2013年06月12日

宮永咲の「嶺に咲く花(仮)」は能力バトル漫画の主人公にふさわしい能力だ

 すっげーモンスター(New!)咲さんかわいい! 長かった全国大会Bブロック二回戦もついに決着が付いたが、大将戦における咲さんこと宮永咲の能力「嶺に咲く花」(私が勝手に名付けた)は相変わらずの美しさだった。

「リンシャンカイホー?」
「麻雀の役の名前だよ
 『山の上で花が咲く』って意味なんだ」
「咲く?」

「おんなじだ! 私の名前と!!」

「そうだね 咲
 森林限界を超えた高い山の上 そこに花が咲くこともある
 おまえもその花のように―― 強く――」

(第1局「対立」)


(やっぱり原村さんはすごい! よーし…)
私も―――

「カン」
「!!」

(そう―――)
私も嶺に咲く花のように―――

(第1局「対立」)


 ここだけの話、咲さん本人は何を考えているんだかよくわからなくてちょっと苦手なのだが、能力の美しさには思わず感嘆の溜め息が漏れる。私はなんだかんだで咲さんの華麗な立ち回りがなかったら『咲-Saki-』をここまで評価していないと思う。能力バトル漫画の面白さの一つは、持ちうる能力を使って如何に敵を出し抜くかにあると思うが、咲さんはカン材を集めてカンをし、嶺上開花で和了する能力で実に多彩なプレイングを魅せてくれる。ざっと思い出しただけでも、劇中でこれだけの芸当をやってのけていた。

追加ドローが出来るので
1.テンパイが早い相手や一方的にテンパイする相手に追いつく(衣や霞さんに)
嶺上牌をドローするので
2.山を支配する能力の及ばない牌を取得する(衣や霞さんに)
ツモ順をずらして
3.支援したい他家に有効牌を掴ませる(メゲている末原さんに)
リーチ時にも発動できるので
4.掴まされた当たり牌を処分して追っかけリーチを一蹴する(豊音の先負に)
槍槓されるのを逆利用して
5.振り込みたいのに役なしの相手に無理矢理役を作る(すかんぴんの池田に)
符が高くなるので
6.4500点(70符2翻)のような特殊な点数を狙える(プラマイゼロ狙い)
嶺上牌でカン材を引く限り何度でも発動できるので
7.安いイーシャンテンから爆発的に手を高めて奇襲する(感覚頼りの衣に)
カンドラを増やすことで
8.他家の手を高くして囮にする(感覚頼りの衣に)

 もはや芸術の域に到達している。攻撃(1,2,7)に始まり防御(4)から補助(3,5,8)まで、カンと嶺上開花を使ってやりもやったりである。末原先輩でなくとも「やりたい放題やないか!」と言いたくなる。この漫画を読んで初めて、カンという所作でどれだけのことが出来るのか気付かされた人も多いのではないだろうか。実際に自分が使いこなせるかどうかはさておき……。
 また、ここで注目してほしいのは、上に挙げた咲さんの応用スキルのほとんどが、彼女と同じオカルト能力者が相手だからこそ成立している点だ。1と2は衣の「一向聴地獄」や霞さんの強制絶一門といった場を支配する能力があるから活きる。7と8は魔物の基本スキルである、おおよその手の高さを察知する能力を逆手に取ることで奇襲になる。また6については咲さんのもう一つの能力(詳しくは後述する)があって初めて真価を発揮する。咲さんの異能は天江衣、姉帯豊音、石戸霞といった悪鬼羅刹の魑魅魍魎どもがいるからこそ際だって輝くのだ。「嶺に咲く花」は、その名の通り山が高ければ高いほど強く美しい花が咲くのである。
 個人的に、Bブロックの二回戦は総合的に見て長野県予選決勝ほどの完成度はなかったと思うが、咲さんが豊音の先負で当たり牌を掴まされてからの流れが美しすぎてぐうの音も出なくなってしまった。

ハッ
(王牌――…!?)

チャッ コッ

「やった! 豊音の和了り牌!」
「うん でも槓材でもあるよね…」
「え」

パラ

「もいっこカン!」オオ

「……っ」
「さっきの嶺上牌も筒子ではなかった
 つまりそこが今の石戸霞の弱点――」

ドッ
「トヨネの先負も無効化せずに受けきっている………
 これが天江衣を倒した清澄の大将――」

「ツモっ 嶺上開花!」
宮永咲………!!
「2000・4000です!」オオオオオ

(第97局「三麻」)


 この切り返しは神懸かっていると言わざるを得ない。トシさんが言うように、豊音の能力を無効化するのではなく(単純にパワーをぶつけて相殺するのではなく)、自らが持つ能力の性質を利用して、ロジックで打ち負かしているのが最高にクールだ。能力バトル漫画の醍醐味がここにあった。
 咲さんは劇中で最強クラスの魔物であることが随所でほのめかされている。しかし、その実能力の平均打点は衣の速攻や淡のダブリー裏ドラ4に比べればひかえめだし、相手の配牌やツモを永続的にねじ曲げるほどの支配力もない(後述する発動条件付きの能力はその限りではない)。しかし、その代わりに知略と機転次第で如何様な相手にも対応できる汎用性・発展性があり、爆発力も兼ね備えている。これほど能力バトル漫画の主人公にふさわしい能力もない。逆に照の「連続和了」や淡の「絶対安全圏」、衣の「一向聴地獄」はインパクトが強烈な反面パワープレイ寄りで(つまるところ「支配して勝利する! それだけよォ!」である)、最後はプレイヤー(主人公)に攻略されることを前提に設定されたボスキャラ専用の能力と言えるだろう。隠しコマンドでプレイアブルになったらリアルファイトになることうけあいだ。
 咲さんと衣による魔境NAGANOの天王山にはみな興奮させられたと思う。あの試合は名シーンに事欠かないが、何よりの灼アツポイントは、衣の山を支配するという一件無敵に思える能力を、咲さんが「能力の届かない嶺上牌で和了る」という説得力のある解を用いて破ったところだと思う。上で語った豊音の攻略と同様に、シンプルかつ筋の通ったロジックが素晴らしい。また、あのシーンに至るまでに、衣の持つ能力が如何に横暴で強力かが(主に池田が被害者になることで)巧みに描写できていたからこそ、それをやり込めた咲さんに対する畏敬の念が湧いてくるのだろう。
 ことほどさように、咲さんと並み居る怪物どもの間に火力と支配力の差があるからこそ、能力の応用と化かし合いで見事打ち破った際にジャイアントキリング的なカタルシスが生まれるのである。『咲-Saki-』は数ある能力バトル漫画の中でも、相手の反則すれすれな能力がこちらの能力を引き立たせるという好循環を維持している希有な存在だと思う。

………

(待ち 八萬)

次のツモの南をカン…

嶺上牌の
八萬で和了って
原村さんをまくる……!!

(第3局「雀荘」)


1.嶺上牌が見えている(よって有効牌・和了牌にする待ちにできる)
2.カン材が自動的に集まる
3.カン材になる牌が見えている(モモのステルスも看破する)
4.超人的な運(魔物の標準装備)
5.他家のテンパイ気配を察知(精度の差はあれど魔物の標準装備)


 咲さんの能力は今もってその全容が知れない。自分のツモが分かっている説や、山が全て見えている説、相手の手牌も全て見えている説、全ての牌を好きに操作できる(!)説もあるが、劇中の描写から確定しているのはこんなところだろう。私はこれらに加えて、咲さんに新しい能力が開花したか、あるいは開花しつつあるんじゃあないかと予想している。言うなれば守り(消極的な)のプラマイゼロ転じて攻め(全部「ゴッ」倒す!)のプラマイゼロだ。具体的には、自分の収支を最終的にプラスマイナス0にすることを条件に場を支配する(あるいは相手の支配を打ち破る)能力ではないだろうか。この発想が出て来たのは、一つは末原さんの「この清澄の大将…条件付きで支配を発揮するタイプか……!!」(第91局「追補」)という発言があってのこと。メタ的な発想をすれば、この台詞もりつべが末原さんに言わせているので、そうそう的外れではないと予測できる。もう一つ引っかかったのが、咲さんが魔物センサーである塞のモノクルをぶち割ったのが、豊音の先負を打ち負かしたときでも、霞さんの絶一門を速度で上回ったときでもなく、カンによるずらしで末原さんに倍満をツモらせたときだったことだ。あれは咲さんが能力の発動条件を満たしつつあり、霞さんの支配――はっちゃんが「(姫松に)和了られましたよ~どういうことですか~」と言うくらいだからかなりの強制力なのだろう――を上回る支配力が生まれたことによるひずみだったのではないだろうか。
 ちまたでは99局「真実」が掲載されてから「魔王がまたやらかした!」「舐wめwプw和にあれだけ叱咤されたのにまwたw舐wめwプw」「『オウ財布……末原くん、準決勝もよろしゅう頼むわ! また2位にしてやってもええで!』」と散々に言われていたらしいが、私は「末原さんを支援してプラマイ0を狙ったのはあくまで能力を発動させて霞さんの支配を打ち破るのに必要だったから。調整先に末原さんが選ばれたのは単に与しやすかったから」説を唱えている。どうかそうであってほしい。これ以上咲さんが嶺上マシーンだなんだと言われるのは見とうない……。

(以上、阿知賀編アニメ放映終了時の雑記から抜粋して加筆修正)

 ここから追記。続く第100局で咲さん本人の口から、プラマイ0を狙ったのはそれ以外に勝ちのイメージが見えなかったからと語られた。正直ほっとしたぜ。あれから咲さんの能力の真髄については新説が登場するし(プラマイ0に加えてもう一つ縛りがある説)、末原さんの隠された能力(すべての○○○に絡む程度の能力)についても推理が進んでいる。ますます準決勝の大将戦が待ちきれない。私は二年半後くらいには読めると踏んでいるのだが、見込みが甘すぎるだろうか……。
圧倒的な実力差を見せつける咲さん ~末原さん蹂躙編~:咲グラフ
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tags: 咲-Saki- 考察 

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