2012年10月07日

アウトレイジ ビヨンド いいかげんなレビュー・感想 この続編はアリだ

 面白かったぞコノヤロー。武が前作の意外なヒットに味を占めて、安易な続編商法に手を出したんじゃないかと警戒していた人は安心してよい。かくいう私も「てめぇ、あれだけ『ゴッドファーザー』のやり口を批判しておいて、てめーはどうなんだコノヤロー。お金かネタに困っているのかコノヤロー」と疑いのまなざしを向けていた。謹んでお詫び申し上げる。『アウトレイジ ビヨンド』は前作『アウトレイジ』の腑に落ちなかった点を補完し、消化不良だった人物を見事にすくい上げている。特に木村は救われたよ。凄惨な最期を遂げたけれど、奴は今作の存在で確実に救われたよ。奴が主人公の相棒と言っていいほどの存在感を帯びるなんて、前作の次点で誰が予想できただろうか。テンポもいくらか改善されていた。前作も前半の展開は丁々発止の掛け合いも含めて快調だったと思うけれど、大友組が敗走を始めたあたりからの間延びした場面展開で、何度か時計をチラ見してしまった。今作はエンドロールが流れるまで食い入るようにスクリーンを見続けてしまった。緩んだ空気の中にふと暴力が忍び寄る『3-4x10月』『ソナチネ』『HANA-BI』の系譜を期待すると肩すかしを食らうが、『その男、凶暴につき』『アウトレイジ』の流れである、不謹慎さを助長する暴力のテンポの良さもまた良いものだ。ただし、暴力のアイデアや構図の美しさについては、歯医者、サウナ襲撃、ドライブからのバンジージャンプと粒ぞろいだった前作に軍配が上がるか。今作で気に入ったのはバッティングマシンとオートロックかな。後者はお家芸である場面カットの妙技だった。
 登場人物は誰一人として幸福にならない。前作からの主要登場人物で唯一生き残った武にすら、勝利者の感慨はなく、ただただやるせない表情を浮かべるだけだ。終わりない暴力に対する渇ききった感情は今までの武作品で繰り返し語られてきた。ヤクザ、辞めたくなっちゃったよ。『ソナチネ』の武は物語の最序盤でこうつぶやいていた。『TAKESHI'S』の武はいつ終わるともしれない悪夢の中で無感動に銃を乱射していた。今作の武もまた、山王会への復讐に気炎を上げる木村をよそに出所直後からリタイアをほのめかす。「親分、がんばってください」は作品を象徴する名台詞だ。そもそも武の役柄は前作で確実に殺されていたのだ。墓穴から掘り起こされ、静かに眠ることも出来ずふたたび暴力の世界にかり出される。二度目のバイオレンス・ゲームにも勝利して隠居生活を手に入れても、瞬く間に拳銃を握らされて死地に送り返される。暴力にはカスが残る。「恨み」というカスが。それを振るった者は決して一抜けぴをすることはできないのだ。
 それにつけても衝撃的なラストシーンだった。今まで傍観者の立場から人を操ってきた小日向が一瞬のうちに撃ち殺される。しわの刻まれた武の顔に浮かぶ諦観の念。『アウトレイジ』のラストで勝利の余韻の浸っていたメンツも一人残らず息絶えた。全員悪人、全滅。これで綺麗に円環が出来た。今回たまたま生き残った花菱組のメンツにも未来が存在しないことは、前回の勝利者たちが辿った末路を見れば火を見るより明らかだ。『アウトレイジ』から『アウトレイジ ビヨンド』への流れで、「暴力に終わりはない」という口に出してしまえばちゃちいメッセージを、余計なことは一切語らず見事に表現している。
 この続編は大いに「アリ」だったと思う。確実に完成度が上がった。前回と今回だけで綺麗なループ構造になっているので、願わくは三作四作とだらだら続けないことを。
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tags: 映画 北野武 

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映画「アウトレイジ ビヨンド」良くまとまった印象でだからこそ物足りない
「アウトレイジ ビヨンド」★★★ ビートたけし、西田敏行、三浦友和、加瀬亮、 松重豊、小日向文世、高橋克典、桐谷健太、新井浩文出演 北野武監督、 112分、2012年10月6日(公開) 日

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コメント

Re: タイトルなし
> 北野武は「あの夏、いちばん静かな海。」がめちゃいいですよ。
 もちろん、観ておりますよ。カメラワークが麻薬的ですな。

北野武は「あの夏、いちばん静かな海。」がめちゃいいですよ。

Re: 名無しさん
> 確か、カンヌから帰る途中で二作目やればと勧められて三時間で構想を練ったとか。
 私もそんな話を聞きました。一作目ももの凄い短期間でまとめ上げたらしいですね。おっさんまだまだやれるなと。欲が湧いてきたんで『ソナチネ』路線や『キッズ・リターン』路線の作品にも死ぬまでに挑戦してもらいたいです。

確か、カンヌから帰る途中で二作目やればと勧められて三時間で構想を練ったとか。

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