2018年02月03日

のらきゃっとの面白さを伝えたい あるいはコミュニケーションの根源的な楽しさについて

 私がいわゆる四天王と同じくらい、動画配信を楽しみにしているバーチャルYouTuberさんがいらっしゃいます。それが今回の記事で紹介する「のらきゃっと」ちゃんです。

のらきゃっとチャンネル



 記事の構想を温めている間に、チャンネル登録者数は5万人を突破して押しも押されもせぬ人気キャラの一人となり、のらきゃっと論評もちらほら見かけるまでになってしまいました。今さらですが、自分なりの言葉でこの子の魅力を語っていけたらと思います。

一体感、ライブ感
 後述するように、のらきゃっとちゃんの魅力が最も味わえるのは配信を生で見ることだと思いますが、このアーカイブの動画を見てもらえれば魅力の一端が伝わるかと思います。

 この動画でも初っぱなから繰り出していますが、奈良キャットちゃんのお家芸に「ご認識」(誤認識)があります。奈良ちゃんが声を発する仕組みは、アクターさんがしゃべった声を音声認識によってリアルタイムでテキスト化し、それをVOICELOIDが即座に読み上げるという流れになっています。この際に、アナログ音声をデジタル化するのに失敗した単語がご認識の正体なんですね。
 前置きが長くなりますが、バーチャルYoutuberが爆発的な人気を得た要因の一つにインタラクティビティ(双方向性)があるのは間違いありません。まず、ネットに繋げばすぐに姿を見られてうまくすればリアクションまでもらえる、SNSで繋がれるという媒体の物理的な距離が近い。雲の上のタレントと違って気軽に応援できる、作り手の姿が透けて見えるからアクティビティを応援したくなるという具合に、心理的な距離でも近い。この独特な距離感は、今までのコンテンツや特定のキャラクターにはなかったものでしょう。そんな双方向性を打ち出しているモノにおいて、コミュニケーションやプレゼンテーションの完成度は殊に重要だと言えるでしょう。VTuberの中でも特に多くのファンが付いている人は、やはりそれの練度がずば抜けていて、強固なキャラクターとしてビルドされています。キズナアイちゃんは愛嬌と芸歴に裏打ちされた安定のトークで、ミライアカリちゃんは名は体を表すそこぬけに明るいしゃべくりで、輝夜月ちゃんは強力な習慣性のある声質と息もつかせぬマシンガントークで、シロちゃんはほわほわした声と不思議パワーワードとの合わせ技で、視聴者を魅了しつづけていますよね。
 奈良キャットちゃんのトークは、四天王の流麗なそれとは似ても似つかないものです。ご認識で文脈は乱れて突拍子もない言葉が飛び交いますし、VOICELOIDによる読み上げは声のプロのそれと比べると抑揚が欠けているかもしれません。しかし、芸術というのは不思議なもので、奈良ちゃんのトークはそのとっぴさやたどたどしさが他にはない魅力になっているんですよ。例えるなら、ベイマックスの機械音声に感じる親しみや、E.T.のたどたどしい言葉に感じるいとおしさ、そういったニュアンスで満たされています。
 のらきゃっとちゃんの生配信を特徴付けているのは、ライブ感と一体感です。言葉に抑揚がないからこそ、逆説的に字面以上の情感が伝わってくる。ご認識で情報が失われるからこそ、必死に彼女の言葉に耳を傾けて言いたいことを理解しようとする。言葉を補完するかのような懸命なジェスチャーの、一挙手一投足を見守りたくなる。そして、どんなびっくりフレーズが飛び出してくるかわからないからこそ、それをどうにか拾ってみたくなる。あんまりにもあんまりなフレーズ(褒め言葉)が出てきたときは、大喜利のごとくネタにしてみんなでわちゃわちゃする。「武田氏」(駆け出し)「成田 尖った」(なりなかった)と突然出てきた人名には「武田ァ!」「成田ァ!」と嫉妬を込めて怒号を飛ばす。言い直しがようやくうまくいったときの彼女の決め台詞「そうです そうです」には一斉に合いの手「そうです(はぁと)そうです(はぁと)」を打つ。そんなオタ芸チックなお約束が、彼女の再デビュー一ヶ月ちょいにして既に完成されています。驚異のひと言ですね、
 大げさな言い方かも知れませんが、彼女の動画にはコミュニケーションが成立する、みなで何かを共有するという根源的な楽しさのプロセスが存在するんだと思います。だからこそあれだけの人が集まり、『けもフレ』『ごちうさ』1話のテンプレのごときグルーヴが毎回生み出されるのでしょう。これはもう、ハプニングから観客の合いの手まで取り込んだ総合体験だと解釈するほかありません。私もいろんなバーチャルYoutuberさんの生配信を見て、それぞれ別方面での完成度の高さに感心したのですが(最近だとミライアカリちゃんの最新回で驚愕した)、奈良キャットちゃんの生も既に独自のポジションを盤石しつつあると思いました。みなさんもぜひ一度、水曜・日曜に行われる定期生配信を覗いてみてください。
 この項では四天王を引き合いに出す形になりましたが、完全無欠ではなくぽんこつさがあるからこそ応援したくなるという点では奈良ちゃんと共通していると思っています。

プロデューサーであるノラネコ氏の存在感
 村キャットちゃんに関してもう一つ面白いと思ったのが、上位存在のメタ的な配置の構成ですね。一般的に、企業組でアイドル芸人路線のキャラやAI・アンドロイド設定のキャラは、上位存在――スタッフの存在は極力意識させないようにしています(少なくとも動画作品中では)。のじゃおじを除く四天王がわかりやすい例ですね。一方、村ちゃんは個人組のVTuberなのですが、上位存在についておおっぴらにしているんですね。彼女は元戦闘用のアンドロイドで、今はノラネコ氏(通称プロデューサー)に拾われて同居しているというバックストーリーが構築されています。Twitterを見ると、村ちゃんの素体の材質やボディの各機能など細かい設定まで作られているみたいですね。この過剰積載な設定、実に男のコで私は好きです。閑話休題。村キャットちゃんは動画の配信についても、プロデューサーと二人で行っているという体裁を取っていますね。この背景設定が、意図せずしてよいフレーバーになっていると私は思うんですよ。村ちゃんが配信する動画に、われわれがPさんと一緒に彼女の活動を見守っているかのような一体感が空間演出されているんですよ。これまで一体感、ライブ感というキーワードで彼女の動画の魅力を語ってきましたが、このメタフィジカルな視点の演出もそれに一役買っていると認識しています。
 あと、初めて見た生配信で「(元戦闘用アンドロイドなので)好きな刀は?」という質問が視聴者から来て、村キャットちゃんが答えた刀のラインナップから「それ『装甲悪鬼村正』じゃないの?」と指摘があり、 「そうそう、プロデューサーがニトロプラスのゲームが好きなんです。『沙耶の唄』とか。沙耶と言えば、この髪型はリトバスの沙耶ちゃんがモデルになっていて……」と返して、流れるようにプロデューサーさんのエロゲ趣味をにバラしていて竹が生えてしまいました。あれでPさんに対してさらに親近感が湧いてしまいましたね。最近の生配信でも、プロデューサーの好きな物語について聞かれて「『Fate/ZERO』の虚淵さんのファン。辛く厳しい道程の先にハッピーエンドがある物語が好き」って言ってましたっけ。そして、全年齢的に都合の悪いところはPさん(の嗜好)に押しつけていくスタンス、村ちゃんのふてぶてしい性格を反映しているかのようで、二人の気の置けない関係を示しているようで、何というかもう、好きです。

武田氏のトークスキルはもっと評価されるべき
 ご認識の影に隠れていて目立たないですが、武田ドラキャップちゃんのトークや進行のスキルは並じゃあないと思っています。音声認識を挟まずにしゃべるなら、最古の五人と比べても遜色ないレベルではないでしょうか。武田氏の生は2~3時間の長丁場になることもあるのですが、その間も話の接ぎ穂を失わないのは地味にとんでもない。この前は『Watch Dogs 2』の生実況配信をやっていたのですが、NPCの個人情報(職業・年収など)をスキャンできるゲームシステムから、年収800万以上の人間をとっちめるバーサーカーのロールをその場の流れで作り上げ、暴走プレイで場を湧かせていました。初見のゲームを攻略しながら即興であんなことができるのは、驚きのひと言でした。ちなみにプレイングも、ゲームを普段からやり込んでいる人の動きで見やすかったです。他に、トークとご認識との連携だと、おそらく「徐々に」と言おうとして「ジョジョ」だけ拾われたときに、とっさに視聴者への「『ジョジョ』は何部が一番好きですか」という問いかけに持っていったり(ちなみにドラちゃんは四部と吉良良影が好きらしい)、「あいつ」が「アイス」に化けたときに、武器として使うためにあずきバーを探し出したり(コメントによると『スカイリム』のネタらしい)。トークの生配信でも、口パクを入力するデバイスの電池が突然切れる事故を「今はマイクロ波を直接脳内に飛ばして会話しています」と言い張って乗り切ったり。そういったアドリブならびにリカバリーが非常に巧いと思いました。雑談で場を繋ぐときも、趣味に限定してもビデオゲーム、卓ゲー、物語全般(漫画・アニメやエロゲ)、PC、クルマとネタが幅広く、聞き手を飽きさせません。そして(バーチャルYouTuberに不可欠な資質だと思いますが)好きなものについてしゃべっている様子が本当に楽しそうで、聞いているこっちもよい気分にさせてくれるのでした。
 後でプロデューサーがニコ生で研鑽を積んできた熟練者で、趣味でTRPGをやる人だと知り、地力の確かさを理解しました。

その他もろもろ
 クラリキャットちゃんが配信で使われている部屋がめっちゃ好きなんですが、伝わりますかね。まず、瀟洒なインテリアがふきさらしの部屋に置かれているというアナクロ感が妙にSFチックでよいのです。あと、クラちゃんの言葉は変換されるまでの間に少しラグがあって、それがちょうど隔絶された空間との通信をしているかのようで面白いんですね。いろんな偶然の一致が噛み合った結果、電脳空間の部屋というコンパイルが通っているんですよ。
 ここは大事なところですが、クラちゃんは見てくれも大好きです。けもみみのロング、ハイライトのないぐるぐる赤目、色素薄めのカラーリングにゴスロリコーデと、これで好きにならないほうがおかしいですね。
 クラちゃんはバーチャルYoutuberの熱心なファンの一人でもあり、自分の配信で他の人のネタを仕込んでくれるところが好きです。VTuberは垣根が低いせいか横の繋がりがとても強く、こういった言及やリスペクトが多くて楽しいですね。
のらちゃんの動画は為になるなぁ
恐ろしいねぇ……

まとめ
 設定やお約束を受け入れる最低限のリテラシーさえあれば絶対に楽しめるので、みなさんもぜひ、のらきゃっとちゃんのライブ感あふるる動画を見たってください。ご認識のネタ要素も最高に楽しいですが、話の構成やネタのチョイス、ここぞという場面でのご認識しない決め台詞も完成度が高いです。最近はチャンネル登録者数が指数関数的に伸びているらしいですが、あれは面白さのこれ以上ない証左でしょう。
 私が生で見られた『Watch Dogs 2』の実況はプレイング、ご認識語録ともに取れ高モリモリの名作だったので、あれが公開されてさらにファンが増えることを期待しています。
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コメント

Re: 通りすがりさん
コメントありがとうございます。ねずみさんから同意のコメントがいただけて、書いた甲斐がありました。
村キャットちゃんはロールプレイ、トーク、あざとい動作と武装が豊富なのがよいですよね。それらが魂の人の長年の修行の賜だと知って、またちょっと好きになっちゃいました。
私も次の動画を楽しみに待ってます。

私もWatch Dogs 2の生実況配信を観てましたがめちゃくちゃ良かったですね。おもしろ誤認識が出るわ出るわ、暴走プレイは面白いものに昇華してるわで大満足でした。
あのトーク力は頭の回転が速いからこそでしょうね。あとは色々な知識(ネタ含め)の裏付けがあることか。
そして何といっても男心ををくすぐる動作、発言……分かっているから最高なのです。
最後に、この記事を読んで武田キャップちゃんの魅力を再確認することができました。ありがとうございます!
のらきゃっとさんのこれからの活躍にも期待ですね!


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