2008年06月29日

SFマガジンにウチの記事が載った(^0^)/スティーヴン・キングを読もうの巻

the deconstruKction of right(藤田直哉氏のブログ)

 ……といっても、とうぜん私が投稿した論文が掲載されたとかそういう話ではなく。SFマガジン2008年6月号に掲載されている藤田直哉氏の傑作評論「暗黒の塔 消失点」に、このブログの記事を引用してもらっています。ダーク・タワー後半の展開にもやもやした気分を抱えていた方はぜひご一読を。納得できるできないは置いておいて(凄い、面白い……と思う一方で「チガウ!」と叫んでいる自分がいる)、一人のオタとしてこういうテキストには純粋に憧れてしまう。ちなみにこの藤田さんの「消失点 暗黒の塔」は、賛否両論別れるⅤ以降の展開の(概ね)賛の立場で書かれていて(藤田さんは自分の中で”賛”にしたくてこの評論をしたためたとのこと)、私の「キングのアンポンタン!」というさながら酔っ払い親父の愚痴吐きのような記事は「非」の側の代表格として召喚されてさらし者にされている(笑)。あの記事、書き殴ったきり忘却の彼方に吹っ飛んでいたもんだて、本当にビビりました。折りしも別の御大の職務怠慢に当たり散らしたばかりだったからなぁ、タイムリーというかデジャヴというかシンクロニシティというか<カ>を感じたよ。う~む、ダークタワーはある意味アオイシロ以上に期待していたからなぁ。Ⅵを読了した当時の絶望感と失望感と虚無感は、ひょっとするとアオ以上だったかもしれない。
 
SFマガジン

 Ⅴ部を境にして一番大きく物語の雰囲気を変えている「      」という技法、これは          や           、    なども試みている文学的技法であり、  の形で『        』にも登場する。「        」の  はウェブでは否定の声のほうが多く見える。その代表的なものを引用しておこう。

(ここで私の口汚いグチが入る)

 その一方、大森望は「『ダーク・タワー』地獄の読破録 全Ⅶ部16冊最速クリア七日間の旅」で、~~

 当時19歳のガキが書き殴ったグチと大森望の評論が「その一方で」で繋がっている。シュールだ。う~む、文章のはしばしから頭の悪さがにじみ出ておるなぁ。せめてもうちょい推敲しておけばよかった。藤田氏のブログで「なぜよりにもよって私のブログの記事を?」とお尋ねしたところ、「一番勢いがあって、読者が感じたであろう「がっかり」がすごく良く出ている」とのお答えが(笑)。あっはっは、ありがとうございます。
 引用文とはいえ、テメェの書いた文章が載った本が全国の書店に並ぶ機会なんてこの先二度と無いだろうなぁ。このSFマガジン記念にとっておこうっと。藤田さん、これからもキングの支援応援頑お願いします。


 ものはついでとキングの宣伝でもしておこう。スティーヴン・キングといったら「『呪われた町』や『シャイニング』の」「モダンホラー作家の」というイメージが強いけれど、……いや、最近だとそうでもないのかな。「『グリーンマイル』や『スタンド・バイ・ミー』の原作のキング」なのかな。帯でも精いっぱい「ホラーだけじゃない!」とピーアールしているしね。昔昔のそのまた昔は「Different Seasons」に「恐怖の四季」なんて邦題付けられてたんだけどねぇ。キッスのアルバムかっての。あの邦題のせいで前書きがとんちんかんなことに……閑話休題。キングの小説はホラーという枠に収まらず、あまねく分野の芸術・エンタメに影響を与えている。大げさではなく、今やキングの影響を一次的にしろ二次的にしろ全く受けていない作品はほとんどないんじゃないかっていうくらい。もちろんジャパニーズオタカルチャーも少なからずキングに影響されている。エロゲーで有名なのはロミオの『最果てのイマ』かな。少年時代と青年時代が交錯して次第に謎が明かされていく構成や、秘密基地、七人の環といったキーワードは『IT』の影響大だろう。ロミオは劇中で『死のロングウォーク』を出して参考文献をバラしている。ちなみに死のロングウォークは、健速乙の『キラークイーン』が参考にしているらしい『バトルロワイヤル』のさらにネタ元だったりする。確か作者が公言していた。ITなら『ゴア・スクリーミング・ショウ』のほうがモロにやっているらしいが、私は未プレイだ。確かキングのスレで聞いたんだよな。『君が望む永遠』の緑の御方は『ミザリー』を彷彿とさせる(『コレクター』か?)。瀬戸口の『Swan Song』は『ザ・スタンド』に雰囲気が近いけれど、『蝿の王』の影響の方が大きいかな。
 マンガだといっちゃん有名なのは荒木飛呂彦先生だろう。『バオー来訪者』の元ネタが『ファイアスターター』なのは有名な話だが、『ジョジョの奇妙な冒険』にも『呪われた町』『ミザリー』『IT』など随所からキング作品のエッセンスが感じとれる。好きな映画のベスト10にミザリー挙げてたっけか。グダグダ売り逃げ漫画の代表格『20世紀少年』も、連載当時「ITっぽい」って言われてたな。あれには『図書館警察』が出てくる。小ネタだと『まほろまてぃっく』の、異星人の存在を公表しようとして殺された大統領の名前がグレッグ・スティルソンで、その後任がヘンリー・バワーズだった(笑)。よりにもよってヘンリーかよw。
 小説だと、宮部みゆきや恩田陸は根っからのキングシンパで有名だね。あとは『屍鬼』が呪われた町をリスペクトしている。呪われた町も『吸血鬼ドラキュラ』をリスペクトしてるんだけど。『ヤングガン・カルナバル』1巻の「俺は世界の王だ!」はゴールデンボーイネタかと思ったが、あれはタイタニックなのかな。
 とりあえずオタの一般教養として『キャリー』『呪われた町』『シャイニング』『デッド・ゾーン』『ザ・スタンド』『恐怖の四季(スタンドバイミー、ゴールデンボーイ)』『ミザリー』『IT』『グリーン・マイル』ぐらいは抑えておいて損はないよ。私が断固超絶におすすめしたいのは、なぜかキングファンにもあまり読まれていない『暗黒の塔(新訳だと『ダーク・タワー』表記)』なんだけどね。Ⅴ部以降は賛否両論だけど(上にも書いた通り私は完全否定派)、キングに脂が乗り切っているときに書かれたⅡ~Ⅲ部は誰もが認める傑作だろう。褒めていない人を見たことがない。理屈抜きにただひたすらに面白い。私は漫画あろうが映画だろうが小説だろうがエロゲーだろうが、これほどの面白いモノに出会したことは数えるほどしかない。パルプでバイオレンスでファンタジーでダークでモンスターで<カ>で、パワフルでモダンでユーモアでウィットでジェットコースターでクリフハンガーでストーリーテリングでページターニングで、ありとあらゆるキングの要素が詰め込まれている。掛け値無しに寝食を忘れてむさぼり読むに能う作品だと思う。みんなマジで読んでちょうだい。小説ってこんなに面白かったのか! と驚くかもよ。

 月並みな素人意見だけど、なぜキングのホラーが、アメリカの片田舎を舞台にしていて、とっぴな怪物が大暴れするにもかかわらず、本国アメリカだけでなくワールドワイドでウケて伝播していったのかというと、単純に筆力がずば抜けていて書き込みがもの凄かったってのもあるけれど、国とか人種とか宗教とかセクシャリティとかそういったものに関係なく、人間誰しもが抱いているだろう「日常のすぐそばに潜む死」「身近な人の死」への恐れを最大限煽る要素が、どの作品にもあったからじゃないかな。キングのオッさんは現代のアメリカに吸血鬼を復活させただけでなく、世界中の排水溝にペニーワイズの馬鹿笑い声を轟かせ、世界中の下校途中の草むらに黒いスーツの男の硫黄の匂いをまき散らし、世界中のお父さんのにこにこ顔にジャックの狂気を見出させ、世界中のクローゼットの中にゼルダ姉さんの気配を感じさせることに成功したんだと思う。そういえば初期のキングはよく、クローゼットのイメージを使っていたね。『ペット・セマタリー』しかり、スタンド・バイ・ミーしかり、スタッドシティしかり。クローゼットは全国どこの家庭にもあり(今この記事を書いている私の後ろにもある)、衣食住の一つを預かる”日常”の象徴でありながら、切り取られ隔離された”異世界”の一部でもある。忘れたい過去・モノを収納したそれは、遺品を納めた「棺」を連想させる。映画のスタンドバイミーではじっさいに納棺のシーンがあったっけ。このおっさん、文章は凶暴で品がないのに(褒め言葉です)、こういうガジェット選びの繊細なセンスがあったんだよね~。


 個人的には名言珍言がやたらに多いのもキングおじさんが大好きな理由の一つだったりする(笑)。「全ては<カ>なのだ」「カカ!」「我々は<カ・テット>なのだ」「さようなら。僕は死んでも、別の世界があるからね」「キャン・タック!」「ディダ・チャック? ダム・チャック?」「お前を殺してやる」「ここではみんなふわふわ浮かぶんだよ……」「ム・ウ・ウ・ン」「お前とはみっちりと話しあう必要があるな。ああ、みっちりと」「オイ!」「おれは世界の王様だ!」「お前は父親の顔を忘れたようだな」「我が武器はディヴィット」「かぃあぃぐんに入ったわ~♪」「バビロンの淫売婦!」「すすぎ洗いだ! ポール、すすぎ洗いしておかないと!」「甘露! 甘露!」「スーパーデューパー! パウッ!」「イーッヒッヒッヒ……!」「くそったれには千の目があるのさ」ちょっと思いついただけでもこんなにあったw。「鮒産道」みたいに邦訳から生まれた名言もあるね。私は小説を読んでも「面白かった」「つまんなかった」ぐらいしか頭に浮かばない貧相な感性の持ち主なので、小説の感想はこれから先も書かないと思うけど、「名言集」という形でキングの作品の空気を少しでも紹介できたらなと思う。そのうち「声に出して読みたいハイ・スピーチ」なんて作ってみようかしらん。
関連記事

このエントリーをはてなブックマークに追加はてなブックマークでコメント

この記事のトラックバックURL

http://toppoi.blog54.fc2.com/tb.php/456-5dfb634e

ダークタワー スティーヴン・キング
あのスティーヴィン・キングのダークタワーが待望の文庫化です!!! とはいっても、僕はこれがスティーヴィン・キング初挑戦です笑 この...
キングの影響力/若いって
SFマガジンにウチの記事が載った(^0^)/スティーヴン・キングを読もうの巻 前に紹介したSFマガジン2008年6月号の評論「暗黒の塔 消失点」にtoppoiさん自身の記事が引用されたことを受けてのエントリーですが、これが面白い。何が良いかってきっぱり言い切る気持ちのよ

コメントする

※規約
管理者にだけ表示を許可する

コメント

Template Designed by DW99