2009年11月27日

アカイイトドラマCD「京洛降魔」考察・解説

 通常版ドラマCDが後追いファンに行き渡るにつれて、ノーカット台本難民の「オチがよう分からん!」「鈴鹿さんって結局誰だったの?」「あの鬼、ずいぶん騒いだ割には弱くね?」という声が聞こえてくるようになったので、いっちょ解説でも書いてみんとす。

Q.あのでかい鬼は何だったの? 弱すぎじゃない?
A.宇治の平等院に封印されていた、中世三大妖怪の一人、大嶽丸の分霊。なぜ烏月さんがあっさり倒せたのかは後述。

Q.鈴鹿さんって誰だったの?
A.鈴鹿山に棲んでいた鬼女。平安時代の鬼切り役である坂上田村麻呂の妻。我が背の君と宝剣が要になった封印が破れてしまい、宿敵の大嶽丸が宝剣を取り戻そうとしていたので、それを阻止すべく現代に復活した。

「憑いているのね。立烏帽子を被った、男装(おとこなり)の」
「祓いましょう。私がこの手で祓いましょう。かの鬼切りの将が妻(め)として、代わりに祓い鎮めましょう」


 立烏帽子は鈴鹿御前の別称でもある。

「鈴鹿の山におりましたので、斯様な名前で呼ばれていました」
「ふんっ、鈴鹿の山に住む鬼ね」


 鈴鹿さん……鈴鹿御前の設定は文献によってまちまちで、話によっては盗賊の女首領だったり、大嶽丸を討つために天から下った天女だったり、天竺第四天魔王の娘で、本当は大嶽丸に嫁入りするはずだったのが坂上田村麻呂に一目惚れして大嶽丸を切るのに協力したり、はては東北の鬼と結託して日本転覆を企んで切られたりするが、とりあえずアカイイト世界では、鈴鹿の山に棲んでいた鬼で、坂上田村麻呂が大嶽丸を討つのに協力し、その後田村麻呂の妻になったという設定らしい。

Q.三振りの宝剣って何のこったい。
A.鈴鹿さんの愛刀だった大通連(だいつうれん)、小通連(しょうつうれん)、釼明(じんみょう)のこと。もともとは大嶽丸の刀で、野郎の《力》が込められている。大嶽丸がこのうちの一本でも持っている限り、どんな致命傷を負っても死ぬことはない。三振りのうち京都の結界に利用されていた一振りを奪われたせいで、分霊程度が不死身の鬼に変質した。


京洛降魔
桂、落語(゚д゚)ウマー。
秋晴れのキョウ、旅するコト。
秋晴れの今日or京、旅する古都or事。


「わかりました。そちらは現状の対処で構いませんから、宇治の宝蔵を確認しておいてください。二度あることは三度あると言いますから、念を入れておきましょう」


 葛ちゃんが真っ先に宇治の平等院を調べろと指示したのは、凶悪な鬼であり、以前も退治したのに復活した(鈴鹿さんたちが三振りの宝剣のうち二振りしか奪えなかったから、らしい)大嶽丸が再び甦っていないかどうか早急に確認する必要があったから。


 台本では「眠らない子は育てない」の前に「身軽な装備のお嬢さん」があったが、「基本はやっぱり奈良・京都」にまとめられている。


「そうじゃなくて、呼び鈴を……。その、ここアパートですし」
「あたしは古い人間だから、こっちのほうが馴染むんだよ」


 『花影抄』は御大が速攻で設定を忘れていたのか、渡瀬優がドラマCDを聞いてなかったのか。


「そして、今回綻びたのは、偉大な鬼切り役のもの。はるか遠くの陸奥国(みちのくに)、七振りの宝剣を埋め、七つの社を築き、七星の陣を持って鬼を封じた毘沙門天の化身の墓です。死してなお護国の礎となるべく、宝剣を佩いた(はいた)立ち姿のまま葬られ」
「有事の際には鳴動して知らせるという、将軍塚が……」


 前述した通り、偉大な鬼切り役とは坂上田村麻呂のこと。アカイイトの設定では、陸奥国にも鬼を切るために赴いたことになっているようだ。毘沙門天といえば、山科の毘沙門堂は田村麻呂建立だとか。ちなみに立ち姿のままの埋葬は天皇直々のお達しによる。


頼光(らいこう)ゆかりの四家(ノーカット台本のみ)
 おそらく源頼光の家来で共に鬼を退治した頼光四天王(渡辺綱・坂田金時・卜部季武・碓井貞光)の家系のこと。アカイイトで何度か名前が出てくる渡辺党はこのうちの一家。有力党なんだな。


熊と変形月星は、北斗学院付属の校章
 『アカイイト 設定解説ファンブック』でこの校章が拝める。おそらく北斗学院付属は千羽の息がかかった(?)学校なのだろう。千羽妙見流の妙見とは北斗七星を神格化した妙見菩薩のことである。熊はおおぐま座(北斗七星を含んでいる)。変形月星ってのはパキスタンの国旗みたいなやつね。


 ノーカット台本には「清水の舞台から」の後に幻のトラック「京都は盆地で四方山(恒例の蘊蓄話)」が載っている("(恒例の蘊蓄話)"まで含めて章題ね)。オチが性急だと言われるのは、ここの蘊蓄が時間の関係上丸々削られているせいじゃないかと思う。

「だけど義経が赤ちゃんの時って、弁慶全然関係ないよね?何で清水寺に、弁慶の鉄下駄とか、銀杖があったんだろう?」
「そりゃあ関係あるからですよ。義経,弁慶と戦って主従関係結ぶじゃないですか」
「『京の五条の橋の上ー♪』ってやつだよね」
「ところが実際に戦ったのは、清水寺の舞台だったのですよ」
「『義経記』によれば、ですけどね」
「えーっ!? 橋ならともかく清水の舞台で? 弁慶が振るう薙刀を、ひらりひらりと身軽によけて、怒り心頭・渾身の一撃を、欄干に飛び乗ってかわしたりするのに?」
「藤原成道という大納言は、蹴鞠をしながらその欄干を、渡り歩いたとのことですよ、武術の何たるかを叩き込まれた義経なら、その程度は楽勝です」

(ノーカット台本のみ)


 とりあえずここだけでも読んでおくべし。ほかにも義経の双子の話とか面白いんだけどな~。


「加えて、宇治から結構な大物が逃げたかも、なんて報告が入りました。大頭(だいず)は残ってましたから、最悪でも本来の何千分のいくつか程度の分霊だろう、というのが不幸中の幸いというか」
「宇治の…?おいおい、勘弁しとくれよ……」
「サクヤさん、宇治から逃げた鬼は、そんなに?」
「何千分かの分霊なら烏月で充分だろうさ。だけど、あれを手に入れられたら……」
「あれ?」
「しっかりしとくれ、鬼切り頭。将軍塚の要が何か、知らないわけじゃないだろう」
「――っ!!」


 大頭……大嶽丸の首。三大妖怪の残りの二人、酒天童子の首、玉藻前の亡骸と一緒に宇治の平等院に封印されている。将軍塚……倒壊した坂上田村麻呂の墓所。将軍塚の要は大嶽丸の不死身の力が封印された三振りの宝剣のうちの一本だから、これを奴の分霊に奪われたらまずいんじゃないかという話。


「わかりました。緊急措置として、適当な物で塚を立て直してください。はい、長持ちしなくていいですから、とはいえ、代わりになるようなのは……。そうですね、安綱を使いましょう。ええ、上野にあるやつではなく、桓武崩御の年の」


 現在上野の東京国立博物館に展示されている安綱は、大同元年(806)頃に制作された、頼光が酒呑童子を切った童子切安綱とは別物らしい。

「仕方がないので安綱を使いましょう。ええ、上野にあるやつではなく、桓武崩御の年の。いちおう同格の鬼王を切ってますから呪物としても――え? 渡辺党がうるさい? ああ、欲しがってましたしねぇ……」

(ノーカット台本)


 同格の鬼王とは酒呑童子のこと。大嶽丸と酒呑童子と玉藻前で「三大妖怪」と言うとか言わないとか。渡辺党が安綱を欲しがっているのは、渡辺党の遠祖である渡辺綱と縁が深い頼光が使っていた刀だから、かな。


オン・バサラ・タラマ・キリク・ソワカ
 千手観音の真言。オン・~~~・ソワカはサンスクリット語で、「私は××様に帰依します。(だから)~~~を成就させて下さい」という意味だとか。なぜ鈴鹿さんが千手観音の真言を使うかというと、我が背の君の坂上田村麻呂が千手観音の力を借りて鬼を退治していたのに肖っているのだろう。田村麻呂も鬼を切るときに「オン・バサラ・タラマ・キリク・ソワカ」と唱えていたんだろうね。


じゅうぶん級
重文級。重要文化財級。


「くだんの鬼は自分の力を三振りの宝剣に込めてましてね。いわば外付けの命みたいなもので、それを持ってる限り倒れないんですよ」
「故に私たちは策を弄してそれを奪い、鬼の首を取ったのです」
「その後、宝剣のうち一振りは、封じの要として再利用されていましたが、現在は鬼の手の中に。一振りは元より行方知れず。もう一振りはどこかに封じられた、ということだけ伝わっていたんですけど……」
「私はそこを知っています」
「それで、そのもう一振りってのはどこにあるんだい?」
「音羽山清水寺――我が背の君が開いた寺の、十一面千住観音像の中に」


 大嶽丸は絶世の美女である鈴鹿さんに激しく求愛していたが、にべもなく突っぱねられていた。鈴鹿さんは大嶽丸の恋心に付け入り、「坂上田村麻呂という人間が私の首を狙っている。身を守るために貴方の宝剣を貸してくれませんか」と嘘八百を並べて、大嶽丸の《力》の源である宝剣を二振り奪うことに成功したのだった。もう一振りは大嶽丸が叔父に貸していたとか。


「いや、あたし一人じゃ無理だった。元気のいい鬼切り役が張り切ってて……あ、吹っ飛ばされた」(略)
「渡辺党の鬼切り役は、腕ごと奪おうとしてたみたいだけどね、結果はご覧の通りなわけさ」


 この鬼切り役は渡辺威(あきら)さん。『コクジョウ』の登場人物である渡辺丞(たすく)さんの孫。

◇渡辺党
 千羽党と同じく現身を持つ鬼を切ることに特化した剣術を伝えている。
 本家の嫡男には一字名をつけるしきたりがある。
 現在の鬼切り役は渡辺威(あきら)。千羽党の先代鬼切り役・千羽明良とは年も近くライバル兼任の親友だった。

(アカイイト用語辞典)


「コクジョウ」「アカジル」「wakasugi.orz」って何?

「……さーて、早速お出ましだ。はははっ、渡辺党の鬼切り役、ずいぶん張り切ってるじゃないかい。ああいうところは爺さんの丞にそっくりだね」

(ノーカット台本のみ)


 口振りからすると丞さんには好感を持っているらしい。

「渡辺党の鬼切り役は、腕ごと奪おうとしてたみたいだけどね、結果はご覧の通りなわけさ」
「仕方ありませんよ。羅城門の鬼ならいざしらず」


 九条の羅城門に棲み着き、通りがかる人を喰らっていた茨木童子という鬼のこと。伝承によって細部は違うが、渡辺綱(渡辺党の大元)に片腕を切り落とされる。酒呑童子ら三大妖怪と比べると格が落ちる鬼なのでいざ知らずと。


「鈴鹿さん! 今さらなんですけど、本当に力を打ち消したりできるんですか?」
「もしできないとか言われたらどうするんだい」
「それこそ忠明のように、飛び降りて逃げるしかないでしょう」


 高校の古典の授業でお馴染み、宇治拾遺物語『検非違使忠明』で、ゴロツキの群れから逃げるために清水の舞台からパラシュートダイブした忠明さん。


「降魔の剣」の解説
 アカイイトの世界観では、戦いにおける天の時、地の利、人の和と言霊の力は、時に如何ともし難い戦力差をひっくり返すほどの重要なファクターである。主と対決したときのサクヤさんには、天の利(羅睺)と人の利(贄の血を引く娘→桂、娘を護る羅睺に縁ある者→サクヤ、蛇神→主)があったが、今回の烏月さんには地の利と人の利があった。

「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず――と、唐渡りの書にも記されておれば、こちらは十分に用意をさせてもらったぞ」
「観月の女神は天に在す機織り女。おぬしを服した武葉槌も文を織る神であったな」
「加えて今夜は満月。我らは最大の加護を得ることができる」
「地の利は元よりこちらにある。それに天の利、人の利が加わった今、おぬしに勝ちの目はあるまい」

(◇千年の記憶Ⅲ 黙示録)


 観月の民の連合軍と主の闘いでは葦原中国の平定が、サクヤさんと主との対決では須佐之男命の八岐大蛇退治が準えられていたように、今回は義経と弁慶の決闘の構図が再現されていた。舞台はそのまま(義経と清水の舞台の蘊蓄が伏線)で、弁慶は分霊(力自慢の巨躯)である。そして九郎義経は烏月さんだが、烏月さんはこの人と何かと共通点がある。まず姓の烏の字がからす→crow→クロウで繋がっている(この洒落は本編でサクヤさんが言っていたような)。加えて、あまり知られていない設定だが、維斗は流れ星を打ち鍛えた刀である。同人誌の『いつかのひかり』にぽつりと書いてあった。本編では浅間の長が「天狗の太刀」と言っていた記憶がある。昔の人は、流れ星を天狗が燃えるほどの速さで空を駆けているのだと考えていたそうだ。

楓「遠い遠いご先祖様たちはね。空を自由に駆けて、流れ星だって言われてたのよ。私もそんな風に言われたい」

(青空がっこのせんせい君。)


 烏月さんと義経は共に天狗と縁がある。また、文献によっては義経は決闘時に女装をしている。義経が女性の創作物もある。
 サクヤさんに須佐之男命の蛇神殺しの《力》が発現したように、烏月さんにも義経の天狗譲りの《力》が宿り、大嶽丸の分霊を圧倒したのだった。弁慶の立ち位置にある分霊には端から勝ちの目がなかった。

-葵-
「それはこの儀式が、見立てだからに尽きるわね」
-綾代-
「……見立て?」
-葵-
「概念がわかりやすいのは、やっぱり呪いの藁人形とかそのへんかしら?」
「藁人形は人の形をしている。だからそれに五寸釘を打ち込めば、藁人形に似ている人にも五寸釘を打ち込んだ影響が出るはずだ――」
「専門用語では類感呪術って言うんだけど、神社でやるお神楽なんかにもそういった面があるのね」
「神話や伝説を舞楽にして演じることで、演者に神を降ろしたり、神話自体を顕現させたりするわけ」
「つまり、神代の再演――」

(『アオイシロ』)


2008/05/24
 アオイシロにわかりやすい解説があったので引用。
2009/11/27
 東方風神録をプレイしていたら唐突に思いだしたことがあったので加筆。 
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tags: アカイイト 考察 

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