2008年01月31日

ニューヨーク大聖堂/ネルソン・デミル

-255-
「そのためには、クラインとドイルのやることなすこと、すべて最高だという報告書をしたためてサインをしなくちゃならないがな。わかったか?うまく立ちまわって、警部の給料をもらうようにしろ。わたしは警視正に昇進だ。そうなったら情報部を抜けるとするよ。そうだな、偽装美術品捜査班あたりに志願しよう――パリやロンドンやローマに行けるからな。約束してくれ、アイオワの片田舎に行くはずのシュレーダーに会いに行くと――」
「ちょっとは落ち着いたらどうです?」

-260-
「バーク警部補、いまはどんな気分?まないたの上に首を載せた気分かしら?」
「まぁ、あなたが首を載せた場所に、おれが首を載せてはいけない理由はどこにもありませんし」

-335-
 ロバータ・スピーゲルの声が電話からきこえてきた。「わかったわ。くそったれの政治家のことは忘れて。で、ベリーニ、爆弾のことだけど――」
「わたしのことはジョーと」
「どうやら爆発物処理班に、くそったれな爆弾を見つけだして爆破装置を解除するための時間をほんのすこししかあたえてくれないみたいね、警部」
「警視だ!」
「いいから話をききなさい――」
「そっちが話をきくんだ、スピーゲル――そんなにいうなら、いっそ警察犬といっしょに床下を這いずって、その鼻で爆弾を嗅ぎつけてくればいい。ブランディとサリーとロビーの警察犬トリオだ」そういってベリーニはバークとラングリーに顔をむけ、勝ち誇った表情を見せてにやりと笑った。
 ラングリーは顔をしかめた。

-337-
「てっきりあの男は、貧乏くじを引かされるものだと思ったよ」
「いいえ、ちょっと情報が遅れているみたいね……こっちでは、いろいろ考えなおしたのよ。なにが起ころうとも、シュレーダーには英雄になってもらう。あの人はマスコミにいっぱい、つて・・があるから」
「では、だれが貧乏くじを引かされる?」
「わかってるかしら?もうだれが勝って、だれが負けるとかいう問題じゃないの――いま残っているのは広報上の問題だけで――」
「で、だれが貧乏くじを引かされると?」
 スピーゲルは答えた「あなたよ。」

-338-
「救出作戦だよ。攻撃ではなく、救出作戦といわないといけないね、ロバータ」

-339-
「君はやるべきことをやりたまえ」ラングリーはいい、作り笑いを見せた。「どうかな、わたしと立場を交替して、スピーゲルの手を握っていたくはないか?」
「遠慮しておきます」

-341-
 バークはベリーニにたずねた。「攻撃がおこなわれているあいだ、いちばん安全な場所はどこかな?」
 ベリーニはちょっと考えてから答えた。「ロサンジェルスだな」

-361-
 バークが通路を歩いてきた。顔をグリースペイントで黒く塗り、オートマティックの拳銃の銃身には、大きなサイレンサーを装着している。
 ベリーニはバークを見つめた。「どうも、ここはロサンジェルスじゃないみたいだな?」

-433-
「ありがとうございます。では、またすぐにこちらから連絡します――」
「よろしい」
 電話が切れる”かちり”という音を確認してから、バークは警察の交換手に話しかけた。「いいか、二度とあのくそ男の電話をこっちに繋ぐな」

-436-
「ひどい連中だな、拍手喝采してもらえるのは、いつだって・・・・・ 悪人の側と決まっているんだ」リーダーはそういうと、ライフルの安全装置を解除して窓に近づき、上に顔を向けた。「おい、キング・コング!こっちに引きかえしてこい!」

-437-
「どこから撃ってきたんだ……聖歌隊席か?」そういって、撃たれた二人に目をむける。二人とも、正確に目の間を打ち抜かれて絶命していた。「なにも見えなかった……なにもきこえなかったぞ」
 生き残った男のひとりがいった。「死んだふたりも、おなじことをいってるでしょうよ」

-441-
「週末だけのコマンド部隊連中が、聖歌隊席の制圧に失敗したみたいですね」

-445-
「あのふたりのアイルランド人があんなに必死になるなんて、動機はなんなんですかね?」緊急出動隊員のひとりが疑問を口にした。「政治ですか?いや、そりゃおれだって民主党員ですけど、そこまで・・・・政治に熱をあげたりはしません。そうでしょう?」

-505-
「こういう話があるの――わたしたちの仲間内では、爆弾処理の間に天使が肩に舞いおりてきたとか、その手の話がよく出るのよ――知ってた?でもね、それどころじゃなかったの――わたしのところに、天使の大群が舞いおりてきたのよ」

-525-
「あなたを吊し首にしようというのじゃない。わたしは八方手をつくして――」
 バークは相手の言葉をさえぎった。「偽装美術品捜査班だ。明日の今ごろパリにいられるなら、異動もわるくはないね」
 スピーゲルは笑った。「偽装美術品捜査班?あなたが美術品のなにを知っていると?」
「自分が好きなものくらいわかっているさ」



*ニューヨーク大聖堂/ネルソン・デミル 白石 朗 (翻訳)

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