2016年07月31日

つい・ゆり レビュー・感想 二つの禁断で背徳感も二倍だな!

 読む価値無し。これっぽっちも無し。

 世にごまんとある、くちばしが黄色いガキンチョが同性の関係や実姉妹での関係にうじうじう悩み、終いにゃあ刃傷沙汰に至ったり拉致監禁の暴挙に出たりするお話である。月並みもいいところだ。このご時世に、同性愛やインセストを

「受け入れられない」


「越えてはならない一線」


「社会的に、倫理的に許されない」


「ほんとうはダメ」


「両親や親友に隠し通さなくてはならない」


 と頭ごなしに断定されて何の疑問も反発も湧かない人でないと、話の展開について行けないし人間にも一切共感できやしない。同性愛や近親をスキャンダラスでアブノーマルな「事件」として消費する方々に向けて作られているのが随所から伺える。
 いちおう、トゥルーエンドとおぼしきものでは、姉と妹がそれぞれ自分の気持ちを受け入れて、「いつかみんながわかってくれたらいいな」とわずかながらも前向きに歩き出すが、結局具体的な展望は何一つ示されないまま終幕してしまう。私はこの手の玉虫色な落としどころに対して「『いつか』って一体いつなんじゃい! はっきり言え!」と疑問を感じずにはいられない。子どもからお年玉を巻き上げた母親の言い訳かよ、もっと歯切れのよい答えを返しやがれ。

 私は『ついゆり』みたいにネガティブなことをねちねち語るだけの陰気で「情けないフィクション」に触れると、実妹や実姉がどんなに愛おしいか、血の繋がりや積み重ね(BY『咲-Saki-』)がどんなに素晴らしいか、滔々と語る作品がもっと出てきてくれないかとつぶやいておりまする。世の中にはまだまだ「いやっほ~う! 妹(姉)最高!」という百合作品が足りていない!

 作品の本質はタイトルに表れる、というのは私の持論だが、『つい・ゆり ~おかあさんにはナイショだよ~』(「ナイショ」は芸術点を付けたい)という幼稚さと加齢臭が同居するサブタイトルは、作品の程度をこれ以上なく表していると思う。

つい・ゆり ~おかあさんにはナイショだよ~ 豪華版
B01C8IMIBU

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tags: 百合 
2016年07月09日

2016年後半戦の新作百合ゲー……が全然無い! 『カタハネ ―An' call Belle―』『ジェミニフォートの勿忘草』『ナイトメア・ガールズ』『ねのかみ後編』

 恒例の新作百合ゲー下馬評記事だが、紹介する作品がさっぱりなくてさびしい限り。ちょっと前までの雨後の竹の子のような勢いはどうしちまったのさ。
 まずは2016年の前半に出ていた作品を振り返る。
2016年の新作百合ゲーあれこれ『凍京NECRO』『ウィザードリンクス』『メダロット ガールズミッション』『りりくる Rainbow Stage!!!』『つい・ゆり』『ナイトメア・ガールズ』『ねのかみ』『アルプトラウムの黒蝶』『夏空あすてりずむ』『百合ねいと!』『死に至る純愛』『女性向けガールズラブSLG(仮)』

『凍京NECRO<トウキョウ・ネクロ>』
 ちゃんと発売日に買い、寝る間を惜しんで読み切ったよ。
 原案が深見真、ニトロプラス制作と聞いて釣り上げまくった期待値以上の作品だった。絶対の自信をもって薦められる名作(万人に薦められる、とは言わない)。『凍京NECRO』が出ただけで、今年は当たり年だったと言える。みんなやるべき。やらないと怒る。
『つい・ゆり ~おかあさんにはナイショだよ~』
 サブタイトルの時点でダメダメ臭がカンストしていたが、結局やった。わかっちゃいたが駄作だった。受け身を取る準備は出来ていたのでさしたるダメージはない。そのうち三十分くらいでレビューを書く。
『FLOWERS -Le volume sur automne- (秋篇)』
 やってない、変死体が出てきたら起こしてくれ……と言い続けていたらもう秋なのか。ボクサーよ、お前の変死体に書ける情熱はその程度だったのか!?
『りりくる Rainbow Stage!!』
 やらない。
『ウィザードリンクス』
 ダメっぽいなこりゃと思ったので回避した。


カタハネ ―An' call Belle― (2016/7/29→2016/8/26)
http://www.katahane.com/index.html

最新OSに対応し、解像度は1280x720に強化、さらにパッケージも新たにする『An’call Belle』。
『カタハネ』の総てを網羅した完全ビジュアル本「ALL OVER KATAHANE」が付属し、
Blueberry&Yogurtによる新OP曲 & yo-yu氏が手掛けるムービーも用意!

http://www.getchu.com/soft.phtml?id=902438


●旧作からの変更点●

Blueberry&Yogurtによる新OP曲を追加
yo-yu氏による新OPムービーを追加
800x600から1280x720へ解像度変更
Windowsの最新OSに対応
ユーザーインターフェイスを一新

※アップコンバート版OPムービー2007ver.2も同時収録


 百合ゲー史上最高傑作との呼び声も高い『カタハネ』のリメイク版。製品仕様を見る限りでは流行りのHDリメイクで、シナリオの追加はなさそうだ。
 ときに、私の評価と世間の評価でもっとも乖離がある作品は、アオイシロでなければ百合霊でもなく、実は『カタハネ』なんじゃあないだろうか。

ジェミニフォートの勿忘草 (2016年予定)
月の水企画

で、追加部分が終わったばかりで何なのですが、次回短編の話も始めようということで。

次回短編は『ジェミニフォートの勿忘草』というタイトルのゲームになります。

以前から申し上げていましたように、探索ADVのようなシナリオ重視のゲームです。
色々試してみたいので戦闘なども入れ込むかもしれませんが、まだ諸々未定で……
HCG枚数はいつもの半分ということで30枚前後に納めるよう詰めている最中です。

詳細な設定やシナリオの雰囲気などは追々記事で紹介していく予定なのですが、
しっとりした感じのタイトルとは似つかない、出落ち感満載の軽い内容の話ですので、
Hシーンの密度が多めのライトな感じの雰囲気にご期待いただければ間違いないかと。

http://tsukinomizu.b.dlsite.net/archives/8536736.html


ナイトメア・ガールズ~異界氾濫~ (2016年制作開始予定)

苗床DG本編後にも予告として入れさせていただいた、短編の後作る予定の作品です。

まだ本編で予告を見ていない方もいらっしゃるかと思いますので、以下続きの方に……

次回長編は現代風触手凌辱RPGと銘打った、現代ものをやらせていただく予定です。


タイトルロゴでもないのですが、一応イメージはこんな感じです。

たまには雰囲気を変えてみてもいいんじゃないかっていう考えの企画ですので、
あまり深く考えずに楽しんでいただけるような作品に出来ればと思っております。

当サークル作品で一人、現代風の背景を持った既存キャラクターがおりますが、
その辺りの話は、結構な割合で本編の中心に絡んでくることになるかと思います。
勿論新規の方にも楽しめる内容にさせていただくつもりですのでご期待下さい。

キーワード的には、都市伝説や七不思議といった伝奇的な要素から、
SFや某コズミックホラーのテイストも混ぜつつ、基本は触手な感じの予定です。

完成はいつになるかわかりませんが、気長にお待ちいただければ幸いです。
(そもそもaceでやろうかMVでやろうかも今のところ未定で……)

http://tsukinomizu.b.dlsite.net/archives/8455358.html


 毎度お馴染み、ド外道百合エロ本格RPGで知られるておでぃ/月の水企画の新作二本。『ジェミニフォートの勿忘草』は今回初紹介の短編で、『ナイトメア・ガールズ』より先に発表されるらしい。『ナイトメア』は世界観の根幹に関わる話になりそうなので今か今かと待ち望んではいるが、『ジェミニフォート』もそれはそれで大いに楽しみ。「探索ADVのようなシナリオ重視のゲーム」ということは、過去作品で言うと『リリムユニオン』に近いのかな。

 『ジェミニフォート』のタイトル画像らしい。左の娘は触手と非常に親和性の高そうな服装っすな……。
 下はがんばって書いた、月の水企画作品の推薦記事。読んで興味が湧いてきたら君も明日から魔触になろう。
リリィナイト・サーガ レビュー・感想 名作! 王道風ド外道百合エロRPG


 以下、同人作品の枠。

ねのかみ 京の都とふたりの姫騎士 後編 (2016年8月)
ねのかみ 京の都とふたりの姫騎士 後編

争乱の京洛に乙女達は舞う――

実物大の京都を舞台に4人の少女達の運命を描く和風伝奇ADVゲーム

半年ほど前に京都市北部で起きた、異常な地震。
テレビに映る“邪教”なる宗教団体の信者の異様な姿。

次第に人々の興味は他愛もないものに移り、もはや話題にもならない。

女子校生のレンは数年ぶりに出会う幼なじみ、東雲に突然「死んで欲しい」と告げられ………。

東雲と再開したその日から、“現実”という名の舞台が漣の前に現れ、世界の“真実”を覆っていた幕が開かれる。

http://www.dlsite.com/maniax/work/=/product_id/RJ161801.html


 過去作品をまだやれてないなぁ。『サクラメントの十二宮 乱れる仔ひつじと手懐く狼』もここだったのか。
 前回も書いたけど、塗りが殺人的によくなっている。

 以下、公式サイトの更新が長いこと停止している作品群。

アルプトラウムの黒蝶 (2014年秋予定→2015年予定→?)

祈ればきっと叶うよ。
あなたの願いも、わたしの願いも―

時は大正時代。
とある山中にひっそりと存在する集落「白女霧」<しらめぎり>
主人公 坂本舞子は生まれた時からこの集落で
多少の不自由はあるものの楽しい時を過ごしていた。

そんなある日、舞子は一人の少女と出会う。
神も肌もまっしろな、いわゆるアルビノ<先天性色素欠乏症>の少女イリス。

舞子は初めこそ自分と違う容姿に戸惑いを隠せずにいたが、
打ち解けていくうちに徐々に心を惹かれていく。
最初は心を閉ざしていたイリスもまた、舞子の純真な心に触れ、次第に心をひらいていく

こうして少女ふたりのちいさな物語がすこしずつ、すこしずつ紡がれていく―



夏空あすてりずむ (2014年予定→2015年予定→?)
爽やか青春系百合ADV 『夏空あすてりずむ』

青春×田舎×乙女!!
明るく元気だけが取り得で、天体観測が趣味の女の子『椿沢 科乃(つばきさわ しなの)』
今年の夏もめいっぱい楽しもう!! と、思っていたのに……。
あれれ、今年の夏は去年までの夏と違うっ!?
趣味に進路に友情に、そして――もしかしたら恋に!?

星がゆっくりと夜空を流れていくように、
ゆっくりでも、確実に変わらなきゃいけない夏。
その先にある未来へと繋がる星座を形作るために。



百合ねいと! (未定)
百合ねいと!

おしっこ×百合! 禁断の組み合わせが今!!

雪ノ下春。どこにでも居る普通の女の子。
猫柳雪。どこにでも居る普通の女の子。

桜の蕾が膨らみかける季節。
雪解け水のよりも透明な少女の想い。

誰にも言えない、彼女だけの何よりも透明で熱い想い。

『ダメ……熱い想い……漏れちゃう……』



女性向けガールズラブSLG(仮) (2015年秋?)
業界初!女性向けガールズラブSLG 2015年秋リリース予定!
 火薬臭が凄すぎるので、どんな酷いことになるのか興味はあった。もうプロジェクトが頓挫していそうだけど。

死に至る純愛 (2015年予定→?)
死に至る純愛

妻に恋するファンタジー百合18禁ADV
原画・シナリオ ろくみ


 「妻に恋する」が愛妻家の意なのか、それとも人妻百合なのか、そこだけでも知りたかった。

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2016年07月02日

エロゲー・ギャルゲー入門編 ノベルゲームの面白さがたぶんわかる十本

 以前にも似たようなエロゲー初心者の入門記事を書いていたのですが、あれからまた多くの作品を鑑賞するうちに価値観も変化してきたので、まるっと刷新しました。面白さの観点を整理したほか、総合的なクオリティや入手難易度などを考慮していくつかの作品を入れ替えています。
※この十本は私の好きな作品ベスト10ではありません。いくつかは被っていますが。
※この記事ではアドベンチャーゲームとビジュアルノベルを厳密に区別せず、一緒くたにしてノベルゲームと呼んでいます。

『痕』 原点
 1996年発表、リーフビジュアルノベルシリーズ第二弾。『痕』が現在主流になっているエロゲー・ギャルゲーの始祖だということに異を唱える人は少ないでしょう。高橋龍也と水無月徹のコンビは自らが『雫』で始めたビジュアルノベルの歴史を次作『痕』でさっさと終わらせてしまいました。この作品はノベルゲームという媒体で表現可能なことをやり尽くしていると言っても過言ではありません。極論っちゃあ極論ですが、下に挙げた蒼々たる名作群もこの作品の二番煎じでしかありません。どちらの作品が優れているかはさておき。また、長らくエロゲーの主流となる異能伝奇バトル路線の嚆矢でもあります。
 余裕があれば前作『雫』もやりましょう。さすがに今になって読むと毒電波という独自概念のテキトーさやテキストの雑さなどが目につきますが、歴史を変えた記念碑的作品を抑えておいて損は無いです。じっさい『弟切草』『かまいたちの夜』などのサウンドノベルとこの作品の間には1万光年の隔たりがあります。『雫』の単体記事はいつか書きたいですね。
【対応機種】Windows(調べてみたら全年齢版がない)

『この青空に約束を―』 コミュニケーション
 『こんにゃく』のゲームデザインは、私が勝手に「コミュニケーション型」と読んでいるスタンダードなものです。あるヒロインと交流していくうちに、その人の過去や隠されていた本質が明らかになったり、あるいはその人が抱えている問題を一緒に解決したりすることで絆を深めていく、というのが基本の流れになっています。、
 ギャルゲーの面白いところは、物語中で主人公とヒロインの仲が深まっていくのと同時に、読み手がそのキャラのパーソナリティに触れることで愛着が生まれるという、もう一階層上のメタフィクショナルな交流が起こるところです。愛=理解! 名作と呼ばれるような作品は、伏線やルートごとの情報の秘匿・開示によって、それを鮮やかに演出してきます。いや本当に、まるで目から鱗が落ちたかのように、そのキャラクターに対する印象が変わってしまうんですよ。私がギャルゲーをプレイする動機の根源にあるのは「その人のことを知りたい」「その人の本質に触れたい」という欲求なのですが、みなさんはどうでっしゃろか。
 『こんにゃく』は好感の持てる主人公、キャラの立ったヒロインとサブキャラクター、読みやすいテキスト、かわいらしいビジュアル、心に染みるサウンド、泣けるシナリオとおよそ名作と呼ばれる作品の必須要素を搭載しているので、入門編にはうってつけです。若干、これからやる作品のハードルが高くなる気はしますが。
【対応機種】Windows、PS2、PSP、Vita

『Fate/stay night』 マルチシナリオ
 ノベルゲームの面白さのうち、アニメ・漫画・映画・小説といった媒体では表現しえない(あるいは非常に困難な)ものに「マルチシナリオ」があります。同一の時間を起点にして、同一の舞台設定、作品概念、登場人物によって、幾通りもの物語を展開し、幾通りもの結末・価値観を提示することができる。それがノベルゲームの強みです。中でもこの『Fate』は、徹底的に作り込まれた世界で、えぐいほどにアクが強い登場人物が、全く展開の異なるバトルロワイヤルを三度に渡って繰り広げるという、マルチシナリオの贅を尽くしたような作品です。「Fateは文学」なのかどうかは知りませんが、こいつがノベルゲームの理想型を実現させた数少ない作品の一つであることは間違いありません。
【対応機種】Windows、PS2、Vita

『アカイイト』 情報分散 マルチエンディング
 私が「情報分散」型と呼んでいるデザインは、各ヒロインのルートに情報が分散して割り振られていて、全てのルートを読み終えたときに初めて全容が明らかになる形式です。断片的だった情報が額縁にピースをはめていくかのように組み合わさって意味を成していき、次第に世界の全体図が見えてくる。あの目から鱗が落ちていくような快感は実際にやってもらわないとわからないです。
 私がこの形式の作品としてお奨めしたいのが、王道和風伝奇百合ゲー『アカイイト』です。この作品のデザインコンセプトが秀逸なのは、一人目のルートでその人が関わっていた十年前の事件の真実が明らかになり、二人目のルートでその人と妖怪変化・悪鬼羅刹との千年前からの因縁が判明し、三人目で三年前の……といったあんばいで、ヒロインの正体がわかっていく課程で、長大な年表が時系列を入れ替えながら組み上がっていき、世界観が構築されていくところですね。『アカ』ほど一つ一つルートを読み解いていくのが楽しかった作品はありません。
 また、プレイヤーの選択によってエンディングが変化する「マルチエンド」はギャルゲーのご先祖であるサウンドノベルの頃から売りにされていた要素ですが、『アカ』はノーマルエンド・バッドエンドが魅力的なゲームとしても知られています。その後の展開を想像させるような内容である上に、エンディング一つ一つに気の利いた名前が付けられていて、強く心に残ることうけあいです。
【対応機種】PS2、PS3(ゲームアーカイブス)

『パワプロクンポケット』シリーズ 正史とIFの歴史
 あまり該当作品が無い「正史構築」型のデザインです。私もぱっと思いつくのが『久遠の絆』、『CLANNAD』と『智代アフター』、『My Merry May』と『My Merry Maybe』ぐらい。そもそもこの業界で、最初から全何部作で構想されているもの以外で、続編の名作というのがあまり思い浮かばないです。ナンバリング付きの続編なんか最近じゃあめっきり見ませんし。
 今まで語ってきたように、ギャルゲーの面白さの根源にあるのはマルチシナリオ・マルチエンドなどの分岐にありますが、アフターストーリーや続編においては基本的に正史が定められて、そこを起点に物語が展開します。正史構築型の作品には、そうして起点が固定化されることによって生まれる逆説的な面白さがあります。それはもちろん、われわれが正史確定前のさまざまな未来を観測しているからこそ成立するものです。野球をするギャルゲーと言われる『パワポケ』は、歴史に選ばれなかったヒロインの悲喜こもごも、ハッピーエンドとは異なる解法の提示、思いがけない人物・組織の台頭といった演出がずば抜けてうまいです。ギャルゲー・エロゲー畑の人にはあまり馴染みがないかもしれませんが、絶対の自信を持ってお奨めできる作品なのでぜひぜひプレイしてみてください。
【対応機種】GB、GBC(1、2)、GBA(1~7)、DS(8~14)

『家族計画』 テキスト
 ノベルゲームというくらいなので「テキスト」が素晴らしい作品も一つ紹介しておきます。瀬戸口廉也や虚淵玄や水無神知宏の文章も格調高くて素晴らしいですが、私がノベルゲームのテキストとしてもっとも美しいと思っているのは田中ロミオのそれです。その次が麻枝准(キリッ)。私がロミオを評価しているのは、もちろん文章の噛み砕きやすさや、表現・語彙の引き出しの多さ、躁的なテンション、名言の含有率もありますが、何よりテキストのリズム感を完ぺきに身につけている点です。平易な表現とペダンチックな表現、1クリックで表示されるテキストと情報量のペース配分が理想型に近い。だから分量だけ聞くと胃もたれしそうなシナリオでも、一気呵成に読ませてしまうんですよ。誇張表現はなく、エンターキーを押す手が止まりません。読ませる文章を書く小説家をページターナーと言いますが、私にとってロミオや麻枝はエンターキープレッシャー(?)です。
 ところで、ロミオの筆がもっとも冴え渡っているのは『Rewrite』だと個人的に思っているのですが、入門者に進めると竜騎士か殿のシナリオで確実に挫折すると思ったので無難に『家計』にしておきました。
【対応機種】Windows、PS2、PS3、PSP、Vita

『AIR』 演出
 「ゲーム性がないギャルゲーなんてライトノベルと変わらんじゃんか」と言う人がいます。それに対して「分岐がない作品に限定しても、絵があって音楽があってボイスがある、それだけで全く別物じゃないか」と言う人もいます。私は後者の主張を支持していますとも。
 けったいな考察コンテンツを作っていることからわかるように、私はバ鍵っ子の末席を汚す身です。しかし信者のひいき目を抜きにしても『AIR』は20世紀を代表する作品だと思います。時代の三歩先を行っていました。この作品の、テキストとサウンドとビジュアルが三位一体となった「演出」は読み手の涙腺に致命的なダメージを与えてきます。かの有名なゴールのシーンはギャルゲー史上の最高到達点の一つでありましょう。語るに尽きぬ作品ですが、あの一場面だけでも歴史に残ります。
 勘違いされがちですが、初出のPC版にはボイスがありません。私には観鈴ちんと晴子の声が聞こえてきましたけどね。
【対応機種】Windows、DC、PS2、PSP、iOS、Android

『STEINS;GATE』 ループ
 ギャルゲーと「ループ」要素の親和性が高いのは定説です。パターンの限られた背景と立ち絵、延々とリフレインするBGM、主人公の目を通して世界を覗くという歪んだ構図が生み出すデジャヴ感・箱庭感とループ要素がこれ以上ないほどマッチしているからだ、というのが私の意見です。
【※微妙にネタバレあり】
 ゼロ年代最後の名作と言われる『シュタゲ』は目新しさこそないものの、(プレイヤー主観の)一周目時点で発現している歴史改変の影響、トライ&エラーの果てない繰り返し、摩耗していく自我、変貌していく世界、因果律の無慈悲な収束、思いがけない「ループ逃れ」の存在、というループ作品のお約束を網羅している良作です。
【※ネタバレここまで】
 また、ひとくちにループと言っても、無限に繰り返される時間の中で何かを悟るような、狭義の「ループ」に主眼が置かれている作品と、観測された悲劇を回避するためにいわゆる「強くてニューゲーム」で立ち向かう「リプレイ」要素の比重が大きい作品があります(無論両方を兼ねている作品もある)。前者は『パンドラの夢』『CROSS†CHANNEL』(他の媒体で言うならば『リプレイ』『恋はデジャ・ヴ』)、後者は『ひぐらしのなく頃に』『マブラヴ』(『バタフライ・エフェクト』『アズカバンの囚人』)ですかね。ギャルゲーとリプレイものの親和性が高いのはある意味当然です。なぜならば、あまねくギャルゲーはそれの性質を備えているからです。われわれ読者が選択肢の位置でセーブをしてトライ&エラーを繰り返し、トゥルーエンドへの道を模索する、その行為こそがリプレイそのものではありませんか。ループゲーというのは、必然的にメタギャルゲーでもあるんです。
【対応機種】Xbox360、Windows、PS3、PS4、PSP、Vita、iOS、Android

『Ever17 -the out of infinity-』 叙述トリック グランドエンド
 『Ever17』については何を言ってもネタバレになるのでうかつなことが書けません。世の中のギャルゲーのうち大半は、読者が主人公の目を通して世界を見る、という画面構成を取っています。物理的にも、観念的にも、主人公の観測によって世界が形作られています。このいびつなレイアウトが読者を欺く「叙述トリック」と相性が抜群なのです。私はこの作品をそこまで評価していませんが、じっさいあの仕掛けにはおったまげさせられましたとも。あの脳内映像が音を立てて崩れ去る瞬間の途方もない感覚を、あなたにもぜひ味わってもらいたいです。
 また『Ever17』は、ヒロインの個別ルートでは主に情報の小出しと伏線張りを行い、最後に解放されるグランドルートで伏線を根こそぎ回収しつつ大団円エンドを迎えるグランドルート・グランドエンド形式のデザインの代表格です。個別ルートでの奥歯に物が挟まったような疑問点・違和感がグランドルートで次々に氷解していく快感は、この形式の醍醐味ですね。
【対応機種】PS2、DC、PSP、Windows、Xbox360

『さよならを教えて』 エログロ メタフィクション
 対象年齢を限定しているエロゲーは、コンシューマゲームでは実現しえないエロス、バイオレンス、グロテスク、タナトスといった表現を追求した作品も散見されます。
 ときに、ギャルゲーというものは主人公(プレイヤー)の目というフィルターを通して世界が展開されて、主人公の行動(プレイヤーの選択)によって女の子と世界の幸不幸、時には生き死にすら決定づけられるという、身勝手極まりなくて歪な媒体です。必然的に「メタフィクション」とは切っても切れない関係にあります。『さよ教』はそれとしてもよく出来た佳作ではないでしょうか。女の子を救いたいというのは、つまるところ「自分が」救われたいっちゅうことなんですよ……。
 はっきり言って5ルートも必要ないほどくどいのと、ゴア表現がかなりきついのでそこは注意。
【対応機種】Windows、Android(Win版はプレミア化しているDLsiteで購入可能に)

 プレイ環境を整えるのが少しめんどくさそうなのが『パワポケ』のGBA世代くらいで(現行機の3DSでは遊べない)、後は通販サイト・DLサイトを利用すれば適正価格で遊べると思います。また『痕』と『さよ教』以外は未成年でもプレイ可能であることを確認。
 この十本をやれば「ギャルゲーなんてただの紙芝居でしょ」「アニメで充分」などとは口が裂けても言えないはず! たぶん。

2015/11/24
 気付いたらワイドスクリーン・バロックばっかりだったので、『C†C』を『家計』に変更。
2016/07/02
 加筆修正。

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