2007年08月20日

千羽烏月ルート

ユメイ(ルート)に関する伏線
千羽烏月(ルート)に関する伏線
ノゾミ(ルート)に関する伏線
浅間サクヤ(ルート)に関する伏線
若杉葛(ルート)に関する伏線


◇誰かの写真

-駅員-
「そこ(羽様)のお屋敷には――」
-桂-
「え?」
-駅員-
「――あるんだよ」
-桂-
「な、何が?」
-駅員-
「色々な、噂がね」
 駅員さん、そんなに嬉しそうに声色を変えないでください。
-駅員-
「確か十年後前の話だったか。住んでいた家族が神隠しにあって消えてしまったとか」
-桂-
「ひっ、引っ越しただけなんじゃ?」
-駅員-
「いやいや。実は殺人事件があったなんて噂も立ったぐらいだよ」


噂の元は10年前の事件だろう。主に憑かれた白花ちゃんは行方を眩まし、代わりのハシラになった柚明さんは行方不明扱いにされ、正樹さんは白花ちゃんに胸を貫かれて亡くなり、残された真弓さんと桂ちゃんも故人を偲ばせる屋敷を引き払う。端から見れば突然の一家消失で、屋敷が神域に近いこともあり、神隠しと噂されたのもわかる。行方不明が二名に死者が一名(かつ変死体)の事件がマスコミ沙汰にならなかったのは、千羽党(若杉)がもみ消したからだろう。

-駅員-
「ところで最近は、座敷童を見たとか、狐に化かされたとかいう人がいるらしいんだがね?」


 葛ちゃんと尾花のこと。初プレイでこのルートに入った人は気付かない。


◇天ぷらぷらぷら

 と、彼女(烏月)の頬がわずかに緩んだ。
 わたしはそんな彼女の顔を、ほんの少し(本当に少しだけ)お母さんに似ているかもしれないな、と思った。
 実はわたしのお母さんも、かなり綺麗な人だったのだ。


真弓さんの正体のヒント。真弓さんも千羽家の人間で、烏月さんとは遠い親戚にあたるのだから、似ていても不思議はない。

-桂-
「何だったら桂でいいよ」
 馴れ馴れしくそんなことを言ってしまったのは、ふとこの人に、名前で呼んでもらいたくなったから――かもしれない。
 陽子ちゃんをはじめに学校の友達は、みんなわたしを「はとちゃん」とか「羽藤さん」と呼ぶ。
 何でも、羽藤という名字が珍しいのと、桂という名前の響きが「男の子みたいでイメージじゃない」のだそうな。
 だから普段、わたしを桂と名前で呼んでくれたのは――


 お母さんだけだったのだ。

-桂-
「変わった名前だね」
-烏月-
「確かに。出生届を書き損じたのだろうと、口さがない人には言われたりするね」

――あれ?

-烏月-
「桂さん、どうかしたのかい?」


出世届を……損じる? どこかで聞いた話だな~、でもどこでだっけな~思いだせないよ~。そそっかしい真弓さんは、桂ちゃんと白花ちゃんの出生届を提出した。ユメイルート◇浄瑠璃T参照。


◇ふやふや


◇謎の人物の影


◇友あり遠方より電話くる
 章題の元ネタは「論語」の一文「友あり遠方より来たる」。


◇タソガレ
 章題に漢字を当てれば「誰彼(あなた誰?)」になる。夢に現れる懐かしい人、あなたはいったい誰なの? わたしの何なの?
 詳しい解説は◇それは物語の予兆◇タソガレ◇ナクシタヒ◇幻視行で。

「――桂ちゃん」
 あの声の人だ。
 ああ、この人は、この顔は……
 痛みが走った。(赤エフェクト)
「駄目。考えては駄目」
 知っている。誰かに似ている。
 それはとても懐かしくて、毎晩見ている、鏡の中の――


わたしに似ている。桂ちゃんとユメイさんの血縁関係を示唆している。

 柔らかな手が、頭を撫でた。
 幼い子供をなだめるように、よしよしと、優しくゆっくり。
 少し冷たい指先が、痛みを吸い取ってくれているような気がした。
 風邪を引いた幼い日の夜、苦しいところを撫でさすってくれた、お母さんの手にも似ていて。
 ああ、やっぱりこの人は――(赤エフェクト)


――幼いわたしの世話を焼いてくれたことが……とか続く。
 この幽霊さん、幼い日の桂ちゃんと接触がある? ひょっとすると元人間、それも桂ちゃんに近しい人だった? と想像をたくましくしてほしいところ。

-烏月-
「その声、桂さんか」
 正体を確かめるように、わずかに左目をすがめて私を見ている。
 月の光の加減のせいか、見開かれた右目が蒼く光っているように見えて、わたしはぎょっとしたのだけれど――


烏月さんの左目が蒼く光っていたのは見鬼の技を使っていたから。万に一つも桂ちゃんの正体が鬼かもしれないと思ったのか、あるいは桂ちゃんに残されていた気配を探っていた。初プレイでこのルートに入った人はスルーする。


◇銀しゃりしゃりしゃり


◇ネバイイト


◇今日の予定は?

-女将-
「千羽さんはお家のご用で来ているそうだから、色々と忙しいのかもしれないもの」
-桂-
「え?家の用事?」
-女将-
「明々後日にお祭りがあるのよ。そういう意味ではいい時期に来たわね」
-桂-
「はぁ、お祭りですか……」
 それと烏月さんに何の関係が?
-女将-
「少し前までそのお祭りを取り仕切っていたお家があったのね。でも、急にその人達がいなくなってしまったそうで――」
 ここ何年もの間古い作法に乗っ取ったお祭りができなかったとのこと。
 今年はその家と縁があるという人が協力を申し出てくれたので、例年よりは多少盛大になるそうなのだ。


祭りを仕切っていた一家が羽藤家なのはほぼ間違いない。羽藤家は10年前の事件を機に経観塚を去っている。
Q.「お祭りの協力者」って誰だったの?


◇備えあれば憂いなし?


◇少年と鬼の木

-桂-
「……あれ?」
 わたしは再び、同じ言葉を口にすることになった。
 見たことのある人だった。
 でもこのあたりに知り合いなんていないし、そうじゃなくても男の子の知り合いなんて――
――ああ、烏月さんの尋ね人の。


白花ちゃんは桂ちゃんの双子の兄で、生まれてからこっち、十年余りを一緒に暮らしていたんだから、既視感があって当然なんだけれど。もっともらしい理由を付けてはぐらかしてしまっている。うまい。

-桂-
「えっと、地元の方ですか?」
-写真の少年-
「そう――いや、昔はこっちに住んでいたんだけど、今は違うよ」


ケイくん=羽藤の人間だと推測できる数少ないヒントの一つ。書くまでもないことけれど、白花ちゃんは10年前まで羽様のお屋敷に住んでいた。

-写真の少年-
「かく言う僕も親戚つながりでね。一口で言えるほどには近くないんだけど、彼女(烏月)とは遠縁に当たるんだ」
-桂-
「えっと……つまりは、あなたも千羽さん?」


ここに限らず、烏月ルートではケイくん=千羽の人間だと印象づける描写が多々ある。ユメイルートでの、ケイくんは実は羽藤家の一員だったのでした!というどんでん返しのための仕込みだろう。

-桂-
「奇遇ですねー、羽藤桂です」
 あははと笑ってお辞儀をする。
-ケイ-
「ハトウ――ケイ――!?」(略)
-桂-
「桂は将棋の桂馬の桂――ってあれ?どうかしました?」
-ケイ-
「いや、別に……」
 と言いつつも、何でもなくはなさそうな様子。


ケイくんは桂ちゃんのことを知っている?ひょっとすると記憶を無くす前の桂ちゃんと面識がある?というところまで予測できる。じっさいは面識どころの話ではなく、二人は血を分けた兄妹なんだけれど。

-ケイ-
「北の地に住む人達にもね、死んだら蝶になるという伝説がある。彼らは塊を魔除けの木としていて、死者を弔う墓標としても使っていたんだよ」
-桂-
「魂が迷わずに…蝶に変われるように?」
-ケイ-
「それはどうかな。だけどこのご神木は、君の言う通りの意図をもって植えられたものだよ」
「還ろうとしないある魂を、蝶の形に変えて散らそうとしているんだ」


白花ちゃんの言うとおり、凝り固まった主の魂を少しずつ虚空に還すことがご神木の役割だ。しかし、それを目的として塊の木が植えられたという憶測はハズレ。ご神木は例の事件より遙か前から経観塚の山に根を下ろしていた(だからこその主を封じるほどの霊力である)。

-ケイ-
「それなら――あまり思いつめない方がいい」

「えっ!?」
ケイ
「彼女が忘れろと言ったのなら、それは思い出さなくてもいいことなんだ」
 わたしを襲った目眩の正体を、知っているかのような口調で言う。
  -ケイ-
「忘却は人に与えられた恩寵のひとつだよ。君はそれを受け入れた方が幸せになれる。今更、藪をつついて蛇を出すことはないんだ」
 顔立ちは全然似ていないんだけれど、こういう物言いやまなざしの強さは、やっぱり烏月さんと似ているかも知れない。


白花ちゃんがうまいこといった。「桂は今さら頭をひっかき回して、蛇(ノゾミカゲちゃん)に関する忌まわしい記憶を呼び起こす必要はない、そのまま平穏に暮らせばいい」と言いたかったのだろう。このセリフ、ユメイルートと烏月ルートで白花ちゃんのルーツを知るとダンチに重みが増す。
 二人の空気が似ているのは、明良さんの影響か。

-ケイ-
「とにかく、忘れていることを無理に思い出そうとするのはよした方がいいね。何が出てくるかわかったものじゃない。それこそ――」
 飲み込んだはずの言葉が、どうしてかはっきりと聞こえた。
-ケイ-
「鬼が出るか、蛇が出るか、果ては両方か」


また白花ちゃんがうまいこといった。主は八岐大蛇を遠祖に持つ蛇の鬼神である。


◇なんでこんなところに?

-桂-
「そういうサクヤさんこそ、なんでこんなところにいるの?」(略)
-サクヤ-
「仕事だよ仕事。『日本に残された野生』とかいうテーマで狸やら狐やら狼なんかの野生動物の写真を撮ってきてくれだとさ」
-桂-
「サクヤさん、日本に狼は…」
-サクヤ-
「撮れたら学会報告ものだって?まぁ、運が良ければ最後の一匹が見つかるかもしれないじゃないか」


サクヤさんが観月の民の最後の一人なのを暗示している。

-桂-
「代わりに幻のツチノコとかみつかったりして」
-サクヤ-
「よしとくれ、蛇の化け物なんて縁起でもない」
-桂-
「あはは、サクヤさんにも怖いものってあるんだ」
-サクヤ-
「人生長いと色々あるんだよ――と」


唯一慕っていた人間である姫さまを狙われる、恩人の息子を殺される、白花ちゃんの身体を乗っ取られる、柚明さんを代わりの生け贄にされる、桂ちゃんはそのせいで記憶を失い、女やもめでこぶつきの真弓さんは過労死する。サクヤさんにとって蛇の化け物=主は鬼門中の鬼門である。


◇雨のにおい

-サクヤ-
「あー、いやな天気だねぇ。こりゃあ近いうちに一雨くるよ」
-桂-
「見てないのにわかるの?」
-サクヤ-
「わかるさ。空気の匂いとかでねぇ」(略)
-桂-
「そういうのって、職業柄?」
-サクヤ-
「いや、天気予報が得意なのは生まれつきさね。あたしの家系は鼻が利くんだよ」


サクヤさんの正体のヒント。言うまでもなく「あたしの家系」とは観月の民のこと。サクヤさんの人並み外れた嗅覚は◇不法侵入などでもアピールされている。


◇意外な繋がり

 にっこりと上品に微笑み、どこからともなく取り出した名刺を差し出すサクヤさん。
-サクヤ-
「浅間サクヤと申します」
-女将-
「あらあら、ルポライターでフォトグラファーなんですね」
-サクヤ-
「はい。文章では主に政経面について。写真は山や野生動物など、自然を主に扱っております」


「ルポライター」という単語自体がサクヤさんの正体のヒントだろう。美人独身二十歳なら「フリーライター」か「ジャーナリスト」を使う。

-サクヤ-
「烏月って……もしかして千羽烏月かい?」
-桂-
「あれ?サクヤさん知り合い?」
-サクヤ-
「……まぁ、あの家とも古い付き合いがあるというか、いろいろな因縁がねぇ…」


60年前の観月の村襲撃から、若杉から刺客として送られた真弓さんとの死闘(◇ジョーカー参照)、明良さんとケイくんの件に端を発する悶着と、サクヤさんと千羽党との因縁は延々続いていく。


◇月と花

-サクヤ-
「で、桂はともかく、あんたはそろそろ上がるころなんじゃないのかい?」
-烏月-
「どうして私が」
-サクヤ-
「烏の行水って言葉があるだろう?慣れない長湯は身体に障るよ」
-烏月-
「何を言うかと思えば、馬鹿馬鹿しい。重ねた齢にふさわしい――」


サクヤさんの正体のヒント。サクヤ嬢は当年とって17XX歳である。「そんなことになったら大変よ」byユメイさん。


◇鬼の成り立ち

-烏月-
「ああ……桂さん、あなたは奴に会ったのかい?」
 烏月さんは切れ長の目を細め、少し難しい顔をして私に尋ね返してきた。
 ……もしかして照れてる?
-桂-
「でも、奴なんてそんな言い方……」
-烏月-
「呼び方を区別しないと、先ほどのサクヤさんではないが問題が生じるだろう?」
 確かに本人同士なら、小さい子みたいに名前を一人称にしていない限り、混乱することはないけれど、第三者と話すとなると大変だ。


 叙述トリックでよく使われる手なんだよね。あっはっは。◇ナクシタヒ◇倉にしまわれていたもの◇浄瑠璃Fなどはややこしいことこの上ない。

 かと言って、ケイくんのことを「千羽くん」と苗字で呼ぶのも、烏月さん相手だと何だか変なわけで……


ケイくんの印象を千羽党・鬼切り役寄りにするためのひっかけ。ユメイルートのための仕込みだろう。

 えっと……
-桂-
「鬼から隠れるんじゃなくて、鬼が隠れるの?」(略)
-烏月-
「逆だよ桂さん。順番が逆なんだ。あるものを鬼と認識し、鬼という鋳型にはめ込むのは人間だ。人間が鬼をつくるんだ」
「だから鬼が隠れるのではなく、隠れたもの、隠されたもの、隠れざるをえなかったものが鬼になる。それが原点の『おに』だ」


アカイイトの登場人物に当てはめれば、隠れたもの……サクヤさん、ミカゲちゃん、隠されたもの……ユメイさん、白花ちゃん、ノゾミちゃん、隠れざるを得なかったもの……ユメイさん、白花ちゃんだろうか。アカイイトの主要登場人物で、人間から成ったのではない生まれついての鬼は、サクヤさん、主、ミカゲちゃんの三人だけ。

-サクヤ-
「単なる行方不明でも、七年続けば晴れて死亡認定さ」


おそらく行方不明から10年経った柚明さんは既に死亡認定されている。

-烏月-
「いくら成り立ちを知ったところで、鬼は人に仇なす人ならぬものの総称として使われることになるんだけどね――」
 烏月さんが、湯煙の中に立ち上がった。
-烏月-
「――奴のように」


白花ちゃんは主に取り憑かれた直後に正樹さんを殺めたほか、明良さんに出会うまでに何度か分霊に主導権を奪われ、人を喰らっている。そういう意味でも白花ちゃんは鬼である。


◇ラクジツ
夢の内容は10年前の封印解除事件に関する桂ちゃんの記憶である。ユメイルートをクリアしていないと、正樹さんを殺したのは桂ちゃんだとミスリードしてしまうはずだ。


◇贄の血

 女の子の足だ――と、思った。
 それを裏付けするように、膝にも届く袂の長さに気付く。
 右は鳩羽鼠に花の染め抜き、左は薄紅。青と白とのあの人とは対照的な、非対称の振り袖だった。
 それにしても、この着物は――
-桂-
「……んっ」
 思い出すなと、赤い痛み。(略)

-ノゾミ-
「それにしても――」
 滑るような動きでミカゲちゃんから身体を離したノゾミちゃんは、今度は私のおとがいに指をかけて、強引に視線を吸いつけてくる。
-ノゾミ-
「あなた、本当に忘れてしまったのね?」
-ミカゲ-
「ほんの少しも覚えてないの?」
-ノゾミ-
「せっかく思い出させてあげようとしたのに」
-ミカゲ-
「あなたは途中で目覚めてしまった」
 ……え? あの夢はこの子たちが? だとすると、この二人は、わたしの知らないわたしのことを知っている。


桂ちゃんとノゾミカゲちゃんの反応から、三人が以前に出会っていることがわかる。10年前のオハシラサマ封印解除事件の時のこと。

 赤と黒の二色の振り袖。
 左足首には金の鈴。
 赤い瞳と、色素の薄い、毛先が少し外向きにはねたようなかぶろ髪――
 並んだふたりは鏡写しのようにそっくりで。
 ただ表情だけが似ておらず、驕慢な彼女に対して気弱に眉を下げていて。
 …双子?(赤エフェクト)
 そんな何の変哲もない言葉が、わたしの心臓を驚かせた。


桂ちゃんの秘められた過去に、双子に関する何かがあったということ。ノゾミカゲちゃんが引き起こした10年前の事件のことであり、双子の兄、白花ちゃんが隠されたことでもある。

-ノゾミ-
「私はあなたを迎えにきたのよ」
-桂-
「わたしを……迎えに……?」
-ノゾミ-
「そう――あなたは、あの女の――贄の血を引く家の子だから」


あの女とは竹林の長者の娘、姫さまのこと。ノゾミちゃんが姫さまをあの女呼ばわりするのは「主様があいつのせいで封じられてしまった」という逆恨みから。

「私はミカゲ――」
-ノゾミ-
「私の妹。お父様に捨てられちゃった、可哀想な私の妹」
ミカゲちゃんの後ろに回ったノゾミちゃんが、ミカゲちゃんを押しつぶすように抱きつきながら、言葉を継いでそう言った。
-ノゾミ-
「私は妹がいるだなんて知らなかったのだけど…可哀想だから助けてあげたの。そうよね?」
-ミカゲ-
「はい、姉さま…」


ミカゲちゃんの正体のヒント。冴えている人なら「わざとらしくこんなことを言わせるからには……なにか裏があるんだろうか……? と読めるんじゃあないだろうか。
Q.ミカゲちゃんの正体は?

-ノゾミ-
「この土地には強い封印があるから、ここにいる限り、外のあやかしに嗅ぎつけられることはないけれど」
-ミカゲ-
「だから、血が絶えず今まで残っているけれど」


経観塚に結界を張ったのは役行者小角。サクヤルート◇千年の記憶:長らの集い参照。

 鈴の音を響かせて立ち上がったノゾミちゃんとミカゲちゃんが、一歩前に進み出る。
 わたしと夢の中のあの人――ユメイさんとの間に立ちはだかるように。
-ミカゲ-
「あなたは確か、10年前の」
-ノゾミ-
「それでのこのこ現れたのね?」
-ミカゲ-
「また私たちの邪魔をするの?」


「また」というからには、ノゾミカゲちゃんは以前にもユメイさんになにがしかの邪魔をされたということ。10年前の事件時、柚明さんは還ってしまった姫さまの代わりにオハシラサマになることで、ノゾミカゲちゃんの悲願である主の復活を阻止している。

-ノゾミ-
「あはははは……本当に捨て身なのね……」
-ミカゲ-
「ですが姉さま、これではさすがに……」
-ノゾミ-
「いいじゃないの、やらせてあげましょう。ここで自滅してもらえるなら、それはそれで」
-ミカゲ-
「けれど姉さま、私たちも……」


ノゾミちゃんの手綱を握るミカゲちゃんの図。

 どうしてその身を削ってまで、(わたしのことを)守ってくれているのかはわからないけれど、このままだとユメイさんが消えてしまう。


大切な家族だから?

-ノゾミ-
「駄目なら、その女だけでも助けてほしいの?」
-ミカゲ-
「見逃してほしいの?」
-ノゾミ-
「あなたのその、贄の血の流れる身体と引き換えに?」
 わたしは頷いた。
-ノゾミ-
「あら、どうしましょう」
-桂-
「お願いだから!」
-ノゾミ-
「でもね、あなたのことだけじゃなくて、個人的な恨みもあるのよ。八つ裂きにしても飽き足らないぐらいの。だから――」
-ノゾミ-
「だからやっぱり、許してあげない」


「個人的な恨み」とは、ようやっと贄の血の双子の陰陽が揃って、オハシラサマの封じを破ったのに、柚明さんがハシラの継ぎ手になって再び主を封じてしまったこと。

-烏月-
「私の名は千羽烏月。維斗の太刀を担う千羽党の鬼切り役」
-ノゾミ-
「ふうん、あなたが――」
 鈴の音も軽やかに飛び、ミカゲちゃんに並んだノゾミちゃんが、瞳の赤を瞬かせながら訊く。
-ノゾミ-
「前からそれほど経っていないのに、もう代替わりしているのね?」


ノゾミカゲちゃんは、前任の千羽党の鬼切り役は真弓さんで、烏月さんがその後任だと勘違いしているが、二人の間に明良さんが鬼切り役を務めている。

-烏月-
「人の寿命はそう長くない。それがどれほどかは知らないが、百年生きる人間は希だと憶えておくがいい」
-ノゾミ-
「知っているわ。人間のもろさなんて嫌になるほど。病にはかかるし、すぐに死んでしまうし」


人間だったころのノゾミちゃんそのものだ。生まれつき病を患っていたし、主と出会わなかったらあのまま野垂れ死んでいたことだろう。

-ノゾミ-
「だけど侮ってなどいなくてよ。その太刀の持ち主には、ずいぶんとお世話になったもの」
-ミカゲ-
「前任のお役目から受けた借りまで、あなたに返してあげたいほどに」


ミカゲちゃんたちの言う"前任のお役目"とは真弓さんのこと(真弓さんは本当は前々任だが、ノゾミカゲちゃんは前任の明良さんと面識がない)。主を復活させるまであと一歩というところで真弓さんに斬られ、自身らも10年間眠りにつく羽目になった。

-ノゾミ・ミカゲ-
「それで――」
-ミカゲ-
「あなたも私たちを封じにきたの?」
-ノゾミ-
「だとしたら、今回はやけに対応が早いのね」


今回というからには前回があるということ。おそらくは経観塚神隠し事件のことである。ノゾミカゲちゃんは、暗示で経観塚の住人を操って、ご神木を傷つけたり、何人かを餌食にして力を蓄えたりと、若杉某(若杉葛の先祖)がオハシラサマの使いの蝶に導かれて経観塚を訪れるまでやりたい放題していた。

-烏月-
「……対応と言うからには、既に何かをやらかした後ということか…」
-ノゾミ-
「あら、失言だったかしら」


 鹿之川さんは既に二人に血を吸われてお隠れに。

-ミカゲ-
「姉さま、そろそろ潮時でしょう」


ノゾミちゃんの手綱を握るミカゲちゃんの図。


◇千客万来の夜

-サクヤ-
「それであんたら、何騒いでいるんだい?」
-桂-
「それがね、サクヤさん。烏月さんがユメイさんを切るって言って――」
-サクヤ-
「あん?ユメイだって?」
-桂-
「あ、ユメイさんってこっちの――人間じゃないんだけど、悪い人じゃないんだよ」
-サクヤ-
「………」
 サクヤさんは難しい顔をして、ユメイさんをじろじろと観察している。(略)
-サクヤ-
「………」
-桂-
「………」
-サクヤ-
「……いいけどさ」
 わ、何だか知らないけど、さすがだよ。


サクヤさんの正体のヒント。その落ち着きぶりから、サクヤさんは普段から鬼の世界に接している、もしくは過去に接したことがある、ひょっとするとサクヤさん自身がそういう存在なのでは? と繋げよう。

-サクヤ-
「かーっ、これだから権力持った親方に尻尾振ってる犬ッコロは」
-烏月-
「犬はあなたのことでしょう。己を揶揄して楽しいですか」
-サクヤ-
「はっ、忘れてもらっちゃ困るねぇ。誰かさんらのおかげであたしは正真正銘の一匹狼だよ」


サクヤさんの正体のヒント。この言葉遊びの妙が麓川節。サクヤさんは60年前の千羽党の襲撃で、仲間を一人残らず失っている。やさぐれ一匹狼のサクヤさんの牙を抜いてかわいいワンちゃんにしたのは笑子さん。

 にしても一匹狼って、権力に媚びないフリーのルポライターってことを指して言ってるのかな?
 サクヤさんがしがないフリーで、しかも写真家としての方が売れてるのって、いろいろあってスポイルされちゃったせいだとか?


サクヤさんのライター業が振るわない&写真が評価されているワケ

-桂-
「えっ……じゃあ、ユメイさんは……」
-烏月-
「好きにするといい」
 部屋の入り口に陣取っているサクヤさんに、ぶつかる手前で足を止め。
-烏月-
「仮に私が切る気になっても、黙って見ている彼女じゃないだろうしね」


サクヤさんにとってユメイさんは大切な家族の一員だし、オハシラサマの役割も知っているので、いざとなれば力ずくで烏月さんを止めていただろう。また、サクヤさんが鬼切りの烏月さんを止めるほどの抑止力を持っていることが分かる。

-烏月-
「桂さん、あなたはサクヤさんの知人であり、ユメイさんのような存在が依って立つ存在であり、あなた自身が鬼と縁あるさだめの持ち主だ」


サクヤさんの正体のヒント。これはもう、サクヤさんは鬼だと言っているようなものだ。


◇鬼影

-桂-
「あ、その、えーとね。サクヤさんもお母さんの友達なんだから、そろそろお姉さんって年齢じゃないんじゃないかなーって……」
-サクヤ-
「あたしがいくつかも知らないくせに、憶測だけで人の世代を決めつけるんじゃないよ」
-サクヤ-
「小学生のお嬢さんから悠々自適の隠居爺さんまで、あたしの付き合いは幅がある方なんだけど。何なら画像添付のメール、見てみるかい?」


サクヤさんの正体のヒント。人付き合いの幅が広いということはそれ相応に長く生きているということ。サクヤさんが見た目以上に年を食っていることが予測できる。

-桂-
「あ、サクヤさんお醤油かけすぎ」
-サクヤ-
「いいだろ。あたしは塩気の利いているのが好きなんだよ。鮭ならガチガチの塩漬けが一番だね」
-桂-
「えー、あのお茶漬けにでもしないと辛いやつ?そんなんじゃ血圧上がるよ。長生きできないよ」
-サクヤ-
「残念ながら、憎まれっ子何とやら、さ。少なくともあんたよりは長生きするだろうよ」


サクヤさんの正体のヒント。サクヤさんの減らず口や軽口は全て伏線だと思って構わない。

-サクヤ-
「まさか、烏月はともかくあいつが……」
-桂-
「あいつって、ノゾミちゃんたちのこと? サクヤさん知ってるの?」
-サクヤ-
「あ……ああ、まあね。そのノゾミとミカゲってやつらは、退治されているはずなんだけど……」
-桂-
「そうなの?」
 そういえば、烏月さんに向かってそんな感じのことを言っていたかもしれない。


サクヤさんの言うあいつとは、ユメイさんのことだったのだろう。ノゾミちゃんとミカゲちゃんのことだったら「あいつら」のはずだ。ユメイさんについてあれこれ詮索されると面倒だったので、勘違いを訂正することなく話を続けた。
 ノゾミカゲちゃんは十年前に真弓さんによって退治されている。


ED3 挫北・夏の終わり

-サクヤ-
『近いうちに顔を出すよ――って、痛っ』
-桂-
「サクヤさん、ケガしてるの?大丈夫?」
-サクヤ-
『ああ、平気、平気。全然大したことないよ。腕の一本程度なら、ひと月もしないうちに生えてくるさ』
-桂-
「……生えないよ、普通」


サクヤさんの正体のヒント。観月の民の再生能力がそれほど凄いのか、それとも桂ちゃんを安心させるための強がりなのか。


◇長者の屋敷

-桂-
「わ、お金持ちのお屋敷みたい…」
-サクヤ-
「一応、経観塚の昔話に出てくる長者の末ってことになっているからね」


経観塚の伝承については葛ルート◇経観塚に伝わる昔話参照、その実際のところはサクヤルート◇千年の記憶Ⅰ~Ⅳを参照のこと。

-サクヤ-
「ご先祖が長者だっていうのは、間違いないんだけどね。来る途中、森に入るまでの間、見渡す限り田畑が広がっていただろう?」
-桂-
「うん」
-サクヤ-
「あれ、戦後の農地改革まではほとんど羽藤の持ち物だったんだよ。笑子さんがあんたぐらいの時はそうだったから、まだ最近だ」
-桂-
「ええ!? 本当!?」
 藤原氏がどうのこうのと言うよりも、わかりやすい説明だった。
-桂-
「すごいなぁ。時代が時代だったら、私もお嬢様だったりお姫様だったりしたんだ」
-サクヤ-
「ああ、お姫様だったねぇ…」


サクヤさん、姫さまのことをしんみり思い出していた。そして寿命を全うしたおばあちゃんが子供のころというのは普通「まだ最近」と言わない。


◇不法侵入?
葛ちゃんの居場所を嗅ぎあてる、サクヤさんの尋常ならざる嗅覚に注目すること。葛ちゃんが長らくお風呂に入っていなかったのを差し引いても、人間離れしている。


◇元の鞘

-桂-
「それで、奴ってケイくんのこと?もしかしてわたしのこと、ケイくんと間違えた?」
-烏月-
「ああ、あなたの言う通りだ」(略)
-烏月-
「…気配の質を見れば、奴か別人かわかるつもりだったしね」
-桂-
「つもりじゃ困るよ、烏月さん。いくら同じ名前だからって、間違えるなんてひどい」
-烏月-
「そんなことで気配まで似たりはしないものなんだけどね。いくら言霊が影響するとはいえ」
-桂-
「はぁ……」
-烏月-
「偶然なのか、奴があなたを利用したのかはわからない。だが、あなたの気配を奴のものと誤認したせいで、こうして逃げられてしまった」


双子の兄妹だから気配も似ているのだろう。


◇保護者の目


◇甘い午後のひととき

-桂-
「いいなぁ。私もお兄ちゃんかお姉ちゃんが欲しかったなぁ」


実は桂ちゃんにはお兄ちゃん(白花)もお姉ちゃん(柚明)もいたのでした。うまいな……。


◇ご挨拶


◇もう一泊


◇時間的にはもうすぐ明日


◇四枚のお札


◇叩かれた扉

-ユメイ-
「桂ちゃん、できれば隙を見て逃げて」
 下がる私と入れ替わるように、青白く透ける頬を引き締めて前に進み出る。
 すれ違いざまにわたしに触れた手の感触は、そよ風のように緩やかで、優しくて、力なくて。
 どうしてそこまでして、わたしなんかを助けようとしてくれるのかはわからないけれど。


大切な家族だから?


-ノゾミ-
「あらあら、本当にどうしたのかしら。本当にどうしましょうか」
-ノゾミ-
「ねえ、ミカゲ。何とかして桂を連れていけないかしら」
-ミカゲ-
「違います、姉さま。早くここから去りましょう」
ノゾミ
「何を弱気な――」


ノゾミちゃんの手綱を握るミカゲちゃんの図。


◇寝顔を見られて


◇指切り


◇赤い縛め

-ノゾミ-
「私は殺して食べるわよ。生きるために人を捨て、鬼と成ったぐらいだもの」
-ミカゲ-
「人であった姉さまは、今では人を糧とする」


ノゾミルートの一連の回想シーンを参照のこと。


◇閑暇な午後

-サクヤ-
「いいや。あたしは基本的に、去る者追わずの主義だからね。どうせ人間なんて、百年足らずで逝っちまうんだ」
-桂-
「うわー、サクヤさんってば達観しすぎ――」


サクヤさんの正体のヒント。多くの人を看取ってきているからこその発言だ。サクヤさんのぶっきらぼうな発言や態度は、達観というよりはやるせなさの誤魔化し、やさぐれの色合いが強いように思う。

 それにしても、戦装束だなんて――
-桂-
「わ、わ、どんな格好だろう。サクヤさんは見たことある?」
-サクヤ-
「あるけど、別に大したことないよ」


60年前に千羽党が観月の村を襲撃したとき、千羽景朋を筆頭とする鬼切り役の一群は、狩衣の戦装束を纏っていたはずだ。サクヤさんにとっては災禍の象徴みたいなものだから、それではしゃぐ桂ちゃんが面白くないのだろう。それにサクヤさんは烏月さんの仕事に何度もちょっかいを出しているので、烏月さん自身の戦装束も見飽きているのだろう。

◇剣・鏡・魂

-ノゾミ-
「でも、あなたたちに外に出られたら、また良月の中に戻るか、呪符を剥がすしかしないといけなくなるのね」
 面倒だとばかりにため息。
-ノゾミ-
「ミカゲ、傀儡に呪符を剥がさせて」
-ノゾミ-
「そうよ、そうすれば良月を持ってこさせる必要なんてなかったのに」
-ミカゲ-
「ですが姉さま――」
-ノゾミ-
「そこまで考えが至らないなんて、やっぱりあなたは不出来な子ね」
-ミカゲ-
「姉さま、呪符はこのままで。この結界の中ならば、ハシラの継ぎ手も」
-ノゾミ-
「あら、そうね。私たちの出入りできない結界の中に、あの女が現れられるはずないものね」


考え無しのノゾミちゃんに入れ知恵するミカゲちゃんの図。明らかに妹の方が一枚上手だ。

-烏月-
「ちっ、あの鏡さえ破壊できれば――」
 守勢から攻勢に転じれば、この状況を覆すことができる。
 とはいえわたしを護りながらでは、刃を交える距離まで近づくことすらおぼつかない。
-烏月-
「せめて、サクヤさんがいれば――」


サクヤさんの正体のヒント。サクヤさんが危険な傀儡を任せられる、鬼切り役である烏月さんが頼るに足る人物だということ。

 主――
ユメイさんの力によって封じられているという主。ノゾミちゃんとミカゲちゃんが、解き放とうとしている主。
-ノゾミ-
「じゃあやっぱり――」
-ミカゲ-
「分霊は諦めて――」
-ノゾミ-
「あの木の下の主さま自身を、助け出すしかないようね」
-ケイ-
「そんなことをさせるものか」(赤エフェクト)
 あ……
 何だろう、この感覚は。


10年前の事件のデジャヴ。くだんの事件では、白花ちゃんが止めようとしたのはノゾミカゲちゃんではなく、桂ちゃんだったけれど。

-ケイ-
「言っただろう、僕は君たちの主じゃない」
-ノゾミ-
「では、あなたは誰?あなたの名前は?」
-ミカゲ-
「あなたの真名は?言霊は?」
-ケイ-
「僕は――」
-ノゾミ-
「あなたは?」
-ケイ-
「僕は、ケイだ」
-ケイ-
「これは僕のために考えられた言霊。そして僕がケイである限り、お前たちの主は沈んだままだ」


ユメイルート◇浄瑠璃T参照のこと。「桂」はもともと白花ちゃんの為に考えられた名前である。


◇血海
 桂ちゃんの血の海、呪符の結界、ユメイさんがそれを無理矢理越えて決壊。


-ケイ-
「僕がどれだけのものを君たちに――君たちと主に奪われてきたかわかるかい」


最愛のゆーねぇ、父である正樹さん、修行で明け暮れた少年時代、などなど。この時点では血を分けた妹の桂ちゃんも死にかかっている。

 良月の銘を持つその鏡に視線を転じる。
-ケイ-
「君たちは逃がさない。過去の過ちを繰り返さないためにも、封じるのではなく滅却する」


過去の過ちとは、鬼切り部が良月をひと思いに破壊しないで、呪符で封印するにとどめたことだろうか。それとも自分らが良月の封印を興味本位で解いてしまったことだろうか。どちらとでもとれる。

-ノゾミ-
「……ミカゲ、怖がらせてくれたお礼をするには、今がいい機会ではなくて?」
-ノゾミ-
「このまま《器》とハシラを消して、贄の血を集めて、主さまをお助けできないものかしら」
-ミカゲ-
「残念ながら、ハシラも血を浴びて《力》を強めていますし――」
 廊下の方へと視線を移して。
-ミカゲ-
「それに、最後の観月の民も」
-ノゾミ-
「来るのね、あの不出来な子が――」


サクヤさんの正体……言っちゃった。


◇修羅

-ユメイ-
「ねぇ……」
 その時、ようやくユメイさんが顔を上げた。
 真っ直ぐにこちらを――ケイくんを見ている。
懐かしさを湛えた瞳は、わたしを見るときのものと同じで。
-ユメイ-
「烏月さんを追いかけてあげて。今の彼女は放っておいていい状態じゃないわ」
 神霊であるオハシラサマなだけに、わたしがケイくんの中にいることがわかっているんだろうか。


初対面や目上の人には礼儀を欠かさないユメイさんが、これだけ砕けた態度をとるということは、ユメイさんとケイくんは顔見知り、それも単なる知人以上の仲だということだ。「わたしを見るときのものと同じで」は、柚明さんにとって、白花ちゃんが親等的に桂ちゃんと同値なことを暗に表している。


◇鬼と鬼切り

-烏月-
「今まで問答無用を押し通していたが、最後に切る前に訊いておこう」
-烏月-
「なぜ兄さんはお前を切らずに、切ったと嘘を吐いてまでお前を助けた?」
-烏月-
「それだけでも役目に背いた大罪だというのに、何年にもわたってお前をかくまい育てた?」
-烏月-
「重大な裏切り行為だとわかっていたはずなのに、鬼切りの技をお前に授けた?」
-ケイ-
「それは――」
-ケイ-
「それは僕がそう望んだからだ。明良さんが僕に道を示してくれたから」
-ケイ-
「確かに僕の中には鬼が住み着いている。その鬼のせいで僕は罪を犯した」
-烏月-
「そうだ。お前は鬼として罪を犯した。だから鬼切り部千羽党の鬼切り役――千羽明良に命が下った」
-ケイ-
「そして僕を切りにきた明良さんは、僕の中に別の魂があることを、それが鬼――主の分霊であることを見抜いてくれた」
-ケイ-
「そして明良さんは僕にこう言ったんだ」
-ケイ-
「君が死よりも辛い修行に取り組めば、誰も殺さずにすむかもしれない。ここで楽になるか、鬼を切るための修行に取り組むかを選べ――と」
-烏月-
「それでお前は修行を選んだわけだ」
-ケイ-
「そう――鬼を倒すためにね」
 月が皓々と照っている。
 その遠くにあるものをケイくんは見つめた。
 三十八万キロの彼方にある月は、それでも大きく明るくて――
-烏月-
「それから千羽の私有地の一角で、明良さんと修行に明け暮れる日が始まったんだ」
-ケイ-
「驚いたことに、明良さんは僕のことを知っていたんだってさ。僕の母さんが千羽の人で、僕と君たちとは遠縁に当たるんだって」
-烏月-
「では、お前は――だが――」
-ケイ-
「僕の年が見かけ通りだとして、年齢の合う範囲で千羽の外に出た人はひとりしかいないと?」
-烏月-
「そうだ。わたしが知っている限り、該当する人はひとりしかいない」
-烏月-
「その人は『当代最強の鬼切り役』と呼ばれていた千羽党の誉れであり、狩るべき鬼と意気投合して役目を返上した、千羽党の恥でもある」
-ケイ-
「明良さんの師匠でもあり、十代前半の若さで鬼切り役の座に座った天才」
-烏月-
「私から見れば鬼切り部千羽党・先々代鬼切り役」
 烏月さんの瞳が、今宵の月もかくやと円く開かれた。
-烏月-
「まさか――だとするとお前は――」
-白花-
「幼少から鍛練を積みつづけなければならない千羽妙見流を、十年足らずで修めることができたのは、その人の血のおかげだろうね」


烏月さんの言う「狩るべき鬼」とはサクヤさんのこと。サクヤさんと真弓さんの馴れ初めについてはサクヤルート◇ジョーカーや「絆の記憶」参照。


◇転地療養?

-桂-
「だけど、なんでケイくんに取り付いてたりしたんだろう?」
-サクヤ-
「あんたの魂が安全な《器》に非難しようとした結果、自分のに最も近い波長の身体として選んだのが、あいつだったってことだろうね」
-桂-
「私とケイくんが――近いの?」
-サクヤ-
「そりゃあ――。ああ、そうそう、あんたら名前も一緒だからさ。いわゆる一つの言霊ってやつさね」


サクヤさんがうまいこと誤魔化した。言うまでもないけれど、桂ちゃんと白花ちゃんの波長が近いのは血を分けた双子だから。ケイくんが桂ちゃんの名前を拝借している理由についてはユメイルート◇浄瑠璃T参照のこと。

-ミカゲ-
「それに、あなた(桂)と《器》で陰陽が揃う。そうすれば、ハシラの封じを解くことができる――」
-ノゾミ-
「そう、十年前のようにね」


-ミカゲ-
「聞いたことがあります。贄の血に陰陽揃うとき、役行者の封じを崩すことができると」
-ノゾミ-
「陰陽?」
-ミカゲ-
「男女の双子です」
-ノゾミ-
「双子――」

(◇陰陽の血)


器=ケイくん、陰陽=二対のもの=男女の双子。


◇燃える磐座
 磐座(いわくら)……1.神のおわすところ 2.山中の大岩や崖

-主-
「フッ……人の身で私と戦おうとは片腹痛い。私を封じたのも鬼だった。おぬしら人の遣わした鬼切りなど、片手も使わず捻り潰したわ」


主は千年ほど前に、都から派遣された鬼部の鬼切りを返り討ちにしている。結局主を倒したのは、観月の民の長、役行者小角、一言主たち鬼だった。


◇鬼切りと鬼


全ルート共通部
千羽烏月ルート
若杉葛ルート
浅間サクヤルート
ユメイルート

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