2008年05月05日

弱気な死人/ドナルド・E・ウェストレイク

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 何より困るのは、世の中が年じゅうころころ変わることだ。あまりにも早くて、おれたちみたいなしがない夫婦はついていけない。まして成功なんて無理な話だ。きょうはビデオだったのが、あしたはDVD。きょうの大商い株が、あしたは会社更生法の厄介になる。きょうのドット・コム企業が、あしたは爆発寸前(ドット・ボム)だ。

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 ゲレラでは、路上試験の試験官は、年をとって使い物にならなくなった警察官がつとめるらしい。おれの担当は茶色の制服に包まれた古びた革みたいなじいさんだった。気が短いのは、輝く入れ歯のおさまり具合がよほど悪いか、皮革用の石けんで手入れをしてから日がたっているからだろう。

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 妻はおれを見てこう言った。「すごい早業ね」
 ああ、なんてきれいなんだ。一秒だって離れたくない。「いやちがうな」妻のもとへ歩み寄る。「早業じゃないさ。今からたっぷり、たっぷり時間をかける」

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 マンフレードとルイスと片腕のルイスとホセとペドロとちびペドロ

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「ローラとおれは、ふたり合わせてひとつのズボンなんだ。片足だけじゃだれの役にも立たない」

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 遠慮しておくよ。もう蛇の口にいるも当然だ。

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 すっぽんぽんのずぶ濡れでここにいるさ。

-172-
 つづいてルスが引きつった笑顔で現れた。木綿の大袋みたいな白い寝巻をまとっている。入院するか、おばあちゃんの家に泊まるかのために持っているとしか思えない代物だ。

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 見つかるといいわねとルスが言う。いきなり訪ねてきたことなんて気にしてないわ、鉈を持っていつでも寄ってちょうだい、今度はもっとゆっくりしてってね、農場の犬とか鶏によろしく……いつまでぐずぐずしてるんだ。

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「そいつはいい」「そんなことができるんですか」

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「こう聞いたことがあります」カプランは薄笑いを浮かべて言った。「この国では郵便局のことを手紙で自慢するものじゃないってね」

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 ドゥルセがおれに微笑みかけた。「だから言ったでしょう、おもしろい話が聞けるって」
「たしかに」おれは言った。「あなたのおっしゃったとおりでした」

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 手なんか出したくなかった。何も出したくなかった。情けない。なぜおれはいつまで経ってもスペイン語をまともに話せないんだろう?なぜこのあんぽんたん、、、、、、のろくでなし野郎のうち、ひとりぐらい英語が話せないんだろう?なぜそもそも、この世にことばがいくつもあるんだろう?なぜ話し合って、わかり合って、みんな兄弟になれないんだろう?
 無理だ。血の気の多いいとこにしかなれない。

-295-
 このコンクリートの地下空間は十台以上の車を収容できそうだが、停まっているのは五台だけで、中には小型の戦車みたいな代物もあった。世に言う装甲人員輸送車ってやつだ。こそ泥が核爆弾を持っていた場合に備えるつもりなんだろう。

-334-
「~~~だったらなぜ電話を解約したんだ?」
「二、三シアパ節約したかったんじゃないのか」
「十二億シアパ持ってるんだぞ」
「それもそうだな」


弱気な死体/ドナルド・E・ウェストレイク 訳:越前 敏弥

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