2007年07月05日

レビューのジレンマ

 なににもまして重要だというものごとは,なににもまして口に出して言いにくいものだ。 それはまた恥ずかしいことでもある。 なぜならば,ことばというものは,ものごとの重要性を減少させてしまうからだ--ことばはものごとを縮小させてしまい,頭の中で考えているときには無限に思えることでも,いざ口に出してしまうと,実際大の広がりしかなくなってしまう。

 (おそらく)世界で最も有名な中編小説の冒頭文である。キング大先生のような、我々から見れば饒舌もいいところに思える御仁でも、大なり小なりジレンマや恥ずかしさを覚えているらしい。
 この文章を、われわれケチなオタク用に改編すると、こうなるかなぁ。

 なににもまして愛している作品は、何にもましてその魅力を伝えにくいものだ。それはまた恥ずかしいことでもある。なぜならば、レビュー(「褒める」でもいいや)というやつは、作品の魅力を減少させてしまうからだ――レビューは作品を矮小化してしまい、頭の中で考えているときには無限に思える魅力の数々も、いざ文章にしてしまうと、実物大の広がりしかなくなってしまう。

 気に食わない作品を糞味噌にこき下ろすのが、楽勝で気の張らないことなのとは真逆に、自分が好きで好きでたまらない作品を、褒めちぎったり、その魅力を舌足らずにでも伝えたりすることは、すこぶるこっ恥ずかしくて、困難で暗鬱な作業だ。
 その分、身も心も摩耗させて書き上げたものに、誰かが静かな同意を示してくれたときの幸福感・達成感は例えようもないんだけどねぇ。却って自分の中で作品を矮小化しかねないっていうジレンマや、まるでラブレターを晒すような心許なさをこらえたかいがあったってぇものだよ。
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