2007年03月06日

◇それは物語の予兆◇タソガレ◇ナクシタヒ◇幻視行の解説

 どのシーンも、双子の入れ替わりと視点の混同による叙述トリックが使われている。

◇それは物語の予兆◇タソガレ
 ユメイルートで種が割れるが、「小さい子」は桂ちゃんではなく白花ちゃん、その子の手を引く「着物のような服を着ている」人は、ユメイさんでなくミカゲちゃんである。

 涼しげな鈴の音に、私は前へと向き直る。

(◇それは物語の予兆)


 手を引いているのは誰だろう。
 着物のような服を着ている。
 小さな白い手。
 大人の男の人の手ではなかった。
 その人が、振り向いた。(鈴の音)

(◇タソガレ)


 鈴は二人のトレードマーク。「小さな白い」手もミソ。

 がさがさと、せいの高い草をかき分けて――
 年端のゆかない小さな子供が、ゆるやかな勾配のついた道のない道を、懸命に登っていく。
 あれはわたし?わたしだろうか?

 これは夢だ。名残の夢だ。黄昏の中をひた走る、電車に揺られて視た夢の残り火。
 違っているのはわたしの視点。
 その子は誰かに手を引かれている。
 手を引かれているのは、わたしだったはず。
 感触は、ある。あるのに、わたしは今、まるで第三者のように、その背中を眺めている。

(◇タソガレ)


 ◇タソガレも、第三者の視点と見せかけた一人称視点である。桂ちゃんはノゾミちゃんに手を引かれながら(感触は、ある)、先を行く白花ちゃんとミカゲちゃんを見ている。第三者の視点だったとしたら、桂ちゃんとノゾミちゃん、白花ちゃんとミカゲちゃんという二組のペアが見えないとおかしい。

◇ナクシタヒ
 前半部、笑子さんのお葬式は桂ちゃんの一人称視点だ。サクヤさんが慰めているのは白花ちゃんである。
©Hal/SUCCESS

--
「――の子だろ、泣くんじゃないよ」
 その子の頭のはるか上で、硬くつぐまれていた唇が開いた。
-喪服の女性-
「ほら、あっちを見てみなよ。あんたの大好きな――だって、泣くのを我慢しているんだよ」
-小さい子-
「ふぁっ……でも……でも桂は泣いているよぅ……」
-喪服の女性-
「………」


 男の子だろ、泣くんじゃないよ。あんたの大好きな柚明だって。
 また、番外編WEBノベル「髪長姫」で、桂ちゃんが伸ばしていた髪を切った経緯が書かれているが、笑子さんが亡くなってしばらく経っている旨の描写がある。

 手にははさみ。ぷくぷくと幼い手にはそぐわない、柚明お姉ちゃんの裁縫道具の古びた形の無骨なはさみ。お祖母ちゃんの形見でもある裁断ばさみ。

(「髪長姫」)


 剥き出しになった首を掠める空気の流れになんともいえない居心地の悪さを覚えて、まとわる髪を探した手が空を切る。何もつかめないてのひらに、わたしはとても不安になった。在るべきものとして在ったはずのものが無い。良く似た気持ちを感じたのは、笑子お祖母ちゃんが亡くなったときのことで――

(「髪長姫」)


 つまり、笑子さんが亡くなってまもなく執り行われたであろうお葬式の時点では、桂ちゃんはまだロングヘアーだったということだ。桂ちゃんと白花ちゃんが髪型までそっくりになるのはもう少し後のことだ。よって、このショートカットの小さい子は白花ちゃん一択である。
 後半部、真弓さんのお葬式は、完全な第三者の視点だ。


◇幻視行
 ここも桂ちゃんの一人称視点。真弓さんにじゃれついているのは桂ちゃんではなく白花ちゃんである。柚明さんはあらぬ方を向いているのではなく、画面外の桂ちゃんに微笑みかけている。


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