2007年09月29日

カタハネ980円

 久々にアキバに行ったんだけど、ソフマップがいつの間にやら新装開店していて、オープンセールをやっていた。そんでさ、驚いたことに、「カタハネ」が980円(!)で投げ売りされてたんだよ。びっくりした。私が4480円で買ったのに。それも超超過在庫でさ、私の胸くらいの高さがあるラックを、こう、ずら~っと埋めつくしてやがんのよ。みんな例の無限ループで投げたんかな?

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2007年09月27日

Keyゲーと聖書2 ほら、はぁー…ってして

「ある人がエルサレムからエリコへ下っていく途中、追いはぎに襲われた。追いはぎはその人の服をはぎ取り、殴りつけ、半殺しにしたまま立ち去った。ある祭司がたまたまその道を下って来たが、その人を見ると、道の向こう側を通って行った。同じようにレビ人もその場所にやって来たが、その人を見ると、道の向こう側を通って行った。
 ところが、旅をしていたあるサマリア人は、そばに来ると、その人を見て憐れに思い、 近寄って傷に油とぶどう酒を注ぎ、包帯をして、自分のろばに乗せ、宿屋に連れて行って介抱した。そして、翌日になると、デナリオン銀貨二枚を取り出し、宿屋の主人に渡して言った。「この人を介抱してください。費用がもっとかかったら、帰りがけに払います」
 さて、あなたはこの3人の中で、だれが追いはぎに襲われた人の隣人になったと思うか」
 律法の専門家は言った。「その人を助けた人です」
 そこで、イエスは言われた。「行って、あなたも同じようにしなさい」

(『ルカによる福音書』よきサマリア人)


 イエスが旅に出ようとされると、ある人が走り寄って、ひざまずいて尋ねた。「善い先生、永遠の命を受け継ぐには、何をすればよいでしょうか」
 イエスは言われた。「なぜ、わたしを『善い』と言うのか。神おひとりのほかに、善い者はだれもいない。『殺すな、姦淫するな、盗むな、偽証するな、奪い取るな、父母を敬え』という掟をあなたは知っているはずだ」
 すると彼は、「先生、そういうことはみな、子供の時から守ってきました」と言った。
 イエスは彼を見つめ、慈しんで言われた。「あなたに欠けているものが一つある。行って持っている物を売り払い、貧しい人々に施しなさい。そうすれば、天に富を積むことになる。それから、わたしに従いなさい」
 その人はこの言葉に気を落とし、悲しみながら立ち去った。たくさんの財産を持っていたからである。イエスは弟子たちを見回して言われた。「財産のある者が神の国に入るのは、なんと難しいことか」
  弟子たちはこの言葉を聞いて驚いた。イエスは更に言葉を続けられた。「子たちよ、神の国に入るのは、なんと難しいことか。金持ちが神の国に入るよりも、らくだが針の穴を通る方がまだ易しい」弟子たちはますます驚いて、「それでは、だれが救われるのだろうか」と互いに言った。イエスは彼らを見つめて言われた。「人間にできることではないが、神にはできる。神は何でもできるからだ」

(『マルコによる福音書』金持ちの男)


「天の国は次のようにたとえられる。
 ある家の主人が、ぶどう園で働く労働者を雇うために、夜明けに出かけて行った。主人は、一日につき一デナリオンの約束で、労働者をぶどう園に送った。また、九時ごろ行ってみると、何もしないで広場に立っている人々がいたので、『あなたたちもぶどう園に行きなさい。ふさわしい賃金を払ってやろう』と言った。 それで、その人たちは出かけて行った。主人は、十二時ごろと三時ごろにまた出て行き、同じようにした。五時ごろにも行ってみると、ほかの人々が立っていたので、『なぜ、何もしないで一日中ここに立っているのか』と尋ねると、彼らは、『だれも雇ってくれないのです』と言った。主人は彼らに、『あなたたちもぶどう園に行きなさい』と言った。
 夕方になって、ぶどう園の主人は監督に、『労働者たちを呼んで、最後に来た者から始めて、最初に来た者まで順に賃金を払ってやりなさい』と言った。そこで、五時ごろに雇われた人たちが来て、一デナリオンずつ受け取った。
 最初に雇われた人たちが来て、もっと多くもらえるだろうと思っていた。しかし、彼らも一デナリオンずつであった。それで、受け取ると、主人に不平を言った。 『最後に来たこの連中は、一時間しか働きませんでした。まる一日、暑い中を辛抱して働いたわたしたちと、この連中とを同じ扱いにするとは』
 主人はその一人に答えた。『友よ、あなたに不当なことはしていない。あなたはわたしと一デナリオンの約束をしたではないか。自分の分を受け取って帰りなさい。わたしはこの最後の者にも、あなたと同じように支払ってやりたいのだ。自分のものを自分のしたいようにしては、いけないか。それとも、わたしの気前のよさをねたむのか』
 このように、後にいる者が先になり、先にいる者が後になる」

(『マタイによる福音書』ぶどう園の労働者)


 徴税人や罪人が皆、話を聞こうとしてイエスに近寄って来た。すると、ファリサイ派の人々や律法学者たちは、「この人は罪人たちを迎えて、食事まで一緒にしている」と不平を言いだした。そこで、イエスは次のたとえを話された。「あなたがたの中に、百匹の羊を持っている人がいて、その一匹を見失ったとすれば、九十九匹を野原に残して、見失った一匹を見つけ出すまで捜し回らないだろうか。そして、見つけたら、喜んでその羊を担いで、家に帰り、友達や近所の人々を呼び集めて、『見失った羊を見つけたので、一緒に喜んでください』と言うであろう。言っておくが、このように、悔い改める一人の罪人については、悔い改める必要のない九十九人の正しい人についてよりも大きな喜びが天にある」

(『ルカによる福音書』見失った羊のたとえ)


 イエスの説教とたとえ話のうちいくつかは、彼の説く、人類がいつか辿りつくべき境地「天の国」のヴィジョンを示している。天の国は一言で言えば、理屈に囚われない助け合いの世界のことだ。イエスの話を纏めると、天の国へと辿りつく方法は概ね以下の通りである。
①けちな財産をうっちゃって物欲から逃れる。
②執着、嫉妬などのやくざな感情を捨て、世俗のしがらみから逃れる。
③相互扶助の共同体思想を体得し、先行きの不安な精神の世界を目指す。

 現実問題、イエスの理想を完全に体現するのは困難を極めるだろう。私利私欲、損得勘定を捨てることももちろん難しい。しかし、それ以上に、最後にぶどう園に来て働き出した者が朝から働いた者と同じ対価を受け取る、九十九匹の羊を野原に残して一匹の迷い出た羊を探し出す、放蕩の限りを尽くしていた息子を喜び迎える、という理屈はことさら受け入れがたいと思う。現代社会を生き、「最大多数の幸せが正義」「善人は報われる」「努力は報われる」ことを当然だと思っている我々は、どうしても「一匹対九十九匹」という数字や、感情論に囚われてしまう。
 しかしながら、天の国に到達することの難しさについては、イエスその人が「人間にできることではない」「らくだが針の穴を通る方がまだ易しい」とぶっちゃけている。イエスが金持ちの男に向ける、達観したような慈しみの表情は、彼が財産を捨てられないのを理解しているからのものだと、偉い人が言っていた。イエスは不正な管理人や放蕩息子のような弱い人間が、物欲の世界を去りがたくて苦しみ、それでもどうにかこうにか精神の世界を目指そうとする姿を、たまらなく愛しているんだそうだ。
 さてKeyゲーの話である。Key、麻枝准製作のビジュアルノベルは、どれも世界観を同じくしていないが、キャラクターが目指すべき境地のヴィジョンは、Tactics時代から連綿と受け継がれていると思う。聖書における理想の境地が「天の国」なら、こちらは「輝く季節」とでも呼ぼうか。Keyのシナリオ、特に麻枝准担当のパートは、キャラクターが意識しているかいないかにかかわらず、概ね以下の通過儀礼を経て、輝く季節へと辿り着く話である。
①惰性や予定調和による形骸化した関係から分断される。
②痛みを覚え、相手を独立した他者として認める。
③その上でもう一度絆を求め、関係を作り、自我を確立する。

 Keyっぽい、keyらしいという言葉はよく目にするが、私にとっては上記のプロットを踏襲しているのがKeyらしいシナリオだ。だーまえの担当シナリオ以外にも、樫田レオの西園美魚シナリオなどは、読んでいてとてもkeyらしいと思った。皆さんにとっての「Keyらしい」はどんなものだろうか。
 次回へ続く。

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tags: 考察 聖書 
2007年09月21日

ギャルゲーマーに「パワプロクンポケット(パワポケ)」シリーズを勧めてみる



 エロゲーマー・ギャルゲーマーさんに子供向け(ということにいちおうなっている)野球ゲーム(ということにいちおうなっている)の『パワプロクンポケット』シリーズをすすめてみる。私がギャルゲー魔道に陥る決定打になったのは『アカイイト』との出会いだったが、その下地は消防・厨房時代にプレイした「パワポケ」シリーズに作られていたと思う。
 パワポケと『実況パワフルプロ野球』シリーズのもっともな違いは、あちらの続編が完全なスターシステムのパラレル設定なのに対して、パワポケシリーズは世界観が統一されていて、時間軸が続編発売と共に進み、キャラクターは年を取って、連綿と正史が作られていることだ。パワポケを順々にプレイする面白さは、どうにも簡単な言葉では表しにくいんだけど、ギャルゲーで言えば『CLANNAD -クラナド-』のアフタストーリーで保母になっていた杏に再会したときのような感動かな? 思いがけないキャラクターが続編でひょっこり顔を出してくるのが面白いんだよね。6の幸せ島編で倉刈さんが登場して、日出子ちゃんへの電話イベントで覚醒したときなんか、胸に来るものがあったなぁ。歴史を見守ってきた人にだけ伝わる感動があそこにはあったと思う。わかる人にはわかる。Fateやアカイイトがシナリオの横の並列による演出なら、パワポケシリーズは縦の並列による演出だね。ゆえに骨の髄まで楽しみつくすには、時系列順(1→2→3……)にプレイするのが絶対条件になるので、その点だけは注意してほしい。
 音楽よし。ドット絵よし。子供向けゲームのくせに無駄にダークな世界観もよし。あかえらさまに狙ったエロイベントもほほえましい。異様に高い名言率もまたおかし。間違いなくスタッフはエロゲーマー。

なんだろう…
みんな、ここの暮らしに満足しているように見えるぞ。
人間、管理される側はらくちんでやんすからね。
何も考えずに、ただ従っていれば
いいんでやんすから。
少しの不自由さえ我慢すれば
ここも表の世界も、それほど
変わらないかもしれないでやんす。
そ、そうかもな・・・
支配される側は、文句さえ言っていれば
いいんだからな。
まあ、ここではその文句さえ
言えないんだけど。
でも、みんな満足しているみたい
でやんすよ?
(わいわい・・・)
人間低いところでとどまっていると、
そこでよどむんだよ。
よどんでしまったら、人間は終わりさ。
落田君。
俺は元の世界に戻るからな・・・
絶対に!
オイラもでやんす!

(謎のしあわせ島編)


 
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(2004/07/29)
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 間違ってパワプロGBとか買わないようにね。

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2007年09月18日

Keyゲーと聖書1 奇跡の価値は

 イエスが向こう岸のガダラ人の地方に着かれると、悪霊に取りつかれた者が二人、墓場から出てイエスのところにやって来た。二人は非常に狂暴で、だれもその辺りの道を通れないほどであった。
 突然、彼らは叫んだ。「神の子、かまわないでくれ。まだ、その時ではないのにここに来て、我々を苦しめるのか。」
 はるかかなたで多くの豚の群れがえさをあさっていた。そこで、悪霊どもはイエスに、「我々を追い出すのなら、あの豚の中にやってくれ」と願った。
 イエスが、「行け」と言われると、悪霊どもは二人から出て、豚の中に入った。すると、豚の群れはみな崖を下って湖になだれ込み、水の中で死んだ。

(『マタイによる福音書』悪霊憑きを癒す)


 そのとき、この会堂に汚れた霊に取りつかれた男がいて叫んだ。
「ナザレのイエス、かまわないでくれ。我々を滅ぼしに来たのか。正体は分かっている。神の聖者だ。」
 イエスが、「黙れ。この人から出て行け」とお叱りになると、汚れた霊はその人にけいれんを起こさせ、大声をあげて出て行った。

(『マタイによる福音書』カファルナウムの悪霊追放)


 さて、重い皮膚病を患っている人が、イエスのところに来てひざまずいて願い、「御心ならば、わたしを清くすることがおできになります」と言った。イエスが深く憐れんで、手を差し伸べてその人に触れ、「よろしい。清くなれ」と言われると、たちまち重い皮膚病は去り、その人は清くなった。
 イエスはすぐにその人を立ち去らせようとし、厳しく注意して、言われた。「だれにも、何も話さないように気をつけなさい。ただ、行って祭司に体を見せ、モーセが定めたものを清めのために献げて、人々に証明しなさい。」

(『マタイによる福音書』重い皮膚病患者の癒し)


 新約聖書に書かれている、イエスの奇跡話の一部である。はたして、これを読んで「ねーよww」と思わない現代人はどれだけいるのだろうか。私はその一人ではない。現代日本を生きるわれわれにとって、聖書やイエスの奇跡話なんてものは眉唾もので、敬遠しがちなものである。しかし、頭を少しだけやわらかくして、それらをこう置き換える(あるいは、割り切る)だけで、だんぜん親しみやすい存在になると思う。
 イエスの奇跡話やたとえ話は、彼の活動を表した比喩話である。
 新約聖書はイエスの主義思想を記した思想書、あるいはイエスの人間論である。

 ヨハネの黙示録に「先生、彼が盲目に生まれついたのは、誰が罪を犯したからですか?」という有名な一文がある。イエスの時代には、病気や身体的欠陥は、その人もしくはその人の先祖の罪の印であるという偏見が蔓延っていた。人々は病気をうつされたくないという理由以上に彼らを疎んじ、共同体から追放して迫害したんだそうだ。整った法律も、福祉制度もへったくれもない時代である。そんな、すがるものものといったら家族と仲間、そして信仰ぐらいしかないであろう時代に、信仰共同体から切り離される絶望感は想像できない。
 聖書に出てくる「悪霊に取り憑かれた人」は、今でいうところの心を病んでいる人、あるいはそういう烙印を押された人だったのではないかと言われている。錯乱している人を指す「狐憑き」という言葉は聞いたことがあるんじゃあないだろうか。悪霊に憑かれた人が町はずれの墓場にいるのは、家族や共同体から疎まれて、見離されていたからだ。
 イエスが本当に、それこそ『グリーン・マイル』のジョン・コーフィのような奇跡の技を体得していたのか、じっさいに病を治療してみせたのかどうかは、この際うっちゃっておく。信じる人は信じればいいし、信じられない人はそれで全くかまわない。私は半信半疑である。大事なことは、イエスの活動が、結果的に、徹底的に疎外されていた人々の尊厳を回復し、共同体の営みに復帰させたことなのだ。それを奇跡と呼ばずして何と呼ぼうか。だからこそイエスは共同体の指導者的立場にある祭司に体を見せて、人々に証明しろと言ったのだ。イエスが悪霊を追い払ったのが、信仰や共同体の象徴と言える会堂だったのは面白い。
 さて、奇跡といえばKeyゲー、Keyゲーといえば奇跡である。Keyゲーも同じような感覚で、NYP(なんだかよくわからないパワー)の発動で、なんだかよくわからない病気が治ることが奇跡なのではなく、キャラクターが死に至る病の果てに、結果として、失われた絆を取り戻したこと、自我とアイデンティティを回復させたことが奇跡なのだ……と考えると、また違った見方ができると思う。
 次回に続く。

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tags: 考察 Kanon 聖書 
2007年09月15日

浅間サクヤルート

ユメイ(ルート)に関する伏線
千羽烏月(ルート)に関する伏線
ノゾミ(ルート)に関する伏線
浅間サクヤ(ルート)に関する伏線
若杉葛(ルート)に関する伏線


※葛ルートとの共通部は省略

◇温泉でばったり

 彼女、浅間サクヤさんはお母さんの古くからの友人で、ルポライター兼フォトグラファー。
 日本人離れしたプロポーションと、くっきりとした顔立ちは、時折撮る側ではなく撮られる側に間違われるぐらい。
 とはいえ腕前だって大したもの。今ではフォトグラファー兼、と順番をひっくり返した方が通りがいいらしい。もっぱら稼ぎは写真がメイン。


サクヤさんのライター業が振るわない&写真が評価されているワケ


◇街角でばったり


◇車種はクロカン・名前は赤兎


◇万歳文化革命

-サクヤ-
「で、桂。こっちのが言ってたやつかい?」
-葛-
「ははーっ、若杉葛と尾花にございますーっ」
-サクヤ-
「…若杉…葛だって?」
-葛-
「左様にございます。一風変わった名前ではありますが、何かお気に召さないことでも?」
-サクヤ-
「いや、大したことじゃないよ。聞き覚えのある名前だなって思っただけさ」


若杉と鬼切り部に付きまとい、その横暴を暴くことに心血を注いでいたサクヤさんなら、次期鬼切り頭の筆頭候補だった葛ちゃんのことを知っていて当然だろう。

-葛-
「浅間――」
-サクヤ-
「なんだい。あたしの名前がどうかしたのかい」
-葛-
「いえいえ、何でもありませぬ。承知しました、浅間サクヤさんですね?」


「兄妹での覇権争いで村を一個丸々潰した」という、組織を揺るがすほどのスキャンダルを握っていて、あろうことか鬼切業にまでちょっかいを出しているサクヤさんは、当然若杉のブラックリストに載っていたはず。葛ちゃんも周りの人間からその名を聞かされていたのだろう。


◇ジョーカー

-桂-
「だけどさー」
-サクヤ-
「なんだい」
-桂-
「お母さんとサクヤさんって、どういうわけで知り合ったの?」
 場の真ん中でトランプを交ぜていた手が、呼吸と一緒にはたと止まった。
サクヤ
「……なんだい、藪から棒に」
-桂-
「えっとね~、わたしの友達って学校の友達ばかりなんだ。でも、そうじゃない葛ちゃんとは、 変わった出会い方をしているわけでしょ?」
-葛-
「たはは、面目ないです」
-桂-
「だから、お母さんとサクヤさんの間にも、そういうドラマがあったのかなって」
-サクヤ-
「それはあんたが学生だからで、社会に出れば学校以外での出会いに変わるもんだろ?」
-桂-
「でもそれは基本的に同じことじゃないかな?枠組みが、学校から職場に変わるだけで」
-サクヤ-
「…そうだねぇ、ドラマといえばドラマだよ。お互い第一印象はアレだったし、 仲良くなれそうになかったしねぇ」
 吐き出す息とともに、止まっていた手が動き出す。
-桂-
「ケンカしたの?」
-サクヤ-
「まぁ、切ったり張ったり殺し合ったり、とか」
-桂-
「そう、殺しあった…」
「………」
「……は?冗談だよね?」
 大人っぽい微笑みで答えをはぐらかして、サクヤさんはトランプを重ねてひとかさねにした。 とんとん一辺をうって均して、手のひらに収まる直方体に揃える。
-サクヤ-
「あたしはルポライターやってるだろ。昔、とある事件の調査をやったのさ」
-桂-
「事件って、どんな?」
-サクヤ-
「今は昔――と言っても六十年ほど前まだ最近の話だねぇ」
-桂-
「六十年って、最近なの?」
 そりゃあね、最近は白寿を迎える人もぼちぼちいるみたいだし、 地球誕生から四十六億年とかスケールの大きい話からすると最近だろうけど。
-サクヤ-
「Y県にあるMという人里離れた村に住んでた連中が、 ある時を境に姿を消しちまったって事件があるんだよ」
 私の質問を軽く無視して、やや声のトーンを落として話を続けた。
-サクヤ-
「人だけが忽然と消えるいわゆる神隠しだったら、日本版のマリー・セレスト事件ってところでオカルト方面で話題になりそうなんだけどね――」
-葛-
「………」
 ちらりと横目で見てみると、葛ちゃんも顔を強張らせていた。これはちょっと意外かも。
-サクヤ-
「その近隣に住んでいた村の人が、用事を思い出して行ってみたところ、 村は煤と灰ばかりの焼け野原になっていたんだそうな」
「村人は一人を残して皆殺しになったとか」
 皆殺し――って、あれ?
-桂-
「ちょっと待って!サクヤさんストップ!」
-サクヤ-
「ん?なんだい、怖くなったのかい?」
-桂-
「あのね、確か六十年前ってことは……」
 ちょっと自信が無くて目を泳がせると、偶然にも葛ちゃんと目があった。
-桂-
「……だいたい終戦の頃だよね?」
-葛-
「『ほど』なんて大ざっぱな言い方難で実際のところはわかりませんけど、六十年ぴったりで計算するなら戦時中ですね。終戦は一九四五年ですから」
-サクヤ-
「そう、あれは日本がかなり追いつめられてたころのはなし――って、桂、どうしたんだい?」
-桂-
「ううん、何でもない」
 きっと葛ちゃんが年不相応にすごいだけ。
 デキる子は塾なんかでどんどん上の学年の勉強するらしいし、アメリカとかならスキップで大学に行っちゃうような子なのかも。うん。
-桂-
「それでサクヤさん、戦争していたころなら、空襲とかで焼け野原っていうのは、普通にあり得る話なんじゃないの?」
-サクヤ-
「そうだね。生きた人間のしでかすことは、オカルトなんかよりも性質が悪いんだよありえないなんて笑い飛ばすこともできないしね」
-葛-
「ええ、そうですね…」
 いつもの溌剌とした葛ちゃんとは別人のようなつぶやきに、私は視線をそちらに向けた。
-葛-
「『古事記』によれば伊邪郡美命が『一日に千頭の絞り殺さむ』と呪いの言葉を吐いたのが、この国で人が死ぬようになった始まりですけど――」
「――千人以上の人間を、ボタン一つで殺したりしますから、黄泉の神様よりも性悪です」
 そういった葛ちゃんは、寒くもないのにぶるっと震えて、うつむいたまま尾花ちゃんを抱きしめた。
-桂-
「葛ちゃん…」
-葛-
「たはは、さすがに千人以上なんてのは希ですし、百人単位もそうないですね」
「そこまで大規模だと個人の都合じゃなさそうですけど、仕事だとしたら相当なストレスですよね。想像したら胃が痛くなってしまいましたよ」
-サクヤ-
「――あんたは、だろうね」
-桂-
「だろうねって……当たり前だよ、普通だよ。わたしだってそんなお仕事は嫌だもん」
-桂-
「それでサクヤさん、今までのお話のどこが、お母さんと関係あるの?」
-サクヤ-
「あるよ。あたしと真弓の出会いの話だろ?」
-サクヤ-
「真弓はその事件の関係者なんだよ。正確に言うなら、関係者の血縁だ」
 人が消えた事件。
 村が燃えた事件。
 お母さんはその事件の関係者で。
 そういえば、さっきのサクヤさんの話では――
-サクヤ-
「あんたの父方の血縁――笑子さんの話は、真弓やあたしがしてるけど、母方の血縁について、何か聞いていることはあるかい?」
-桂-
「勘当されたようなものだって……帰省できる田舎がなくてごめんなさいって……」
 でもそれは、お父さんと駆け落ちしたようなものだから。
 ただ、それだけのことだったはず。
-サクヤ-
「とにかくそういう理由なんだよ。いやー、あの頃はまだ駆け出しでね。何よりがむしゃらだったから、相当ムチャもやったねぇ…」
-桂-
「わ。それじゃあケンカになったりするかも」
 なるほど、納得。
 サクヤさんは今でもこんなだし、対するお母さんは笑顔でノーと言える人だったから、取材拒否と決めたら、断固応じなかっただろうし。
 でも――
 今の話で腑に落ちない点があった。
-桂-
「そもそも、何でそんな事件を取材していたの?」
 戦争や空襲に関しての取材なら、何もそのY県M村にこだわる必要はなかったのに。
-サクヤ-
「それがだね、奇妙なことに事件があったと思われる日には、b-29――戦略爆撃機は飛んでいなかったらしいんだよ。その代わりに――」
-桂-
「代わりに?」
-サクヤ-
「刀を持った鎧武者を見たって証言を、その近くに住んでた住人から複数とれてねぇ」
-桂-
「………」
-葛-
「………」
-桂-
「……刀? 鎧? 戦時中に? それってやっぱり、オカルト方面のお話なんじゃ」
 鎧武者の亡霊だったら、平家の落ち武者あたりが定番。『耳無し芳一の話』に出てくるのも、確かそうだったはず。
-サクヤ-
「まぁ、オカルトの範疇だろうねぇ。だからこそ、まともな証拠を握ろうって必死だったんだよ」
-桂-
「駆け出しだと仕事選べないもんね……」
 とりあえず同情。
 でも、そういう縁があってサクヤさんがここにいてくれるんだから、私は笑顔を隠せない。
-桂-
「大変だったんだねぇ。ご苦労さま」
-サクヤ-
「こっちは殺されかけたっていうのに、そんな呑気な顔して加害者の娘がそんなこと言うかい」
-桂-
「えへへー、肩でもお揉みしましょうか」
-サクヤ-
「いいよ、いいよ、死んでいないんだし。それより今日のところはお開きにしようか」


サクヤさんは六十年前、千羽党に戦後の混乱に紛れて村を襲われて仲間を皆殺しにされたことを、第三者のことのように語っている。
 サクヤさんの「真弓は事件の関係者の血縁だ」との発言で、桂ちゃんは真弓さんに「帰る実家がなかった」ことと結びつけて、真弓さんは皆殺しになった村の出、つまり事件の被害者側の血縁だと推測したらしい。実際はその逆で、真弓さんは事件の加害者側、鬼切部千羽党の出身である。皆殺しになった村の出なのはサクヤさんのほう。
 真弓さんが実家に帰れなかったのは、周囲の反対を押し切って羽藤の家に嫁いだり、切るはずだったサクヤさんと付き合ったりで、絶縁されたも当然だったからだろう。
 サクヤさんがやらかそうとした「ムチャ」とは、日本を陰から牛耳る若杉の、組織を揺るがすほどの醜態を記事にしようとしたこと(真弓さんに取材を敢行した云々は、桂ちゃんの想像なので何とも言えない)。泡を喰った若杉は、当代最強の鬼切り役だった真弓さんを刺客として送り、サクヤさんはあわや真弓さんに殺されるところだった。
葛ちゃんが顔を強張らせたのは、オカルト話に怯えたからではなく、身内の恥部を聞かされていたたまれなくなったから。もしくは同じく若杉の非道(後継者争い、蠱毒)を経験している者として身につまされたから。


◇ナクシタヒ
 前半部、笑子さんの葬式でサクヤさんが慰めている小さい子は桂ちゃんではなく白花ちゃんである。
◇それは物語の予兆◇タソガレ◇ナクシタヒ◇幻視行

 何がそんなに悲しいんだろう。
 わたしにはわからない。
 ただ、その子が悲しくて泣いていることだけはわかる。わたしにはわかってしまう。
 ぴんと張った糸でつながっているように、心のさざめきが伝わってきた。
 その震えに共鳴したわたしの心が、硬質で透明な音を立て砕けていく。
 ああ、この悲しみは――
 大切な人がいなくなってしまった悲しみだ。


悲しみが共鳴したのは、桂ちゃんと白花ちゃんが双子で、心の波長が近かったから。


◇蛇と蝶
サクヤさんとオハシラサマ(ユメイさん)がどう見ても初対面ではない会話をしていることに注目。

-桂-
「それじゃあ、あの人はわたしのご先祖様?」
-サクヤ-
「身内には違いないけれど、あいつはあんたの先祖じゃないよ」
-桂-
「身内だけど、先祖じゃない……?」
 そういえば――
 わたしのことは「桂ちゃん」と呼ぶのに、サクヤさんのことは「サクヤさん」だ。
 わたしよりは年上で、サクヤさんよりは年下なんじゃないだろうか。
 そういえば――
 昨日の夜、わたしは何を見たんだっけ?
 柱の傷。
 背比べの跡。
 並んだふたつの名前。
 ケイと――
 ――ああ、頭が痛くなる。


桂ちゃんの従姉妹である柚明さんは、確かに身内だけれど先祖ではない。そして桂ちゃんの推測通り、柚明さん(26)はサクヤさん(17XX)よりも年下で桂ちゃん(16)よりも年上だ。
 続く文章はオハシラサマ(ユメイさん)=ハクカ? のひっかけの一つ。


◇シシャ
 ノゾミカゲちゃんが主の使い(使者)であることと鬼(死者)であることをかけている。

 ひとりは可愛らしくも驕慢。
 ひとりは自信なさげに従順。
 表情や態度は違っていても、それを表現する身体の方は、服装まで含めて鏡写しのそっくりさんだった。
 …双子?(赤エフェクト)
 そんな何の変哲もない言葉が、わたしの心臓を驚かせた。


双子の兄である白花ちゃんのことを思い出しそうになり、身体が警告を与えた。

-ノゾミ-
「ごきげんよう。皆さま十年ぶりかしら」
-ミカゲ-
「姉さま、皆ではありません。浅間の長の孫娘とは――」
-ノゾミ-
「そうね、どれぐらいぶりになるかしら?」
-サクヤ-
「はっ……」
「そんな大昔のことは忘れたよ」
-ノゾミ-
「そうだったわね。あの時あなたは幼かったもの」
 尖らせたサクヤさんの視線を、姉らしき彼女は猫じみた笑顔で受け流す。
-ノゾミ-
「そういえば、あの時ミカゲはまだだったわね」
-ミカゲ-
「はい、姉さま」
-ノゾミ-
「それなら初顔合わせになるのかしら。ご挨拶しておきなさいな」
-ミカゲ-
「お初にお目にかかります。私はミカゲ。ノゾミお姉さまの妹です」
-ノゾミ-
「よろしくしてあげてちょうだい。同じ不出来な子ですもの。仲良くなれるんじゃないかしら?」
-サクヤ-
「ちっ……」


ノゾミちゃんの言う皆さまとは、桂ちゃん、オハシラサマ(ユメイ)、サクヤさんのこと。桂ちゃんとユメイさんは、十年前の封印解除事件でノゾミカゲちゃんに会っている(桂ちゃんは忘れているけれど)。サクヤさんは、主が姫さまを生贄に要求していた時期か、もしくは小角と観月の民の連合軍が主とやり合っている最中か、ともかく1000年ほど前にノゾミちゃんと顔を合わせている。十年前の事件には居合わせなかったので、主が封じられた後に現れたミカゲちゃんとは面識がなかった。
 サクヤルート◇千年の記憶Ⅰ~Ⅳで、サクヤさんとノゾミちゃんの顔合わせのイベントが省かれているのは(絶対に二人は出会っているはずなのだ)、ノゾミルートでの種明かしのインパクトを強めるためだと思われる。

-サクヤ-
「それよりも、なんであんたらがここにいるんだい? なんで存在しているんだい? あんたらは鬼として切られたはずだよ」
「あんたらを切ったのは、役目を返上していたとはいえ、『当代最強の鬼切り』と身びいきの強い渡辺党すら認めていたほどの――」
-ノゾミ-
「あら、そうなの?それなら鬼切り役の質も随分と落ちたものね」
-サクヤ-
「――っ!!」
 ギッと軋むような音は、固く結んだサクヤさんの口の奥から漏れていた。
-ミカゲ-
「ですけど姉さま」
-ノゾミ-
「ええ、そうね」
-ノゾミ-
「彼女が手強かったのは認めるわ。結局私たちは切られてしまったわけだし、そのせいで長い眠りが必要だったんですもの」
-ミカゲ-
「形に慣れる《力》を取り戻すのに十年」
-ノゾミ-
「せっかく一部なりとも主様を解放してさしあげたのに、まだお褒めの言葉もいただいていないのよ。その主さまも――」
-ミカゲ-
「今は呼びかけに答えてくださらない」


ノゾミカゲちゃんを切り伏せた『当代最強の鬼切り』とは真弓さんのこと。十年前に「一部なりとも解放してさしあげた」分霊は今も白花ちゃんに取り憑いている。ノゾミカゲちゃんが目覚めてからこっちは、白花ちゃんが完全に主導権を握っていたので、お褒めの言葉なぞ貰えるわけがなかった。
 鬼切り役の質が落ちたことについては、サクヤルート◇千年の記憶Ⅱで補足されている。

-ミカゲ-
「ですから姉さま。今一度は退きましょう」
-ノゾミ-
「そうしましょうか。あの子がもらえればいいのだけれど――」
 もの欲しそうな目で私を見たのに反応して、二人(サクヤとオハシラサマ)の背中がぴくりと動いた。
-ノゾミ-
「あはははははっ、鬼が怖くて行かれない」
 どちらが鬼なんだろう。そりゃあ、オハシラサマは人間じゃなくて神様だって話しなんだけど。


ノゾミちゃんの手綱を握るミカゲちゃんの図。
ノゾミちゃんが「鬼」と表現しているのは、実はサクヤさんのほう。桂ちゃんはこの時点ではサクヤさんの正体を知らないのでピンときていない。子供の遊びである「はないちもんめ」を引っぱってくるあたり、ノゾミちゃんの余裕がうかがえる。

-桂-
「遠慮します」
-サクヤ-
「おやおや、毒が回ってもいいのかい?」
-桂-
「サクヤさんがニヤニヤしているから、わたしまでピンチって感じがなくなっちゃったよ」
「それに、オハシラサマ落ち着いてるし……」
 わざわざ助けに来てくれたぐらいだし、本当に危ないんだったら、積極的に勧めてくれたりすると思う。
-サクヤ-
「あらら、駄目じゃないか。もう少しこっちに合わせてくれないと」
-オハシラサマ-
「ごめんなさい」
 ……神様、謝っちゃうんですか?
-桂-
「ねぇ、オハシラサマ。してもらわなくても大丈夫だよね?」
-オハシラサマ-
「そうね――」
 オハシラサマはわたしの口調の砕けっぷりも全然気にしていないらしい。
 ちょっと見られないほど綺麗な人だけど、少し小首を傾けて考え込む仕草は、近所に普通にいるお姉さんと言った感だった。
-オハシラサマ-
「そうしていた方が、あとあと助かることがあるかもしれないけど」


柚明さんはサクヤさんの正体を知っているらしい。オハシラサマ(=ユメイさん)がサクヤさんのおふざけに付きあう微笑ましい様子や、「近所に普通にいるお姉さんと言った感だった」という表現は、オハシラサマが元は人間であることのヒントになっている。

-オハシラサマ-
「桂ちゃん。ほんの少しだけれど、大きくなったあなたと話せて良かったわ」
 最後に透明な笑顔を残して、オハシラサマは世界に溶けて消えてしまった。


オハシラサマ(=ユメイさん)が幼い桂ちゃんを知っていることを匂わせている。


◇不死の薬

-サクヤ-
「月とスッポン」
-桂-
「どっちが月なの?」
-サクヤ-
「もちろんあんたの血がさ。月には滋養強壮どころじゃない、若返りの水があるって言われていてね」
-葛-
「変若水ですね。『竹取物語』のかぐや姫の置き土産も不死の薬ですし、月はその辺の話の宝庫ですよねー」
 サクヤさんの後を継いで、説明補足してくれる葛ちゃん。
 こういった方面に馴染みのある家の生まれだと言っていたけど、この子は本当に何者だ。


若杉・鬼切り頭の跡継ぎ。

-桂-
「そういえばこれ、お母さんがお守りみたいなものだって」
-サクヤ-
「それが桂の血を隠してくれているんだよ」
-桂-
「でも、それだと昨夜は……」
-サクヤ-
「連中はね、桂が羽藤の血の持ち主だって知っていたから狙えただけだよ」
 答えを最初から知っていれば、問題が解けなくても正解は出せる。
 じゃあ、わたしは……安全?


ノゾミカゲちゃんは桂ちゃんと十年前の事件で会っていて、その時に血も拝借している。サクヤさんの例のように、桂ちゃんの気配をたどれるのだろう。


ED3 挫北・夏の終わり

-サクヤ-
『近いうちに顔を出すよ――って、痛っ』
-桂-
「サクヤさん、ケガしてるの?大丈夫?」
-サクヤ-
『ああ、平気、平気。全然大したことないよ。腕の一本程度なら、ひと月もしないうちに生えてくるさ』
-桂-
「……生えないよ、普通」


サクヤさんの正体のヒント。観月の民の再生能力がそれほど凄いのだろうか、それとも桂ちゃんを安心させるための強がりなんだろうか。

>-サクヤ-
『それに仕方ないだろ。あんたは大恩ある笑子さんの孫なんだし、真弓にもあんたのことは頼まれているし、ユメイだって……』


サクヤ(うっ、思わず名前出しちまったさね……)


◇坂の向こうに


◇白花
初プレイ時は章題のダブルミーニングに気付かなかったはず。

 柔らかくて少し高めの声だけど、間違いなく男の子の声。
 鳶色の瞳と茶色がかった髪の毛は、見飽きるほど鏡で見ているものとほぼ同じ色合いで、特筆するほど変わっているものではない。
 彼自身が言ったように、こんな所にいる以外、全く普通の男の子だけれど――
 だけど、だけど、これは一体なんだろう。
 何だか落ち着かない感じがする。


いなかったことにされたはずの人間が目の前に立っていたら、違和感を覚えるだろう。瞳と髪の毛の色に関する描写は、桂ちゃんとこの少年(ケイくん)が血縁的に近いことのあからさまなヒント。そろそろ気付けるはず。

-桂-
「あ、あの……」
-少年-
「……参ったな。確かに僕は死者なんだけどね」
 否定してほしかったのに、あっさりと認められてしまった。
-少年-
「ここにいるのは成すべきことを成そうと成った鬼でしかなく、僕という人間はとうの昔に死んでいることには変わりないんだけど――」


烏月さんや白花ちゃんが語っていたように、「死者」や「鬼」には、「いなかったことにされた人」「その存在を隠された人」というニュアンスがある。ここで白花ちゃんが口にした「死者」「死んでいる」にも、「分霊に憑かれて人外の者と化している」という意味のほかに、くだんの意味も強く込められている。また、「従姉妹を解放する」という極めて恣意的な目的のために、明良さんを始め多くの人間を犠牲にして生き長らえている自分のことを、自嘲で「鬼」と呼んでいるのだろう。

-葛-
「桂おねーさん!なんでそっちに行くですか!? 逃げるんなら、こっちへ来てくださいよう!」
-少年-
「――桂だって?」
 わたしの背中を追いかける声を無視して、わたしは走った。


少年――ケイくんは桂ちゃんのことを知っている。


◇命繋ぐ手

-桂-
「だから、放して」
-サクヤ-
「ばか言ってるんじゃないよ!」
 右の手首に痛みが走った。
-サクヤ-
「せっかくこうして間に合ったのに、なんでそんなことしなくちゃならないのさ」
-桂-
「わたしの自業自得なんだから、サクヤさんまで巻き込みたくないよ。そんなことしたら、お母さんに合わせる顔がなくなっちゃうよ」
-サクヤ-
「あたしだって、ここでこの手を離したりしたら、真弓や笑子さんに合わせる顔がなくなるんだよ!」
「よりにもよって、あの人の目の前で羽藤の血を絶えさせたりなんかしたら、ちゃんと天寿を全うしても、あの人の前にいけないじゃないか!」
-桂-
「あの人……?」
-サクヤ-
「ちっ……何でもないよ」


「あの人」とはおそらく姫さまのこと。「目の前で」は「オハシラサマの木のすぐ側で」という意味だと思われる。サクヤさんにとっては、ご神木は姫さまの墓標、もしくは姫さまそのものである。「あろうころか、あたしの無力のせいで犠牲になっちまった姫さまの墓前で、その血を絶やすことになるなんて! そんなことになったら、あたしは甲斐性無しもいいところじゃないか!」ということ。
 現在のオハシラサマであるユメイさんも「あの人」の候補だけれど、サクヤさんは「あの人」ではなく「あの子」と呼ぶだろう。

 朽ち木の根本にある岩肌が、ぱらぱら崩れて落ちてくる。
-サクヤ-
「……ふん、木より岩が先に参りそうなのは何かの皮肉かねぇ」
-桂-
「え?」


木(桜花の民である人間)より先に、岩(巌の民である観月)が先に参りそうなのは、ということ。サクヤさんは極限状況で、走馬燈のように、これまでの人生で多くの人が自分を残して亡くなったこと(つまり、岩より先に木が参っていったこと)を思い浮かべていたのだろう。

-サクヤ-
「これで三度目……今度こそあたしは……」


Q.「これで三度目……今度こそあたしは……」何が三度目?


◇リカオーン


◇わたしの今後の身の振り方

-桂-
その充電みたいなの、サクヤさんできないの?
-サクヤ-
「見ての通り、あたしらは体力仕事担当だから。長ならできたかもしれないけど、六十年ほど前に他界してるし、基本的には餅は餅屋だし」
-葛-
「…………」


観月の民を滅ぼしたのは鬼切部なので、後ろめたくなっている。

-桂-
「何とかならなかったら?」
-サクヤ-
「仕方ないから、心当たりまで頭下げに行ってやるよ。本当に嫌なんだけど、不承不承」
-桂-
「ううっ、お手数かけます」
-サクヤ-
「別にいいんだよ。あんたとあたしの命の重さに比べれば、それぐらいは軽いもんさ」
-桂-
「サクヤさんはその重い命をかけて、さっきは助けてくれたんだよね……」
-サクヤ-
「同じぐらいの重さをかけなきゃ、重いほうに引きずられるだろう?」
-桂-
「ありがとう……なのに、サクヤさんは本当にわたしのこと考えてくれているのに、朝なんかすごく生意気な口きいて……ごめんなさい……」


 話が噛み合っていないのにお気づきだろうか。桂ちゃんはサクヤさんが「重い命」をかけて助けてくれたと言っているのに、サクヤさんはサクヤさんで「(あんたの命は短い分重いんだから、あたしは)同じぐらいの重さをかけなきゃ(桂を追って崖に飛び込む、ぐらいのことをしなきゃ)、引きずられる」と返している。二人ともが、自分より相手のほうを大事に思っているから、話がおかしくなってしまっている。微笑ましいね。

-葛-
「各自って、わたしもですか?わたしは留守番してますから、どーぞふたりでごゆっくり楽しんできてくださいませ」
-桂-
「あれ?葛ちゃんは行かないの?」
-葛-
「えーと、その、尾花はお店に入れませんので」


葛ちゃんが外食を嫌がっているのは、蠱毒での習慣で、毒が入っていないとわかっていても他人の手が入った料理に抵抗があるから(警察に補導されるのを恐れていたのもあるけれど)。総菜を使わなかったり、缶詰や栄養調整食品に拘ったりするのもそれで説明がつく。


◇そこが肝ですから


◇七星を踏む護法のもの

 サクヤさんはわたしの背中を軽く叩いて、一歩前へ押し出した。
-サクヤ-
「烏月、こいつが羽藤桂」
-制服の少女-
「……なるほど。あなたがここにいる事情は飲み込めました」
-サクヤ-
「話が早くて助かるよ」
 まだ名前しか言っていないのに――
 本当に早すぎだった。
 鬼関係の業界では、密かに有名だったりするんだろうか。


贄の血の家系である羽藤家は鬼切部全体で有名なのだろうけれど、とりわけ千羽党では、真弓さんの駆け落ちや、明良さんのケイくんに関する不祥事などで、たびたび話題に上っていたのではないだろうか。


◇栄華の花と悠久の月


◇観月の民

-桂-
「んー。でも、葛ちゃんに聞かせてもいいのか、微妙なこともあるし。サクヤさんが鬼だとか」
-サクヤ-
「さて……葛相手じゃ今さらって感じだけどね」
-桂-
「わ、何かバレるようなこと言っちゃったかな」
-サクヤ-
「まあ、別にいいけどね」


桂ちゃんはもう少し注意力を磨くべき。


◇千年の記憶Ⅰ・竹林の長者の姫

 嫌な匂いを感じて目をやると、屋敷の屋根に矢が一本、突き立つままにされていた。
 矢じりと矢軸と矢はずは丹を塗ったように朱く、その中で矢羽根だけが白かった。
 それはあの人があいつに選ばれたしるし――


 いみじくも葛ルート◇丹塗矢で葛ちゃんが「丹塗矢」について解説している。

 え――?
 わたしがしがみついた人物。わたしが「姫さま」と叫んだ人物は、見覚えのある顔立ちをしていた。
 もちろん面影があるというだけで、そっくりというわけじゃないけれど、その人はオハシラサマに似ているような――
 そして、その人は、わたしにも似ていた。
 毎日鏡で見ている顔に、かなり似ていたりはしないだろうか。


遠回しに桂ちゃんとオハシラサマ(ユメイさん)の血縁関係を示唆している。


◇千年の記憶Ⅱ・長らの集い

-大神の長-
「奴の始末をつけたあと、この地の長者の血筋のものが、普段の暮らしに困らぬように、うまく取り計らってもくれるそうな。安心せい」
-サクヤ-
「あ……ありがとうございます」


◇贄の血でミカゲちゃん曰わく、経観塚には強い封印が施されてあり、外のあやかしには贄の血が嗅ぎつけられないのだそうな。おそらく役行者小角の取り計らいとはそのこと。青珠のお守りも小角由来のものかもしれない。


◇千年の記憶Ⅲ・黙示録

-主-
「小角。おぬしとて流されている身でありながら、夜な夜な好きに出歩いておるではないか」
-小角-
「ほう、よく知っておったな」
-主-
「最近、口さがない小鳥が一羽、私の巣穴に舞い込んできたのでな。あやつが飛び回ってくるおかげで、私の耳にも風聞が届くようになった」
「贄の血を引くと評判の、竹林の長者の姫君のこともな」


この作品をプレイした人の大が「小鳥さんとお話ししてたのか……意外にファンシーなお方だぜ」と主様を誤解に誤解したことだろうが、ノゾミちゃんのことである。生まれて初めて連れ合いができて嬉しくてたまらなかったノゾミちゃんは、主の気を引くためにあちこち飛び回って噂話を集めては延々聞かせていた。


◇千年の記憶Ⅳ・封じの鬼の木


◇ゆめのまにまに


◇ひとつのゆめ

-葛-
「それがですね、わたし意外と神経質ですから、人前で寝るなんてことできるわけ――」
-桂-
「でも、昨夜わたしたちより先に寝てたよ」
-葛-
「――おかしーですね。久しぶりに手料理などを食べて、気が張ったりしてたんでしょうか」


前述した、他人の手の入った料理に抵抗がある話。おそらく葛ちゃんは、毒を盛られた物を口にして酷い目に遭った経験がある。


◇歓迎の心は掃除から
葛ちゃんが突然用事を思い出したふりをして家を出たのは、桂ちゃんから烏月さんがこの家に来ると聞かされたから。手料理に雑魚寝としばらくぶりにくつろいでいた葛ちゃんには、寝耳に水だったのでは。


◇赤い導き
白花ちゃんの尋常ならざる身体能力は、元々の素質や明良さんとの修行の成果もあってのことだろうけど、主の分霊に取り憑かれて鬼に成っている影響が大きいと思う。八艘飛びも真っ青の跳躍をしたり、陣鉢の上から肘打ちでダメージを与えたりと、人間離れもいいところである。

-千羽-
「……返せ」
 肘と裏拳、二発もまともに攻撃を受けていて、痛くも苦しくもないはずがない。
 それでも千羽さんは真っ直ぐに立ち、奪われた刃を補うように、瞳を鋭く研ぎ澄まして言う。
-少年-
「もちろん返すよ。この太刀――維斗は――千羽党の鬼切り役に託される、千羽妙見流皆伝者の証しでもあるからね」
-千羽-
「そうだ。ゆえにお前にその資格はない」
-少年-
「いや、本家筋の生まれではないことを除けば、僕にもあるんだよ――」


元千羽党の鬼切り役である真弓さんの血を引き、千羽妙見流を秘伝含めて修めている白花ちゃんは、資格が十二分にある。

-少年-
「烏月さん、少し乱暴なやり方だけど、僕はそれほど長くなさそうだから――」
 男の子が千羽さんへ向かって踏み出した。
-少年-
「今、ここで伝えないと、明良さんに顔向けできなくなるからねっ!」
「先代から当代へ、維斗と併せて伝えられる秘伝、千羽妙見流『鬼切り』を――」


明良さんは僕を匿ったせいで処刑され、秘伝の鬼切りを継承することもできなかった。自分が代って烏月さんに奥義を伝えるのが最低限のけじめだ、そうでもしないと明良さんに合わせる顔がない、ということ。


◇朔の夜


◇溶ける花びら


◇大切なひと


◇封じの綻び・急転直下

-千羽-
「奴は――あなたと同じ名を持つ、ケイと名乗っているあの鬼は、オハシラサマのご神木が封じている、 かの鬼神を目覚めさせようとしている」
 私の疑問に、千羽さんはそう答えた。
 鬼の木に抱かれ眠る、まつろわぬ鬼神――
 サクヤさんが幼いころ、長たちが小角様の協力を得て封じた、主と呼ばれる古き鬼神。
 あまりに強力な《力》を持っていたがゆえに、封じ手少しずつ《力》を削ぐしかなかった鬼神。
 生け贄の血を欲しがる鬼から身を守らなくてはならないという、個人的な問題を飲み込んだばかりだというのに――
-桂-
「ねぇ、千羽さん」
「その男の子――ケイくんって、主を目覚めさせてどうするつもりなの?」
 ノゾミちゃんたちは、主様と呼び慕っているようだから、封じを解こうとするのもわかる。
 だけど、彼が主を目覚めさせようとする動機はわからない。わからないからすっきりしない。
-桂-
「目覚めさせて、どうするの?」
-千羽-
「……それはわかりません」
「今から十年前、――奴は小さな子供の姿で現れ、人を殺し人を喰らいました。そして鬼切り頭から命を受けた鬼切り役が赴き、切り捨てました」
「――切り捨てた、はずでした」
 千羽さんは未だにその鬼を追いかけている。
-千羽-
「実のところその鬼切り役は、切り捨てるべき鬼を匿い育てていたのです。こともあろうに鬼切りの技を授けながら――」
 千羽さんは長い長い、息を吐く。
-千羽-
「結局――鬼は化けの皮を剥がし人を襲いました。そしてその鬼切り役はすでにこの世の人ではなく、彼にどのような思惑があったのかは闇の中です」
「生き残った鬼がなぜ主の封じを解こうとしているのかは――」
-サクヤ-
「あの子にはね、主が憑いているんだよ」
-桂-
「主が……?」
-サクヤ-
「正確には、主の分霊が憑いているんだよ」
-桂-
「……分霊って?」
-サクヤ-
「御霊を分けるで分霊さ。孫悟空が抜いた毛に息を吹きかけて、分身を作ったりするだろう?」
 本体から別れた霊の分身。それなら本体にかせられた封じを解こうとするのも当然だった。
-サクヤ-
「あの子が鬼切り部の目に付くような行動をしている時は、主の方が表に出てきている時だろうね」
「普段はあの子のままなんだろう。現に烏月、あんたはあの子に殺されなかった」
-千羽-
「…………」
「……そう言えば奴は、自分はそれほど長くなさそうだと言っていましたが……」
-サクヤ-
「文字通りなんだろう。主の分霊に取り憑かれてから十年、何度か暴走したとはいえ、 ずっと抑えて来たっていうのは並大抵のことじゃないよ」
「そろそろ限界だと悟ったんだろうね。だからあの子は、経観塚にやってきた」
-桂-
「主の分霊が、自分の本体を助けるために……とかじゃなくて?」
-サクヤ-
「推測だけどね、あの子が何のために鬼切りの技を覚えたのかを考えれば――」
-千羽-
「鬼を切るため――」
-サクヤ-
「そうさ。あの子はご神木に封じられている、主そのものを切りに来たんだろうね」
-千羽-
「いくら何でもそれは――」
「千羽妙見流の秘伝を会得しているとはいえ、あの役行者と観月の民の長たちが手を結んでなお、 封じるより他なかった鬼神を切れるはずが――」
-サクヤ-
「ないだろうね」
「あの当時に比べれば、千を超える夏の積み重ねが、奴の《力》を削いでいるはずだけど――」
「それでも、分霊とは比べ物にならないぐらいの《力》を持っているんだよ。奴は」
-千羽-
「その分霊すら抑えられないようでは……」
-サクヤ-
「おそらく封じが解けた瞬間、あの子は――」
「あの子は、主に乗っ取られる」
-桂-
「………」
-サクヤ-
「………」
-烏月-
「………」
あの男の子――わたしと同じ名前で、ケイくんだったっか。
 彼がどんなに抗っても、彼がしていることは主を解放することにつながってしまう――
 封じられているとはいえ、相手は神なのだ。
-サクヤ-
「それで今日は、オハシラサマのところに行って話し合ってきたんだよ」
 夷を以て夷を制し、神を以て神を制す。
 だけどオハシラサマは――わたしはその正体が神様ではなく、封じの木を支える人柱なのだとわかっているのだけれど――
 わたしの中で何かが引っ掛かり、それが赤い痛みの源になる。
 だけど今はそんなことを気にしていられるほど、余裕がある状況じゃないことはわかっている。
 完全に隠せたとは思えないのに、サクヤさんはわたしの痛みに気付かなかった。
-サクヤ-
「さて――おそらく、明日の朝日に月が消されるまでが勝負どころだね」
 サクヤさんは立ち上がって、コキコキ首を鳴らしながら庭先へとつながる障子を開く。
-サクヤ-「ちょうど今夜が満月だ――」
 真円を描く月が、煌々と照り輝いている。
 その月は昨夜見上げた月よりも青く、冷たく、大きく思えた。
 サクヤさんは観月の民だけれど、その加護を得られないそうなので、その月の大きさが不吉なものに思えて仕方がない。
-サクヤ-
「それじゃあ、行ってくるかね」
-桂-
「行くって……どこに行くの?
-サクヤ-
「オハシラサマのご神木だよ」
 そのご神木に封印されているのは――
-サクヤ-
「鬼が出るか蛇が出るか、あの子にしても奴にしても、結局狙いはそこだからね」


 烏月さんはケイくんが生まれついての鬼だと勘違いしている。
白花ちゃんの最終目的は、主を目覚めさせるではなく、目覚めた主を斬り伏せてゆーねぇを解放すること。自分の浅はかな行動のせいで大切な人を犠牲にしてしまったことへのけじめ、贖罪である。
明良さんが命に背きながら白花ちゃんを匿い、あまつさえ門外不出の千羽妙見流を授けたのは、白花ちゃんの悲壮な決意に心を打たれたのが一つ。鬼切りの技の師匠であり、個人的にも慕っていた真弓さんの愛息を一思いに切れなかったのが一つ。真弓さんが切るべき鬼(サクヤさん)と親交を深めたのに倣ったのが一つ。明良さんの中で真弓さんの占めるウェイトはかなり大きい。

-桂-
「ねぇ、千羽さん。鬼切部って千羽さんの他にもたくさんいるんでしょ? その人たちに助けてもらったりはできないの?」
 自分でも嫌になるぐらい自分勝手なことを言う。
 サクヤさんの代わりに、他の人に面倒を押しつけようとする。
-千羽-
「現在、鬼切り部は混乱しています。各党を束ね、それぞれに命を下す、鬼切り頭という役職を継承している家があるのですが――」
「その家の当主が約一ヶ月前に亡くなられました。唯一の跡継ぎであった当主の孫は、目下のところ行方知れず」
 つとめて事務的にわたしに継げて、千羽さんは小さくかぶりを振った。
-千羽-
「現在は鬼切り頭不在の状態ですから、各党の間で協力体制をとるのは難しいでしょう」


唯一の跡継ぎである若杉葛嬢は、家督を継ぐのを拒んでここ経観塚に家出中である。


◇赤い鬼神

 突っ伏して血を吐くサクヤさんを冷たい瞳で見下ろしたまま、封じから解放されたばかりの身体の馴染み具合を確かめている。
-主-
「まだ足らぬが……さすがは贄の血の持ち主よ」


ユメイルートのネタバレその1。主はサクヤさんらが駆けつける前に、誰かの贄の血を吸い、削がれていた力のいくらかを取り戻していたらしい。桂ちゃんはお屋敷で魘されていたし、もう一人の羽藤の人間である(とプレイヤーさんはこの時点でおぼろげにわかっている)ユメイさんも、現身を持たないので除外される。となると、贄の血の持ち主がもう一人いることになる。ところで、サクヤさん一行が到着する前に、主と接触した人間はケイくんだけである。そういうわけで、この時点でケイくんが贄の血の持ち主=羽藤の人間だと確定する。


◇月の蝕み


◇月を喰らうもの


◇鬼哭変

-主-
「だが、十年前のようなしくじりもある。今の私は少しでも危険があるなら避けたいところなのだよ」
「ここは引かせてもらうとしようか」


 十年前はあと一歩というところで柚明さんに邪魔された。


◇散りゆく花びら(1)

-オハシラサマ-
「あなたは月の寿命を生きる巌の民。桂ちゃんは散り急ぐ桜花の民……」
「そんな桂ちゃんに、あなたの業を押しつけるんですか?」
-サクヤ-
「ああ、そうだよ!あたしをこうして生かしたのは笑子さん――あんたと桂の祖母さんじゃないか!」


ユメイルートのネタバレその2。この時点で桂ちゃんとユメイさんが四親等以内の血縁にあることがわかる。


◇封じの綻び


◇陰る日向


◇道を阻むもの

-ノゾミ-
「その技は十年前と同じ――」
-ミカゲ-
「鬼切り役の――」
-千羽-
「効くだろう?この技は鬼を――すなわち死者の魂を切るための技なのだという」
 この一撃でしとめたという自信があるのか、血振りのように一振りしてた太刀を鞘に収める。
-千羽-
「奴が主に屈する前に、私に授けてくれた技だ」
-ノゾミ-
「あの子、最後までわたしたちの邪魔をするのね――」


十年前の事件では真弓さんが鬼切りを喰らわせている。


◇死闘


◇朔夜

-主-
「はははっ、この十年の目覚めは私の負けで終わるようだが、私はまだまだ滅びぬぞ」
 血を吐きながら主が笑った。


 ノゾミカゲちゃんが分霊を解放してから十年。


◇散りゆく花びら(2)

 わたしはおぼろな現身しか持たないオハシラサマに取りすがって、早くサクヤさんを助けてほしいと叫んだ。
-桂-
「お願いだから!」
 私はサクヤさんの夢で、オハシラサマはご神木を支える人柱であって、何でもできる神様ではないと知っているのだけれど――


プレイヤーがオハシラサマ(ユメイさん)に超然としたものではなく、身近で人間的なイメージを抱き、ユメイさんは元人間? と推測しやすいよう配慮している。
 言うまでもないが、サクヤさんの夢の中でオハシラサマになった姫さまと、ハシラの継ぎ手のユメイさんは別人である。


全ルート共通部
千羽烏月ルート
若杉葛ルート
浅間サクヤルート
ユメイルート

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tags: アカイイト 考察 
2007年09月09日

2つでじゅうぶんですよ ブレードランナー

 『ブレードランナー』制作25周年記念で↓こんなものが出るらしい。
*【10,000セット限定生産】『ブレードランナー』製作25周年記念 アルティメット・コレクターズ・エディション・プレミアム(5枚組み)
*ブレードランナー
 ほうほう、私が高校生のとき観たのはディレクターズカット版だったのか。というかこんなにバージョン違いがあったのか! 驚いた。
 驚いたといえば、ひょっとすると世界一有名な日本語かもしれない、うどん屋のオヤジの迷言「2つでじゅうぶんですよ、わかってくださいよ」。皆さん、デッカードが何を4つほしがっていたのかご存知だった? 私は先日下のサイトさんを見て初めて知ったんだよね。
*究極の大ネタ! ワークプリント海賊版ヴィデオ!
 てっきりうどんを四杯注文していたのかと思っていた。

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2007年09月08日

CLANNAD -クラナド- 考察・解説・レビューまとめ

CLANNAD考察 (Water Emp-TEIさん)
CLANNAD レビュー (海ねこ&ムツゴロウさん)
CLANNAD 最終回「小さなてのひら」いまさら感想 (FCのPSP便利館さん)
CLANNAD -クラナド- 考察 (視の世界さん)
クラナド解釈ページ (Kカスタネダさん)
幻想世界に関する考察 追記 (SILENCEさん)
PS2版CLANNAD-クラナド- 考察1 幻想世界考察
PS2版CLANNAD-クラナド- 考察2 本編シナリオ考察 (万聞は一見に足るやもさん)
CLANNADなんとなく考察 (夢幻教会さん)
「クラナド」その思想と断絶 (冬枯れの街さん)
「CLANNAD」愛するということ 家族の愛、世界の絆 (好き好きおにいちゃんM!さん)
CLANNAD考察2 (閑話休day。さん)



リトルバスターズ! 考察・解説・レビューまとめ
ONE~輝く季節へ~ Kanon AIR CLANNAD


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2007年09月04日

「アオイシロ」の発売日が決定!

「アオイシロ」応援バナー

 アオイシロ関連のサイトは封印しているんで、どうしても乗り遅れてしまう。われらが期待の和風伝奇ADV「アオイシロ」の発売日が2008年3月20日に決定した模様!!いやっほうーぅ!!もう半年ぐらい延期してでも、完成度の高い作品を創ってくれるのを期待しておりまする。

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2007年09月02日

AIR 考察・解説・レビューサイトまとめリンク

2ちゃんねるAIR総合まとめ
「Air」について (一〇cm四方の青空さん
AIRのテーマとは? (BRILLIANT FOR YOUさん)
AIR解釈ページ (Kカスタネダさん)
最後に残るもの:『Air』についての考察 (Tunnel-company.comさん)
AIR シナリオ考察・解釈 (琥珀色の南風さん
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