2011年05月08日

捜査官ケイト ローリー・キング

A Grave Talent / Laurie King
森沢麻里 訳

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「人身御供……まあ、他の犠牲もぜんぶそうだが、それはほしいものを手に入れるために、まず、そのほしいものを神に捧げるってことなんです。自分で自分の運命をコントロールしているという感覚を得るための、ひとつの方法なんだな。最も優れたもの、もっとも清らかなもの、もっとも新しいものを捧げることによって……」

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「まず、彼が私を見る目つきですよ。気分は最高級種付け馬って感じの男に、毛並みのいい雌馬なんぞを見るような目つきで見られるたびに、私、感じてたんです。そういう男って、みんな同じ種類の人間なんですよね。他人の目には、まるで顔の真ん中にお粗末なものをぶらさげてるみたいなふうにしか見えないんだけど、自分はすごいと思いこんでいるから、それがわかってない。頭が空っぽなんですよ」

-257-
「ねえ、ホーキン刑事、今ごろ、生徒たちはロッカーに殺到してますね。二分もしたら、学校中のトイレが水を流し始めるわ」
「トイレが詰まって、明日用務員が苦労しそうだ」

-362-
「ケイトったら、一九五〇年じゃないのよ。一九七〇年でもない。あなたがカムアウトしたって、小さな仲間うちじゃ、五分間話題になって、それでおしまいよ」
「いいえ、リー、長い目で見れば、それでおしまいにはならないわ。違う世界に入っちゃうのよ、私たち、あなたと私は。私はリスクを冒したくない。私は警察官なのよ、リー。女性警察官。カムアウトなんかしたら、どうなると思う? すぐに新聞がK・C・マーティネリ巡査は緊縛レザー軍団の一員だと、面白おかしく書きたてるわ。人が私を見て、ひそひそ話を始めるでしょうね。人のやりたがらないいやな仕事を全部押しつけられるわ。任務を与えられても、私はレズだからエイズにかかってるかもしれないからって、私と組むことを拒否されるかもしれない。強姦事件の事情聴取のために、被害者の女の子に質問しようとしたら、レズの警官なんかに娘のアソコを触らせてなるものかと、母親が騒ぎたてるわ」
「ばか言わないでよ、ケイト。被害妄想もいいとこ。サウディ・アラビアとかテキサスとかならわかるわ。ロサンジェルスでもそうかもしれない。でも、ここはベイ・エリアよ。しかもこの時代によ? ゲイの警察官なんて珍しくもないのに。誰も気にしやしないわよ」
私が気にするのよ!」ケイトは叫んだ。「私がストレートだろうが曲がってようが折れてようが、みんなには関係のないことだわ」
「あなたは恥ずかしいと思ってるのよ。ずうっとそう思ってきたんだわ。でも、もう目をそらすべきじゃない。さもないと……」
「恥ずかしがってなんかいないわ!」ケイトは烈火のごとく怒った。そして突然、何の前触れもなく、その怒りはしぼんでしまった。深い疲労がもたらした絶望をこめて、恋人を見た。「恥じてなんかいない」彼女は静かに言った。「大切にしたいの。他人に指をつっこまれ、かき回されたくないのよ。あなたが行くクラブや喫茶店に、私だって一緒に行きたい。人前でキスしたい。でも、リスクを冒すのはいや。私が新鮮な空気を呼吸するのを拒否してるから、二人とも息が詰まるんだとあなたは言うけれど、でもカムアウトなんかしたら、それこそ私たちは一巻の終わりよ。それは火を見るより明らかだわ。私、そんなに強くないのよ、リー。そんなに強くないの」

-494-
「子供がらみの事件には女を入れるんです。あの事件では、かわい子ちゃんのケイシー・マーティネリがミス警察をやって、子供たちの頭を撫でる役割だったってわけ。そして、今度は……」とケイトはまた笑いだした。「緊縛レズ軍団向けの警察側代表なのね」

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(1994/11/18)
ローリー・キング

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