2008年06月06日

ガンスリンガー 暗黒の塔Ⅰ スティーヴン・キング

The Dark Tower Ⅰ:The Gunslinger / Steven King
池央耿訳

-15-
 黒衣の男は飄然と砂漠の彼方に立ち去った。ガンスリンガーはその後を追った。

-15-
時代は移って住む人は絶え果てた。

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 彼は長年ヘフの行を積んで第五の階梯に達した。第七、ないし、第八の階梯に至れば渇きを覚えることもなく、自身の身体が脱水症状に向かうありさまを離れたとことろから冷静に見つめ、その識見が必要を認めた場合にのみ、五臓の奥の暗い襞や窪みを潤すこともできたろう。しかし、彼はまだそこまでは達していない。

-17-
 デヴル・グラス 曰く「とっとと失せろ」「終わりは近い」あるいは「ジョウの店で食事しろ」

-20-
 ハンセン病者や狂人ばかり

-20-
 中の一人はキリストに渡すようにといってステンレス製のシルヴァのコンパスをガンスリンガーに託した。彼は真顔でそれを受け取った。キリストに出会ったら進呈する気だが、その望みはまずあるまい。

-21-
 ブラウン ゾルタン 「マメ、マメ、歌の種」「マメ食ってブウ」「お前も、馬も、アホウ、アホウ」

-26-
「お前、あの世を信じるか?」ガンスリンガーはブラウンがトウモロコシを皿に盛る手元を眺めながら尋ねた。
 ブラウンはうなずいた。「今こうやってる、これがあの世なんじゃあねえか」

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 プライスタウン タルの町

-30-
 ガンスリンガーは薄暮の空に仄に映ずる町の灯を標に道を急いだ。行くほどに、ホンキートンク・ピアノが奏でる<ヘイ・ジュード>の旋律が異様なまでにはっきりと聞こえてきた。

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 トウモロコシの皮を巻いたコーンシャック・タバコ

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「この穀潰しが! お前、いつから自分の姉貴と寝てやがるんだ、チャーリー? 糞っ垂れ!」

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<ヘイ・ジュード> 「ウォッチ・ミー」の勝負

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 ハイ・スピーチ 「金貨を剛力願えぬか、ガンスリンガー。一枚なりと。思し召しに」

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 草を食む男(ウィード・イーター)

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 女の暗黒の胎内に埋葬虫(グレイブ・ビートル)が巣くっていたとしても恐れることはない。

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「神の祟りよ」
 ガンスリンガーは言った。「俺は神なんぞ、会ったこともない」

-46-
「人でなしばっかりよ」
「騒ぎたくなるのも無理はない。人が一人死んだ。自分たちはまだ生きている」

-48-
 男は碧眼だった。

-53-
 世界は継ぎ目が剥がれたように崩壊した。その中心には、膠の役割を果たして秩序と統一を保つ何もない。アリスは海を見たことがない。障害、海を知らずに終わる運命である。

-57-
「この世もいよいよ終わりに近いんじゃあねえかね、旦那。聖書にも書いてあるだろうが。子供は親の言うことを聞かなくなる。疫病が流行って大勢人が死ぬ」

-62-
 理由がなんであれ、タルの町ではバーが休みなら安息日だった。

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<偽り者――インターローパー>
「蛇の姿でにたにた笑いながら、体をくねらせてイヴに這い寄ったのがこの偽り者です。モーゼが山上にいる間に、イスラエルの子らの中に紛れ込み、金で偶像や子牛を造って淫らに、邪に崇拝するように命じた、あの偽り者です」
「偽り者!アハズ王が苦しみのうちに死のうとしているとき、偽り者はイゼベルと二人して露台から、犬どもが王の生血を貪り吸うありさまを、笑って眺めていたのです。兄弟姉妹たち、偽り者に心を許してはなりません」

-71-
 アリーは溜め息を吐いた。(略)「教会の裏手の丘の、庵室みたいな小屋にいるわ。本当の牧師さんが余所へ移るまで暮らしていたところ。これでどう?満足した?」
「いいや、まだだ」ガンスリンガーはアリーにのしかかった。

-72-
 アリーとはこの後たった一度だけ顔を合わせることになるのだが、それがこの世の別れだった。

-83-
「悪魔!悪魔!地獄の使者!嬰児殺し!けだもの!」

-88-
 自分の性格を考えると、当然ながら、またぞろコートを思い出した。コートが今どこでどうしているか彼は知らない。時代は変わった。

-89-
 スペインの雨は野原に降りしきる

-93-
 少年 あどけない 髪は真っ白 

-95-
「お前、誰だ?」「ジョン・チェインバーズ。ジェイクでいいよ」
 育ちが良いと見えて、ととのった顔つき 年の頃九つといったところ


-100-
「海の中に女神の像?」
「そうだよ。冠をかぶって、松明を持ってる女神だよ」
「お前、作り話をしているのか?」
「うん、そうかもしれない」

-101-
 世の中には手籠めということがある。手籠め、人殺し、その他ありとあらゆる非道の行為はすべてそれを犯す者の希求に発している。すなわちそれは究極の真理を求め、伝説の神秘を究め、幻の聖杯を尋ねる行いであり、暗黒の塔に至る道程である。そうなのだ。この広い世界のどこかに、暗黒の塔は雲に聳えて建っている。

-102-
 グレタ・ショー夫人

-105-
「わたくしは神に仕える者です。そこを通して下さい。悔い改めのお祈りを……」

-105-
 どこかのラジオからロックグループ<キッス>の歌が流れている。
 悪魔のドクター・ラブだっけ。


-108-
 この場所と時代を考えれば、ポンプは真実の愛と同じく異郷のものと言わなくてはならない。

-109-
 コート アイリーン 未完の魔術師マーテン カスバート ポール ジョナス老人 窓辺の美女スーザン

-110-
 時は移って世界は容赦なく変わった。

-111-
「さる場所って?」
「ある塔を訪ねるんだ」

-116-
「俺は大丈夫だ」ガンスリンガーはジェイクを抱き締めた。彼は胸に押しつけて来る少年の熱気と、肋をまさぐる乾いた手を意識した。後に振り返ってガンスリンガーは、自分がジェイクに親愛の情を抱くようになったのはまさにこの時であることに思い至った。言うまでもなく、これもまた黒衣の男の謀に違いなかった。

-120-
 あの神父、今にして思うと二人はどこかで繋がっている 腹違いの兄弟だったかもしれない マーテンは魔術師 マーリンみたいな 「マーリンとアーサー王と円卓の騎士……」ジェイクは夢見るように言った。

-121-
 いつも笑っていたカスバート 彼は笑って息を引き取った 絶えて笑顔を魅せたことのないコート

-122-
 隼は石弓を持った少年の伝説に因んでデイヴィッドと名付けられた。
 母ゲイブリエル

-123-
「もたもたしやあがって」「お前らが逆立ちしても追っつかない先達が身を挺して築き上げた文明社会の言葉で不始末を詫びてみろ、このろくでなしめが」

-124-
「無念なことです」ややあって、カスバートは弾む息を抑えながら神妙に言った。「私はいつの日かその銃を受け継ぐべき父の顔を忘れました」

-128-
 屋敷中に六種類だけ残った電気器具の一つである大きな電熱器

-129-
 頭領 ファースン

-129-
「頭領が人のために何をするかは訊かぬことだ……」衛兵が期するところありげに言った。
「……こっちは頭領のために何ができるか考えろと言うのだな」

-132-
 カスバートの目にはガンスリンガーの先見の明がある。

-133-
「あいつら、嘘吐きだよ。蛇みたいなやつらだよ」

-134-
 カスバートやウィーラーの倅

-135-
 オイディプス王の話

-136-
 父と子はいずれ別れる時が来る。

-140-
「俺は父親の顔を忘れたことがない。生涯を通してただの一度もだ」(ハックス)

-141-
 頭領の隠然たる勢力はなお十年衰えることがなかった。その間にローランドはひとかどの拳銃使い(ガンスリンガー)となり、父親は亡くなった。ローランドは母殺しの罪を犯した。時は移り、世界は変わった。

-144-
 物事は繰り返し同じ道を辿る。欲求は果てしなく、道は限りない。行き着く先は常に同じ、殺戮の場である。
 もし例外があるとしたら、それはただ一つ、暗黒の塔に至る道であろう。

-145-
 ジェイクは神殿を発見した。そのために危うく命を落とすところだった。

-147-
 官能と行為とは最も疎遠な親戚である。

-148-
 スーザンが今、彼の目の前で死にかけている。 馬喰の娘 燃えさかる炎 二人の村人に両脇から押さえつけられ、錆びついた鉄の首輪を嵌められて身動きもならない
<ヘイ・ジュード><イーズ・オン・ダウン・ザ・ロード><バンベリー・クロスへの百リーグ>

-151-
 サキアバスの霊

-155-
 哲学者の石 メスカリン LSD

-158-
 ガラス玉に金属片を封じ込めた飾り物

-159-
 乳房はジャスミンと薔薇とスイカズラの芳香だった。

-161-
 三。これはそなたの運命の数字。
 三?
 神秘の数字、三。三は真言の要。

-163-
 マーテンはもはやこの世の者ではない。黒衣の男が魂を食んだ。

-164-
 どうとも勝手にしやあがれ。売女めが。
 アイリーン

-165-
「いや、何でもない」ガンスリンガーは言った。「ちょっと疲れただけだ。えらい目に遭ったぜ」
「遭ったぜ」ってローランド…

-170-
「暗黒の塔は、何と言うか、その……力の網の目の中心だ。時の流れを支配していると言ってもいい」
「何のことだかさっぱりわからないよ」
「正直、俺にもわからない。ただ、何かが起こっているのだな。そいつは俺の時間にかかわる話だ。俺が育ったところでは、みんな口を開けば、”時が移って世界は変わった”と言った。それが、今では時間の流れがもっと速い。何かが起きているんだ」

-171-
「そこは、きれいなとこ?その……前にいた土地は」
「それはもう、何とも言えないぜ」

-171-
「お袋がよく言っていたよ。本当に美しいのは自然の秩序、それに、愛と光……」
 ジェイクは生返事をした。

-171-
 百に近い石造りの城から成る<セントラル・パレス> ローランドがこの城郭を後にしてから十二年になる 今から十二年前のその時、すでに城壁は崩れ落ち、庭園には雑草が一面にはびこっていた 蝙蝠 燕ども 苔や黴のじめじめした臭気 スロー・ミュータント

-172-
「戦争があったの?」ジェイクが尋ねた。
「戦争以上だ」ガンスリンガーは小さくなったタバコを谷底へ投げ捨てた。「革命だよ。俺たちは小競り合いではいつも勝った。ところが、終わってみたら闘いには負けていたんだ。勝者なき戦いというやつだ。勝ったやつがいたとすれば、ごみ浚いか、残飯あさりぐらいのものだ。あれから何年かは上がりも相当あったろうぜ」 

-175-
 ランドルフ ジェイミー・ドゥ・カリー

-177-
 ジェイクは愕然とした。「僕を殺す気だね。最初はあいつに殺された。今度はガンスリンガーに殺されるんだ」
 偽りの言葉がガンスリンガーの口を衝いて出た。「何も怖がることはない」次の嘘はもっと質が悪かった。「俺が付いている」

-181-
 俺たちは三人だった カスバートとジェイミーと俺だ

-182-
 年に一度、グレート・ホールで催される行事 <父祖たちの殿堂――ザ・ホール・オブ・グランドファーザーズ>

-184-
「親父は最後の光の王だった」

-188-
古いガソリン・ポンプを持っているというだけで無知蒙昧な羊飼いたちの間で怪しげな教祖に成り上がった隠者 鋼鉄のノズルを股座から突きだして見せた 「AMOCO 無鉛ガソリン」

-190-
「映画って何だ?」

-196-
「母はまだ俺に行けとは言っていないぞ、下郎」
 マーテンは乗馬鞭で横面を張られでもしたように目を丸くした。母親ははっと息を呑み、恐怖に上ずった声で彼の名を呼んだ。
 
-198-
「カスバート! アレン! トーマス!」

-199-
「まだ早いぞ、洟垂れ小僧」

-200-
「さりながら、世界は変わった。今や苦難の時代が迫っている」

-203-
 グレート・ホールの裏手の試合場

-204-
「我が武器はデイヴィッド」

-208-
 銅を剪断するときの匂い

-209-
「鍵を寄越せ」「元はと言えば俺のもの。俺のものは俺に返せ」

-210-
「鍵を寄越せ」
「隼とはよくぞ考えたな。立派な得物だ。きゃつを仕込むのにどれくらいかかった?」
「俺はデイヴィッドを仕込みはしない。味方に付けただけだ。鍵を寄越せ」

-212-
「この、ごうつくばりの馬喰づれが!」カスバートがにったり歯を剥いて悪態を吐いた。「全部独り占めにしくさって、俺たちがしゃぶるほどの骨も残しやがらない」

-213-
 ラグタイム・ピアノの<ヘイ・ジュード>

-214-
「お前くらいの年頃ではな、まだわからないことがいくらでもある」ガンスリンガーはじわじわと込み上げてくる怒りを堪えて言った。
「そうだよね。でも、ガンスリンガーにとって僕が何なのかはわかっているよ」
「俺にとって、お前は何だ?」ガンスリンガーはむきになって言った。
「ポーカーのチップだろ」
 ガンスリンガーは石塊を握ってジェイクの頭を叩き割ってやりたい衝動を必死に抑えた。
「もう寝ろ」彼は言った。「子供はよく寝なきゃあ駄目だ」

-218-
 キリストがラザロを復活させたように

-223-
驚いたことに、最後の一文は彼にも読める言葉だった ハイ・スピーチの起源を辿ればそこにさかのぼる古代語 <10番線地上出口、ポインツ・ウェスト方面>

-227-
 すでに先は見えている。

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 ジョゼフの祭り スワンプ・ガスを封じ込めたガラス管

-234-
 縛り首にされた男 罪無くして難に遭い、冥界の海に沈もうとしているフェニキアの水夫

-235-
「さよなら。僕は死んでも、また別の世界があるからね」

-236-
 彼は自身で育てた狼男、ワーダーラークだった。

-239-
 髑髏塚ゴルゴダ

-240-
「貴様、殺してやる」

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 世界で最後の冒険者 最後の十字軍戦士

-244-
「いささか胸糞が悪かろう。どうだ?」

-244-
「死だ」黒衣の男はこともなげに言った。「ただし、お前には縁がない」

-245-
「第七の札は生命だ」黒衣の男は静かに言った。「ただし、お前には縁がない」

-250-
 暗黒の塔はお前から世界の半分を奪う マーテンの姿を借りてお前の母親をものにした

-251-
「白い光だ」ガンスリンガーは繰り返した。「それから、草の葉だった。ただ一枚の葉がすべてを埋めつくしていた。俺は小さな、芥子粒ほど存在だった」
「草の葉か」黒衣の男は目を閉じた。「たった一枚の草の葉な。間違いないか?」
「ああ」ガンスリンガーはふと眉を寄せた。「それも、深紅の草の葉だ」

-252-
 人類の祖先は癌と呼ばれる、体が腐る病気を撲滅した。

-255-
 そこでもう一歩話を進めよう。すべての世界、すべての宇宙が一つところで出会っていると思え。その中心に高い塔がある。すなわち、暗黒の塔だ。おそらくは、至高の存在に通じる階段であろう。お前にその階段を昇る勇気があるか、ガンスリンガー?一切の現実を超越した高みに、一つの<部屋>があるとして……
 お前に昇る勇気はあるまい。
 お前にやれるわけがない。

「そこを昇った者がある」ガンスリンガーは言った。
「何者だ?」
「神だ」「神はそこを昇って全知全能の存在になった」

-257-
 グラマー 魔法のことだ 

-258-
 俺の主人<不老の異邦人> イングランドという国 マーリン マーリンよりもなお身分の高い者がある <獣> マーリンから見れば俺などは取るに足らぬ軽輩だが、<獣>の前に出たら、そのマーリンですらすくみ上がる

-261-
 マーテンの手勢の一人に僧服を着て改悛者のように剃髪した男 ウォルター

-262-
 これほどのタバコは十年ぶりだった。

-265-
「ジェイク、お前はいいやつだったなあ」

-265-
ガンスリンガーはじっとそこに座ったまま、薄れていく日の光を飽かず眺めていた。かつて見た夢のことを考えているうちに星が瞬きはじめた。彼の目的は断固として揺るぎなく、心が萎えることもなかった。やや薄くなった灰色の髪が風になびいた。父から受け継いだ白檀の銃把に彫りのある拳銃は殺意を秘してぴたりと腰におさまっている。彼は孤独だったが、その境遇をかこちはせず、自ら卑しむこともなかった。闇が空を覆って世界は流転した。ガンスリンガーは運命の三人を呼び寄せる時を待ちながら、暗黒の塔の夢を見た。長い長い夢だった。いつの日か、彼は想像を絶する最後の戦いを期して、ラッパを奏でつつ、薄暮の塔に乗り込むはずだった。

ガンスリンガー―暗黒の塔〈1〉 (角川文庫)
スティーヴン キング 西口 司郎
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