様は贄の血の力を使えたからこそ主を封じられたわけだけど、尾花が憑いた今の葛なら、桂の血を飲めば同等のことはできるんじゃないかねぇ)


◇言霊の神

 何だろう――
 胸が苦しくなるこの感覚は、この甘やかでどこか懐かしい花の香りが立ち込めているせいだろうか。
 この木は――
 あの人は――
 私のことを良く知っている、この木に依ったあの神様は――(赤エフェクト)


わたしの大切なお姉ちゃんだったのだ、とか続く。たぶん。

-葛-
「ところで、ぶっちゃけた質問なんですけれど――」
 恭しく頭を下げたオハシラサマが顔を上げると、間髪いれずに葛ちゃんが切り込んだ。
-葛-
「あなたは最初に役行者小角に封じのハシラとしてここに祭られたお方ではありませんね」(略)
 口にする機会を逸してしまった胸のもやもやさえ忘れて周りの反応をうかがうと、千羽さんはいつものポーカーフェイス。
 表情の読みやすいサクヤさんも少し反応して見せただけで、おろおろしているのはわたし一人。


初代オハシラサマの姫さまは、10年前の事件時にノゾミちゃん、ミカゲちゃんの奸計で無に還ってしまっている。ユメイさんはハシラの継ぎ手で二代目に当たる。事情を知っているサクヤさんは思わず反応してしまった。

-葛-
「オハシラサマが、あなたのように形を成して姿を現していること自体が、とても異例なことなんです」
 少なくとも鬼切り部に伝わる千年の記録の中には、オハシラサマが人の姿で顕現したことがないのだそう。 
 神隠しの事件があって、葛ちゃんのご先祖様がこの地を訪れた昔も、夢見に使いの蝶が現れただけだという。


オハシラサマの使いの蝶はサクヤルート◇溶ける花びらでも現れていて、笑子さんを導くことでサクヤさんの命を救っている。姫さまの人格や思念はおぼろげながらも残っていたのだろう。

-サクヤ-
「なあ(ユメイ)、今ならまだ引けるんだよ?」
-サクヤ-
「葛さえその気になってくれれば、普通の人間に戻ることだってできるんだよ?」
 それはきっと、忠告のフリをした消えないでほしいという願い。


サクヤさん、桂ちゃんの手前でも本音を押し隠せなかったんだろう……。サクヤさんとユメイさんの生前の仲の良さが伺える。


◇尻尾が弱点?


◇封じの柱の義

-葛-
「ああ、そーです。心残りがあるとそれが思わぬ抵抗になってしまったりもしますから、他にあるなら言うだけ言ってみて下さい」
-オハシラサマ-
「では――主の分霊に取り憑かれて鬼になってしまった子がいるんですけれど――」
-千羽-
「………」
-オハシラサマ-
「その子のことも、お願いしてよろしいでしょうか?」


オハシラサマ=ユメイさんにとって、その子は遺言で気に掛けるほどの大事な存在だということだ。先に烏月ルートをクリアしている人は「主の分霊に取り憑かれて鬼になってしまった子」がケイくんのことだとわかるだろう。この時点でユメイさんとケイくんに何がしかの繋がりがあることは確定する。


◇漂白夢


◇積極攻勢

-サクヤ-
「とりあえず、操られているだけの一般人を傷つけるのは世間体がよくないから、あたしが素手でとっつかまえるよ。一般人同士ね」
-烏月-
「…………」


サクヤさんの正体のヒント。要するにサクヤさんは一般人ではないということだ。


◇二度目の忘却

-葛-
「……さて、何かあっさりでしたけど、事件は解決しましたね」
-烏月-
「いえ、葛様。私の追っている鬼が行方を眩ませたままです」
-葛-
「いえ、終わってますよね烏月さん。そーじゃありませんか?」
-千羽-
「……ええ。そうでした」(略)
-葛-
「桂おねーさんは自分の町に帰ってください。経験者から言わせてもらえば、骨肉の争いほど嫌なものはありませんから」
-桂-
「えっ!?それはどういう――」


 葛ちゃんはコドクで親族を殺している。
烏月ルートを先にクリアしている人は、「烏月さんの追っている鬼」がケイくんであることを知っているので、骨肉の争い? ということはケイくんは桂ちゃんの身内なんだろうか? と推理を進められるはずだ。


◇彼岸と此岸

-葛-
「……お互い別れが辛いなら、やっぱり、忘れさせない方が良かったかも知れないです」
-白花-
「そうかもしれないけれど、どんなに後悔しても、時間を巻き戻すことはできないんだ」


白花ちゃんが言うと重みがあるセリフだ。


◇彼岸の花をつかまえて

 例えば、今さっきすれ違った兄妹らしき人たちは――
-桂-
「……あ」
 わたしたちと同じぐらいの年頃の男の子にも、何とはなしの懐かしさを感じるんだけれどそれよりも。


プレイヤーは先に「彼岸と此岸」を見ているので、一枚絵からこの「年頃の男の子」が烏月さんが追っていた少年であることはわかるはずだ。桂ちゃんとこの少年――烏月ルートを先にクリアした人にとっては、ケイくん――にも何か因縁があるのかな? と勘ぐること。


全ルート共通部
千羽烏月ルート
若杉葛ルート
浅間サクヤルート
ユメイルート

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tags: アカイイト 考察 
2010年09月04日

東方・アカイイト元ネタ比較(便乗)

このタイミングで主題歌公開とかGJすぎる
第二回、東方・アカイイト系列作品元ネタ比較

 私も永夜抄との被りにはワクワクした。奇しくもこの両作品は同時期と言っていいほど近くに発売されている(永夜抄:2004年8月15日、アカイイト:2004年10月21日)。伝奇ゲーはイザナギ・イザナミと同じくらいかぐや姫ネタが好きだなぁ。今度エロゲーになるらしい『○○の○』とか。あれは元から性描写をおおっぴらにほのめかしていたんで今更感がもの凄い。
 リハビリがてら他人の記事に乗っかってみんとす。DG_Lawさんの記事は地霊殿発売前に書かれたものなので、すでにお気づきかもしれないけれど。

 烏月さんの通う北斗学院付属高校の校章と『東方地霊殿』3面ボスである星熊勇儀のデザインについて。校章? はて、そんなもの本編のどのシーンで見られただろうかと首をかしげている人も多いと思うが、実は『設定解説ファンブック』のラフイラスト集に描かれている。ドラマCDでも葛ちゃんが「熊と変形月星は、北斗学院付属の校章ですけど」なんて言っていたけれど。設定解説ファンブックをまだ買っていないふとどき者のためにがんばって模写してみた(^^。
北斗学院附属高校校章
千葉氏の家紋
 千羽家のモデルである千葉氏の家紋。
千葉氏 - Wikipedia
神話伝承 千葉氏と妙見信仰
おおぐま・こぐま座のページ
 おおぐま座は北斗七星を、こぐま座は北極星を含んでいる。
 北斗学院附属高校は、名前からして千羽家と縁のある高校に違いない。千羽家も元ネタの千葉氏と同じく妙見菩薩を信仰している。以前ドラマCDの考察でも書いたが、千羽家に伝わる千羽妙見流の妙見とは、北斗七星・北極星を神格化した妙見菩薩のことだ。そして妙見流のモデルになっている北辰一刀流(創始者は千葉周作)の“北辰”も北極星のことである。このあたりよく考えられている。

 勇儀は参考になる絵が見つからなかったのでプレイ動画を貼っつける。

星熊勇儀 - 東方元ネタWiki
 二次絵は星を省略しすぎでしょう……。原作の勇儀には、長い角に北極星が、杯に北斗七星が描かれている。これは単純に元ネタの星熊童子→星座の熊という言葉遊びなのかと思ったが、勇儀や萃香の本拠地だった大江山で、妙見信仰が根強く残っていたこと、酒呑童子(いうまでもなく萃香の元ネタ)の供養碑が山中の妙見堂境内にあることにも掛けてあるらしい。 これまたよく考えられているなぁ。

 もう一つ『東方星蓮船』のEXボスである封獣ぬえに関しても気づいたことがあるんだけれど……あれはアオイシロネタなのでDGさんにお任せします。

大変、参考にさせていただいたサイト様
Ewig Leere
星熊 勇儀考察

アカイイト 設定解説ファンブック (JIVE FAN BOOK SERIES)アカイイト 設定解説ファンブック (JIVE FAN BOOK SERIES)
(2004/12)
アカイイトファンブック制作委員会

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2009年11月27日

アカイイトドラマCD「京洛降魔」考察・解説

 通常版ドラマCDが後追いファンに行き渡るにつれて、ノーカット台本難民の「オチがよう分からん!」「鈴鹿さんって結局誰だったの?」「あの鬼、ずいぶん騒いだ割には弱くね?」という声が聞こえてくるようになったので、いっちょ解説でも書いてみんとす。

Q.あのでかい鬼は何だったの? 弱すぎじゃない?
A.宇治の平等院に封印されていた、中世三大妖怪の一人、大嶽丸の分霊。なぜ烏月さんがあっさり倒せたのかは後述。

Q.鈴鹿さんって誰だったの?
A.鈴鹿山に棲んでいた鬼女。平安時代の鬼切り役である坂上田村麻呂の妻。我が背の君と宝剣が要になった封印が破れてしまい、宿敵の大嶽丸が宝剣を取り戻そうとしていたので、それを阻止すべく現代に復活した。

「憑いているのね。立烏帽子を被った、男装(おとこなり)の」
「祓いましょう。私がこの手で祓いましょう。かの鬼切りの将が妻(め)として、代わりに祓い鎮めましょう」


 立烏帽子は鈴鹿御前の別称でもある。

「鈴鹿の山におりましたので、斯様な名前で呼ばれていました」
「ふんっ、鈴鹿の山に住む鬼ね」


 鈴鹿さん……鈴鹿御前の設定は文献によってまちまちで、話によっては盗賊の女首領だったり、大嶽丸を討つために天から下った天女だったり、天竺第四天魔王の娘で、本当は大嶽丸に嫁入りするはずだったのが坂上田村麻呂に一目惚れして大嶽丸を切るのに協力したり、はては東北の鬼と結託して日本転覆を企んで切られたりするが、とりあえずアカイイト世界では、鈴鹿の山に棲んでいた鬼で、坂上田村麻呂が大嶽丸を討つのに協力し、その後田村麻呂の妻になったという設定らしい。

Q.三振りの宝剣って何のこったい。
A.鈴鹿さんの愛刀だった大通連(だいつうれん)、小通連(しょうつうれん)、釼明(じんみょう)のこと。もともとは大嶽丸の刀で、野郎の《力》が込められている。大嶽丸がこのうちの一本でも持っている限り、どんな致命傷を負っても死ぬことはない。三振りのうち京都の結界に利用されていた一振りを奪われたせいで、分霊程度が不死身の鬼に変質した。


京洛降魔
桂、落語(゚д゚)ウマー。
秋晴れのキョウ、旅するコト。
秋晴れの今日or京、旅する古都or事。


「わかりました。そちらは現状の対処で構いませんから、宇治の宝蔵を確認しておいてください。二度あることは三度あると言いますから、念を入れておきましょう」


 葛ちゃんが真っ先に宇治の平等院を調べろと指示したのは、凶悪な鬼であり、以前も退治したのに復活した(鈴鹿さんたちが三振りの宝剣のうち二振りしか奪えなかったから、らしい)大嶽丸が再び甦っていないかどうか早急に確認する必要があったから。


 台本では「眠らない子は育てない」の前に「身軽な装備のお嬢さん」があったが、「基本はやっぱり奈良・京都」にまとめられている。


「そうじゃなくて、呼び鈴を……。その、ここアパートですし」
「あたしは古い人間だから、こっちのほうが馴染むんだよ」


 『花影抄』は御大が速攻で設定を忘れていたのか、渡瀬優がドラマCDを聞いてなかったのか。


「そして、今回綻びたのは、偉大な鬼切り役のもの。はるか遠くの陸奥国(みちのくに)、七振りの宝剣を埋め、七つの社を築き、七星の陣を持って鬼を封じた毘沙門天の化身の墓です。死してなお護国の礎となるべく、宝剣を佩いた(はいた)立ち姿のまま葬られ」
「有事の際には鳴動して知らせるという、将軍塚が……」


 前述した通り、偉大な鬼切り役とは坂上田村麻呂のこと。アカイイトの設定では、陸奥国にも鬼を切るために赴いたことになっているようだ。毘沙門天といえば、山科の毘沙門堂は田村麻呂建立だとか。ちなみに立ち姿のままの埋葬は天皇直々のお達しによる。


頼光(らいこう)ゆかりの四家(ノーカット台本のみ)
 おそらく源頼光の家来で共に鬼を退治した頼光四天王(渡辺綱・坂田金時・卜部季武・碓井貞光)の家系のこと。アカイイトで何度か名前が出てくる渡辺党はこのうちの一家。有力党なんだな。


熊と変形月星は、北斗学院付属の校章
 『アカイイト 設定解説ファンブック』でこの校章が拝める。おそらく北斗学院付属は千羽の息がかかった(?)学校なのだろう。千羽妙見流の妙見とは北斗七星を神格化した妙見菩薩のことである。熊はおおぐま座(北斗七星を含んでいる)。変形月星ってのはパキスタンの国旗みたいなやつね。


 ノーカット台本には「清水の舞台から」の後に幻のトラック「京都は盆地で四方山(恒例の蘊蓄話)」が載っている("(恒例の蘊蓄話)"まで含めて章題ね)。オチが性急だと言われるのは、ここの蘊蓄が時間の関係上丸々削られているせいじゃないかと思う。

「だけど義経が赤ちゃんの時って、弁慶全然関係ないよね?何で清水寺に、弁慶の鉄下駄とか、銀杖があったんだろう?」
「そりゃあ関係あるからですよ。義経,弁慶と戦って主従関係結ぶじゃないですか」
「『京の五条の橋の上ー♪』ってやつだよね」
「ところが実際に戦ったのは、清水寺の舞台だったのですよ」
「『義経記』によれば、ですけどね」
「えーっ!? 橋ならともかく清水の舞台で? 弁慶が振るう薙刀を、ひらりひらりと身軽によけて、怒り心頭・渾身の一撃を、欄干に飛び乗ってかわしたりするのに?」
「藤原成道という大納言は、蹴鞠をしながらその欄干を、渡り歩いたとのことですよ、武術の何たるかを叩き込まれた義経なら、その程度は楽勝です」

(ノーカット台本のみ)


 とりあえずここだけでも読んでおくべし。ほかにも義経の双子の話とか面白いんだけどな~。


「加えて、宇治から結構な大物が逃げたかも、なんて報告が入りました。大頭(だいず)は残ってましたから、最悪でも本来の何千分のいくつか程度の分霊だろう、というのが不幸中の幸いというか」
「宇治の…?おいおい、勘弁しとくれよ……」
「サクヤさん、宇治から逃げた鬼は、そんなに?」
「何千分かの分霊なら烏月で充分だろうさ。だけど、あれを手に入れられたら……」
「あれ?」
「しっかりしとくれ、鬼切り頭。将軍塚の要が何か、知らないわけじゃないだろう」
「――っ!!」


 大頭……大嶽丸の首。三大妖怪の残りの二人、酒天童子の首、玉藻前の亡骸と一緒に宇治の平等院に封印されている。将軍塚……倒壊した坂上田村麻呂の墓所。将軍塚の要は大嶽丸の不死身の力が封印された三振りの宝剣のうちの一本だから、これを奴の分霊に奪われたらまずいんじゃないかという話。


「わかりました。緊急措置として、適当な物で塚を立て直してください。はい、長持ちしなくていいですから、とはいえ、代わりになるようなのは……。そうですね、安綱を使いましょう。ええ、上野にあるやつではなく、桓武崩御の年の」


 現在上野の東京国立博物館に展示されている安綱は、大同元年(806)頃に制作された、頼光が酒呑童子を切った童子切安綱とは別物らしい。

「仕方がないので安綱を使いましょう。ええ、上野にあるやつではなく、桓武崩御の年の。いちおう同格の鬼王を切ってますから呪物としても――え? 渡辺党がうるさい? ああ、欲しがってましたしねぇ……」

(ノーカット台本)


 同格の鬼王とは酒呑童子のこと。大嶽丸と酒呑童子と玉藻前で「三大妖怪」と言うとか言わないとか。渡辺党が安綱を欲しがっているのは、渡辺党の遠祖である渡辺綱と縁が深い頼光が使っていた刀だから、かな。


オン・バサラ・タラマ・キリク・ソワカ
 千手観音の真言。オン・~~~・ソワカはサンスクリット語で、「私は××様に帰依します。(だから)~~~を成就させて下さい」という意味だとか。なぜ鈴鹿さんが千手観音の真言を使うかというと、我が背の君の坂上田村麻呂が千手観音の力を借りて鬼を退治していたのに肖っているのだろう。田村麻呂も鬼を切るときに「オン・バサラ・タラマ・キリク・ソワカ」と唱えていたんだろうね。


じゅうぶん級
重文級。重要文化財級。


「くだんの鬼は自分の力を三振りの宝剣に込めてましてね。いわば外付けの命みたいなもので、それを持ってる限り倒れないんですよ」
「故に私たちは策を弄してそれを奪い、鬼の首を取ったのです」
「その後、宝剣のうち一振りは、封じの要として再利用されていましたが、現在は鬼の手の中に。一振りは元より行方知れず。もう一振りはどこかに封じられた、ということだけ伝わっていたんですけど……」
「私はそこを知っています」
「それで、そのもう一振りってのはどこにあるんだい?」
「音羽山清水寺――我が背の君が開いた寺の、十一面千住観音像の中に」


 大嶽丸は絶世の美女である鈴鹿さんに激しく求愛していたが、にべもなく突っぱねられていた。鈴鹿さんは大嶽丸の恋心に付け入り、「坂上田村麻呂という人間が私の首を狙っている。身を守るために貴方の宝剣を貸してくれませんか」と嘘八百を並べて、大嶽丸の《力》の源である宝剣を二振り奪うことに成功したのだった。もう一振りは大嶽丸が叔父に貸していたとか。


「いや、あたし一人じゃ無理だった。元気のいい鬼切り役が張り切ってて……あ、吹っ飛ばされた」(略)
「渡辺党の鬼切り役は、腕ごと奪おうとしてたみたいだけどね、結果はご覧の通りなわけさ」


 この鬼切り役は渡辺威(あきら)さん。『コクジョウ』の登場人物である渡辺丞(たすく)さんの孫。

◇渡辺党
 千羽党と同じく現身を持つ鬼を切ることに特化した剣術を伝えている。
 本家の嫡男には一字名をつけるしきたりがある。
 現在の鬼切り役は渡辺威(あきら)。千羽党の先代鬼切り役・千羽明良とは年も近くライバル兼任の親友だった。

(アカイイト用語辞典)


「コクジョウ」「アカジル」「wakasugi.orz」って何?

「……さーて、早速お出ましだ。はははっ、渡辺党の鬼切り役、ずいぶん張り切ってるじゃないかい。ああいうところは爺さんの丞にそっくりだね」

(ノーカット台本のみ)


 口振りからすると丞さんには好感を持っているらしい。

「渡辺党の鬼切り役は、腕ごと奪おうとしてたみたいだけどね、結果はご覧の通りなわけさ」
「仕方ありませんよ。羅城門の鬼ならいざしらず」


 九条の羅城門に棲み着き、通りがかる人を喰らっていた茨木童子という鬼のこと。伝承によって細部は違うが、渡辺綱(渡辺党の大元)に片腕を切り落とされる。酒呑童子ら三大妖怪と比べると格が落ちる鬼なのでいざ知らずと。


「鈴鹿さん! 今さらなんですけど、本当に力を打ち消したりできるんですか?」
「もしできないとか言われたらどうするんだい」
「それこそ忠明のように、飛び降りて逃げるしかないでしょう」


 高校の古典の授業でお馴染み、宇治拾遺物語『検非違使忠明』で、ゴロツキの群れから逃げるために清水の舞台からパラシュートダイブした忠明さん。


「降魔の剣」の解説
 アカイイトの世界観では、戦いにおける天の時、地の利、人の和と言霊の力は、時に如何ともし難い戦力差をひっくり返すほどの重要なファクターである。主と対決したときのサクヤさんには、天の利(羅睺)と人の利(贄の血を引く娘→桂、娘を護る羅睺に縁ある者→サクヤ、蛇神→主)があったが、今回の烏月さんには地の利と人の利があった。

「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず――と、唐渡りの書にも記されておれば、こちらは十分に用意をさせてもらったぞ」
「観月の女神は天に在す機織り女。おぬしを服した武葉槌も文を織る神であったな」
「加えて今夜は満月。我らは最大の加護を得ることができる」
「地の利は元よりこちらにある。それに天の利、人の利が加わった今、おぬしに勝ちの目はあるまい」

(◇千年の記憶Ⅲ 黙示録)


 観月の民の連合軍と主の闘いでは葦原中国の平定が、サクヤさんと主との対決では須佐之男命の八岐大蛇退治が準えられていたように、今回は義経と弁慶の決闘の構図が再現されていた。舞台はそのまま(義経と清水の舞台の蘊蓄が伏線)で、弁慶は分霊(力自慢の巨躯)である。そして九郎義経は烏月さんだが、烏月さんはこの人と何かと共通点がある。まず姓の烏の字がからす→crow→クロウで繋がっている(この洒落は本編でサクヤさんが言っていたような)。加えて、あまり知られていない設定だが、維斗は流れ星を打ち鍛えた刀である。同人誌の『いつかのひかり』にぽつりと書いてあった。本編では浅間の長が「天狗の太刀」と言っていた記憶がある。昔の人は、流れ星を天狗が燃えるほどの速さで空を駆けているのだと考えていたそうだ。

楓「遠い遠いご先祖様たちはね。空を自由に駆けて、流れ星だって言われてたのよ。私もそんな風に言われたい」

(青空がっこのせんせい君。)


 烏月さんと義経は共に天狗と縁がある。また、文献によっては義経は決闘時に女装をしている。義経が女性の創作物もある。
 サクヤさんに須佐之男命の蛇神殺しの《力》が発現したように、烏月さんにも義経の天狗譲りの《力》が宿り、大嶽丸の分霊を圧倒したのだった。弁慶の立ち位置にある分霊には端から勝ちの目がなかった。

-葵-
「それはこの儀式が、見立てだからに尽きるわね」
-綾代-
「……見立て?」
-葵-
「概念がわかりやすいのは、やっぱり呪いの藁人形とかそのへんかしら?」
「藁人形は人の形をしている。だからそれに五寸釘を打ち込めば、藁人形に似ている人にも五寸釘を打ち込んだ影響が出るはずだ――」
「専門用語では類感呪術って言うんだけど、神社でやるお神楽なんかにもそういった面があるのね」
「神話や伝説を舞楽にして演じることで、演者に神を降ろしたり、神話自体を顕現させたりするわけ」
「つまり、神代の再演――」

(『アオイシロ』)


2008/05/24
 アオイシロにわかりやすい解説があったので引用。
2009/11/27
 東方風神録をプレイしていたら唐突に思いだしたことがあったので加筆。 

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tags: アカイイト 考察 
2008年04月18日

サクヤさんのライター業が振るわず、写真が評価されているワケ

 彼女、浅間サクヤさんはお母さんの古くからの友人で、ルポライター兼フォトグラファー。
 日本人離れしたプロポーションと、くっきりとした顔立ちは、時折撮る側ではなく撮られる側に間違われるぐらい。
 とはいえ腕前だって大したもの。今ではフォトグラファー兼、と順番をひっくり返した方が通りがいいらしい。もっぱら稼ぎは写真がメイン。

(◇温泉でばったり)


 にしても一匹狼って、権力に媚びないフリーのルポライターってことを指して言ってるのかな?
 サクヤさんがしがないフリーで、しかも写真家としての方が売れてるのって、いろいろあってスポイルされちゃったせいだとか?

(◇千客万来の夜)


-葛-
「むしろ、鬼切り頭としての若杉を憎んでいるサクヤさんが怖くて仕方ありませんでしたよ。いつ噛み殺されるか、ヒヤヒヤしてました」
-桂-
「サクヤさんが…?」
-葛-
「コドクで生き残るには、周りを潰さなければいけませんから。表沙汰にはなりませんけど、それに巻き込まれる人って、実は結構いるんです」
-葛-
「サクヤさんがジャーナリストになったのは、それをペンで叩くためですよ」

(◇コドク)


 桂ちゃんが言っているように、若杉は、駆け出しの頃のサクヤさんが致命的になりかねないスキャンダルを公表しようとしたことに泡を喰い、出版業界全体に浅間サクヤの記事を採らないよう圧力をかけたのだろう。戦後五十年経った今でもその影響が残っていて、サクヤさんは今でも半ば干されているような状態なのではないだろうか。また、物書きは復讐のためにやむなく始めた稼業であり、元々サクヤさんには性格的、性質的に向いていないのかもしれない。
 ライター業とは正反対に、趣味の延長程度の軽い気持ちで始めた写真業が高く評価され受け入れられているのは、サクヤさん本来の感性、人となり、死生観といったものが自然に表れているからだろう。サクヤさんの天職はまちがいなくこっちだ。
 この記事は冬枯れの街さんの記事を参考にさせていただいた。謹んでお礼申し上げる。

 サクヤがその圧倒的な生の長さからくる親しき者の死を看取らなければならないという悲しみ、相対的に露になる他の生命の儚さからいかに逃れているか。それが写真家という職業であり、引越しにおいて明らかになっているように大切にしている、執着している「モノ」がのは写真のみという事実である。壊れやすい「モノ」たちを「永遠」にする道具としての写真、彼女がファインダー越しに見つめるものを考えると、時折垣間見せているが(飲酒時など)日常で見せている底抜けの明るさが虚構であることが痛いほどに伝わってくる。

(-「アカイイト」 愛を贖うのはただ自ら流した血によって-)



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tags: アカイイト 考察 
2008年04月12日

ノゾミちゃんの「不出来な子」

 ノゾミちゃんは何かにつけて他人を不出来呼ばわりする。

-ノゾミ-
「でも、あなたたちに外に出られたら、また良月の中に戻るか、呪符を剥がすしかしないといけなくなるのね」
 面倒だとばかりにため息。
-ノゾミ-
「ミカゲ、傀儡に呪符を剥がさせて」
-ノゾミ-
「そうよ、そうすれば良月を持ってこさせる必要なんてなかったのに」
-ミカゲ-
「ですが姉さま――」
-ノゾミ-
「そこまで考えが至らないなんて、やっぱりあなたは不出来な子ね」

(◇剣・鏡・魂)


-ミカゲ-
「お初にお目にかかります。私はミカゲ。ノゾミお姉さまの妹です」
-ノゾミ-
「よろしくしてあげてちょうだい。同じ不出来な子ですもの。仲良くなれるんじゃないかしら?」
-サクヤ-
「ちっ……」

(◇シシャ)


-ミカゲ-
「それに、最後の観月の民も」
-ノゾミ-
「来るのね、あの不出来な子が――」

(◇血海)


-サクヤ-
「烏月、こんな連中はさっさと片付けて先に行くよ!」
-ノゾミ-
「あら、こんな連中ですって――」
 怒りに瞳を赤く染めたノゾミちゃんが、足を踏み鳴らして柳眉を逆立てる。
-ノゾミ-
「観月の民の出来そこないが、ずいぶんと失礼なことを言うのね」

(◇道を阻むもの)


 在りし日のノゾミちゃんは生まれつきの虚弱体質で、不治の病を患っていて、その所為で妹の代わりに忌み子にされてしまった。こういった言葉を他人にぶつけるのは自身のトラウマ、コンプレックスの裏返しなのだろう。

-ノゾミ-
「知っているわ。人間のもろさなんて嫌になるほど。病にはかかるし、すぐに死んでしまうし」

(◇ラクジツ)


 ああ、そうか――
-ノゾミ-
「あなたも捨てられてしまったのね?」
 いつかの私と同じように。
-ノゾミ-
「少しは言い返しなさいな、情けない子。私は弱い子は嫌いよ」
 いつかの自分を見ているようで。

(◇影見)



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2008年04月11日

サクヤさんの「半端者」と「間に合わない」

“半端者”

-サクヤ-
「何を期待していたのかは知らないけど、あたしは観月としては半端者だからね」
-桂-
「そうなの?」
-サクヤ-
「でもまぁ、怖がられないで良かったよ」

(◇リカオーン)


-千羽-
「……サクヤさん、先に行きます」
「望月の夜の観月の足なら、楽に追いつくはずですから」
-サクヤ-
「知らないのかい。あたしは半端者だから、四本足にはなれないんだよ」

(◇封じの綻び)


-葛-
「人並み以上ということは、人とは違うということですから、何かと苦労が絶えないんですよね」
-サクヤ-
「何事も普通が一番さ。出来ることなら、あたしも十人並みになりたいよ」

(◇朝の仇を昼に討て)


 この自嘲まじりの自称が表していることは二つ。一つは、姫さまや浅間の村の仲間といった「たいせつなひと」が命を落とさんとしている時に、何もすることが出来なかった自分に対する不信や嫌悪である。二つ目は、自分が人にあらざる鬼であること、特異な生まれのせいで仲間内でも疎外感を感じていたこと、人と同じ時間を歩めないせいで何度も一人残されてきたこと、つまりは「人と同じでない」ことに対するコンプレックスである。これには笑子さんや真弓さんの死が強く影響している。

“間に合わない”

-サクヤ-
「何とか……ギリギリ間に合ったねぇ……」
-桂-
「……サクヤ……さん?」
-サクヤ-
「また間に合わないかと思ったよ。まったく、心臓に悪いことさせるんじゃないよ」


-桂-
「だから、放して」
-サクヤ-
「ばか言ってるんじゃないよ!」
 右の手首に痛みが走った。
-サクヤ-
「せっかくこうして間に合ったのに、なんでそんなことしなくちゃならないのさ」

(◇命繋ぐ手)


-ノゾミ-
「でも、本当にまた会えて嬉しいわ」
-サクヤ-
「こっちは嬉しくも何ともないよ。あんたらは、この世から消え失せたものとばかり思ってたんだ。それを今さらのこのこと……っ!」
-ノゾミ-
「あら?あなたが今さらだなんて言うの?」
-ミカゲ-
「間に合わなかったあなたが言うの?」
-ノゾミ-
「今だって遅かったものね。この――」
-ミカゲ
「代わりのハシラが来なければ、間に合ったのかは怪しいところ」


-オハシラサマ-
「それではサクヤさん。桂ちゃんのこと、よろしくお願いします」
-サクヤ-
「いや、こっちこそ助かったよ。あいつらの言うとおり、また間に合わないところだった」

(◇シシャ)


 サクヤさんの「大切な人がいなくなってしまう」ことに対する病的なまでの恐れがひしひしと伝わってくる。その長き人生で、何人もの大切な人を不条理にも奪われ(姫さま、観月の仲間、正樹、白花、ユメイ)、多くの人の死を看取ってきた(笑子さん、真弓さん)彼女の心がどれほど傷ついているか、察するに余りある。

 かちかちと歯を鳴らすわたしの隣で、ぎりぎりと歯を鳴らす音が聞こえた。
 瞳にきんの光を灯して、サクヤさんはご神木を睨みつけている。
-サクヤ-
「……あたしはまた、間に合わなかったのか」
 ご神木からすでに事切れているのだろう男の子に目を落として、握った拳を震わせた。
 伏せた顔から落ちた何かが――
 血溜まりに浮いた月を揺らした。

(◇赤い鬼神)



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2008年01月08日

ユメイルート

ユメイ(ルート)に関する伏線
千羽烏月(ルート)に関する伏線
ノゾミ(ルート)に関する伏線
浅間サクヤ(ルート)に関する伏線
若杉葛(ルート)に関する伏線


※烏月ルートとの共通部は省略

◇幻視行
 詳しい解説は◇それは物語の予兆◇タソガレ◇ナクシタヒ◇幻視行にて。

 ぐるりと(お屋敷を)一通り見てまわる。改めて、とても広かった。
 私が小さい子供なら、走り出したくなるほど広い。
 鬼ごっこ。隠れ鬼。家の中だけで十分に遊べる。


 鬼という単語を口にした桂ちゃんに他意はないのけれど(このルートではまだ存在を知らない)、既に烏月・葛・サクヤルートでノゾミカゲちゃんや主に痛い目に遭っているプレイヤーはギクリと(あるいはニヤリと)する。うまいね。


◇ハシラトケイ
 (背比べの傷がある)柱と桂、ハシラ(の継ぎ手になった柚明さん)と桂、(桂ちゃんが幻視をするきっかけになった)柱時計。


◇緑樹の導き

-ケイ-
「そして、ここには近づかないほうがいい」
-桂-
「どうして……」
-ケイ-
「どうしてもだよ」
 理由はさっぱりだったけど、私のためを思ってくれているのだけは伝わってきた。
 それは夢の中のあの人の「駄目」と同じ響きを持っていて――


ユメイさんとケイくんの類似性、繋がりを意識させている。

-桂-
「それよりこの木、すごく大きいですね?」
-ケイ-
「相当、樹齢のある木だからね」
「木鬼っていう木なんだけど、『寿命を延ばす』って字を当てることもあるんだ」
 延寿――
-桂-
「ヘー、それでこんなに育ったんだ」
-ケイ-
「延ばすのは人の寿命なんだけどね。花も実も葉も樹皮から根まで、無駄なく薬になる木だから」
-桂-
「わ、植物博士?」
-ケイ-
「たまたまだよ。この木には縁があってね」
-桂-
「へぇ、縁ですか……」
 同じ「えんじゅ」を当てるなら、その字を当てた「縁樹」の方が、私には浮かびやすい。
-桂-
「なるほど、思い出の場所とか?」
-ケイ-
「そうだね。この木は僕の大事な人の分身みたいなものだから」


分身というか、本体というか。


◇なんでこんなところに?

 …………
 ……まて、わたし。
 お母さんの昔からの友達で、私がランドセル背負ってたころから、年格好の変わっていないサクヤさんって……


サクヤさんの正体のヒント。10年経っても年格好が変わらないのは、いくら何でも人間離れしている。桂ちゃんはにぶすぎ。

-サクヤ-
「なるほど……」
 珠に落としたサクヤさんの瞳はやけに真剣で、ためつすがめつ。
-サクヤ-
「やっぱり薄くなってるか」
-桂-
「え?何が薄いの?」
-サクヤ-
「ああ、色だよ色。青金石にしちゃあ金の粒が見えないし、藍より空色に近いだろう?」
-桂-
「はぁ」
 サクヤさんの興味は白い蝶の模様じゃなくて、石そのものに向いていたらしい。それをごまかすような、少し慌てた口調だった。


サクヤさんの興味は、真弓さんが石に込めた力が薄くなっていないかどうか。サクヤさんも《力》を視る能力だけはあるらしい。


◇雨のにおい

-サクヤ-
「あー、いやな天気だねぇ。こりゃあ近いうちに一雨くるよ」
-桂-
「見てないのにわかるの?」
-サクヤ-
「わかるさ。空気の匂いとかでねぇ」(略)
-桂-
「そういうのって、職業柄?」
-サクヤ-
「いや、天気予報が得意なのは生まれつきさね。あたしの家系は鼻が利くんだよ」


サクヤさんの正体のヒント。言うまでもなく「あたしの家系」とは観月の民のこと。サクヤさんの人並み外れた嗅覚は◇不法侵入などでも強調されている。


◇オハシラサマ

 にっこりと上品に微笑み、どこからともなく取り出した名刺を差し出すサクヤさん。
-サクヤ-
「浅間サクヤと申します」
-女将-
「あらあら、ルポライターでフォトグラファーなんですね」
-サクヤ-
「はい。文章では主に政経面について。写真は山や野生動物など、自然を主に扱っております」


「ルポライター」という単語自体がサクヤさんの正体のヒント。美人独身二十歳なら「ジャーナリスト」か「フリーライター」を使うだろう。

-女将-
「お祭りを取り仕切っていたお家があったんだけど、ずいぶんと前にその人たちがいなくなってしまったのね」
「それで、ここのところ形ばかりのお祭りが続いていたの」
「迷信だと思うんだけど、それからすっかりここも寂れてしまって……」
-桂-
「はぁ、ちゃんとしたお祭りができなかったせいですか?」
-女将-
「迷信よ迷信。でも商売していると験はかついでおきたいものでしょ?」(略)
-桂-
「じゃあ、今年の特別っていうのは?」
-女将-
「何とそのお家と縁続きだっていう、お祭りに詳しい人が来てくださったのよ。まだお若いのに、しっかりなさった方で」
-サクヤ-
「……げっ」
 サクヤさんが潰れた蛙のような声を漏らした。


◇贄の血で桂ちゃんが語っているように、祭りを取り仕切っていたのは羽藤家だったのだろう。羽藤一家が経観塚を去る時期とお祭りが廃れた時期が一致する。
「お祭りの協力者」って誰だったの?


◇犬と猿

-サクヤ-
「まったく、こんなところまで何しに来たんだい?」
-昨夜の少女-
「それはこちらの言い分です。また私の邪魔をしに現れたんですか?」
-サクヤ-
「はっ、誰がわざわざ」
「そんなことが目的なら、夜通し車飛ばしてまで、こんなとこには来やしないよ」
「それとも何だい?またあたしが邪魔したくなるようなことを、やらかすつもりなのかい?」
 この二人、前からの知り合いみたいなんだけど……もしかしなくても相当仲悪い?


サクヤさんと烏月さんの不仲の原因は?

 ぷるぷる首を振って、余計な考えを散らす――と、そういえば。
 烏月さんを見てようやくわかった。
 そうか、あの時感じた既視感はこれか。
 前日に写真を見ているんだから、あのケイくんの顔に見覚えがあるのも当然だった。


なるほどもっともらしいが、桂ちゃんがケイくんの顔に見覚えがあるのは、ケイくんが実の兄で、人生の半分以上を同じ屋根の下暮らしていたからである。うまいね。

-サクヤ-
「で、桂はともかく、あんたはそろそろ上がるころなんじゃないのかい?」
-烏月-
「どうして私が」
-サクヤ-
「烏の行水って言葉があるだろう? 慣れない長湯は身体に障るよ」
-烏月-
「何を言うかと思えば、馬鹿馬鹿しい。重ねた齢にふさわしい――」


サクヤさんの正体のヒント。サクヤ嬢は当年とって17XX歳である。「そんなことになったら大変よ」byユメイさん


◇ラクジツ


◇贄の血

 女の子の足だ――と、思った。
 それを裏付けするように、膝にも届く袂の長さに気付く。
 右は鳩羽鼠に花の染め抜き、左は薄紅。青と白とのあの人とは対照的な、非対称の振り袖だった。
 それにしても、この着物は――(赤エフェクト)
-桂-
「……んっ」
 思い出すなと、赤い痛み。(略)
-ノゾミ-
「それにしても――」
 滑るような動きでミカゲちゃんから身体を離したノゾミちゃんは、今度は私のおとがいに指をかけて、強引に視線を吸いつけてくる。
-ノゾミ-
「あなた、本当に忘れてしまったのね?」
-ミカゲ-
「ほんの少しも覚えてないの?」
-ノゾミ-
「せっかく思い出させてあげようとしたのに」
-ミカゲ-
「あなたは途中で目覚めてしまった」
 ……え?
 あの夢はこの子たちが?
 だとすると、この二人は、わたしの知らないわたしのことを知っている。


桂ちゃんとノゾミカゲちゃんの反応から、三人が以前に出会っていることがわかる。10年前のオハシラサマ封印解除事件の時のこと。

 赤と黒の二色の振り袖。
 左足首には金の鈴。
 赤い瞳と、色素の薄い、毛先が少し外向きにはねたようなかぶろ髪――
 並んだふたりは鏡写しのようにそっくりで。
 ただ表情だけが似ておらず、驕慢な彼女に対して気弱に眉を下げていて。
 …双子?(赤エフェクト)
 そんな何の変哲もない言葉が、わたしの心臓を驚かせた。


 桂ちゃんの秘められた過去に「双子」に関する何かがあったということ。ノゾミカゲちゃんが引き起こした十年前の事件のことであり、双子の兄、白花ちゃんが隠されたことでもある。

-ノゾミ-
「私はあなたを迎えにきたのよ」
-桂-
「わたしを……迎えに……?」
-ノゾミ-
「そう――あなたは、あの女の――贄の血を引く家の子だから」


「あの女」は竹林の長者の娘、姫さまのこと。ノゾミちゃんが姫さまを「あの女」呼ばわりするのは、「主様があいつのせいで封じられてしまった」という逆恨みから。

--
「私はミカゲ――」
-ノゾミ-
「私の妹。お父様に捨てられちゃった、可哀想な私の妹」
 ミカゲちゃんの後ろに回ったノゾミちゃんが、ミカゲちゃんを押しつぶすように抱きつきながら、言葉を継いでそう言った。
-ノゾミ-
「私は妹がいるだなんて知らなかったのだけど…可哀想だから助けてあげたの。そうよね?」
-ミカゲ-
「はい、姉さま…」


ミカゲちゃんの正体のヒント。よっぽど冴えている人なら「わざとらしくこんなことを言わせるからには……なにか裏があるんだろうか…?」と読めるんじゃあないだろうか。……厳しいか。
ミカゲちゃんの正体は?


-ユメイ-
「大丈夫」
 ふわりと抱きとめられると、夢と同じ微かに甘い香りがした。
 その香りは、あの山の大樹に咲いた白い花のものだった。
 ああ――
 頭の中でバラバラのまま投げ出されていたピースが、本来あるべき位置にはまっていくことで、描かれていた絵がわかってくる。
 あれだけ大きなお屋敷に住んでいた、そしてあのあたりにある唯一の家だけに、羽藤の家がオハシラサマを祭っていた家なんだろう。
 正しいお祭りが失われてしまったのは、お父さんが死んでしまった十年前か、それよりもっと前なのかはわからないけれど。
 特別な血を――お化けに狙われる血を持っている羽藤の家系が私の代まで続いているのは、きっと、誰かが守っていてくれたから。
 それはきっと。
 そしてきっと。
 私を守ってくれているこの人が。
 ご神木と同じ香りの、蝶と白花を付き従えるこの人が。


葛ルート◇言霊の神で、葛ちゃんが「オハシラサマが形を成して姿を現していること自体が異例なこと」と説明している。羽藤家を直接的に守ってきたのは、先代オハシラサマの姫さまやユメイさんではなく、役行者小角が経観塚に張った結界と、青珠のお守りだろう。
 

-ユメイ-
「消えなさい。本当に消えたくないのなら」
 言葉に合わせて周囲の光がうねる様は、威嚇しているようだった。
-ノゾミ-
「………」
-ミカゲ-
「姉さま、今一度は退くべきかと」
-ノゾミ-
「……退いてどうするのよ?」
-ミカゲ-
「《力》を蓄えましょう。私たちも弱ってるから」
-ノゾミ-
「……そうね……別に特別じゃなくても、それなりに精がつくものね」


ノゾミちゃんの手綱を握るミカゲちゃんの図。


◇吸血鬼

-桂-
「あ、サクヤさんお醤油かけすぎ」
-サクヤ-
「いいだろ。あたしは塩気の利いているのが好きなんだよ。鮭ならガチガチの塩漬けが一番だね」
-桂-
「えー、あのお茶漬けにでもしないと辛いやつ? そんなんじゃ血圧上がるよ。長生きできないよ」
-サクヤ-
「残念ながら、憎まれっ子何とやら、さ。少なくともあんたよりは長生きするだろうよ」


サクヤさんの正体のヒント。サクヤルートクリア後は笑うに笑えない。


◇無銭乗車?


◇狭間の道行
 狭間と羽様が掛けている。


◇隠れ鬼


◇テンショウ
 漢字を当てると「転生」。ユメイさんが桂ちゃんの血の《力》で、おぼろげな幽体から血の通った現身に成り変わることを表している。ユメイさんに血を与えていないと、桂ちゃんは谷底に激突してショウテンしてしまう。


◇宿替え

-ユメイ-
「そうですね。旅館に宿泊するとなると、お金も相応にかかりますし」
-桂-
「わ……」
-ユメイ-
「どうしたの、桂ちゃん」
-桂-
「ユメイさんって、オハシラサマなのにすごく庶民っぽい……」
-ユメイ-
「ふふっ、そうね――」


ユメイさんの庶民的人間的イメージ定着作戦。


◇いちおう鍋物?

-葛-
「あのー、カップめんとかないですか?」
-サクヤ-
「いくらまともな調理はできない状況だからって、病み上がりにインスタントを勧めるかい」
-葛-
「それは残念。いまだカップめんってヤツを食べたことないんですよねー」
-サクヤ-
「はいはい。恵まれた家庭でお育ちで。あたしは草木の根っこも食べたことあるよ」
-葛-
「それならわたしもあるですよ。根菜類は栄養価豊富ですからねー」


サクヤさんの正体のヒント。観月の民の村で暮らしていた時に食べたのだろう。いくらアウトドア派といえど、現代を生きる良識人が草木の根っこを食べることはまずないだろうから、少なくともサクヤさんが辺鄙な環境で育ったところまでは推測できるはず。
また、現代の一般家庭で育ったなら、カップラーメンは一度や二度は口にしたことがあるはずだろう。葛ちゃんが単なるスパルタ家庭ではなく、前時代的で厳格な家の出であることがわかる。
 ところで、葛ちゃんが言っているのはゴボウやニンジンのことなのか、それとも雑木の根っこのことなのか。後者だとしたら、蠱毒の時に食糧が尽きてやむなく食べたのだろう。


◇食事の後は

-桂-
「……サクヤさんって、自然とか野生動物撮る人じゃなかったの?」
-サクヤ-
「仕事は仕事。プライベートで何撮ったっていいじゃないか」
-桂-
「それはそうなんだけど、撮られる方にだってプライバシーとか肖像権とかがあるよね」
-葛-
「そーゆーことですので、人様の目に触れるところに掲載する場合は、きちんと修正入れてくださいね」


やんわりとサクヤさんをけん制してるんじゃないかと思う。

-サクヤ-
「それより葛、あんた、しばらく風呂に入ってないだろ?」
 その言葉に、二の腕を顔の前に持っていって、小鼻を動かす葛ちゃん。
-桂-
「……もしかして、本当に入ってないの?」


サクヤさんの正体のヒント。サクヤさんの常人離れした嗅覚は、◇不法侵入?◇雨のにおいなどでもアピールされている。

-桂-
「……もうっ。ごはん食べた後片付けもしないで行っちゃったよ」
-ユメイ-
「元気があっていいじゃないの」
-桂-
「葛ちゃんはね。でも、サクヤさんはもっと年相応に落ち着いてもいいと思う」
-ユメイ-
「そんなことになったら大変よ」
-桂-
「大変って……」
 そりゃあ落ち着いたサクヤさんなんて想像つかないけれど、大変は言い過ぎなんじゃ?


「精神など肉体のおもちゃにすぎない」byニーチェ。


◇ユメイさんはお留守番

-葛-
「おねーさんたちは、昨日もこちらに?」
-桂-
「うん。わたしとサクヤさんと、あと烏月さんが一緒だった」
-葛-
「……えっと……どちら様で?」
-桂-
「千羽烏月って言って、すごい美人さんで、サクヤさんとは仲の悪い人」
-葛-
「千羽……」


葛ちゃんの正体のヒント。「千羽」に反応したということは、千羽党を知っている?ということは鬼切り部の関係者?と繋げること。


◇烏合

-サクヤ-
「はん、鼻息の荒さの割には、ずいぶんとだらしないんだねぇ、今の千羽の鬼切り役は」
「先代の実力はよく知らないんだけど、先々代の足下にも、到底及んでないんじゃないかい」
 どうして知っているのか、サクヤさんは烏月さんの事情についてくわしい模様。
 仲の悪いふたりだけれど、どうやら根になっているのはこの辺らしい。
 そういえばサクヤさん、いくらうちとは古い付き合いだからって、オハシラサマであるユメイさんとも昔から知り合いみたいだし――


サクヤさんは先々代鬼切り役の真弓さんとは、交際相手を紹介したり、家族ぐるみで付き合うほどの仲だったが、先代鬼切り役・千羽明良とは直接的な交流はなかった。真弓さんが当代最強の鬼切りだったことは、サクヤさんは身に染みてわかっているはず。

-桂-
「鬼を……呼び寄せる?」
-烏月-
「奴はあの塊が封じている鬼を目覚めさせ、解放しようとしている」
-桂-
「それはケイくんとは別の鬼?」
-サクヤ-
「別の鬼だよ。そうだろう、オハシラサマ」
-オハシラサマ-
「それは緩やかな死を迎えるために、塊に抱かれ眠らされている鬼。強大な《力》を持っていたが故に、滅しきれずに封じるしかなかった鬼」
-桂-
「そんなに強い……鬼」
-烏月-
「単に鬼というよりは、その霊格からして鬼神と言うべきだろうね。或いは悪しき神、まつろわぬ神と――」
「この経観塚の言い伝えでは、単に主と呼ばれているようだがね」


山神として隠居しているのに飽いた主は、照日の神への反逆への第一歩として、贄の血を引く姫を生け贄に要求した。手がつけられなくなることを恐れた観月の民は連合軍を結成し、役行者小角や一言主の力添えもあって、辛くも主を伏することができた。しかし、凝り固まった主の魂は、小角の力を以てしても滅することが出来ず、姫さまを人柱にして塊の木に封じ、少しずつ還すほかなかった。
 詳しくはサクヤルート◇千年の記憶Ⅰ~Ⅳを参照のこと。

-烏月-
「それに――奴が鬼である他にも、私には奴を切らねばならない理由がある」
「奴の存在そのものが、我ら千羽党にとっては他の鬼切部に顔向けできないほどの恥だからね」
-桂-
「あの、それは明良さんという方と――」
 不快の念を露わにした、厳しい瞳にぶつかって、私は謝りながら目をそらした。
-烏月-
「いや――そのことに関しては、そちらの方にも色々と言いたいことがあるんだがね」
-桂-
「サクヤさんに?」
-サクヤ-
「はん、その件に関してはお互い平行線ってことで話がついているだろう?」
「それにこの子の前で、そんな関係ない話を持ち出すんじゃないよ、まったく……」
-烏月-
「そう、でしたね」


人に仇なす鬼を切る鬼切り部の当主が、切るはずだった鬼を匿って、門外不出のはずの千羽妙見流を伝授し、その鬼が人を喰らって今なお逃げつづけているとなれば、他の鬼切り部に示しがつかないだろう。烏月さんは私怨を抜きにしても。ケイくんを早急に始末する必要がある。
 「色々と言いたいことがある」とは、「先々代が切るべき鬼と交わるなど酔狂なことをしたから、彼女を尊敬していた兄さんも奴を匿い、その結果…」ということ。烏月さんは同様のことをサクヤルート◇七星を踏む護法のものでも主張している。
サクヤさんと烏月さんの不仲の原因は?

-サクヤ-
「で、あの子――ああ、その鬼とやらは一体どうしたんだい?」
-烏月-
「逃げられました。さすがにこう暗くては人の身には分が悪い」
「それで、むやみに追い回すよりは、桂さんを張っていた方が良いのではないかと思いましてね」
-桂-
「それはわたしが贄の血を持ち主だから?人以外の……鬼がわたしを狙ってくるから?」
-烏月-
「あなたは、どこまで知って――」
 烏月さんはサクヤさんとユメイさん方を横目で見て、言葉を飲み込み頷いた。
-サクヤ-
「なるほどねぇ。あの子が出てくるとしたら、桂を狙ってのことだとヤマを張ったわけだ」
-烏月-
「そういうことです」


「あの子」などと呼ぶからには、サクヤさんとケイくんは知り合いで、それも結構な仲であることがわかる。わざわざ「あの子」から「その鬼」と言い直したのは、桂ちゃんが「サクヤさんとケイくんって旧知の仲? ひょっとすると……」と万が一にも白花ちゃんのことを思い出さないよう配慮してのこと。

-サクヤ-
「……なあ、烏月。色々あるだろう因縁は水に流して、この土地の問題はあたしとユメイに任せてくれないかい?」
-烏月-
「それは、あの鬼のことも含めてですか?」
-サクヤ-
「あの子のことも諸々込みでだよ」
-烏月-
「では、交渉するまでもありません」
「あなたさえいなければ、こんな面倒な事態におちいらなかっただろうというのに、何を今更」
-サクヤ-
「それを言うなら、あたしだってあんたら鬼切部が余計なことをしなきゃ――」
「――って、あんたみたいな小娘に言うことじゃなかったね。悪い、大人気なかったよ」
-烏月-
「いえ……」


烏月さんの言う「面倒な事態」とは、ケイくんの存在そのものが千羽党の恥を晒している現状のこと。
「鬼切部」のした「余計なこと」とは、六十年前の千羽党による観月の村襲撃のこと。そもそもあんたら鬼切り部が仲間を皆殺しにしなかったら、あたしはあの村でのうのうと人生を終えていて、最初から何もしやしなかったんだよ。
サクヤさんと烏月さんの不仲の原因は?


◇赤い空白

-サクヤ-
「桂、もうおよし。もう思い出そうとなんてするんじゃないよ。今のあんたはすごく不安定だ」
-桂-
「でも……わたっ、わたし……やだ……」
-サクヤ-
「わかるよ。あんたはまだその歳だし、母親べったりだったんだし」
「いい年した大人だって、身内を亡くしてひとりになるのは堪えるもんだからねぇ……」
「あんたみたいなのは根性締めてる間は強いけど、緩むとどうしようも無くなるからね」
「はぁ……まったく、呆れるほど長生きしてるっていうのに、察してやれなくて悪かったよ」


サクヤさんの正体のヒント。サクヤさんが外見通りの二重代後半だったら、「呆れるほど長生きしてる」は言いすぎだろう(「あんたより一回り長く生きているのに」「人生の先輩なのに」)。サクヤさんは見た目以上に年を喰っている、人生の酸いを少なからず経験しているということ。サクヤさんはじっさいに、千羽党に仲間を皆殺しにされて「身内を亡くしてひとりにな」ることを経験している。


◇ポルターガイスト


◇とりこのあさ

-葛-
「たはは、ちょっとばかり目の毒ですよねぇ」
-サクヤ-
「そうかい?子供の口の周りについたご飯粒を、母親が取り除いたついでに、自分の口に入れちまうような感じだろう」
-葛-
「わたしはそんなことされた経験ないですから、よくわかりませんけど、やっぱり少々違う趣なのではないでしょーか?」


葛ちゃんの正体のヒント。ホームドラマのようなありふれた光景を「そんなこと」と言う葛ちゃん、幼少のみぎりから冷え切った食卓を囲んでいたのだろう。


◇カゴノナカ

-桂-
「サクヤさんは(葛のこと)心配? ちゃんといろんなこと話して、あまり出歩かないようにしてもらった方が良かったかな?」
「烏月さんが帰ってきたときに驚かないように、ひとり増えたことだけは言っておいたんだけど」
-サクヤ-
「それでか……」
-桂-
「?」


このルートでも、サクヤさんは葛ちゃんの正体に気付いていたらしい。


ED16 ラクヨウ

-ノゾミ-
「ふふっ、今日は大収穫。これなら主さまを起こしてさしあげられるわ」
「鏡持ちの傀儡として使っているこの子も、贄の血には及ばないけれど濃い血をしてるわ」


葛ちゃんはただの子供ではなく、羽藤家のような特殊な血を引く家の出だということ。


◇蔵にしまわれていたもの


◇パンドラⅠ


◇パンドラⅡ

-けい-
「ここ、子供が来たら駄目だって……勝手に入ったらばちが当たるって……」
-ノゾミ-
「そう。私たちには近寄れなかった場所」
-ミカゲ-
「これ以上は近づけない場所」
-ノゾミ-
「忌々しいハシラの封じがあるから――どれほど経ったのかは知らないけれど、まだ健在だったのね」


以前ご神木に近寄ろうとしたのは、主が役行者小角らに封じられた後のこと。霊体では結界を越えられなかったので、ミカゲちゃんの入れ知恵で経観塚の住人を操り、ご神木を傷付けた。


◇パンドラⅢ


◇ゆめうつつ


◇回帰

-ケイ-
「明日になれば、大人しく切られてやると言っているのに、邪魔をして!」
-烏月-
「端から握り潰すつもりなら、どんな約束でもできるものだよ。そんな空約束が信じられるはずあるまい」
-ケイ-
「このわからずや! 明良さんはそんなに疑り深くなかったぞ!」
-烏月-
「そう、だからこその今がある」


兄さんはお前のことを信じて、役目に背く大罪と知りながら匿ったというのに、お前は結局兄さんの信頼を裏切って人を喰らっただろう、ということ。


◇パノプテース
 ギリシア語で「全てを見るもの」という意味らしい。

-ノゾミ-
「だって私、鬼に成ったことにはひとかけの悔いもないんですもの」
「人のまま死んでいたことを考えれば、この終わりは十分にまし――」
「だから主さまに鬼にしてもらったの」
「だから、私を鬼にしてくれた主さまを助けて差し上げられなかったことが、悔しくて悔しくて仕方がないのよ」


座敷牢で一人寂しく朽ちていくことに比べれば、鬼に身を落としても誰かのために行動できたことは、十分に「まし」だったのだろう。


◇始末のこと

 その柚明お姉ちゃんをじっと見ているケイくんを、ちらりと横目で見る。(略)
 鬼らしくないけど鬼で、烏月さんにとっては目の敵で、だけど私を気遣ってくれる風で、サクヤさんが命がけで助けたりして――
 この人は、一体何者なんだろう。


ちいとも鬼らしくないのは、元は人間で、それも人一倍心の優しい子だから。烏月さんにとっては敬愛する兄をそそのかした仇敵。桂ちゃんを気遣ってくれるのは血を分けた妹だから。サクヤさんにとっては初めて慕った人間の子孫であり、恩人の孫であり、親友の息子であり、ようするに大切な家族だ。


◇螢の多く


◇浄瑠璃F
 FはFalseもしくはFaultの頭文字。


◇闇を越えて差す光

 ふと、覗き込んだ(ケイの)目の片方が強い光を宿した。
 鬼の瞳の赤ではなく、蒼みを帯びた光を放つ右の眼。そうだ、あの夢の中でこんな風に目を光らせていたのは確か――


――お母さんだった。


◇浄瑠璃T
 TはTruthもしくはTrueの頭文字。


◇覚醒

 楽器の調律を確かめるように、てのひらを開閉させながら身を起こす彼からは、柚明お姉ちゃんやケイくんに感じた懐かしさのようなものがない。
 むしろ彼は、ミカゲちゃんに感じたものに近い気配を漂わせていて――


ミカゲちゃんの正体のヒント。「ノゾミちゃんやミカゲちゃんに感じたものに~~」ではないのがミソだ。そろそろノゾミちゃんとミカゲちゃんが同種の鬼ではないことを確信できるはず。


◇赤い絆


◇代わりの柱

-ケイ-
「ゆーねぇの社会復帰の方が大変だろうけど、頑張って」
-柚明-
「その辺はサクヤさんに上手い方法を習うわ」
-ケイ-
「そうか、なら安心だね」


思わずニヤリとするシーンの一つ。柚明さんはご両親が鬼に殺されて、贄の血や鬼について説明されたときに流れでカミングアウトされたのでは。白花ちゃんは明良さんに聞いたか、鬼切り部や鬼について調べているうちに知ったのだろう。

全ルート共通部
千羽烏月ルート
若杉葛ルート
浅間サクヤルート
ユメイルート

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