2017年08月31日

ことのはアムリラート レビュー・感想 ろくな衝突もない異文化交流、展開に動かされるキャラクター

 ユリアーモでもハナモゲラでも何でもいいですが、 異世界や異国語の設定をはりきって作る以前にドラマの導入部と核になる部分を真っ当に作り込んでもらいたいです。

 超展開百合ゲーの雄、J-MENTによる異世界・異言語ファンタジーです。私は過去作『Volume7』『ひとりのクオリア』『ふたりのクオリア』の出来にげんなりしていたので、今作はかなり期待値を低く設定していたのですが、そこは越えない出来でした。
 まるで成長していない……と思ったのは、あまりにも掴みの弱い導入部です。思ったんですが、この人の作品って常にシチュエーションありきなんですよね。「引きこもりの子とまめまめしく世話を焼く子のほのぼの同棲生活」「イケメンのヒモと彼女にかどわかされる女学生の刺激的な同棲生活」「言葉が異なる少女たちのドキドキ同棲生活」といった設定がまずあって、そこにキャラクターが押し込められているとしか感じられないのです。そこに至るまでの過程や、キャラクターの想い、バックグラウンドはろくすっぽ描写されません。初っぱなの掴みが弱すぎるから、その後のドラマに訴求力が生まれないんですよ。今作では、元いた世界から切り離されて絶望していてしかるべき主人公のタヌキさんが、あれよあれよという間にウサギさんに拾われて同棲生活に順応し、お風呂場でのラッキースケベイベントを回収しだすあんばいです。のっけから気が遠くなり、気付いたときにはうさぎさんにボディをおさわりしながらのムフフな単語学習をさせてもらっている有様で、私は例のごとく置いてけぼりにされていました。ときにこの主人公、あまりにも背景が薄っぺらくないですか? ときどき思い出したように描写が希薄な回想が差し込まれるものの、この人が物語の開始以前にどんな人生を送ってきたのか全然イメージができないのですが。酷い言葉ですが、作者がドキドキ同棲生活を送らせるためだけに創り出したコマのようでした。
 逆にいくらか改善されていると思ったのは、同棲生活のホストになる少女に納得のいく動機付けをさせているところです。実はウサギさんもタヌキさんと同じく元訪問者で、同じように困り果てていたところをフクロウさんに保護された経験があるため、自身も彼女の立場になって人を助けたかったというのは、とても共感できて好感が持てました。もっとも、このことが明かされるのはほとんど終盤に入ってからなので、物語を牽引しているかというとこれぽっちもしていないのですが。
 クライマックスの展開は、あまりにも投げやりであ然としてしまいました。異世界トリップものにおいて、主人公は今の世界に留まるのか元の世界に戻るのか、パートナーないし周囲の人間は引き留めるのか送り出すのかは、永遠の命題でしょう。しかし、元いた世界、残してきた人に対する思いが真っ当に描写されていないのに、帰る帰らないで悩んでぐだぐだと引っ張られても興醒めするだけです。同様に、どう見てもヒロインと主人公の思いが通じ合っていて、かつ元の世界に帰すことに妥当性や緊急性が見受けられないのに、相手が主人公を送りだそうと躍起になられても「は? なんでなん?」としか思えません。話の都合のためにキャラクターを動かさないでください。悲劇を演出するためにキャラクターの人間性を踏みにじらないでください。あまりにも当たり前のことなので、口にしていてこっ恥ずかしいです。結局、この作品で最後まで人間味が感じられたのは、既に自身の物語が完結していて一歩引いた立場から主人公たちを見守るフクロウさんだけでした。
 ちょっと前に『SHOW BY ROCK!!』を見たときにも思ったことですが、主人公に占める元の世界のウェイトがあまりに希薄なら、どうして帰る必要があるんですかね? そらあ現地妻のいる異世界に残るっしょとしか思えないんですが。読み手にそう思わせてしまう時点で、筋運びやバックボーンの構築に失敗しているのは明らかでしょう。
 あとは、予算の都合なのかもしれませんが、原画にしろグラフィックにしろサウンドにしろボーカル曲にしろ、過去作に比べて大幅にグレードダウンしているのは残念でした。特に立ち絵、主要登場人物が三人しかいないのに基本ポーズのパターンすらないのはあんまりじゃあないでしょうか。みみっちさを感じるだけでなく、視覚的に情感を乏しくしています。あと、ヒロインの顔がサリーちゃんのよし子ちゃんみたいなナスビ顔で可愛くないですね(ぼそっ)。予算がないならないで切り捨てるものを見極めるべきであり、そうなると真っ先にぶった切るべきなのはあのしょうもない勉強システムじゃないですかね。
 あの勉強システムが「しょうもない」としか思えなくて、やらされてる感、ぼくの調べ物大発表会・ノートの設定披露宴に参加させられている感が強いのは、言語学習の進度と二人の思いの深度がほとんどリンクしていないからでしょう。二人のお互いに対する好感度は、異世界に転生した「小説家になろう」の主人公のごとく、最初からカンストしているようにしか見えませんでした。私はあくまで物語が読みたいのであり、キャラクターのことを知りたいのであって、作者が考えた設定のお勉強をさせられたいわけではありません。
 結局、この作品が抱える問題の大元を辿っていくと、「言葉を勉強しながらのイチャイチャ同棲生活♪」というシチュエーションありきの姿勢に行き着くのではないでしょうか。

 物語の中で他に共感できるのは、タヌキさんがウサギさんにより強く想いを伝えるために言語の勉強に打ち込む真摯な姿勢そのものと(上に書いた通り、なんでこの状況で平然と勉強してるの? 元の世界に戻る方法は調べないの? とはずっと思ってましたが)、訪問者の先輩であり、あまりにも辛い別れを経験しているフクロウさんが二人に託す想いくらいで、あとは全般的に疑問符が残りました。ラストはいくらなんでもひどすぎやしませんかね。ファンの方はあれで納得できたのでしょうか。

ことのはアムリラート 通常版
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コメント

Re: 百合欠乏症さん
 挙げてもらった作品ですが、基本的にコレシカナイ需要にあずかっているだけじゃないですかね。百合霊なんてADVの構成要素全てが三流にしか思えないですけど。

 笛の絵に変なシナリオを付ける人の作品に対する評価はだいたい一緒ですかね。議論に値するのは『カタハネ』くらい(私は特に評価する点がないですが)、ことのははクオリアに比べればなんぼかまし、でも佳作からはかけ離れている。『Volume7』はギャグゲーとしては認めます。

>シリアル投票なので工作しづらい萌えゲーアワードの月間賞取ってるんですよねえ……
 あそこは宣伝費でゲタを履かせるシステムなんじゃないですか? 『その花』がなんかの賞を取ってた時点でありえねーと思いましたね。
>今は世間的には
>「悪く言えば薄いけど良く言えば軽い」
>みたいな百合作品の方がウケるのかなとも思う今日このごろです
 それはあるかもしれないですね。

ちょっと話題になってたので今さらこのゲームクリアしました
個人的には投げっぱなしジャーマン続編商法のクロスクオリアよりは10倍くらいマシだと思いますが
いかんせん描写不足すぎて流石に良作とは思いませんでしたね
ただこの作品、層の薄い空き巣月間だったとはいえ
シリアル投票なので工作しづらい萌えゲーアワードの月間賞取ってるんですよねえ……
(あそこは全年齢作品は弱い印象なのですが)
だからそれなりに売れてて支持してる人がそれなりにいるのも現実なのでしょう

百合霊さんがフルボイス化で再販決まったり、
ふみや氏のりりくる続編の続編クラウドファンディングが瞬殺になる程度には固定ファンついてたり

今は世間的には
「悪く言えば薄いけど良く言えば軽い」
みたいな百合作品の方がウケるのかなとも思う今日このごろです

※同ライターであっても『ひとりのクオリア』『ふたりのクオリア』
  に関しては薄いくせに軽くもないという感じで
  レビューサイト等含めてことのはアムリラートと比較しても圧倒的に良い評価聞かないので余計に

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Re: FLA1Acp040.aic.mesh.ad.jp さん
いちいちIP変えてコメントするのは手間だと思いますが、これからもうちのサイトのPVをじゃんじゃん上げてくださいね。
もうコメント読み飛ばしてますけど。

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Re: FLA1Acp040.aic.mesh.ad.jp さん
 誰かと思ったら、いつだったかの荒らしの方じゃないですか。真面目にコメントして損した。
 最近粘着コメントの頻度が下がってませんか? もっとガンガンコメントをしてPVをかせいでくださいよ。

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Re: 196.214.175.163さん
> 描写が薄いのはごもっともだが
 ご同意いただけましたか! ありがとうございます。描写が薄いなら真っ当に描写されていないんじゃないですか? なんか一枚絵までのっぺらぼうみたいでしたけど。
> その辺の情報を詳しく描くべきだと言うならその通りだが
 ご同意いただけましたか! ありがとうございます。
> ユリアーモは実在の人工言語エスペラント語をほぼそのまま使っていること
 そのままそっくり使っていないで加工しているなら、作者の作った設定なんじゃないですか? ぶっちゃけどうでもいいですけど。

まだ死んでなかったんだ。しかもまたエアプで無いこと無いこと捏造して叩いてるんだ。相変わらずキチガイで安心しました。
描写が薄いのはごもっともだが、主人公は異世界に来てからすぐ両親の事思い出して泣いてるし、元の世界の友人のことを夢にまでに見てる。
まっとうに描写されてないとか捏造して寝言言う暇があるなら、その脳みそ使えないから首から上もぎ取って生ごみにでも出しておけよ。
妥当性や緊急性が認められないのはお前がエアプだから文章読んでなくて捏造しているだけで、劇中で元の世界に帰るための門についての情報はほぼなかった。
次にいつ開くのか、そもそもまた出現するのか、一度帰った後本当に戻ってくることは不可能なのか、一切情報が無かった。
その辺の情報を詳しく描くべきだと言うならその通りだが、妥当性も緊急性もないってのは単なる捏造。
登場人物にとってこのチャンスを逃したら次のチャンスがあるかすら不明。無いのはお前の知能。
また本当にゲームをプレイしているなら、ユリアーモは実在の人工言語エスペラント語をほぼそのまま使っていることが起動直後とスタッフロールで理解できる。
作者の考えた設定のお勉強をしたいわけではない。この文がそのままお前がエアプであることを示しているな。
ゲームをプレイすらしないくせに、捏造して作品を叩くとか、悪質なブログですね。生きていて恥ずかしくないの?

Re: とんぼーさん
百合ゲーの世評ってかなり信用ならないですからね。私はカタハネもよくわからなかったのでダメージは少なかったですが。
手抜きバッドエンドについてはかなり同感で、正直アカイイトですらもっと削ってほしいと思ってます。
とんぼーさんもseabedをやってたんですか。あれは熱意を感じる力作でしたね……。あと、虚実入り乱れるシナリオなのに、言いたいことが単純明快なのが素晴らしかったです。

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