2012年03月14日

最近の新聞勧誘は手が込んでいる 詐欺まがいの讀賣新聞拡張員の巻

 先日、近所のスーパーでの買い物から帰ると、アパートの前に引っ越しのトラックが停まっていた。業者の人たちが、コンテナから段ボールを次々運び出している。上階に顔を向けると、長らく空いていた部屋の窓から、業者がゴソゴソと物を動かしているのが見えた。隣人に興味のない私は「ありゃ、新しい人が越してきたのか、まあどうでもいいや」とあまり気にも留めずに、トラックをよけて自分の部屋に入った。
 その後は、DVDを観ながら(この時観ていたのは『1492コロンブス』。リドリー・スコットは間違いなく重度の潔癖症だ)ダンベルなぞ持ち上げて、まったり過ごしていた。いつもと変わらぬ有閑な午後のひとときだ。そして、映画が半ばまで来たころに、やにわにインターホンがポーンと鳴ったのよ。うちのインターホンは、友人が来たときと通販の荷物が届いたとき以外には滅多に鳴らないので、一体誰じゃいと不用心に玄関を開けてしまったのさ。はたして、扉の前には金髪のチャラいあんちゃんが、にやにや笑いを浮かべながらつっ立っていた。「こんにちは^^! この近くに越してきた者なんですが挨拶に参りました^^!?」あんちゃんが開口一番に言った。そこで私は「ああ! さっき上に越してきた人なのか」と合点がいって、「ああご丁寧にどうも、こちらこそこれからどうぞお願いします」などと返した。するとあんちゃんは、挨拶もそこそこに、さっきから手に持っていたゴミのようなものをこっちに差し出してきたのだ。それはゴミのようなではなく、市指定のゴミ袋そのものだった。袋の外装には大きく「讀賣新聞のご愛読 毎度ありがとうございます」と書いてある。……この時点でオチに気がついた人もいるかもしれない。次にあんちゃんが言ったのはこうだ。「これ、挨拶の品です。どうぞ^^!」引っ越しの挨拶で渡す粗品が、讀賣新聞印のゴミ袋? 私の頭にハテナが浮かんできた。あんちゃんは続ける。「ところで、読売新聞ってご覧になったことはありますか^^!? 興味はありませんか!?」この時点でからくりに気づけなかった私は、相当鈍いのかもしれない。私はこのあんちゃんのことを、完全に上に越してきた学生さんだと信じていたもんで、いらぬ想像を逞しくして「この人は顔に似合わず、新聞勧誘でお金を稼ぎながら勉強している苦学生さんなのか……」とか思っちゃったぜチクショウ。あんちゃんは続けて「三ヶ月だけでいいから取ってみてくださいよ!?^^」だの「ここの住人さん全員に、同じように(これめっちゃ嫌な言い方なのよね、じっさい言われてみるとわかる)お願いしてるんですよ!?^^」だのとのたまっていた。私は尻も拭けない紙クズの束に毎月ン千円を払うほど裕福でもなく、また隣人付き合いに細心の注意を払うほど出来た人間でもなく、またインディアンに襲撃されて右往左往するコロンブスの運命が気になっていたので、とっとと話を打ち切ろうと思い「申し訳ないんですけど今は手が離せないので……」と言いつつドアを閉めようとした。途端にガガッともの凄い音がして、何事かと目を向けると、あんちゃんが扉に体を入れてがっちり押さえつけていた。……頭がうまく回っていなかった私も、ようやくこの野郎が隣人でも何でもない糞ったれであることに気が付いたのだった。それでさ、ちょっと冷静になってそいつのツラを眺めてみたらさ、表情は笑っているんだけど、目は完全に既知の外にいる人のものなんだよね。私はいちおう慇懃な態度はとりつつも、身体全体でドアノブを思いっきり引いてやったさ。普段から筋トレをやっていると、こういう時に無駄な気概が沸いてくるもんだね。やっててよかった筋トレ。あんちゃんはドアにギュウギュウ挟まれても「三ヶ月取ってくださいよ!?」「取らないんですか!? 住人のみなさんにお願いしてるんですけど!?」としばらく抵抗していたが、力尽きたのかくるっと回れ右をして去っていった。あの貼り付けたような笑顔はすっかり剥がれ落ちて、社会的に蔑まされた仕事に従事する者に特有の、憮然としてひん曲がった表情を浮かべていた。去り際には別れの挨拶の一言もなかった。
 要するに、讀捨新聞の新聞拡張員が、ドアを開けさせるために、引っ越しの挨拶に来たと嘘八百を言っていたのだ。なかなか考えられてる作戦だよなぁ。あからさまなセールスに対しては、律儀に話しなんざ聞かずに「いらん。うっせ。じゃね」で突っ返せるけれど、これから隣人になるであろう人に、のっけからぞんざいな態度はなかなか取れないもの。たとえ深く付き合うつもりはなくても、ね。それをわかってやってるんだろうな。私も動揺して「申し訳ありません、そのような予定はございませんので……」とかわけのわからない態度をとってしまったぜ。社会のゴミに対してへりくだったようなことを言って、なんだか損した気分だ。今になって考えてみたら、名乗りもしなかったり、挨拶の粗品でゴミ袋をよこしたりと突っ込みどころ満載なんだがなぁ、堂々と嘘をこかれるとディティールを見落としてしまうもんだ。コンコンチキめ、唾棄すべき詐欺野郎だってもっと早く気づけたら、無駄な労力と時間を食うこともなかったのに。
 しかし、あのパープリンあんちゃん、目がガチでイッちゃってたなぁ。思いっきり挟んでやっても大声でしゃべっていたし、扉を押さえている手はよっぽど力を入れているのか白くなっていたよ。お前は選挙前の公明党支持者かっての。やっぱり、拡張員ってノルマをこなさないと、営業所で罵られたり殴られたりすんのかな。そうでもなければあそこまで必死にならないよな。私のような若い男や、家族がいる人ならならともかく、一人暮らしの女性だったら、あの常軌を逸した剣幕に押されて、思わず契約してしまうかもしれん。
 あのあんちゃんが、アパートの前で引っ越ししているのを見て、とっさにこんな方法を考え出したとは思えないので、おそらくマニュアル化されていて、上からそうやるよう指示されているんだろうな。ああ気味が悪い。戦利品としてゴミ袋をぶんどったくらいじゃあこの不快感は拭えないよ。私と同じように、オートロックもない安アパートに住んでいる方は、似たような手口に引っかからないよう気を付けよう。

2012/03/11 この記事の草稿を書いたのはだいぶ前のことで、ストックにぶち込んで放置していたんだが、本日、同様の手口で拡張員がやってきたので存在を思い出した。今回もケツの穴讀賣新聞の御仁だった。これは……確実にマニュアル化されているな。私の中で、新聞拡張員は底辺の中でも最下層の仕事にランク付けされた。ああいう息を吸うように嘘をつく必要がある仕事は大変だろうな。まっとうな神経の持ち主じゃできないよ。

 繰り返しになるけれど、女性の方や高齢の方は、あの既知外のような剣幕に押されて無理くり契約させられてしまうかもしれない。そうなれば無駄金を払う羽目になるし、少なからぬ精神的なダメージを受けてしまうだろう。前回は、無神経が服を着て歩いている私のような人間でも、不快感を植え付けられてしまった。

 玄関に入ったり、扉に手を掛けて押さえたりしている相手を力尽くで追い返すのは骨が折れる。扉を開けて会話をして、不審に思ってからでは時既に時間切れである。見知らぬ相手を応対するときには、絶対にチェーンを外さない。
※ドアを開けないと粗品を受け取れないじゃないか?
→受け取らなくても、別に死にはしない。自分の身が一番大事である。
※チェーンを掛けたまま応対するのは失礼じゃないか?
→もしその人が本当に隣人だったとして、第一印象を悪くしてしまっても、別に死にはしない。所詮は赤の他人だ。自分の身が一番大事である。
→そもそもチャラい兄ちゃんは、律儀に粗品を持って引っ越しの挨拶になぞ来ない。見た目は中身を表すものである。
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