2012年03月04日

『ゆるゆり』のアバンギャルド性 あらゆる角度からの突っ込み待ち漫画

 まだ一年の六分の一を過ぎたばっかりだから、去年の話題をだしても全く問題ないな! あと二ヶ月くらいは「去年鑑賞した中で感銘を受けた作品おさらい」ネタを続けても大丈夫なはずさ。
 『ゆるゆり』については、去年のうちにえらく熱の入った記事を仕上げているが、それの補足としてつらつら書いてみる。前回の記事にも書いたとおり『ゆるゆり』の比較対象になる作品はいくらでもある。今までにも『けいおん!』『苺ましまろ』『ひだまりスケッチ』『らきすた』のように、日常系のゆるい空間の中における女の子たちのやりとりに百合的なものを見出す流れは存在していた。男性不在の空間でキャッキャウフフなことをやろうと思えば、当然そんな向きも出てくるだろう。『ゆるゆり』がそれらの作品と比べて特異なところは、まず掲載誌(百合漫画専門雑誌の「百合姫」)とタイトルでどーん! と「百合」を謳っていながら、延々と日常ギャグをやりつづけていることだ。この逆転の発想は今までありそうでなかった。
 『ゆるゆり』という作品は二重にも三重にもねじくれている。この作品は「ゆり」の名を冠する一方で、あくまで「ゆる」いこと、しょうもないギャグ漫画であることを強調している。ここでまず一段階のねじれがある。「百合専門誌で何やってるんだよw」と突っ込まずにはいられない。『ゆるゆり』が百合作品では異例の、広範囲でのスマッシュヒットを飛ばしたのは、やはり「ギャグの範囲ならOKです^^;」「キャッキャッウフフは好物ですけど、ガチ恋愛や肉体関係はちょっと^^;」という層を取り込んだからだろう。その一方で、わかる人が読めば「どこがゆるいんだよw」と突っ込まざるをえない要素もそこかしこにちりばめられている。友人のDG_Lawさんもみやきちさんも同様の突っ込みを入れているので、私だけの思い過ごしではないだろう。ここでもう一段階ねじ曲がっているのがこの作品の面白いところだ。いやはや、これほどまでにライト層をだまくらかしている百合作品というのは希有だと思う。
 七巻なんかは本の構成だけで笑えてくる。「百合姫」を購読している層が期待しているのは、明らかにおまけ漫画のような展開だろう。にもかかわらず、唯一神なもりはそれを「おまけ」でさらっと流して、後は延々しょうもないギャグをやりつづけている。分量で言えばギャグ9に百合1くらいなものだ。そして、このおまけ漫画のによによ度が、同誌に連載している、恋愛要素や萌え要素を全面に押し出している漫画と比べても頭一つ飛び抜けているのがまた笑いを誘うんだよね。完全に「いやいや、こっちをメインに書こうよw」という突っ込み待ちだよ。百合好きの需要に適ったものを書こうと思えばいくらでも書けるのに、本腰を入れて書いているのはぐだぐだギャグ展開だ。なもりは完全にわれわれを触手の上でもてあそんでいる。
 各所の『ゆるゆり』の感想を見てみると「ライトな」という言葉をよく目にするが、私はこれほどひねくれた、アバンギャルドな百合作品もそうそうないと思っている。
 ほとんど誰も予想していなかった『ゆるゆり』ヒットの要因は、ギャグ漫画としての地力があったこと(地力がないものはいくら宣伝してもついてこない)、上述したライト層への訴求が大きかったと思う。あとは作者がウケやすい人物像だったこと、ニコ厨の釣り方(あかりは犠牲になったのだ)とステマブログの使い方が上手かったことも小さくない。
 そうそう、ゆるゆり旋風にあてられて、久しぶりに連載誌の百合姫を買っていたんだけれど、現在の単行本未収録分も安定したクオリティーだった。女王様ゲームの回なんかは、御大がギャグ漫画家として順当に力をつけてきているのがよくわかった。七巻までを読んで面白かった人なら何も考えずに即買いしてオッケーだ。太鼓判を押せるよ。

ゆるゆり(1)-(7) なもり レビュー・感想 『ゆるゆり』の面白さは歳納京子の面白さ
『ゆるゆり』のアバンギャルド性 あらゆる角度からの突っ込み待ち漫画

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