2012年04月28日

「作詞:脚本家のエロゲーソングは最強」の法則

※姉妹記事と同様にネタバレには配慮していない
「タイトル画面曲が良曲のエロゲーは良作」の法則

麻枝准



 これ、前世紀の作品なんだよな……。『雫』から三年しか経ってないんだよな……。


 なんだかんだでこれがオールタイムベストだな。2004年はエロゲー業界の最高到達点だったと思っている。


 世界の構造を理解した後に、再プレイで聞き返すと心に刺さる。


 あざといのもこれだけ繰り返せばお家芸だ。


 ぶっちゃけ「作詞:麻枝 准 田中 ロミオ」のクレジットだけでウルッときた。


田中ロミオ

 BGMアレンジ曲+ロミオ歌詞! 泣かずにはいられない!


宮蔵

 芋かりんとうが食べたくなる曲。


うつろあくた



 ネコ耳萌えゲーのツラを被った超展開ゲーの雄。


麓川智之

 御大の作詞はもっと評価されるべき。


 2番の「いくつかの“もし”の未来も 満ち足りていればいいと」は、作品を象徴する一節だと思う。


 懐かしくなって見返してみたが、名作オーラが半端なくてびっくりした。本編はスイカ割りゲーだけどな!


長岡建蔵(原詞)

 夕暮れ時はもっとも自殺者が多い時間帯らしい。


すかぢ

 キャッチーな音にごまかされがちな、不穏極まりない歌詞。




 今回は綺麗に終わったな、と思ったらやっぱりすかぢはすかぢだったwでもあれだけ楽しませてくれたなら文句のしようもない。


まとめ
(手前味噌だが)なかなかよくできている前回と比べて、何の意外性もなかった(笑)。ただのだーまえフェスティバルだった。むしろ驚いたのが「これ絶対ライターが歌詞書いてるだろ……見なくてもわかるぜ」と思っていた曲が、案外そうでもなかったことだ。


 完全にロミオ作詞のイメージがあったが、ムービーの演出に引っ張られていた。


 これもムービーとサウンドのイメージかな。


 高名な考察サイトの解釈を読んで「そんな深い意味があったのか!」と感心させられた記憶があるが、違ったのか。


 果てしなく、それはもう果てしなく長い物語の始まりと間奏と終わりを告げるこの曲がライター作詞じゃなかったとは! でも、クレジットに名前がないだけだね(断言)。

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2012年04月21日

『かにしの』の終わりが全く見えない

 まだ健側乙ルートの2本目だよ……。やっべぇ、本格的に筋力が落ちている。
 そうこうしているうちに、いつの間にか『魔法使いの夜』が発売されていた! あと半年くらいは延期する想定だった。世間的な評価はどうなんだろうか。ネタバレ喰らう前にやってしまおうかなぁ。さすがに型月くらいはやっておかないと置いてかれ感が半端ない。私の中でエロゲーの歴史は『Rewrite』で止まっている。
 長文の人へ>ここで返信した。

ジャンプまとめ速報 ハンターハンターのヒソカって12巻ぐらいまでは最強キャラだったよな? ジャンプまとめ速報 ハンターハンターのヒソカって12巻ぐらいまでは最強キャラだったよな?
 やっぱり、ビスケもヒソカもレイザーにはもう少し太刀打ちできてもよかったよなぁ。ゴンに見せ場を持っていくためとはいえ、念獣経由のスローをキャッチして指をダメにされるのはちょっと。レイザー戦(GI編)は、ハンター世界のパワーバランスを考える上でなかなかの悩みどころだ。

アンビバレントとは - はてな アンビバレントとは - はてな

【ambivalent】両義的・両価的。一つの物事に対し、相反する価値が共に存し、葛藤する状態のことをいう。二律背反。


ドグマ とは - コトバンク ドグマ とは - コトバンク

各宗教・宗派独自の教理・教義。


シンディ・ローパー - Wikipedia シンディ・ローパー - Wikipedia

1995年、『ニュースステーション』に出演した際に、当時社会現象となっていた女子高生の「ルーズソックス」のニュースにコメントを求められ、「あのソックスは格好いいし、いいじゃない?!」とスタッフの思惑と正反対のことを言い出し、「あの年頃の少女たちは、自分が何か特別の存在でありたいと願い、同時に一人で突出する勇気はまだない。そんな少女たちが社会においては特別な自分たちであるという主張としてのルーズソックスなのではないだろうか」と続け、コメントの最後に「でも誰が何と言おうとあのソックスは格好いい!」と結んだ。


 うむ、するどい。アーティストってこういった観察眼がずば抜けているよなぁ。そうでもなければ生き残れない業界なんだろうけど。

男子高校生の日常って面白いよな?‐ニコニコインフォ 男子高校生の日常って面白いよな?‐ニコニコインフォ
 某二次創作の人というのは禁止ワードなんだろうか。あのころから頭一つ抜けて面白かったな。


『リトバス』のアニメの出来が気になって夜も眠れない。日常シーンの取捨選択はきっちりやってくれよ。『リトバス』は男メンツとの絡みの方が面白いシーンが多々あるからなぁ。ギャルゲーらしからぬ性質だ。


『百合霊さん』のBGMなんだが、これを思い出して笑いっぱなしだった。


 百合ゲーマーの二大聖典「泡沫」「Going on」が入っていたので思わずブクマ。後者については場面補正含めて評価せざるをえないが、前者については信者にもかかわらずどうにもピンとこない。食い足りない。

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2012年04月15日

「たった7組」か? 「7組もいる」のか? マジョリティ目線の妄想ユリトピア(笑)『屋上の百合霊さん』

屋上の百合霊さん レビュー・感想・評価 凡百合ゲー、ときどき電波

 もっと新規の内容を盛り込むつもりだったが、気付けばほとんど前の記事の繰り返しになってしまった。『屋上の百合霊さん』がノベルゲームとして落第点であることは前回で十分に説明したので、今回は百合ゲーとしてどんなところが薄気味悪かったか補完していこう。

 『百合霊さん』のセクマイ描写に関するすこぶるつきの不快さは、マジョリティが妄想する身勝手なセクマイ像だから、の一言でおおよその説明が付くと思う。ぱっと見では、幸せな同性カップルが何組も誕生することになる微笑ましい作品だ。しかし、その幸せが「女同士は普通じゃない、でも愛さえあれば関係ない」という百合厨御用達のロジックに立脚しているのが気味悪いんだよなぁ。素直に祝福する気になれない。
 以下は前回の記事で加筆した箇所の引用だ。既に加筆部を読んでくれた人はスルーしてくれぃ。

 こんなカビくさい表現を平然と使いつづけている時点でライターの底が知れるよ。いくらリベラルぶって理解があるよう取り繕っていても、馬脚が見えてるっつの。Goo辞書先生で確かめたが、「なのに」「だけど」って前者(女同士)と後者(好き)が相反するとき、矛盾する時に使う言葉だよ? もし、当事者の視点で真摯に書こうと思っていたら、登場人物に延々こんなことを言わせるなんてことは出来ないはずだよ。誰だって、自分たちのアイデンティティを「なのに」「だけど」などとスティグマ扱いしたくないし、されたくないだろう。公表するかどうかはさておき、自分の性に胸を張って生きていきたいだろう。私は「確かに普通じゃないかもしれない、でも私たちは愛し合っている!」などというお高尚な思考は、しょせんは空想のキャラクターだからできるものだと思っている。一度きりの人生を歩む、血の通った人間の思考じゃあない。あくまで書き手にとって他人事に過ぎないから、こんな無茶苦茶なことを言わせられるんだよ。自分が「普通じゃない」扱いされる側に回ることを考えたこともない奴がひりだすクソたわ言だ。結局『百合霊さん』は、マジョリティ側の「こうだったら美しい! こうだったら萌える!」という都合のいい妄想――ユリトピア(爆笑)だったっけ?――の具現化にすぎないんだよ。フツーじゃない恋愛に憧れる、思春期真っ盛りなガキ向けのお花畑ファンタジーだ。


 そもそも「でも愛さえあれば」理論って、「恋愛をしてキラキラ輝いている同性愛者は美しいからOK^^シングルの同性愛者は普通じゃない人たちです^^;」と暗に言っているよなぁ。なんという横暴なスイーツ理論だと私は思う。

たった7組!? 思いのほか居るかもしれないが!?
 前回の記事にはたくさんのコメントをいただいた。どんな怒りのコメントが来るのかと身構えていたのだが、ほとんどが想定の範囲内でちと拍子抜けした。だが、正直、この二つのコメントには度肝を抜かれたね。

全校生徒数がはっきりしないが、たった7組で「ありふれてる」と語らせたら、それこそアホだろ?


学園中から百合霊さんの二人が探し出して五組、百合霊の二人入れて六組。思いのほか居るかもしれないが、「ありふれている」と思えるかどうかは微妙なところ




……たった7組!?



たった7組!?





たった7組!?






「たった7組」って!?



 なるほど、このコメントのように、少数派を「たった7組」呼ばわりして一顧だにしない人たちは、無邪気に『屋上の百合霊さん』を楽しむことができるんだろう。
 私は『百合霊さん』主人公の、自分と同じセクマイで彼女持ちの知人が「6組も」いるにもかかわらず、自らのホモフォビアをほんの少しも改善せず、あろうことか知人を異常扱いしだすとんまっぷりに呆れかえり、楽しむどころか激しい嫌悪感を催した。
 それにしても、この「たった七組」という物言い、すっげぇなぁ。二重三重の意味で衝撃を受けたよ。思わず4倍文字を使っちゃうほどの驚きだ。たった、たった、たった、たった、たったかぁ。私は『百合霊さん』のレビューを“何だか不安になってきたんだが、「なぜそこから『同性同士って案外ありふれているのね』という結論が出てこないんだ」と思ったのは私だけじゃあないよね?”と締めくくった。あれはぶっちゃけ「みんなもそう思ったよね、普通はそう思うよね……チラッチラッv(^^」というニュアンスだったので(GEGEさんとtrivismさん、反応してくれてありがとう)、ここに上記のような突っ込みが来るとは想像だにしていなかった。これだけ猛反発を受けるとは想像の斜め上を行っていた。「それこそアホだろ?」の彼(彼女?)からは「女の子同士の恋は特別で崇高で純粋なものなのだ! 『同性愛』『レズビアン』『ありふれている』などと俗物扱いするのは断じて許せん!」というもの凄い気概を感じた。いやぁ、私と違って全体的に『百合霊さん』を楽しめた人でも、主人公のクライマックスにおける度を超えた優柔不断さや、友人知人への冒涜とも取れるトンチキ発言には辟易したと思っていたよ。
 そもそも全校生徒が何人いてそのうち何人なのか、という問題ではないと思うが……仮に全校生徒を1クラス40人×10クラス×三学年の1200人と仮定しよう。『百合霊さん』に登場するレズビアンのカップルは、主人公のペアを除けば6組12人だ。100人に1人の割合になる。ここで声を大にして聞いておきたいことがある。
 100人に1人って「たった」なの!?
 まずはシンプルに数字の問題として考えるが、100人に1人、コミュニティの1%に当たるってもの凄い数字だよ? 日本の総人口1億二千万人に対して120万人だ。さらに言うなら、セクシャルマイノリティが人口に占める割合は3~5%だと言われている。これは何件もの統計から出されている、信頼に足る数字だ。あんたらセクシャリティが違うというだけで、ン百万という人を「たった」で片付けちゃっていいの? 本当にいいの?
 また、単なる数字の多寡に還元されない問題もある。100人のうちの1人だろうが何だろうが、その人は自分の人生を歩んでいて、お金なり、物なり、経験なり、価値観なり、家族なり、友人なり、様々なものを積み重ねているんだ。そして、普通に学生をやっていたり、仕事をしていたり、家族を持っていたり、友人がいたりで、いろんな人々に関わりあって生きているんだ。「たった1人」の生活が生み出して蓄積しているものって途方もないよ。セクシャリティの異なる人々を、1%・1人に過ぎないから語るに値しない、問題ないという発想が出来るのは、自分がその1%に回って黙殺されることを考えたことがないからだよ。

ユリトピア(笑)従業員紹介
 私の『百合霊さん』で嫌いなキャラワースト3は、1位が電波教師、2位が主人公、3位が友達病、次点がロッカー(笑)で後はだんご状態だ。後者二人については「脚本家がクソしながら考えたような設定のキャラをけなげに演じている、カワイソーな三文役者」という印象で一致している。1位と2位の気色悪さについては、これからじっくりと語っていこう。

電波教師
 教師と教え子のシナリオを要約するとこんなあんばいだ。
 数理部:かわいい物が好き。教師:国語科の教師で数理部の顧問。とある理由から、同性同士の恋を「一過性のもの」「一時の気の迷い」と思っている。
 数理部、今まで教師をかわいいかわいいと思っていたが、いつの間にか恋愛感情を抱いていることに気付く。
 数理部、教師に告白する。教師は「それは一時の気の迷い。はしかみたいなもの。大人になれば心の整理がつく」と諭す。数理部、あきらめられない。
 教師のありがちなトラウマが明かされる(学生時代に同性に告られて、どう返せばいいのか熱を出すほど考え込む。気持ちの整理がついて、返事をしようと思ったら、相手の方から「やっぱり勘違いだった」と言われてショックを受ける)。
 教師、主人公&幽霊のキラキラ☆大作戦(説明するのもアホらしい)で、数理部の綺麗さに心を奪われる(実にアホらしい)。
 数理部、2回目の告白をする。教師、トラウマのせいで同性同士の恋愛を疑問視していたことを語り、告白にOKを出す。
 ここまでは理解できる。しかし、この後の教師の行動は全くもって理解できない。この電波さんは、恋人同士になったにもかかわらず、ぐだぐだぐだぐだぐだぐだぐだぐだぐだぐだと「でも、本来は間違っていること」「許されないこと」「教え諭して、告白にも応えるべきじゃなかった」と語りつづけて、恋人兼教え子の数理部に偏見を刷り込みはじめるのだった。……ここまでの流れは一体何だったの!? あんた、過去の記憶を払拭して、数理部の思いをきちんと受け止めてあげたんじゃなかったの!? そして、電波教師が下痢便のように垂れ流した偏見については特にフォローされないまま、学校行事をこなして、いちゃこらして、流れで校内セクロスをバッチリ決めてTRUE END! 意味がわからない。
 私が考える、自分がセクシャルマイノリティだと初めて気付いた教師が、同性かつ未成年の恋人のために取るべき正しい行動はこうだ。未成年者との性交渉に関する条例等について調べる(アダルトゲームで何言ってんだと言われそうだが)。自分にセクマイに対する正しい知識が足りないなら、文献なりネットなりで徹底的に情報を仕入れる。二十何年も生きてきて、また教師という人に物を教える立場にあって、この程度の発想が出てこないとは言わせないぞ。その上で、恋人にセクシャルマイノリティに関する正しい知識を教えて「あなたはおかしくなんかないよ」「何も間違っていないよ」「だから、胸を張っていいんだよ」と教え諭す。こんなところじゃあないか。だがこの電波教師は(まあ、いいか)(なんとかなる、そういうものよ)とかほざいて積極的な行動は何一つ取らなかった。それだけならまだしも、「普通じゃない、でも愛し合っている私たち! あなたがいてくれるから!」とホモフォビアなポエムを立て続けに披露して悦に入り、後は流れに任せて校内ファックに及んだ。なんだこの浅薄野郎は。
 『百合霊さん』の世界では、教師という若者を導くべき立場の人間が率先して偏見を刷り込んでいるんだぜ。私にはとてもユリトピア(笑)とは思えないな。

主人公
 主人公のメインシナリオを要約するとこんなあんばいだ。
 主人公:料理が好き、とある理由で人から距離を置いている。幼なじみ:陸上部所属、主人公にご飯を作ってもらってる。メガネ:友人A。幽霊が見える。
 主人公、学校の屋上で幽霊2人に出会う。幽霊2人は学園内で同性カップルが生まれることを望んでいて、それを手伝ってくれる人を募集中らしい。主人公、よくわからない流れで手伝いを承諾する。
 主人公、カップル候補のために部活動や委員会活動を手伝ったり、恋愛ムードを高めるシチュエーションを用意したりと東奔西走する。
 主人公のありがちなトラウマが明かされる(中坊の頃に、料理部で気張りすぎて周りの連中に煙たがられる。陰口を叩かれているのを聞き、ショックで人間関係に距離を置くようになる)。
 手伝いの過程で、カップル候補のほとんどと交流して知人になる。その延長で部活動の夏合宿に料理担当として参加する。再び人の輪の中に入って好きな料理をするうちに、トラウマを癒やしていく。ついてに幼なじみともフラグを立てる。
 主人公たちの手伝いの甲斐もあり、学校に何組ものハッピーなカップルが成立し、何人かは肉体関係も結ぶ(主人公は幽霊情報で知る)。
 ここまでは理解できる。この後に、大方の予想通りに幼なじみが主人公に告白するのだが、それを受けての主人公の行動と言動がまるっきり意味不明だった。事ここにいたってうじうじうじうじうじうじうじうじ悩みだし、ホモフォビアをメガネらにばらまきはじめる。……ここまでの流れは一体何だったの!? そして、メガネらの助力を受けて、最終的に導き出す答えがまた酷いんだこれが。
 『屋上の百合霊さん』の主人公が、他の百合作品の主人公と決定的に違うところは、幽霊二人の存在によって、劇中で「6組12人もの」自分と同じセクシャリティの人々と出会えたことだろう。世の中には、たとえ自分の性を正しく認識していても、機会に恵まれず、気軽に話せるようなセクマイの友人が一人もできなかった人もざらにいるだろう。社会人になり、自分の生活基盤を整えて、それからアクションを起こす人も少なくないだろう。そんな人たちに比べたら、学生のうちに、10人以上の同じセクシャリティの友人が出来た主人公は恵まれているにもほどがある。セクマイの学生が健全な自己形成(「同性愛自体が健全じゃないし^^;」と思ったあなたは、くたばればいいと思うよ)をする上で、同セクシャリティの友人以上に優れたインプットは存在しないだろう。そいつらと一緒に勉強したり、部活や委員会活動で汗を流したり、同じ釜の飯を炊いたり食ったり、趣味について語ったり、物の考え方について話をしたり、恋バナの一つもしたりすれば、自分自身と友人のことを「普通じゃない」なんて考えなくなると思うんだけどな。身近で普通に生活している仲間の存在って、それくらい心強いものだろう。
 何? セクシャリティを異常視するのと、友人そのものを異常視するのは話が別だって? 人の根幹に係わるアイデンティティを「普通じゃない」扱いするのは、友人そのものを「普通じゃない」と言っているのと何ら変わりはない。この点に納得いただけないんなら、もう手の施しようがない。
 して、「6組もの」同性カップルと短くない期間を過ごし、そのうちの何組かの月下氷人となり、そのうちの何人かと親しい仲になった主人公が吐くのがこんな台詞である。

 比奈の想いを変だと思うことはもうない。今まで、女同士でも、あんなにひたむきに、まっすぐに、想いを相手に向けている人を見てきた。


「お、女同士なんだよ? もう今さら、それが変だとか思わないけど……。
 でも、まわりの人は、そう考えてくれないかも。お父さんやお母さん、比奈のおじさんやおばさんを困らせるかもしれない」
「比奈にだって……、私が恋人だってことで、迷惑かけるかも。比奈が、変な目で見られたら、どうしよう……」
「結奈、別に、同性愛とか百合とか、女の子同士とか、そういうのが嫌いってわけじゃないんだよね?」
「そう思っている。確かに、最初は変なことだと思った、恋愛って男女の間のものだと思っていたから。それが普通だと。
 でも、確かに普通じゃないかもしれないけど。誰かを好きという気持ちの行き先には、たとえその先が同性であっても、変じゃないと」


 そう思っている(キリッ)。強調は引用者による。作品の締めであるグランドルートで、狂言回し的ポジションにいる主人公にこんなことを言わせちゃうのを「繊細な心理描写」「リアリティのある葛藤」と思える人なら、この作品を楽しめたんだろうなぁ。
 このくだりを読んだ時点で、私にとって『屋上の百合霊さん』は物語ではなくなった。睦月たたらなるライターの欲望を満たすためだけに存在するハリボテ御殿――ユリトピア(笑)――に変わった。主人公は人間ではなくなった。ユリトピア(笑)の従業員として、用意された萌え萌え台詞を吐く木偶人形に変わった。
 ここで冒頭の「たった7組」の話を振り返ろう。主人公が「全校生徒1200人のうち6組12人が同性愛者」という「数字」だけを聞いて、女同士は普通じゃない、おかしいかもしれないと思うなら、まだ理解は出来るんだよ。正直に申し上げると、まともな人権教育を受けていないんだな~とは思うが。見聞の狭い学生ということを考えれば、理解出来ないことはない。しかし、この主人公は事情が全く違うだろう。単なる数字ではない、普通に考えて普通に生活する生身の同性愛者と学園生活を送っていたじゃあないか。そんなまたとない機会に恵まれていたにもかかわらず「女同士は普通じゃない」とひたすらオウムのように連呼する。その人間らしさが著しく欠けた反応が不気味でしかたなかったんだよ。だけど、「これは百合萌えファッションヘルス『ユリトピア(笑)』の従業員さんが、用意された台詞をしゃべっているだけなんだ。友情とか共感とか、そういった人間らしい感情を求めるのが間違いなんだ」と考えると、すっと腑に落ちたね。雇われの身に無理なことを要求した私が悪かったよ。

 主人公にしろ電波教師にしろ、「この関係は間違いなんかじゃない」「変じゃない」と発言はするが、その前には必ず「女同士なのに」「たとえその先が同性であっても」という偏見まる出しの枕詞がつくんだよね。うぜーのなんのって。いつまでたっても、たとえ何があろうとも、「同性同士はおかしいけれど」というスタンスを頑なに崩さないところが、主人公やアホ教師、ひいては『屋上の百合霊さん』の胸くそが悪くなるところだ。

好きだからこそ(笑)迷う、悩む
 そんなこんなで、『百合霊さん』は個人的にリアリティの欠片も感じられない作品だったが、主人公による下記の弁明だけは、悪い意味で現実味があって笑ってしまった。この箇所を何遍引用したかわからないけれど、『百合霊さん』を象徴する名台詞だと思うので何度でもやる。

「お、女同士なんだよ? もう今さら、それが変だとか思わないけど……。
 でも、まわりの人は、そう考えてくれないかも。お父さんやお母さん、比奈のおじさんやおばさんを困らせるかもしれない」
「比奈にだって……、私が恋人だってことで、迷惑かけるかも。比奈が、変な目で見られたら、どうしよう……」
「結奈、別に、同性愛とか百合とか、女の子同士とか、そういうのが嫌いってわけじゃないんだよね?」
「そう思っている。確かに、最初は変なことだと思った、恋愛って男女の間のものだと思っていたから。それが普通だと。
 でも、確かに普通じゃないかもしれないけど。誰かを好きという気持ちの行き先には、たとえその先が同性であっても、変じゃないと」


 いるいる、こういうこと言い出す奴いるわ! あくまで「私は偏見とか抵抗とかない」「私は悪くない」けれど、「まわりの人は変に思うかも! 相手にも迷惑かけるかも!」と責任転嫁するやつ。

(それは世間が、ゆるさない)
(世間じゃない。あなたが、ゆるさないのでしょう?)
(そんな事をすると、世間からひどいめに逢うぞ)
(世間じゃない。あなたでしょう?)
(いまに世間から葬られる)
(世間じゃない。葬むるのは、あなたでしょう?)


 太宰メソッドがドンピシャリ当てはまるじゃあないか。友人を変人扱いする冷血漢ぶりに腹が立つのと同時に、マワリガーアイテガーというリアルすぎる中坊思考に笑いがこみ上げてきたなぁ。

まとめ
 私は『屋上の百合霊さん』のように、女同士の恋愛をダシに使って「私たちの想いは本物!」と悦にいる中二病スイーツ作品は大嫌いだ。この業界は十年一日のごとく進歩がないな。いつになったらこんなくだらんマンセーをやめるんだ?

※参考記事
同性愛嫌悪と主人公マンセー
そういう趣味、そういう嗜好、ソッチの世界、そっちの気
※コメントありがとうございます
「たった7組」説から弱者憑依まで - どうしても同性愛を「普通じゃない」ことにしたい百合オタさんたちのロジックが変すぎる - みやきち日記

B006O4VM76屋上の百合霊さん
Liar-Soft 2012-03-30

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tags: 百合 
2012年04月14日

屋上の百合霊さん レビュー・感想・評価 駄百合ゲー、ときどき電波

屋上の百合霊さん

2012/04/14 言葉が足らないところがあったので、大幅に加筆修正した。初投稿時の2.5倍くらいになった。まだ書き足りないので、近いうちに新しく記事を立ち上げる。

 『屋上の百合霊さん』は、今では絶滅危惧種に近い「普通の」ガールズラブオンリーエロゲーだ。タイトルにあるとおり、主要登場人物に幽霊がいるものの、伝奇要素もSF要素もクトゥルフ要素も哲学要素も連続猟奇殺人も国家を転覆する権謀術数も無い。あくまで話の中心にあるのは、どうということもない女の子同士の恋愛話だ。作品全体の雰囲気は、各所で言われているとおり、百合漫画専門雑誌「百合姫」の掲載作品に近い。何組かのカップルの恋愛話が、オムニバス形式で語られる。狂言回し的な立ち位置にいるのは、学園内で女同士のカップルが成立することを願っている「百合霊さん」二人と、ひょんなことから彼女らを手伝うことになった主人公だ。
 のっけからぶっちゃけると、私はこの『百合霊さん』は、かなり悪い意味で「普通の」百合作品だと思った。「予定調和な」「月並みな」「平々凡々とした」「紋切り型の」「類型的な」と言い換えてもいい。

 「百合姫」の全掲載作品を楽しく読める人なら鑑賞してもいいかもしれない。
 「百合姫」を買っても『ゆるゆり』くらいしか読まない人にはかなりかったるい。
 そもそも「百合なんざ興味ねぇ」という人には鑑賞する価値が全く無い。


 この三行で、私が『屋上の百合霊さん』について語るべきことはほぼ終わってしまった。これだけ書いてレビューをぶん投げようかとも思っていた。この作品をADVの観点から評価すると、シナリオ、テキスト、キャラクター、演出、ゲームデザインと、どこを切っても特筆すべき点はない。至って普通の、尖ったところがない……というのはかなり恩情の込もった言い方で、全体的に質が低い。どの要素も過去の名作群とは比ぶべくもない。有名どころの作品を100本も200本も読破しているような人は、この作品をプレイしても得るものはこれっぽっちも無い。断言できる。また、私は『百合霊さん』を百合作品としてもさっぱり評価していない。私が心底がっかりしたのは、普通の恋愛話が中心の百合ゲーであるにも関わらず、女同士の恋愛に対するスタンスがそれこそ「百合姫」レベルの月並みさ、稚拙さだったことだ。既に体験版の時点で、思わず舌打ちしたくなるようなホモフォビアが散見されていたが、私は「この古くさい上にくどいノリ……。こいつは“フリ”に違いないな! 物語の後半でこれを否定するエピソードがあるんだろう」と淡い期待を抱いていた。嘘屋に期待した私が悪かった。否定するどころか、物語の後半で、登場人物のほとんどに恋愛関係が成立し、その上肉体関係まで持った後ですら、旧態依然とした倫理観を滔滔と語り出してくる。あるいは、ネビュラ星雲から受信した電波をナルシズム満載で披露してくる。あれにはほとほとげんなりさせられた。うんざりした台詞の具体例については、後で突っ込みを添えて列挙していこう。

なにが「Liarsoft 30th」だっつの
 システム周りが使いづらいのなんのって。体験版からいくらか改善されるものかと思ったが、そんなことはなかったぜ。私がやった中で最古のライアーゲーは『腐り姫』だが、その頃からろくに進化していないじゃあないか。老舗の会社が開発したUIとは思えないていたらくだよ。おのれら30作目でこんなものしか出来ないのか。まず、未だにバックログが一画面分しか表示されない仕様なのがどうかと思う。文章を読み返すにしても、ボイスを再生するにしても、バックログ専用画面が立ち上がって、何画面分もテキストが表示される方が圧倒的に使いやすいだろ。技術的にさして難しいことだとは思えない。また、ゲーム本編から予定帳、予定帳からロード画面にスムーズに移動できないのも面倒くさかった。アナザーストーリーを埋めているときにもの凄く不便に感じた。スタッフの誰か一人がさらっと通しプレイするだけで見つかりそうな不備だと思う。シナリオに語るべきことがないと、こういう細かいところでストレスを感じるね。

無駄に長えぇぇァッ!! 眠いぃェッ!!
 私は、退屈な作品でも短くまとまっていれば我慢できるし、全体としてみれば面白い作品のダレ場についてはそっと目を瞑れる。しかし、果てしなく退屈な上に長ったらしい作品にはどうにも我慢ならない。私は『百合霊さん』をプレイしている間に、春の陽気と花粉症薬の副作用もあいまって、軽く5、6回は寝落ちをしてしまった。ここまでプレイの体感時間を長く感じて、一体いつ終わるねんと憔悴させられた百合ゲーはちょっと記憶にない。学生時代と比べて体力の衰えを痛切に感じる。かったるい文章を根性で読み進める筋肉ががた落ちしている。
 『百合霊さん』は、しゃべっている割合の方が圧倒的に少ないパートボイス(体感で1対20くらい。エロシーン間際になると急にキャラがペラペラしゃべり始めるからビビる)、とても女学生の声には聞こえない、薹の立ったおばさんボイス(あるキャラが上級生につかみかかって叫ぶシーンがあるんだが、以前ニュースの特集で見た、福袋の奪い合いで取っ組み合いの喧嘩をするオバハンの怒号のようだった)、右耳から入って左耳から抜けるような、一瞬も頭に残らないBGM(全11曲!)と、突っ込みどころ満載でライアークオリティさく裂の作品だが、私はとりわけテキストの冗漫さが酷いと思った。締まりがないのに長ったらしいったらありゃしない。気取った表現がそれほど多くないことだけが救いだ。この作品は、お世辞にも濃密なシナリオだとは言いがたいのに、テキストの分量は一般的なエロゲーとさして変わらない。して、どんなもので水増しされているのかといえば、お寒いノリで愚にもつかないガールズトークと、キャラクターの心の裡を説明口調で書き連ねる「キャラクターの気持ち発表会」系のテキストと、設定ノートのテキストをそのままコピペしてきたような、生硬な「ノートの設定披露宴」系のテキストが大半を占めている。キャラクターの心情は、その人の言動や振る舞いでさりげなく表現するものであり、またキャラクターの性格や人格形成のルーツは、劇中の行動や過去のエピソードから自然に推察させるものであり、直截的にだらだらだらだら書いてしまうのはライターとして下の下である。
 他には、主人公&幽霊側の視点とカップル側の視点で、代わり映えがしないにもかかわらず、同じシーンを2回3回と繰り返し見せられるのはたまったものではなかった。読んでいて辛かった箇所の一例を挙げてみよう。前者が先に読むことになる主人公&幽霊視点での描写で、後者がほんの少し後に読まされる一年坊視点のそれだ。強調部は使い回されている箇所である。

※主人公&幽霊視点

 一瞬だけ、教室に入っていく一瞬だけ、見えた姿は、相原先輩を慕っている牧さんのものだった。
「ど、どうしたのかな?」
「わ、わかんない、けど……」
 私は慌てて、恵をくっつけたまま、牧さんが、入っていったドアに駆け寄って。
 教室の中をのぞき込んだ。その瞬間だった。
「きゃあ!」
「ふざけんなぁ!」
 すごい音。思いっきり、机が蹴り飛ばされた、音。
 蹴り飛ばしたのは牧さんで……。
「ま、牧さん……!?」
 信じられなかった。小柄な牧さんが、三年生の先輩が腰をかけている机を蹴り飛ばす光景なんて。
 そして、床に転がり落ちた先輩に馬乗りになって、胸ぐら、つかみあげているなんて。
「ひっ、やっ!」
「あんたらなぁ! 今、なんつった!? ああ!?」

 すごい、大声。怒鳴りつけているなんて。
「ひ……、ひぃ……」
「言ってみろ、もっかいいってみろぉ!」
「マゾ、だぁ!? マゾって言ったのか!? てめぇ、美紀さんのこと、マゾって言って笑ったのか!?」
「ちょ、な、なにこいつ!」
「黙ってろ!」

 うわ、すごい。かわいいって印象の牧さんが、とんでもない声でまわりを、私と恵をも、圧倒してる。
 止めようとした他の二人の三年生も、牧さんの声で、怯んだのがわかる。
「なんで、てめぇが……」
「美紀さんのこと、笑ってんだぁ!」

「や、やだ……。ちょっと……。誰か……!」
 呆然と、牧さんの姿を見つめてる私の横を、二人の三年生が走って廊下へと出て行く。
 ど、どうすればいいの、これ……。
「ちょ、ちょっと結奈……。これって、止めた方がいいんじゃないの……?」
「そ、そうだけど……」
 でも、怖い。正直、怖い。牧さんの声に圧されて、足が動かない。
「美紀さんに仕事、押しつけて、てめぇは楽して、そんでもって美紀さんのこと笑ってんのかぁ!」
「もっぺん言ってみろ! 美紀さんのこと、マゾだって言って笑ってみろ!」
「二度とそんなこと言えないようにしてやる!」

 うわ、ほんとに怖い。で、でも、止めないと……。
「っ……!」
 私は勇気を振り絞って、教室の中に入っていく。
 なるべく、牧さんの後ろから近づいて。だって、牧さんから見えるとこから近づいたら、怒鳴られそう。そうしたら、立ちすくんじゃう。
 牧さんに馬乗りされた三年生の人、うわ、ほんとに泣いてる……。
「ちょ、ちょっと牧さん!」
 なんとか、声を出す。考えてみれば、面識、無いんだけど。そんなこと言ってられない。
「もうやめて!」
 ダメだ、聞いてもらえない。ただ、三年生をにらみつけてる。大丈夫かな、あの襟、締まってないよね?
 どうしよう、どうしたら、牧さんを止められるだろう。そう考えてると。
 廊下から、こっちに走ってくる足音が。
「マズい! 先生!?」
「あ、ちがう!」
「あ……」
 教室に入ってきた人は。息を切らせて、入ってきたのは。廊下を走るなんてイメージできない人で、相原先輩で。
「ま、牧ちゃん……!」
 でも、相原先輩の声も、今の牧さんには届かないのかな……。牧さん、まだ止まらないみたい。
 ほんとに、どうしよう……。
「てめぇが美紀さんのことを……!」
 また、牧さんが三年生の胸ぐらをつかみ上げて引き起こしたところで。
「聖苗!」
 相原先輩の声が、響いた。その瞬間、牧さんの動きは、ピタリと、止まった。
 牧さんが、ゆっくりと振り返る。呆然とした、顔で。
「美紀さん……」
 美紀さん、まだ息が切れたままだけど、牧さんに声をかける。
「はぁ、はぁ……だ、ダメ、聖苗……」
「もう離してあげて。……ね?」
「乱暴なこと、しちゃ、ダメ。ね、聖苗」
「……はい……」

 やっと、牧さんが三年生の人を離してくれた。
「はぁ……」
 緊張で詰まっていた息が漏れる。
 立ち上がった牧さんは、ちょっとうなだれてて。
「どうして……、こんなこと、したの?」

(以下省略)


※一年坊の視点

「ふざけんなぁ!」
 机ごと、そいつが、三年生の一人が床に転がったところに、声を上げて、飛びかかる。
「ひっ、やっ!」
「あんたらなぁ! 今、なんつった!? ああ!?」

 馬乗りになって、そいつの胸ぐらをつかみあげる。
「ひ……、ひぃ……」
「言ってみろ、もっかいいってみろぉ!」

 つかみあげて、揺すり立てる。泣いてんじゃねぇ!
「マゾ、だぁ!? マゾって言ったのか!? てめぇ、美紀さんのこと、マゾって言って笑ったのか!?」
「ちょ、な、なにこいつ!」
「黙ってろ!」

 残った二人を怒鳴りつけてから、もっかい、わたしの下にいるヤツをにらみつける。
「なんで、てめぇが……」
「美紀さんのこと、笑ってんだぁ!」

 アタマきた。完全に、アタマきた。
 美紀さんに仕事、頼むのはいい。美紀さんが引き受けたんだから、それはいい。
 でも、なに? 楽できる? そして、なんだって? 美紀さんのこと、マゾだって!? そう言って、笑ってたの!?
「美紀さんに仕事、押しつけて、てめぇは楽して、そんでもって美紀さんのこと笑ってんのかぁ!」
「もっぺん言ってみろ! 美紀さんのこと、マゾだって言って笑ってみろ!」
「二度とそんなこと言えないようにしてやる!」

 胸ぐらつかんでいる三年生が、もう、マジ泣きしてる。だからどうした。
 泣くくらいだったら、最初っから、陰で人のこと笑うんじゃない!
「ちょ、ちょっと牧さん!」
 なんだよ、うるさい! 止めるな!
「もうやめて!」
 やめるか!
「あ……」
 土下座、させてやる! 美紀さんの前で、こいつ、土下座させてやる!
「ま、牧ちゃん……!」
 だって、こいつ、美紀さんのこと……! だって!
「てめぇが美紀さんのことを……!」
「聖苗!」

 え……。
 わたしの名前。呼んだ、その、声。
 振り返った。手はまだ、相手の服、つかんだままで。
 そこには。
 美紀さん……。
「はぁ、はぁ……だ、ダメ、聖苗……」
 ここまで、走ってきたのかな。息を切らせた、美紀さんが立ってた。
「もう離してあげて。……ね?」
 そう言われて、一気にわたしの手から、力が抜ける。
「乱暴なこと、しちゃ、ダメ。ね、聖苗」
「……はい……」

 わたしは立ち上がる。同時に、今まで組み伏せていた相手が、顔を強ばらせたまま、わたしの脚の間から這い出して、そして、立ち上がる。
 み、見られちゃった……。美紀さんに……。
「どうして……、こんなこと、したの?」


 一つしょうもないところに突っ込むが、
>なんとか、声を出す。考えてみれば、面識、無いんだけど。
>机ごと、そいつが、三年生の一人が床に転がったところに、声を上げて、飛びかかる。
>わたしの名前。呼んだ、その、声。
>振り返った。手はまだ、相手の服、つかんだままで。

 なぜ『百合霊さん』の登場人物は、こうもカタコトに区切りながらしゃべるんだ? 漫画の「気は優しくてウドの大木」キャラがこんなしゃべり方するよね。「おれ、お前、倒す。仲間の、カタキ、とる」みたいに。私は「ET、オウチ、デンワ」を思い出したよ。
>馬乗りになって、そいつの胸ぐらをつかみあげる。
 主人公視点の「床に転がり落ちた先輩に馬乗りになって、胸ぐら、つかみあげている」を言い換えただけ。
>残った二人を怒鳴りつけてから、もっかい、わたしの下にいるヤツをにらみつける。
 主人公視点の「すごい、大声。怒鳴りつけているなんて」「とんでもない声でまわりを、私と恵をも、圧倒してる」を言い換えただけ。
>アタマきた。完全に、アタマきた。
 アタマきてるのは、上級生にクンロク入れている時点で言われるまでもなくわかる。
>美紀さんに仕事、頼むのはいい。美紀さんが引き受けたんだから、それはいい。
>でも、なに? 楽できる? そして、なんだって? 美紀さんのこと、マゾだって!? そう言って、笑ってたの!?

 直後に「美紀さんに仕事、押しつけて、てめぇは楽して、そんでもって美紀さんのこと笑ってんのかぁ!」「もっぺん言ってみろ! 美紀さんのこと、マゾだって言って笑ってみろ!」と叫んでいるので、こう思っていることは言われるまでもなくわかっている。
>なんだよ、うるさい! 止めるな!
 主人公視点の「ダメだ、聞いてもらえない。ただ、三年生をにらみつけてる」を言い換えただけ。
>やめるか!
 略。
>え……。
>わたしの名前。呼んだ、その、声。
>振り返った。手はまだ、相手の服、つかんだままで。
>そこには。
>美紀さん……。

 主人公視点の「相原先輩の声が、響いた。その瞬間、牧さんの動きは、ピタリと、止まった」「牧さんが、ゆっくりと振り返る。呆然とした、顔で」という描写で、こいつの内面は言われるまでもなく想像が付く。
>ここまで、走ってきたのかな。息を切らせた、美紀さんが立ってた。
 主人公視点の描写と、直前の「はぁ、はぁ……だ、ダメ、聖苗……」で(略)。
>そう言われて、一気にわたしの手から、力が抜ける。
 主人公視点の「やっと、牧さんが三年生の人を離してくれた」を(略)。
>み、見られちゃった……。美紀さんに……。
 こいつが激昂しているところを聖女に見られて、ばつの悪い思いをしているのは、主人公視点の「立ち上がった牧さんは、ちょっとうなだれてて」という描写から読み取れる。

 さて、一年坊視点から、使い回しの台詞と、個人的に必要性ないと思う部分をばっさり切り捨てると――

「ふざけんなぁ!」
 机ごと、そいつが、三年生の一人が床に転がったところに、声を上げて、飛びかかる。
「ひっ、やっ!」
「あんたらなぁ! 今、なんつった!? ああ!?」

 馬乗りになって、そいつの胸ぐらをつかみあげる。
「ひ……、ひぃ……」
「言ってみろ、もっかいいってみろぉ!」

 つかみあげて、揺すり立てる。泣いてんじゃねぇ!
「マゾ、だぁ!? マゾって言ったのか!? てめぇ、美紀さんのこと、マゾって言って笑ったのか!?」
「ちょ、な、なにこいつ!」
「黙ってろ!」

 残った二人を怒鳴りつけてから、もっかい、わたしの下にいるヤツをにらみつける。
「なんで、てめぇが……」
「美紀さんのこと、笑ってんだぁ!」

 アタマきた。完全に、アタマきた。
 美紀さんに仕事、頼むのはいい。美紀さんが引き受けたんだから、それはいい。
 でも、なに? 楽できる? そして、なんだって? 美紀さんのこと、マゾだって!? そう言って、笑ってたの!?
「美紀さんに仕事、押しつけて、てめぇは楽して、そんでもって美紀さんのこと笑ってんのかぁ!」
「もっぺん言ってみろ! 美紀さんのこと、マゾだって言って笑ってみろ!」
「二度とそんなこと言えないようにしてやる!」

 胸ぐらつかんでいる三年生が、もう、マジ泣きしてる。だからどうした。
 泣くくらいだったら、最初っから、陰で人のこと笑うんじゃない!
「ちょ、ちょっと牧さん!」
 なんだよ、うるさい! 止めるな!
「もうやめて!」
 やめるか!
「あ……」

 土下座、させてやる! 美紀さんの前で、こいつ、土下座させてやる!
「ま、牧ちゃん……!」
 だって、こいつ、美紀さんのこと……! だって!
「てめぇが美紀さんのことを……!」
「聖苗!」

 え……。
 わたしの名前。呼んだ、その、声。
 振り返った。手はまだ、相手の服、つかんだままで。
 そこには。
 美紀さん……。
「はぁ、はぁ……だ、ダメ、聖苗……」
 ここまで、走ってきたのかな。息を切らせた、美紀さんが立ってた。
「もう離してあげて。……ね?」
 そう言われて、一気にわたしの手から、力が抜ける。
「乱暴なこと、しちゃ、ダメ。ね、聖苗」
「……はい……」

 わたしは立ち上がる。同時に、今まで組み伏せていた相手が、顔を強ばらせたまま、わたしの脚の間から這い出して、そして、立ち上がる。
 み、見られちゃった……。美紀さんに……。
「どうして……、こんなこと、したの?」


 ――こうなる。イラネ、イラネ。まるっとカットしてくれや。
 この例のように、『百合霊さん』には、あるシチュエーションが別視点で繰り返し語られることが多々ある。しかし、そのほとんどが、実況役が変わっているだけで、情報量は全くと言っていいほど増えていない。新しく語られる内容も、別視点の描写から、あるいは前後の文脈から、言われるまでもなく容易に推測できる程度のものだ。すこぶるかったるかった。何度スキップでぶっ飛ばしてやろうと思ったことか。この作品のゲームデザインが凡庸で芸がないと言ったのは、こういうことである。
 こういったお手軽別視点は、ぺぺっとソースコードをコピペして、ちょこちょこ文章を書き直すだけでカサを稼げるから、作り手側は楽でいいかもしれない。貴重なボイスパートを盛大に使い回して、しゃべっている割合を多く見せかけることもできるしね(笑)。しかし、こんな駄テキストを繰り返し読まされるこっちの身にもなってほしいもんだ。それに、キャラクターが激情を表す迫真(棒)のシーンも、間を置かずに二度も三度も繰り返されると茶番に見えてくるよね。『百合霊さん』は複数人視点、群像劇という形態をまるっきり活かしていない。カルピスウォーターを水で割るがごとく、元より薄いシナリオをさらに二倍三倍に希釈して、読者の心証を悪くしているだけだ。

げっちゅ屋のキャラ紹介文にでも書いてろ
 『百合霊さん』のサブキャラに、常に気怠げで眠い眠いと呟いている、『咲-Saki-』の人気キャラである小瀬川白望のデッドコピーのような奴がいるのだが、こいつのマンセーされっぷりが露骨かつ執拗で辟易した。

 ちょっと、いやかなり、三山さんの見方が変わった。
 いつも眠たそうにしていて、あまりまわりに気を遣わないタイプの人だと思ってたけど……。
 けっこう、鋭いところがあるんだな……。そして、友達のために何とかしてあげようって思ってるんだ……。


 ええ、そうだけど、学校に来てゆっくり眠れないってどうなのかしら。三山さんって、ほんとに眠りたがりって言うのかな。
 それでいて、人のこと、よく見て気付いているところがあるのも不思議なんだけど。おもしろい人。


「音七ってさ」
「うん」
 メールの文章、考えて、それからケータイに打ち込んで。それを繰り返しながら、沙紗と話を続ける。
「案外、鋭いとこ、あるよな」
「うん、そだね」
 音七、私と沙紗が付き合いだしたこと、ちゃんと知ってた。
 それどころか、沙紗が私を好きだってことまで気付いてた。いっつも眠そうな感じなのに、ちゃんと気付いてた。
「正直、あたし、音七にバレてると思わなかった。でも、ちょっと考えてみたら、けっこう、納得しちゃってさ」
「……そだね。確かにそうかも」
 前に一度、音七に小学校の時のアルバム、見せてもらったことがある。
 その写真の音七は、けっこうぱっちり目が開いてて、すごい頭がよさそうに見えた。でも、ちょっと気むずかしそうで。あまり、笑ってる写真もなかったような。
「きっと音七って、ほんとはすっごい鋭いんだよ。観察眼あるっていうのかな」


 いつも眠たそうにしているわりに、音七さんが他人のこと、鋭く観てることは知ってる。双野さんの気持ちに気付いていたみたいに。


 強調は引用者による。ブサイクな文章だなぁ。こんなテキストは設定ノートにでも書いて留めておくべきもので、人の目に見せるものではない。ライターがそういうキャラ付けをしたいのはわかるが、「観察眼がある」「鋭いところがある」「人のこと、よく見て気付いているところがある」なんてのは、劇中の行動や発言から、自然に読み手に思わせることであって、周りのキャラに何度も何度も言わせてマンセーしちゃうのは下品極まりない。露骨に書かずにいかに情報を伝えるかって、ライターの一番の腕の見せ所だろう。『百合霊さん』のテキストは職務怠慢のレベルだ。
 GEGEさんのおっしゃるとおり、業界全体に「読者は読解なんかしないから直接書け書け」という風潮があるんだろうけどねぇ。それにしたってこの「鋭い」フェスティバルはひどい。

「名作だぁ?」「へへっ、寝言言ってんじゃねぇよ」
 私が『百合霊さん』を駄作と言ってはばからないのは、百合ゲーというごくごく狭い枠に限定しても、この作品が足元にも及ばないほど面白い作品がいくつもあるからだ。「百合ゲー+群像劇」という縛りでも『素晴らしき日々~不連続存在~』『カタハネ』という分厚い双璧がそびえ立つ。さらに「百合ゲー+幽霊」という凄まじく狭い括りでも、フリーゲームの最高峰である『彼女と彼女と私の7日』が立ちはだかる。ライアークオリティでフルプライスを分捕っている『百合霊さん』はちと分が悪い(笑)。
 例えば『すばひび』だ。各ルートのクライマックスで繰り広げられる、屋上での間宮卓司と悠木皆守の対決は、視点が変わることによって(読者の作品に対する理解度によって)その意味合いが目まぐるしく変わっていった。最初の視点ではただの引っ込み思案にしか見えなかった人物や、ただの狂人にしか見えなかった人物が、別視点での描写によって一個の人間として存在感を増していった。どうだい? ああいった複数視点を利用した目の覚めるような演出が『百合霊さん』にあったかい? 例えば『アカイイト』だ。『アカ』のテキストはノベルゲームの最高到達点の一つだ。分量自体は少なめの部類なのに、何気ない一文やキャラクターの何気ない一言(使った慣用句や言い回しにさえ)に、尋常ではない情報量が込められていた。再読するときに「こんな含みがあったのか!」とハッとさせられっぱなしだった。どうだい? 『百合霊さん』のテキストにあれだけの密度があったかい? 例えば『アトラク=ナクア』だ。私はこの作品をそこまで買っていないが、業界でも珍しい、文語調で格調高いテキストは今でも異彩を放っている。どうだい? 『百合霊さん』のテキストに、質でも形態でもいいから何かウリになるようなことはあったかい? 『カタハネ』のような、CGから画面周りまで徹底的に洗練された美しさや、真摯で暖かいまなざしがあったかい? 『ととのか』のような、商業そこのけの総合的な品質や、クスッと笑えるフェティッシュなこだわりがあったかい? ぶっちゃけ『百合霊さん』が他の作品に誇れるものって何かあったかい? 登場するカップルの数と、男が絡まない()ことぐらいじゃあないの?
 こんなことを書くと「『アカイイト』や『アトラク=ナクア』は和風伝奇だし、『カタハネ』は中世ヨーロッパが舞台だし、『素晴らしき日々』だって超自然要素がある! 現代日本が舞台の『百合霊さん』の引き合いに出すのは卑怯だ! 面白さの基準が違うし、同性愛に対する倫理観も違うんだ!」と言う人が出てきそうだが、『百合霊さん』のゲームデザインの陳腐さ、シナリオの凡庸さ、テキストの薄さ、掛け合いのつまらなさ、価値観の古くささは、そんなこととは関係なく酷い。百合ゲーではないが、同じく普通の学園恋愛ものである『この青空に約束を―』のテキストはこんなに無駄だらけで、掛け合いはこんなにつまらなかったかい? 『Crescendo~永遠だと思っていたあの頃~』の登場人物はこんなに類型的で薄っぺらくて、アナザーシナリオはこんなクソどうでもいい余談レベルの内容だったかい?
 考えてみれば、斬新な設定があるでもなく、大事件が起きるわけでもなく、ドラマチックな展開があるでもなく、学生が勉強して部活して悩んで恋愛するレズゲーって今までほとんどなかったんだな。スキマ産業だ。それで登場人物が普通に思い悩んで、普通に成長して、普通に恋愛をしてくれるんならよかったんだけどね。私は体験版をプレイして、『百合霊さん』がそういった作品になってくれることを期待していた。ふたを開けてみたら、ヤマもオチも意味もなく、淡々と毒素をまき散らし、その上落としどころが「女同士、普通じゃない! でも愛し合ってる、ワタシたちの愛は絶対☆無敵!」というしょうもなさだったんだけどね。
 百合ゲーで、ADVの蒼々たる傑作群と比べても遜色ない作品はいくつも出ているが、この作品は「百合ゲーだから」とお目こぼしを受けないと評価できるレベルではない。その上、百合ゲーとしてもたいしたことがない。駄作以外にどう言えっちゅうんじゃ。

『屋上の百合霊さん』適性チェック!
 購入の参考になれば幸いだよ。本編から参考になりそうなテキストを抽出してきた。以下のテキストから受ける印象によって、この作品に向いているか向いていないか判定していこう!

「女の子が好きで、大好きで……。その想いを強く抱えたまま死んでしまったから、こうして幽霊になっているの」
「恵も、サチさんのことが大好きで幽霊になったのよ!」
「ありがとう、恵。私も恵のことが大好きよ」
「…………」
 え、なに、なにこの人たち。
「……えーと、あなたたちって、その……。
 ………………レズの人?」
「そういう、いやらしい言い方しないでほしいな。恵とサチさんはもっときれいな関係なんだから」


「よく言ってくれました! 百合とレズを一緒くたにしないでほしいですよね!」と思ったあなたなら楽しめるかもしれない。
「嫌な予感がする(I have a bad feeling about this)」と思ったあなたには絶対に向いていない。

「月代ちゃんってさぁ、その……、経験ずみなの?」
「え? なにが?」
「えっと、その、セックス」
「え、えええええ!?」
 あ、真っ赤になった、今日初めて、月代ちゃんの真っ赤な顔、見れた。
「な、なんでそんなこと聞くの!?」
「だ、だって……、すっごく慣れてるみたいなんだもん。さわり方とか、キスの仕方とか、それっぽいし」
「な、な、ないです! ありません!」
「……じゃ、処女?」
「……そ、そうよ……。悪い?」
「ううん、悪くない」
 なんか、すごいほっとする。独占欲なのかな、これって。うわ、独占欲ってこんなに幸せなもの!?


「なんだ初めてか、よかったよかった、男に走っていたのかと思った。男とか絶滅すればいいよな」と思ったあなたなら楽しめるかもしれない。
「やっぱり処女厨・独占厨と百合厨って根っこの部分は同じなんだろうなぁ」と思ったあなたには絶対に向いていない。

「恋人らしいってどういうことなんだろうね。私も、実はよくわからない。ずっと、恋愛ってわからないと思ってたから」


「わかんないの。その、私、誰かを好きになったこと、ないから。比奈のこと、その、恋愛の相手として好きなのかどうか、はっきりしないの」


「初々しい~! 恋愛がわからないってことは、男に(略)」と思ったあなたなら楽しめるかもしれない。
「やっぱり処女厨・独占厨と百合厨って(略)」と思ったあなたには絶対に向いていない。

「あたしたちのギョーカイでは、百合とレズの間には、深くて暗い川があったりするのです。もちろん、どっちもいけちゃう人もいますが」


「わかるわ~。相手を人間として好きになって、精神的な繋がりを大事にするのが百合で、最初から肉体が目当てなのがレズだ。一緒にすんなよな」と思ったあなたなら楽しめるかもしれない。
「くたばれ」と思ったあなたには絶対に向いていない。

「本当にすごくおいしいわ。恵はいいお嫁さんになれるわね」
「そんな……、お嫁さんだなんて。わたしには、サチさんがいれば……」
「ええ、わたしは幸せものね」
「……! は、はいっ!」
「結奈、き、聞いた? つまりね、今のはね、わたしがいいお嫁さんになって、サチさんに嫁ぐから、旦那様のサチさんは幸せっていう意味なのよ-」


「百合夫婦とか萌ゆる!」と思ったあなたには向いているかもしれない。
「お嫁さんと旦那様か。いくらン十年前の人間とはいえ、お仕着せのジェンダーロールに関係を当てはめて満足っすか」と思ったあなたには絶対に向いていない。

(めでたくカップル成立! その後いい雰囲気になって、キスをしつつ)

「ごめん。イヤだった?
 なにするか、わかんないかも、あたし」
 イヤって言ってくれたら、元に戻るから。そしたら、このまましばらく、適当に話してから、眠れるはずだから。なんにもしないですむんだからさ。


(めでたくカップル成立! その後いい雰囲気になって、ペッティングをしつつ)

「ん、ちゅ……。桐……、気持ち悪く、ないよね?」


「いい……コーフンする。やっぱり女の子同士のエッチには背徳感と禁断の香りがないとな」と思ったあなたなら楽しめるかもしれない。
「何だその前提、お前ら付き合ってんじゃないの? というか気持ち悪がられると思っていることをやんなよ」と思ったあなたには絶対に向いていない。

 すごい、前向きだな。うまくいかないことって考えないのかな。だって、相手は同性なのに。
「えっと、あの、さ」
「ん?」
「C組の有遊さんってことは、その、同じ学校なんだよね?」
「ん。そうだけど」
「あのさ、同じ女同士だってこと、わかってるの?」
「へ?」
 私の質問に、陽香はぽけんとした顔をして。しばらく黙っていて。
「あ、ああっ! そう言えばそうだな!」
 なんて……、今気付いたような声をあげて。
 いや、たぶん、ほんとに今気付いたんじゃないかな。そんな気がする。
「うわー、女同士じゃん。全然、気付かなかった!」
「はぁぁ……」
「まぁ、気付いてなかったのはいいとして……でも、今、気付いたでしょ? どうするの?」
「うーん……」
「でも、これってすごいロックな恋だよな!」
「そ、そうじゃないでしょ? 自分が変だと思わないの?」
「そうか? だって好きなものは好きなんだしさ。女同士だからって関係ないだろ?」

 

 なんとなくわかった。
 陽香にとって、有遊さんだけが好きになった特別な人で、他は関係ないんだ。女同士だとか、そういうことは。


「陽香にとっては、女同士って言うのは、あんまり気にならないことなのね」
「つか、ツッコまれるまで気にしなかったぜ」
 本当はツッコまれても気にしねぇけど。
「ロッカーは些細なことぁ気にしねーんだ!
 ビートは外したら怒り狂うけどさ」


「そうだよな! 真実の愛に性別なんて関係ない! 性別を超えた愛って綺麗だよな」と思ったあなたなら楽しめるかもしれない。
「いや、性別って重要やないの……?」「ロックロックってよ、テメェは洋楽覚えたての厨房かコラ」と思ったあなたには絶対に向いていない。

※注意※同性愛者の知人が何人も出来たあとの主人公の台詞である

「お、女同士なんだよ? もう今さら、それが変だとか思わないけど……。
 でも、まわりの人は、そう考えてくれないかも。お父さんやお母さん、比奈のおじさんやおばさんを困らせるかもしれない」
「比奈にだって……、私が恋人だってことで、迷惑かけるかも。比奈が、変な目で見られたら、どうしよう……」
「結奈、別に、同性愛とか百合とか、女の子同士とか、そういうのが嫌いってわけじゃないんだよね?」
「そう思っている。確かに、最初は変なことだと思った、恋愛って男女の間のものだと思っていたから。それが普通だと。
 でも、確かに普通じゃないかもしれないけど。誰かを好きという気持ちの行き先には、たとえその先が同性であっても、変じゃないと」


「ウンウン、やっぱり百合には、こういう葛藤や世間の偏見がないと駄目だよな。最近の百合作品は何の障害もなく恋愛しだすから困る」と思ったあなたなら楽しめるかもしれない。
「おい、てめぇが抱えてる偏見を、相手や周りの人間のせいにしてんじゃねぇスッタコ」と思ったあなたには絶対に向いていない。

 学生相手に、恋人だけは作っちゃうなんて……。しかも、同性、女の子。どういうことなのよ……。
 桐に告白されて、そのまんま、押し切られちゃった、感じ? だって、どんどん綺麗になってく桐が悪いんだもん。


 こんなに頭の悪い文章を書く奴が国語科の教師になれるのかな。

 だって……、私、先生で桐は学生なのよ? 同じ学校の先生と教え子なのよ? しかも、女同士なのよ? ほんとにこれでいいのかなって悩んじゃうわよ。
「……でも、好きなんだよ、私、月代ちゃんのこと」
「うん、知ってる。そういってくれたものね。大好きよ、桐」
「うん……」


 私は、先生なのに。桐は、学生なのに。そして、二人は女同士なのに。
「でも……」
 この関係は間違いなんかじゃない、勘違いでもない。
 つないでいる手は、確かなもの。
「大好きな、桐。大好きって言ってくれた、桐」
「あなたがいてくれるから」


「切ねぇ……障害のある恋愛は辛いね(T0T)でも、百合は障害が多いからこそ美しいんだよね^^」と思ったあなたなら楽しめるかもしれない。
「国語の教師が書いた割には酷ぇ出来のポエムだ」と思ったあなたには絶対に向いていない。

 これは、本当は許されないこと。教え子と恋仲になる教師、だなんて。それも、同性同士でなんだもの。
 私が教師であるのなら、これからもあり続けたいのなら、あの子の気持ちに応えるべきではなかったのかも。
 最初の告白を受けたときのように、教えて、諭して、言い聞かせて。そのまま、二度目の告白に応えるべきじゃなかった。あの子の未来を考えるなら。
(まあ、いいか)
 ふ、と、今度こぼれたのは、溜め息なんて憂鬱なものじゃない、軽やかな笑みで、自分でもおかしいくらい。
ええ、そう、そうよ。そんな笑みを漏らしてしまうくらい、私は浮かれている。
 道ならぬ恋、表にはできない恋。そんな言葉に非難されても、罪悪感は私の心を上すべりしていくばかり。危機感というのは、自分でもあきれてしまうくらい、薄い。
 あの子が私に寄せる想いに応えたかったの。そんなどこかで聞いたみたいな建前なんかよりも、何よりも私の方だったの。桐、あなたを好きになってたの。
 その想いのほうが、大人が、教師が、という立場よりも強かっただけのこと。
(なんとかなる、そういうものよ)


「愛は強し、だな! やっぱり女の子同士の恋愛は、許されないからこそ燃え上がるんだ!」と思ったあなたなら楽しめるかもしれない。
「電波、届いた?」と思ったあなたには絶対に向いていない。

 やっぱり、女教師の電波度が頭一つ飛び抜けているな。やること(校内セクロス)はしっかりやるくせに、よくもまぁこれほど稚拙で電波全開な持論を、脂下がった面で垂れ流せるもんだ。誘惑に負けて許されない(この女の弁)ことをやって、しれっと(まあ、いいか)(なんとかなる、そういうものよ)で流してんじゃあないよ。無責任にもほどがあるだろう。教師の風上にも置けない、唾棄すべきクソ野郎だよ。

ナノニーナノニーダケドー

「先輩、同性愛ってどう思いますか?」
「え、ええ!?」
「あああ、え、えっと、その、わ、わたし、わたしって!
 その、自分がそういう人だっていう自覚とかなくて、別にそう思ってるわけじゃないんですけど!」
「その、やっぱり先輩のこと、好きなんです。先輩、女の人なのに好きなんです! ほんとに!」
「だ、だから、先輩がそういうの嫌だったらやだなってその、でも先輩好きなのはほんとで、あれ、あれ?」


 こんなに牧ちゃんががんばれるのはやっぱり、わたしが好きだからだろうか。私の思い上がりかもしれない。でも、そうだからなんだろうか。
 同じ女の子同士なのに、それが変かもしれないとわかっていながら、でも、わたしに告白してくれた。それは、すごい勇気のいることだったにちがいない。


 初めて聖苗が好きって言ってくれた時は、わからなかったけれど……。
 今なら、わかるの。聖苗が、好き。女の子同士だけど、好きなの。あなたの気持ちに……。


 すごい、前向きだな。うまくいかないことって考えないのかな。だって、相手は同性なのに


 あたしは答える。うん、そう。友達としてじゃなくて、好きなんだ。いつも羽美が言ってくれる、友達としてじゃなくて。
「そ、そのさ……、それって、変じゃ、ない? わたしたち、女の子同士なのに、さ……」
「……うん、そうかも」
 そんなこと、わかってる。
「でも、あたし、羽美のこと、好きなんだ。
 あたし、変でもいいよ。でも、好きなんだ。ずっと、言いたかったんだ」


 比奈の想いを変だと思うことはもうない。今まで、女同士でも、あんなにひたむきに、まっすぐに、想いを相手に向けている人を見てきた。


「……でも、好きなんだよ、私、月代ちゃんのこと」
「うん、知ってる。そういってくれたものね。大好きよ、桐」
 私は、先生なのに。桐は、学生なのに。そして、二人は女同士なのに
「でも……」
 この関係は間違いなんかじゃない、勘違いでもない。
 つないでいる手は、確かなもの。
「大好きな、桐。大好きって言ってくれた、桐」
「あなたがいてくれるから」


 どんだけ好きなんだよ。強調は引用者による。
 この「なのに」「だけど」のつるべ打ち! 凄ェ! 最後の電波教師による三連撃が圧巻だ。悲劇のヒロインぶって、「トクベツ」な恋愛をしている自分たちに酔っていることがよくわかる。
 こんなカビくさい表現を平然と使いつづけている時点でライターの底が知れるよ。いくらリベラルぶって理解があるよう取り繕っていても、馬脚が見えてるっつの。Goo辞書先生で確かめたが、「なのに」「だけど」って前者(女同士)と後者(好き)が相反するとき、矛盾する時に使う言葉だよ? もし、当事者の視点で真摯に書こうと思っていたら、登場人物に延々こんなことを言わせるなんてことは出来ないはずだよ。誰だって、自分たちのアイデンティティを「なのに」「だけど」などとスティグマ扱いしたくないし、されたくないだろう。公表するかどうかはさておき、自分の性に胸を張って生きていきたいだろう。私は「確かに普通じゃないかもしれない、でも私たちは愛し合っている!」などというお高尚な思考は、しょせんは空想のキャラクターだからできるものだと思っている。一度きりの人生を歩む、血の通った人間の思考じゃあない。あくまで書き手にとって他人事に過ぎないから、こんな無茶苦茶なことを言わせられるんだよ。自分が「普通じゃない」扱いされる側に回ることを考えたこともない奴がひりだすクソたわ言だ。結局『百合霊さん』は、マジョリティ側の「こうだったら美しい! こうだったら萌える!」という都合のいい妄想――ユリトピア(爆笑)だったっけ?――の具現化にすぎないんだよ。フツーじゃない恋愛に憧れる、思春期真っ盛りなガキ向けのお花畑ファンタジーだ。『百合霊さん』の登場人物が総じて現実味が無く、思考が支離滅裂で浅薄極まりないのは、ユリトピア(笑)を維持するためだけに存在する“コマ”にすぎないからだろう。思考の一貫性なぞ望むべくもないし、端から求められてもいないわけである。あくまで台本通りの萌え台詞を正確にしゃべるのが仕事なのだから。
 私はこの作品のように、一見理解があるようで、その実無邪気に「普通じゃないもの」「背徳的なもの」「許されないもの」という価値観を刷り込んでいる作品は、露骨に偏見を示している作品よりタチが悪いと思っている。

よかった探し
 上述したように、この作品には思考回路が理解不能な人間がちらほらいるが、人間味を感じる登場人物も何人かいた。私が最も考え方に共感が持てたのは、陸上部の部長と副部長のペアだ。この二人は将来を約束しあっていて、卒業後は一緒の大学に進学し、ルームシェアをする計画を立てている。学生のうちからちゃんと将来を見据えている。えらいっ。「同性同士の恋は一過性のもの」「儚いからこそ美しい」という風潮がある中で(前者は、この作品中で電波教師が力説していた)、こういう地に足の付いたカップルを描いているのは賞賛できる。それとこの二人は、肉体関係についてあっけらからんとしていているのもいいね。他の「気持ち悪く、ないよね……」だの「嫌だったら言ってね……」だのうだうだ言い出す連中に比べてずっとクールだ。あえて突っ込むなら、副部長のこんな台詞かね。

 女の子同士なのにとか、そういうことはあまり深刻に考えなかった。
 ちょっとは悩んだけど、それ以上に茉莉が好きなんだという気持ちに気付かされたのが大きかった。
 あるいは……、そのうち、二人とも普通の恋愛へと目が覚めるかもしれない。そう考えていたのかも。友達の延長くらいに考えていたのかも。
 こんなに長い付き合いになるなんて、想像していなかったのかも。


 茉莉のご両親はけっこう寛容な方たちだったけど、うちはちがう。お父さんもお母さんも、私をちゃんと愛してくれているけど、躾とかそういうのは厳しい。
 茉莉が私の恋人だと知ったら、どんな反応するだろう。きっと、反対する。それが当たり前。常識的な人たちだから。ちゃんとした意味で。


 躾が厳しく、常識的なことと、セクマイに正しい理解があるかどうかは全く別物だと思うよ。ご両親があんたを愛しているなら、いつの日か(自分らで言っていたように、生活基盤を固めてからでも)カムアウトするのも選択の一つだと思う。常識人で、本当にあんたのことを愛してくれているなら、受け入れてくれるよ。最後の「ちゃんとした意味で」はどこに掛かっているのかよくわからない。
 あとは……、あとは、んんんっと、ED曲はまずまず悪くなかった。Ritaのソウルフルなボイスは宝だね。
 ADVとして優れているところは、どう頭を捻っても思いつかない。

悲しいかな、アウトプットのトンチキさが際立っている
 『百合霊さん』のストーリーにおいて、最終的に七組ものハッピーな同性カップルが成立することになる(数え間違えていたら申し訳ない)。カップルの組み合わせも(学園の構成員という括りはあるものの)教師と教え子、先輩と後輩、仲良し三人組からの派生など多種多様だ。全ての組がお互いを大切に思っているのも好感が持てる。とても素晴らしい。うん、いいこった。剛直棒至上主義のアダルトゲーム業界で、これだけ女同士のカップルが登場する作品を発表したチャレンジ精神は買われてしかるべきだろう。しかし、結局、何組ものカップルの仲を取り持った主人公に「同性同士の恋愛はやっぱり普通じゃない。でも、お互いが好きあっていればOK」という玉虫色のロジックしか言わせることができないのが、ライアーソフト並びに睦月たたらなるライターの限界なんだろう。お里が知れる。……何だか不安になってきたんだが、「なぜそこから『同性同士って案外ありふれているのね』という結論が出てこないんだ」と思ったのは私だけじゃあないよね?

 新しい百合ゲーが世に出ることは、いち百合ゲーマーとしてもちろん嬉しいことだ。だが、私は『屋上の百合霊さん』程度の凡作で満足できるほど痩せた考えは持っちゃあいないし、つまらない上に随所で有害な電波を発してくる作品を人に薦めようたぁ思わない。このレベルの作品が量産されてもちっとも嬉しくない。

 思えば、全盛期のめてお在籍時代から通して、嘘屋の作品を鑑賞して「よかった!」と思ったことが一回もねぇや。

「たった7組」か? 「7組もいる」のか? マジョリティ目線の妄想ユリトピア(笑)『屋上の百合霊さん』
※コメントありがとうございます
「たった7組」説から弱者憑依まで - どうしても同性愛を「普通じゃない」ことにしたい百合オタさんたちのロジックが変すぎる - みやきち日記


B006O4VM76屋上の百合霊さん
Liar-Soft 2012-03-30

by G-Tools
 私の嫌いな百合作品にはデフォルメ絵が気持ち悪いものが多い。

 8拍手ありがとうございました。

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2012年04月07日

そういう趣味、そういう嗜好、そういう関係、ソッチの世界、そっちの気

「まーアレですよね、ウチは女子校じゃないですけど、男女比だと圧倒的に女子が多いですからねー」
「そーゆーシュミに走る子も、少なくはないですからね」
「考え方が安易すぎますわ、手近の女の子で済ませようなんて、そんな考え方は・・・」
「いや、そうじゃない………由香利の場合、この学園にやってくる以前から、そういう嗜好を持っていたのさ」

(『紅蓮に染まる銀のロザリオ』)


「うん。あ、いたいた…って」
 花梨が和泉ちゃんの胸のあたりを触っているのが見えた。
「まーたやってんのか。ホントにその気があるんじゃねーだろうな」

(『水月』)


あたしたちは、ずっと前からたまにこうして抱き合うようになった。
クラスにはあたしたちのことを誤解している人もいるけど、べつにそっちのケがあるわけじゃない。

(『はるのあしおと』)


「可愛すぎて翔子ちゃんを食べちゃいたいくらい」
「……え。
 銀子さんってそっちの趣味もあるんですか?」
「い、今のは単なる例えだよ」

(『黄昏のシンセミア』)


「なんだよ、人の顔じっと見て。そっちの道にでも目覚めたのか?」

(『ef - a fairy tale of the two. -』)


「元ネタがわからないと、寒いな。――プロレス雑誌のことだ」
「ああ! なるほど! 朝倉くんが、平気な顔で買ってくるっていうものだから、そういう趣味があるのかと思ってしまいました」

(『D.C. 〜ダ・カーポ〜』)


「マスターにもそれなりに気に入られてるみたいですしね……」
「マスター? え? ボクそういう趣味ないから、羽咲ちゃん一筋だよ」

(『素晴らしき日々~不連続存在~』)


 もう一度、たまちゃんのくちびるが触れてきて…
「ん…………」
「んむ……、ン……つばさ…」
 女の子同士で、こんなのって…
 変…だよね?
「つばさ…大好きや」
「…たま、ちゃん」
 そういう趣味は、無かった筈なのに…
 どうしてか、とても安心出来たんだ。

(『もしも明日が晴れならば』)


「男娼ねぇ」
「男好きする顔らしい」
「確かに」
 力強く頷くジーク。
「お前もその気があったのか」
「どうかな」

(『穢翼のユースティア』)


「……冥夜、それは尊人に与えてくれ」
「ん?」
「何も言わずに、頼む」
「わかった。 では鎧衣、これはそなたに……」
「うわ~~~!! ホントホント!? やった~!!」
「おわっ! 抱きつくなっっ!!」
「タケル好きだよ~~!!」
「やめろやめろっっ!!! オレにそんな趣味はねーー!!」

(『マブラヴ』)


 それもこれも……尊人のせいだ!
……何が美しい琴だ! あの冒険野郎がそんな綺麗な名前でどうするっ!?

――!?

 うがあああっっ!! あいつは男だっつーの!!
 こっちの美琴がいくら女でも、あっちの尊人がいくら女っぽいトコがあっても、今浮かんだのは男の尊人じゃねぇか――!!
 間違ってるぞオレ! おかしいぞオレッ!
 くあああっっ、俺を混乱させるなーー! 俺にその気はねぇっ!
「はあはあ……」

(『マブラヴ』)


 な、なな、なんだぁ!?
「美琴っ、お、おまえっ……!」
 なっ、なに目ェうるうるさせてんだっ!?
 しかも何でオレに覆い被さってる!?
「動かないでっ!!」
「なっ、何する気だっ!? オレは男とは――おまえ女だけど、まだそっちの世界にはーー!!

(『マブラヴ』)


「そんな嫌そうな顔しないで~。
 優しくするよ、真季……」
 やめてよ、恥ずかしい。
 こんなとこで……。
 二丁目からは目と鼻の先の喫茶店だ。
 女性同士のカップルなんて
 珍しくもないとも思うが、それでも
 最低限の節度は守られるべきだ。
「私、そっちの趣味はないの」

(『Forest』)


杏里先輩、犯人なんですか?

誓って言うけれど、無理強いしたことはないよ。

あー、じゃあ趣味はやっぱりソッチ系なんですねぇ。

(『サフィズムの舷窓』)


セティアが、メイド服を脱ぎ捨てスケスケの下着一枚になって迫ってくる。
「ちょ……ちょっと……セティアさん……」
「ライディさん……」
「わわわっ!……セティアさん、ちょっと待ってよぉ!」
「ライディさんは、私のことお嫌いなんですか?」
「そっ……そんな事ないけど……」
「私、そういう趣味はないから……」
「やっぱり……ライディさんは、私の事お嫌いなんですね……」
「そっ、そんな事ないわ!」
「私、セティアさんの事、大好きよ」
 あっ……今の、ちょっと誤解を招きそうな台詞だった……
「ほっ、本当ですか?」
「ええ……まあ……」
「私も……ライディさんの事……大好きです」
 セティアがライディの胸に飛び込んだ。
 その拍子に二人は、重なるようにベッドに倒れ込んでしまう。
「あっ……ちょっと……セティアさん……」
「ライディさん……今日はいっぱいお礼をさせていただきますね」
「セティアさん、ちょっと待って!」(略)


「あふつ……」
やだ……私……感じてきてる……
女の子同士で……こんな事して……
「あっ……あんっ……」(略)


「……あ"っ!?」
「そういえば……昨日の夜……」
「私……セティアさんに……」
「…………」
でも……上手だったなぁ……セティアさん。
…………
「いかんいかん! わたしはそういう趣味はないんだから」
「今度はちゃんと断らないと、なし崩しにイケナイ道へと引き込まれてしまうわ」

(『雷の戦士ライディⅡ 邪淫の神殿』)


「そっか……よかったな、唯子。俺は、男のことそういった意味で好きになったことはないけど……」
「アリだと思う。そーゆー関係も」
「……ありがと」

(『とらいあんぐるハート』)


相沢はいきなり上原の手を取り、
その耳元で囁いた。
「奏、結婚しよう!」
「えええええっ!?
 なぜなぜそういう展開にっ!?」
「そこまで俺のことを理解してくれる人間は、
 キミだけだよ。俺達は絶対にうまくいくよ。
 両親もキミのこと気に入ってるし」
「そういう意味でうまくいきたくないから!
 私は絶対絶対ノーマルだからっ!
 気に入ってもらってるのも意味違うから!」
「外国では
 同性でも認めてもらえるところもあるそうですね。
 この国ではまだですが」
「認められるとか認められないとか以前!
 以前ですってば!」

(『遥かに仰ぎ、麗しの』)


「そこを足がかりに信頼を得ればだね、
 上原奏と同性愛の関係にある証拠を掴むなど
 容易いだろう」
 いや、ちがうだろうそれは。
 あの二人がそういう関係とは思えない。

(『遥かに仰ぎ、麗しの』)


「ひゅうひゅう♪
 いやぁ。ヤけるね」
「え、え、あ、あの、
 そ、そういう関係じゃありませんから!
 違うんです違うんです!」
「あ、あくまでその強い強いLIKEで、
 LOVEじゃありませんから!
 絶対に違いますから!」

(『遥かに仰ぎ、麗しの』)


「けど、まさか自分がソッチの人だなんて
 思いもしなかったなぁ。
 世の中、不思議なことってあるんだね」

(『スクイの小夜曲』)


「ん? まさか、椿とこいつ……」
「なんですか俺の顔をじっと見て!
 もしや、渋蔵さんはそういう種類のヒト!?」
「なに気色悪いコト言ってやがる!」

(『ゆのはな』)


「……」
「おーい。
 またアッチいっちゃってるな」
「由真ですからー」
「いつもの事なのですね」

(『ゆのはな』)


「ワシの裸を覗くとはなぁ……悪いが、ワシにはそんな趣味はないんだ……へへへ」

(『果てしなく青い、この空の下で…。』)


「うわっ! なになに!?」
 突然、カティマに後ろから抱きつかれて、希美はパニックに陥る。
「希美、つかまえました。今夜は、逃がしませんよー」
「うわ、カティマさん酔ってるの?」
「私、酔ってなどおりません!」
「うわーいやらしい。二人はそういう関係だったのね。ふけつー」

(『聖なるかな』)


「先輩、同性愛ってどう思いますか?」
「え、ええ!?」
「あああ、え、えっと、その、わ、わたし、わたしって!
 その、自分がそういう人だっていう自覚とかなくて、別にそう思ってるわけじゃないんですけど!」
「その、やっぱり先輩のこと、好きなんです。先輩、女の人なのに好きなんです! ほんとに!」

(『屋上の百合霊さん』)


「お、女同士なんだよ? もう今さら、それが変だとか思わないけど……。
 でも、まわりの人は、そう考えてくれないかも。お父さんやお母さん、比奈のおじさんやおばさんを困らせるかもしれない」
「比奈にだって……、私が恋人だってことで、迷惑かけるかも。比奈が、変な目で見られたら、どうしよう……」
「結奈、別に、同性愛とか百合とか、女の子同士とか、そういうのが嫌いってわけじゃないんだよね?」

(『屋上の百合霊さん』)


昨日、新しいトレーニングマシンが
入荷したんだ。
へえ、見たことのない形ですね。
こう使うのかな・・・。
ああっ!ダメだダメだ!
俺が手取り足取り教えてやる!
(ぐい!)
わっ、乱暴ですよ、コーチ。
・・・・・・・。
あの、コーチ?
ん?
ぁ、いやなんでもない。
(いかん、一瞬あっちの世界に
行ってしまったな。)

(『パワポロクンポケット8』)


なあ三田君。
光山先輩と仲良くなるにはどうしたらいいかなぁ?
ど、どうしたでやんす?
あんなにいじめられてるのに
そんなこと言うなんて変でやんす!
あ、まさかパワポケくん・・・
そういう趣味だったんでやんすね?
ちがうよっ!

(『パワプロクンポケット9』)


「ね、ねぇ。レナ…ちゃん?」
「セリーヌお姉さまぁ、私、前からお姉さまのことが…」
「じょ、冗談でしょ?」
「お姉さまぁ、だ・い・す・き(はぁと)」
「ちょっと、レナ!わたくしにはそういった趣味はありませんのよっ!!」

(『スターオーシャン セカンドストーリー』)


 タカシとのキスをきっかけに、陽平は『そっちの世界』へイッてしまった。

(『街』)


「でも、そういう性癖って、興味がないものでも受け入れられるものなんですか?」
樫原が、混乱したような顔で僕に尋ねる。性癖ってのは、同性愛だとか異性愛のことだろう。

(『キラ☆キラ』)


涼香「ねえ、オミくん……鞠音ちゃんって可愛いわよね」
靖臣「そうだな」
涼香「……お姉ちゃん、鞠音ちゃんとならお付き合いしてもいいかもって思うのよ?」
靖臣「すずねえ……レズ……?」
10数年の付き合いになるが、まさか、そういう展開だとはな……。
涼香「ち、ちが……」
靖臣「いや、みなまで言うな。俺はすずねえがそういう趣味でも、差別したりはしないぞ、うんうん。応援するから」
と言いながら、身体が震え、脂汗が吹きだしかけているのを感じる。

(『秋桜の空に』)


そう言って、姉様は妖艶な笑みを浮かべると、
指先を口元に運び、ぺろりと舐める。
「ななななんてこと言うんですかっ!?」
「貴女のが一番甘くていい香りがしてよ、鈴原さん。
 また、私のために泣いて下さるかしら?」
「や、やめて下さいっっ!!
 わ、私はそういう趣味、ありませんのでっ!!」

(『夏ノ空』)


「あのね、これは他の人には内緒なんだけど……
 お姉さまには、最初からそういう趣味があるの」
「自分の気に入った子がいると、
 つい手を出しちゃうみたい」
「そ、そうなのか?」
「そうなの、だからお姉さまについては、
 気にしないほうがいいよ」

(『夏ノ空』)


「ダ、ダメよ、こんな命令!お、女同士でキスなんて出来ないわ!」(略)
「お互い指定の番号を引いてしまったのだから仕方ない。さっさと済ませてしまおう」
「わ、わたしはその手の趣味は無いんです!」
「あたしだってその手の趣味は……無いと言い切るのは誤謬があるか……」

(『彼女たちの流儀』)


「恋愛の形にどうこう言うつもりはないが…」
「無理矢理はいかんって!」
「キーーーーーー! あんたに何がわかるのよッ!?」
「入学してから、ずっと好きなんだから!」
「も~うッ、だからなんども、そういう趣味はないって言ってるのに!」
「愛は熱い炎よッ、必ず千星の氷の心を溶かしてみせるわ!!」

(『ロケットの夏』)


「待て、岡崎…」
「それって、おまえを…彼女代わりにって…こと…?」
「ああ」
「僕、そっちの気(け)、ないんだけど…」
「こっちにはあるんだよっ!」
「………」
「し…知らなかった…」
「ああ…俺も今、気づいた…」

(『CLANNAD -クラナド-』)


「お、お嬢様もお嬢様です!何ですかあのプリティーな笑顔は! 私にもして下さい! キスだってちょっと恥ずかしいけどこの際どんとこいですから!」
「わ、わたしそういう趣味ないんだけど!」
「わたしも皆無ですが、お嬢様は例外です!」

(『Bullet Butlers』)


「この辺りで真琴と抱き合ったのよ」
「……鳴海さん、そういう趣味が!」
「そういう趣味? そういう趣味ってどんな趣味?」
「いや、だから、そのぅ……」
「オメガくぅ~ん?答えなさい? 何を想像してたの?」
「……なんでもないです」
「貴方のスケベな想像は大外れよ」
「なんていうか、落ち込んでる真琴を励ますためにそうしたの」
「そ、そうですか。なるほど。健全だ……」

(『12RIVEN -the Ψcliminal of integral』)


「賭けに勝ったからって、こんな罰を要求するなんてなぁ…」
「見損なったよ、緋色さん……」
「まさかあんた、そっちの方の趣味があるんじゃ……」

(『オトメクライシス』)


「なッ、なんでこんなに冷え…!?」
「私ー… 私ねー」
 どきっ
「バッ バカッ!
 そういう趣味はないんだよ!!
 はなせ 離せってば!!」

(『アップルシード』)


「ふん~むふぅ
 …おぱっ… …おぱぁっ…」
 ちゅーーーー ちゅーーーーー
「よさんか、コラ!
 私ぁそのケはないんだぁ!!
 うぎゃああああァ」

(『まほろまてぃっく』)


「まほろさんってさぁ… 愛着のある乳してるよな!」
 むみゅうううう(はぁと)
「な、な、な、何をしますか!? 私にはそういう趣味はございません!」

(『まほろまてぃっく』)


「でも信じられない… こうして美悠さんと一緒にお風呂に入ってるなんて…
 女子のファン多いんですよ 美悠さんは(はぁと)」
 ズッ
「ちょ、ちょっと江里ちゃん! ボクそういう趣味ないからね!」

(『ミュウの伝説』)


「待って、美神センパーイ!」
「大声ではずかしーわね、千穂!」
「だってえーー。
 センパイと帰りが一緒なんて
 めったにないチャンスですもんーー(はぁと)」
「何のチャンスなのよっ。私はそのケはないわよ」
「あ、そーいう意味じゃなくて、
 あこがれてるってゆーかあ、ファンなんですよ(はぁと)」

(『GS美神 極楽大作戦!!』)


「美神センパイに何すんのよーーっ!!
 センパイは男になんかわたさないわっ!!」
「バカ者ーー!!
 つまんねーレズごっこでジャマすんなーっ!!」
「こっちゃ命がかかってんだぞっ!!」
「レ、レズですって!? 失礼ねっ!!
 私たちの愛はもっと純粋なものよっ!!」

(『GS美神 極楽大作戦!!』)


「わかった!! わかったから離れろ!
 人が見とるやないかっ!!」
「何?」
「彼氏じゃない? 美形ってホラ、そのケが…」

(『GS美神 極楽大作戦!!』)


「ん? あれは…」

「わ!!」
「わァ!!」ビクッ
「彩子」
「なにやってんすか二人とも
 柔道部なんかのぞいちゃって!!
 変なシュミに走ったとか」
「たわけ」

(『SLAM DUNK スラムダンク』)


「あの…… 千秋先輩は男の人ですヨ?」
「だから何よ? 悪い!?」
「そういうシュミの人だ」

(『のだめカンタービレ』)


「教室ですんなバカ!」

「やっぱりあの二人 ああゆう関係なんだ……」
「家ではずっとああなんだ」

(『苺ましまろ』)


『仮面の告白』か…。
「……悪いな樫村 俺にはおまえと同じ趣味はない」

(『課長 島耕作』)


「原因は何だ? お前の性的な嗜好か?」

(『課長 島耕作』)


デート… なのかな…///
なんだか… ちょっとドキドキしてしまう…
「私って… そっちの気があったのかな…///」

(『くちびる ためいき さくらいろ』)


 未玖はすっと顔を赤らめて、
「……なんだか今の言い方、愛の告白みたいだった」
 言われて、本当にそうだと気づき、ひなたも顔を真っ赤にする。
「ちっ、違いますよ!? わたしにそんな趣味はありませんからね!?」
「私だってないよ!? お姉ちゃんがベタベタしてくるせいで時々勘違いされちゃうけど!」
 二人揃って必死に弁明し合う。
「……くすっ」
「……ふふっ」
 それから、二人で笑い合い、仲良くしようねと握手をした。

(『ウィッチマズルカ』)


 少なくともセックスについては、彼に落ち度はなかった。むしろ欠陥は彼女にあった。自分がレズビアンだとは思わなかったし、そっちのほうの関心はなかった。

(『悪党パーカー 地獄の分け前』)


 ご覧の有様だよ。このように、あらゆるエンターテイメントにおいて、ふとしたことに「あんた、ひょっとしてソッチの気もあるんじゃないの~?」と茶々を入れて「違うわ~!」と全力で否定したり、女キャラが「あ~んお姉様~! わたくしの愛を受け取ってくださいまし~!」やら「その胸、ちょっと揉ませてみぃ~♪」と迫られて「うぎゃー! 私にそういう趣味はないわー!」と拒否反応を示したりするやりとりは、お決まりの“ギャグ”として定着している。また、同性愛関連の言葉を「そういう」「アッチの」と腫れ物に触るように言う慣習が存在している。驚くことに『百合』を謳っている作品ですらしらっと使われている。「ただのおふざけじゃん」「こんなねたに まじになっちゃって どうするの」と言われるかもしれないけど……。
「趣味だぁ、嗜好だぁ!? 舐めんなテメ! 『そういう』ってどういうじゃい! 『そっち』ってどっちじゃい! ふざけんな!』
 とたまに叫びたくなるのは私だけじゃあないはずだ。ためしに書き散らしてみたら、ちょっとすっきりした。なぜ「そういう趣味」系の表現が頭に来るのかわからない人は、身近な人の、国籍とか、人種とか、生まれとか、宗教とか、セクシャリティとか、そういったアイデンティティの根幹に係わるものを、趣味扱いしたり、「それ」「そういうの」呼ばわりしたりするところを想像してみるといいよ。「え、生まれは大阪? ソッチの人だったんですか^^」「確かクリスチャンでしたよね? そういうのやってると色々大変ですよね^^」といったあんばいで。こういったことを「たいしたことじゃない」と思うんなら、価値観が違いすぎるな。
「ただのギャグだよ。深い意味なんて無いよ。んなマジにならなくても」と言う人もいるが、何の気なしに描ける軽いギャグとして広まってしまっているのがヤバいんだよ。深い意味を考えずに平然と使っているのがヤバいんだよ。身近な娯楽からの刷り込みって、決して小さくない影響があるよ。

2008/01/30 作成。
2012/04/07 加筆修正。『屋上の百合霊さん』が盛り上がっていることだし、しばらく百合関連の記事を更新しようかな。

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tags: 百合 
2012年04月01日

屋上の百合霊さんが終わらない

 薄口まろやかのシナリオでこの冗長さは辛い。眠たい。

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