2008年04月11日

サクヤさんの「半端者」と「間に合わない」

“半端者”

-サクヤ-
「何を期待していたのかは知らないけど、あたしは観月としては半端者だからね」
-桂-
「そうなの?」
-サクヤ-
「でもまぁ、怖がられないで良かったよ」

(◇リカオーン)


-千羽-
「……サクヤさん、先に行きます」
「望月の夜の観月の足なら、楽に追いつくはずですから」
-サクヤ-
「知らないのかい。あたしは半端者だから、四本足にはなれないんだよ」

(◇封じの綻び)


-葛-
「人並み以上ということは、人とは違うということですから、何かと苦労が絶えないんですよね」
-サクヤ-
「何事も普通が一番さ。出来ることなら、あたしも十人並みになりたいよ」

(◇朝の仇を昼に討て)


 この自嘲まじりの自称が表していることは二つ。一つは、姫さまや浅間の村の仲間といった「たいせつなひと」が命を落とさんとしている時に、何もすることが出来なかった自分に対する不信や嫌悪である。二つ目は、自分が人にあらざる鬼であること、特異な生まれのせいで仲間内でも疎外感を感じていたこと、人と同じ時間を歩めないせいで何度も一人残されてきたこと、つまりは「人と同じでない」ことに対するコンプレックスである。これには笑子さんや真弓さんの死が強く影響している。

“間に合わない”

-サクヤ-
「何とか……ギリギリ間に合ったねぇ……」
-桂-
「……サクヤ……さん?」
-サクヤ-
「また間に合わないかと思ったよ。まったく、心臓に悪いことさせるんじゃないよ」


-桂-
「だから、放して」
-サクヤ-
「ばか言ってるんじゃないよ!」
 右の手首に痛みが走った。
-サクヤ-
「せっかくこうして間に合ったのに、なんでそんなことしなくちゃならないのさ」

(◇命繋ぐ手)


-ノゾミ-
「でも、本当にまた会えて嬉しいわ」
-サクヤ-
「こっちは嬉しくも何ともないよ。あんたらは、この世から消え失せたものとばかり思ってたんだ。それを今さらのこのこと……っ!」
-ノゾミ-
「あら?あなたが今さらだなんて言うの?」
-ミカゲ-
「間に合わなかったあなたが言うの?」
-ノゾミ-
「今だって遅かったものね。この――」
-ミカゲ
「代わりのハシラが来なければ、間に合ったのかは怪しいところ」


-オハシラサマ-
「それではサクヤさん。桂ちゃんのこと、よろしくお願いします」
-サクヤ-
「いや、こっちこそ助かったよ。あいつらの言うとおり、また間に合わないところだった」

(◇シシャ)


 サクヤさんの「大切な人がいなくなってしまう」ことに対する病的なまでの恐れがひしひしと伝わってくる。その長き人生で、何人もの大切な人を不条理にも奪われ(姫さま、観月の仲間、正樹、白花、ユメイ)、多くの人の死を看取ってきた(笑子さん、真弓さん)彼女の心がどれほど傷ついているか、察するに余りある。

 かちかちと歯を鳴らすわたしの隣で、ぎりぎりと歯を鳴らす音が聞こえた。
 瞳にきんの光を灯して、サクヤさんはご神木を睨みつけている。
-サクヤ-
「……あたしはまた、間に合わなかったのか」
 ご神木からすでに事切れているのだろう男の子に目を落として、握った拳を震わせた。
 伏せた顔から落ちた何かが――
 血溜まりに浮いた月を揺らした。

(◇赤い鬼神)



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