2008年08月19日

くちびる ためいき さくらいろ 森永みるく レビュー・感想

 この記事を書くためにレビューを検索してみた。ベタ褒めしていない記事を見つけるほうが大変だったくらい、どこもかしこも大絶賛していたんで、糞味噌に貶しているものも一つや二つあってもいいんじゃないかと思った。私ぁこの作品が傑作扱い、スタンダード扱いされているのがどうしても納得できないんで、ささやかな抵抗を試みる。

私はべつに… そういうのに偏見はないけど…


下手に男女とかより… なんていうか 
性別をこえるほどの愛って あこがれるけどなあ…


私の想いが あなたを傷つける


「私、偏見とかないから!」「俺は差別とかしないぜ!」とかテメェで言い出すような奴はまるっきり信用できないという好例っすわ。
 私はこの漫画が大嫌いだ。反吐が出るほど嫌いだ。なぜ21世紀にもなって、こんな前時代的でダサダサな厨二漫画が持て囃されているのか正直わかららない。「くちびる(笑)ためいき(笑)さくらいろ(笑)」「21世紀に残る最後の純愛(笑)」とのっけのタイトルと煽りからしてスイーツ臭がぷんぷんしているが、中身も負けず劣らずもの凄い。私が「百合」と聞いて思い浮かべるイメージ「ダサい・めそめそしている・小便臭い」の三拍子をここまでストイックに追求してくれている漫画はそうないぞ。
 あれま、森永みるくって女だったのか。「そりゃもうありえない話だからみんな妄想ですよね(笑)」「やっぱカワイイ女子はカワイイ女子とくっつくがいいよ」みたいな数々の名言があるし、作品中でも『先輩が大学行って男の手垢がつく前に… 私が頂いちゃおうかにゃん(はぁと)』『あのとき処女を奪ってしまえばよかった…』だのとほざくオッさん臭い女が多かったんで、魔法使い過ぎの男を想像していた。

「ダサい」
 まずは視覚的なダサさについて。最近だとそこまででもないけど(特に『少女セクト』以後)、百合を標榜する作品ってまず目で見て面白いってものがほとんどなかった思う。この業界は垢抜けねーよなー。百合厨の間では今でもへっぽい絵柄が尊ばれているような節さえある。下手にかわいい系の絵だったり衣装に凝ってたりすると「オタク向けの絵柄」とか言われちゃったりしてなぁ、まったくうんざりするぜぃ。漫画なんだから目でも楽しませてくれたっていいんじゃないか。なんでただ女同士の話ってだけで、この漫画みたいな糞ダサいビジュアルで我慢せにゃああかんのだ。綺麗でかわいい絵柄の何が悪い。「精神的な繋がり」「性別を越えた愛」に異常に拘泥する百合厨って、綺麗に着飾ってる人間にコンプレックスでもあるんだろうか。
 いやはや、森永みるくの描く女はなぜかくも気色悪いのか。男体は男体でナヨナヨしていてキモいけれど。あのアホウのようなツラを見ていると酸っぱいものが込み上げてくる。デフォルメ絵の気持ち悪さは筆舌に尽くしがたい。具体的にどこがどうキモいのかと訊かれると、絵心がない私には説明できないんだが。馬鹿みたいに開けた三角の痴呆口? 知性が感じられないヒラメ顔? ビーバーみたいな歯? 下膨れの輪郭? まぁ作品内容の気味悪さによる補正もかなりあるんだろうな。私にイラストだけでここまで不快感を与えられる奴はそういないぞ。他には揚の絵師くらいなもんだ。
 『くちびる ためいき さくらいろ』はまず背表紙の女二人がありえない。目がまともな精神状態の人のそれじゃあない。イッちゃってる。ファッションもありえない。垢抜けていないにも程がある。私服も制服も。お前ら本当に現役の女子学生なの? よくこんな服を着て往来を歩けるなあと感心するくらいだ。まぁ精神的な繋がり(笑)には見てくれなんて関係ないという先生のメッセージが込められているんだろう。しかし、同作者の『にくらしいあなたへ』に比べりゃあマシになったのかね。ありゃあ全盛期の水無月・いたるが裸足で逃げ出すくらいの奇形絵だったよ。人間の骨格をしていなかった。
 ダサいと言えばもう一つ、こいつの漫画は無駄なモノローグやカットが多すぎやしないか。いくらなんでも読者の読解力を舐めすぎじゃあないの。馬鹿みたいな説明セリフは極力削って、一つのカットで、キャラクターの表情で、機微を伝えようという気はないんだろうか。こいつの画力じゃあ無理だろうか?

「女々しい」
 人間限度がある。ここまでいちいちいちいちいちいちいちいち同性同士による葛藤を垂れ流している作品は不快である。今日びここまでじうじ悩む描写に膨大なページを割いてるのが有り得ない。ダサいにも程がある。ショボいビジュアルの影響も大だけど、あまりのヘタレぶりにキャラクターから意思の力が全く感じられない。長ったるい心理描写(笑)はやたらあるんだが、ライクだとかラブだとかパッションだとかリビドーだとかエゴだとかそういったものがページからちっとも伝わってこない。お子様のおままごとにしか見えない。
 私が『くちびる』が何より薄気味悪いと思うのが、およそ人間らしい人間が一人もいないところだ。この漫画のキャラクターは個性も存在感も無ければ人間味も現実味もありゃあしない。薄っぺらいにもほどがある。この記事を書くためにレビューを検索してみたが、やはりというか何というか、自分はこの漫画の中でどのキャラが一番好きだとか、そのキャラのどんなところが好きだとか、どのシーンのどのセリフが心に響いたとか、そういった話題はほとんど見つからなかった。そもそもキャラの名前が挙がっているレビューが全然なかったな。この作品って、ぶっちゃけた話「同性同士の恋」「一過性の儚い恋」「性別を超えた愛」という記号の集合体でしかないと思う。そこから一歩も踏み出していない。その先の、一対一の、人間同士の関係を描こうという意思が全く感じられないんだよ。
 この記事を書き終わったころに、参考資料(はてなブックマーク)をぼけら~っと眺めていたら、BLNDの『お願い鈴音ちゃん』(すどおかおる、ワニマガジン)感想が、「お前この記事見ながら書いたの?」ってなくらいあまりにも直球どストライクな話題だったんで、トラックバックさせてもらいました。私も「ダメ人間じゃん」好きだったよ。

 女のコが好きな女のコの話って、ともするとストーリーが同性愛部分にばっかり拘泥しがちじゃないですか。お話の焦点が「これって悪いことなの……?(ぐだぐだ)」/「告白したら嫌われちゃうかも(うじうじ)」/「偏見に負けないエラい私たち(大威張り)」にばっかり当たっていて、それ以外のドラマ要素は皆無、とかさ。



「小便臭い」
 私はこの漫画みたいな、さして珍しくも目新しくもないことを、さも前人未到の偉大なことを成し遂げたかのように持ち上げている作品は嫌いだ。リベラルぶって理解があるようでいて、その実はカビの生えた価値観を再生産しているだけでねぇのかな。
 『くちびる』は嘴の黄色いガキがうだうだ葛藤する話だと書いたが、その葛藤の中身もまっこと独りよがりで小便臭い。主人公が苦悩するとしてもさ、『捜査官ケイト』みたいに、警察官という職業上から、そしてパートナーとの関係を掻き回されたくないから、友達も同僚も家に呼ばずセクシャリティを隠しているとか、そういう事情なら腑に落ちるんだよ。テメェで後生大事に抱えている偏見を捨ててみせたからって、どこがどう尊いんだかさっぱりわからんよ。そんなものがいつまでドラマツルギー足り得るんだろうか。
 私は性別を超えるほどの愛(笑)だの、精神的な繋がり(笑)だのと聞くと、昔読んだ原田宗典のエッセイを思い出すよ。原田は「知力体力共に人並み以下で、人に誇れることなど何もなかったボクは(謙遜だろうけど)、鼻の穴にビー玉を入れてみたりして『どうだどうだ、すっごいだろー!!』と自慢していた痛い子だった」と書いていた。上にも書いたが、私にとっての「百合」のイメージはまさにこれ。鼻の穴にビー玉を入れて粋がってる糞ガキのたわごと。

 私ぁ同性同士の関係であることを変に美化したり特別視したりする”だけ”の作品は、時代遅れでダサいにもほどがあると思っている。そんなことはただの前提として、その先の”人間”や”意思”や”絆”を書こうとしている作品のほうがずっとスマートだと思う。以上。

くちびるためいきさくらいろ (IDコミックス 百合姫コミックス)くちびるためいきさくらいろ (IDコミックス 百合姫コミックス)
(2006/01/18)
森永 みるく

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tags: 百合 

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